2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

<グループ全体及びその他に係るリスク>

(1) 成長戦略の実効性と中期経営計画の策定について

 新たな経営方針の下、プロダクト価値を向上させることで、顧客継続率を向上させることによる顧客数や顧客単価の増加を見込んでおりますが、その効果の発現が遅延しており、中期経営計画を取り下げております。今後、成長戦略の効果が限定的であった場合や想定を下回る場合は、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業の選択と集中に伴う純資産の減少について

 当社グループは、損益及び財務体質の改善に向け、事業の選択と集中を実施しております。前連結会計年度において、国内シェアオフィスサービス(クロスコープ横浜拠点を除く9拠点)の事業譲渡、及び「クロスコープ横浜」の撤退に係る固定資産の減損損失を計上し、当社グループの純資産は大幅に減少しました。また、当連結会計年度においては、国内シェアオフィスサービス(クロスコープ横浜拠点を除く9拠点)の事業譲渡を行ったことによる事業譲渡関連損失を計上したことにより、引き続き当社グループの純資産は低調な水準となっております。

 一方、2024年4月25日付「株式会社ジーニーとの資本業務提携、第三者割当による新株式発行、並びに、主要株主である筆頭株主の異動及び親会社の異動に関するお知らせ」に記載のとおり、株式会社ジーニーとの資本業務提携、第三者割当による新株式発行による増資払い込みを予定しており、デジタルPR事業の更なる拡充・先鋭化及び財務基盤強化によるキャッシュ・フローの健全化を予定しております。

 今後は利益率の高いデジタルPR事業に経営資源を集中させることで純資産の回復に努めること、また、株式会社ジーニーとの資本業務提携による新株式発行による増資払い込みにより、当社グループの純資産は大幅に回復する予定ではありますが、資本業務提携の解消等により増資払い込みが実施されない場合においては、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 管理職人材の育成について

 当社グループは、複数のサービスポートフォリオで事業が構成されており、各サービスの適切な事業成長のために、従業員の積極的な管理職への登用と権限移譲を行っております。そのため、管理職層の指導力や事業運営能力の育成が適正かつ持続的に実施されない場合、当社グループの中長期の事業成長に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 金利変動リスク及び資金調達について

 当社グループの資金調達については、主に金融機関からの借入金によるものであり、資金調達に際しては複数の金融機関と契約を締結し、機動的・効率的な資金調達を行うとともに資金調達リスクの軽減に努めております。しかしながら、何らかの理由で必要額の資金調達が行われなかった場合には、事業展開の進捗に遅れが生じ、収益機会の逸失に繋がる可能性があります。また、不測の事態による急激な金利変動によっては、金利負担が当社の経営成績に影響を与える可能性があります。さらに、全般的な市況及び景気の後退、金融収縮、当社グループの信用力の低下、事業見通しの悪化等の要因により、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) サイバー攻撃について

 今般のリモートワーク導入の加速化や個人情報保護法の改正等の外部要因もあり、ますます機密情報の保護に関しては重要課題であると認識しております。昨今、多発している特定の組織内の情報を狙って行われるサイバー攻撃の一種である「標的型攻撃」を受け、マルウェアなどの不正プログラムが送りつけられるなどして情報を窃取されることにより、当社の重要データの流出またはシステムへのアクセスが不能となった場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 内部管理体制について

 当社グループは、継続成長のために、コーポレート・ガバナンスが適切に機能することが必要不可欠であると認識をしております。業務拡大に合わせ、内部管理体制の充実を図ることを重要課題にあげておりますが、事業の急激な変化等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<デジタルPR事業に係るリスク>

(7) システム障害等について

 当社グループが提供するリリース配信代行サービス及びクリッピングサービスは、システムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、サーバー管理等の重要な業務の一部を外部委託しております。自然災害や事故等の発生によって当社グループ並びにサーバー管理等の委託先の通信ネットワークが切断された場合、継続したサービス提供その他に支障が生じる可能性があります。当社グループのシステムは、通信ネットワーク・システム構築の二重化及び適切なセキュリティ手段の構築等により、これら障害回避のための取り組みを講じておりますが、前述した要因等により、継続したサービス提供に支障が生じた場合には、収益機会の逸失、システム及び事業運営に対する信頼性低下、クレーム発生その他要因により、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) クリッピングサービスにおける著作権等について

 当社グループが運営するクリッピングサービスのうち、紙メディアクリッピングサービスは、新聞社、出版社等から発行される新聞、雑誌等を購入し、原本郵送することで行っております。調査対象メディアが一般に販売された時点で著作権者の有する著作物の譲渡権は消尽していると考えられるため、原本郵送サービスが当該メディアに含まれる著作物に係る譲渡権を侵害すると評価される可能性は低いと考えられます。しかしながら、調査対象メディアとの間でトラブルが発生し、訴訟等に至った場合には、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 参入障壁について

 当社グループが提供するリリース配信代行サービスは、法的規制がないサービス分野であり、新規参入が比較的容易であります。当社グループにおいては、メディアリレーションの強化、各プレスリリースの内容に応じて適切に絞りこまれたメディアを対象として配信、ノウハウをもつ専属スタッフによるきめ細かな顧客対応、顧客の配信履歴分析によるリコメンデーション機能等により、競争力の維持・向上、流出防止策の強化をしていく方針であります。今後、多くの新規参入を招き、競合他社との差別化が困難となった場合には、受注や採算性の確保が困難となり、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) メディア各社及びインフルエンサー等との関係について

 当社グループとメディア各社及びインフルエンサー等との広域かつ親密なネットワークは経営資源であり、効果的なPRやマーケティングサービスを提供するための関係について重要な事業インフラです。有用な情報を長期的かつ継続的に提供することによりメディア各社及びインフルエンサー等との信頼関係を構築してまいりましたが、当社グループが誤った情報の提供を行うことや他社との競争激化により相対的に信頼関係が低下した場合には、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 公開前情報の情報管理について

 当社グループが運営する各サービスにおいては、顧客の公開前情報や個人情報を扱う機会があり、事前にお預かりすることで、効果的にディレクションする性質のサービスがあります。情報管理は、従業員への意識徹底のみならず厳重なシステム担保方策を施し、関連顧客や仕入先との間で機密情報漏洩禁止の法的拘束を前提に業務進行しております。しかしながら、何らかの予期せぬシステムトラブル、もしくは関連仕入先の過失による漏洩事案が発生した場合、顧客との信頼関係の低下を誘発し、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 災害・事故等について

 当社グループが提供するデジタルPR事業の顧客である企業等は、自然災害、社会的インフラの障害、通信・放送の障害、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が発生した場合、広報・PR・宣伝活動等による企業活動を自重する等、災害・事故等の影響を受けやすい傾向にあります。したがって、これらの災害・事故等が発生した場合には、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<シェアオフィス事業に係るリスク>

(13) 海外シェアオフィス事業の運営について

 当社は財務体質の改善及び事業の選択と集中を目的に、2023年9月に国内シェアオフィス事業(クロスコープ横浜拠点を除く)の譲渡を行い、2023年10月に国内に残るクロスコープ横浜拠点を閉鎖した結果、2024年3月31日現在、運営を行っている拠点は海外シェアオフィス事業であるシンガポール1拠点のみとなっております。海外シェアオフィス事業におきましては、政情不安、通関業法・税制等の法制度の変更、金融等に関する諸規制の変更、ストライキ、テロ、暴動等、社会環境における予測し得ない事態の発生によって事業計画に遅延が起きる可能性があります。その場合は当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) AIの技術革新に伴うサービスへの影響について

 当社グループは、インターネットを活用した各サービスを展開しており、今後においても適切にインターネットサービスを活用してまいります。そのようなインターネットサービス関連における技術において、新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が日進月歩行われており、非常に変化が激しいものとなっております。

 そのため、AI技術の発展により提供される技術革新への対応が遅れた場合は、競争力の低下や、ビジネスモデルの転換をしていく可能性があり、技術革新に対応するためのシステム投資の遅れなど、ビジネスモデルの転換が迅速かつ効果的に実行されなかった場合には、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<新規事業に係るリスク>

(15) 新規事業について

 当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を進めるため、積極的に新規事業開発を検討し、実施してまいります。新規事業においては、蓋然性を十分検討したうえで、開発を行ってまいりますが、当該開発が何らかの影響で想定以上の工数を要した場合や、想定していた収益計画が大幅に遅延した場合においては、投資回収見込みがなくなることによる減損損失等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、新規事業を推進する中で、必要に応じて他社との業務提携等を検討し、実行してまいりますが、想定していた相乗効果が業務提携等から得られなかった場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) M&Aについて

 当社グループは、既存事業の規模拡大や新規事業進出に際し、事業戦略の一環としてM&Aや資本参加、資本提携等を行っております。買収や提携後の事業計画の進捗が当初見通しに比べ大幅に遅れる場合には、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループは第2四半期連結会計期間末では債務超過となり、その後当連結会計年度では債務超過を解消しておりますが、営業損失を計上しており継続企業の前提に関する重要な事象等が存在しております。しかし、黒字化に時間を要しておりました「シェアオフィス事業」についてクロスコープ横浜拠点に係るものを除く国内9拠点に係る事業をヒューリック株式会社に2023年9月1日に譲渡し、またクロスコープ横浜拠点については同年10月31日に閉鎖したことにより、収益構造の改善が見込まれることから継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 さらに、2024年4月25日付「株式会社ジーニーとの資本業務提携、第三者割当による新株式発行、並びに、主要株主である筆頭株主の異動及び親会社の異動に関するお知らせ」に記載のとおり、デジタルPR事業の更なる拡充・先鋭化及び財務基盤強化を目的として、2024年7月1日に13億円程度の増資払い込みが実行される予定です。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、利益配分につきましては、経営上重要な政策として認識しております。将来にわたる安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保を図るとともに、「連結配当性向30%を目標とした持続的な配当拠出」をすることを中長期的な還元方針としております。

 また、当社は取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨定款に定めております。当社の剰余金配当は、中間及び期末配当の年2回を基本方針としており、配当の決定機関は、中間配当は取締役会であり、期末配当は株主総会であります。

 当期につきましてはプロダクト価値向上に向けた投資期及び抜本的な財務体質の改善を敢行する事業再編期と位置づけております。従いまして、今後の事業の選択と集中による持続的な利益増大を実現したく、当期の配当につきましては、財政状態、利益水準、配当性向を総合的に勘案した結果、無配とさせていただきました。

 次期の年間配当金については、内部留保を優先し、更なるプロダクト価値向上に向け適切に投資することが適当と判断し、配当につきましては見合わせることとさせていただきます。