2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社では、リスクの適切な管理・運営による経営の健全性を確保するために「リスク管理規程」を定めており、具体的な事象を想定した経営に重大な影響を与えるまたはその可能性が高いリスクの発生に備えております。

 「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」においては、事業活動におけるマテリアリティ(重要課題)を特定し、各課題に付随するリスク及び機会を記載しておりますが、本項では、同章に記載されたリスクに加えて、当社の事業継続および業績に重大な影響を及ぼす可能性のあるその他のリスク要因について網羅的に記載しております。

 また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要と考えられる事項については、積極的に開示してまいります。

  なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。

 

(1)経営環境の変化について

 当社グループは、インターネット業界においてクラウドサービス及びITエンジニア派遣サービスを提供しております。現在は、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応、業務効率化・人材不足対策の観点から、企業のIT投資は一定の底堅さを維持しております。一方、景気動向の不確実性や金利上昇によるコスト意識の高まり、地政学的リスク等が顧客企業の投資判断に影響を与える可能性もあります。

 このような外部環境の変動により、IT導入・更新の意思決定が先送りされるような場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)競合他社による影響について

 当社グループは、クラウドサービスの特定領域における先行者メリットと高い市場シェアを活かしつつ、顧客のニーズに合ったサービスの開発を行うことで優位性を高めております。しかしながら、クラウドサービスの新規参入の技術的な障壁は必ずしも高いものとは言えず、市場の成熟に伴い、価格競争のみならず、機能面でも競争は一層激化しております。

 資金力やブランド力を有する大手企業による機能的に優れた代替製品の登場や、競合他社による積極的な顧客獲得施策が当社顧客の解約や新規獲得の機会損失を招いた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります

 

(3)特定の製品への依存リスクについて

  当社グループは、法人向けに業務効率化に貢献するクラウドサービスの提供を行っており、経費精算システム「楽楽精算」、電子請求書発行システム「楽楽明細」が主力サービスとして、当社グループの業績を牽引しております。両サービスが当社グループの売上高に占める割合は大きく、今後、競合製品との競争激化により売上高が大幅に減少した場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)生成AIを含む技術革新等への対応について

  当社グループが各種サービスを提供するインターネット業界においては新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が頻繁に行われており、非常に変化の激しい業界となっております。そのため常に新しい技術要素をITエンジニアに習得させてまいりますが、何らかの理由で技術革新への対応が遅れた場合当社グループが提供するサービスの競争力が低下する可能性があります。また、新技術への対応のため予定していないシステムへの投資が必要となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

  加えて、近年は生成AIをはじめとする人工知能技術が急速に進展しております。当社グループにおいても、AI技術の業務活用や製品への応用を積極的に検討・導入しておりますが、AIを活用した新規サービスの台頭や、他社による業務効率化・自動化の加速により、当社グループの既存サービスとの競争環境が短期間で大きく変化する可能性があります。また、AIを含む新技術への対応に遅れた場合、当社グループの競争優位性が低下し、事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)ITエンジニア派遣市場の動向について

  現在、多様なインターネットサービスの登場や企業の情報システム化に伴い国内ITエンジニア派遣市場は活況を呈しておりますが、企業によるシステム開発の内製化、人件費や事業コストの安い新興国の企業・人材を活用して開発コストを削減するオフショア開発が当社グループの想定する以上に急激に進んだ場合、及び、主要な派遣先の業績不振等により派遣受入ニーズが減退した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、生成AIの進展により、従来型のシステム開発やプログラミング業務の一部が自動化されることで、エンジニアのスキルセットに対する需要が変化し、派遣ニーズの構造的変化を引き起こす可能性があります。このような変化に適応できない場合には、当社グループのIT人材事業にも影響を与える可能性があります。

 

(6)システムトラブルによるリスクについて

  当社グループは、クラウドサービスを通じて顧客に価値を提供しており、その安定的な保守・運用・管理は、インターネット通信ネットワークやクラウドインフラに強く依存しております。安定的なサービス提供のため、サーバー設備の増強や情報セキュリティ責任者が適切なセキュリティ手段を講じることで外部からの不正アクセスの回避等を行っておりますが、以下のようなシステム障害やサイバーリスクの発生時には、当社サービスの提供停止や顧客影響、社会的信用の毀損等により、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

①サービス提供を行っているコンピューターシステムへの急激なアクセスの増加や電力供給の停止等の予測不可能な様々な要因によって当該コンピューターシステム及び周辺システムが停止した場合

②ランサムウェア、ゼロデイ攻撃、サプライチェーン攻撃等、高度化するサイバー攻撃によりサービス提供が阻害された場合

③従業員や委託先の過誤等による、当社グループの提供サービスのプログラムの改ざん、重要なデータの削除や漏洩等に適切に対応できない場合

 

(7)情報管理体制について

  当社グループは、提供するサービスに関連して多数の顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産を保護するため情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しておりますが、このような対策にもかかわらず重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(8)自然災害について

  クラウド事業の顧客の情報資産が格納されるサーバーは、東京都内及び大阪府内に分散管理することでリスクを分散させておりますが、データセンターやその周辺ネットワーク設備等に被害を及ぼす災害、事故等が発生し情報資産の消失又はサービスの提供が維持できない状態に至った場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、災害、事故等によりIT人材事業における派遣先の重要な設備が損壊し事業活動の停止もしくは事業継続に支障をきたす事態が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(9)法的規制によるリスクについて

①クラウド事業について

  当社グループは、電気通信事業者(旧一般第二種電気通信事業者)として総務省に届出(届出番号E17-2681)を行っており、電気通信事業法に基づく通信役務の提供を行っております。現在のところ、当社の事業に対する同法による規制の強化等が行われるという認識はありませんが、社会情勢の変化等により当社の事業展開を阻害する規制の強化等が行われる可能性は絶無では無く、万一かかる規制の強化がなされた場合には、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

②IT人材事業について

  当社グループのIT人材事業においては、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という。)により規制されているため、当社は同法に基づき厚生労働大臣の許可を受け、一般労働者派遣事業を行っております(派遣:派13-310802、紹介:13-ユ-309573)。労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣事業を行うもの(派遣元事業主)が、派遣元事業主としての欠格事項に該当したり、法令に違反した場合には、事業許可の取り消し、又は業務の停止を命じる旨を定めております。当社では、社員教育の徹底、内部監査等による関連法規の遵守状況モニター、取引先の啓蒙等により、法令違反等の未然防止に努めておりますが、万一当社役職員による重大な法令違反等が発生した場合、当社グループの業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

 また、会計、税務、人事労務その他の規制に関する変更により、当社グループが提供するサービスについて重大な修正を要した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(10)知的財産の侵害におけるリスクについて

  当社グループによる第三者の知的財産権侵害の可能性については、専門家と連携を取り調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社グループの事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性を否定できません。この場合、損害賠償請求や使用差止請求等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)特定の人物への依存について

  代表取締役社長である中村崇則は、当社グループの創設者であり、会社経営の最高責任者として経営方針や事業戦略の決定をはじめ、当社グループの事業推進において重要な役割を果たしております。

  当社グループは、中村崇則に過度に依存しない経営体制を整備するため、取締役間の相互の情報共有や事業部制導入による経営組織の強化を図っております。しかしながら、何らかの理由により中村崇則が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(12)人材の採用・育成について

  当社グループは、今後の業容拡大を図る中で、各事業において、専門性を有する人材の採用・育成は不可欠であると認識しております。そのため人材の採用・育成を継続的に行っておりますが、今後各事業において人材獲得競争が激化し、優秀な人材の採用が困難となる場合や在職している人材の社外流出が大きく生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(13)海外子会社について

  当社グループは、海外子会社においてクラウドサービスの一部を開発しており、当該国の政治・経済・社会情勢の変動に起因して生じる予期せぬ事態、各種法令・規則の変更等により当地における事業の継続が困難となる等のカントリーリスクを有しております。カントリーリスクについては顧問契約を締結している現地の会計事務所や法律事務所と情報を共有し適切に対応することでリスクヘッジを行っております。しかしながら、このようなリスクが顕在化した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)有価証券の価格変動リスク

  当社グループでは、有価証券を保有しておりますが、市場価格のない株式等以外の有価証券については、株式市場の変動などにより時価が著しく下落した場合には、評価損を計上することとしております。また、市場価格のない有価証券については、期末時点での発行会社の財務状況や今後の見通しから減損すべきだと判断した場合には、評価損を計上することとしております。このような状況になった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)のれん及び顧客関連資産の減損による影響について

 当社グループは、企業買収に伴い生じたのれん及び顧客関連資産を計上しております。買収時の収益計画と概ね相違ない進捗であり、減損を認識する必要はないと判断しているものの、収益性の悪化などによる価値の毀損により、当該のれん及び顧客関連資産の減損処理を実施する場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

  当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の最重要課題のひとつとして認識しており、利益ある成長を達成するため、事業の展開及び経営基盤の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、継続的かつ安定的な配当を実施することを基本方針としております。

  剰余金の配当につきましては、業績の拡大に応じた適切な利益配分を基本として連結配当性向10%超を目安に実施し、さらに、原則として1株当たり年間配当金の下限を前年実績と設定することで、配当の継続性・安定性にも配慮した連続増配を実施してまいります。

  当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めておりますが、現時点では成長投資の実施時期により、四半期ごとの業績変動が大きいため、年1回の剰余金の配当を行っております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

  中間配当については、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

  上記方針に基づき、当事業年度の期末配当金につきましては、1株当たり4.50円に決定し、連結配当性向は10.2%といたしました。

  内部留保金の使途は、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、企業体質の強化及び将来の事業展開のための財源として利用していく予定であります。

  なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2025年6月20日

815

4.50

定時株主総会決議

(予定)