2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載します。ただし、以下に記載した事項が当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載事項以外にも投資家の判断に影響を及ぼす可能性のあるリスクが存在するものと考えられます。リスク選出のプロセスは、前項の「サステナビリティに関する考え方及び取組」内の「(1)サステナビリティに関する考え方 ③ リスク管理」をご参照ください。
なお、記載している事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

リスクの項目

リスクの内容

リスクに対する対応策

自然災害

地震、津波、天変地異、異常気象(台風、高潮、豪雨、他)による生産設備や調達・製品販売に係る物流への影響を完全に予防又は軽減できる保証はありません。また、生産量の著しい低下や、最悪の場合には長期間生産停止を余儀なくされる場合もあり、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

事業継続マネジメントを構築し、大規模地震を想定したBCP訓練や安否確認訓練を実施しています。合わせて、地域・行政と一体となった訓練を実施して、課題発見と対応力の強化を図っています。

事故・故障

生産設備における火災・爆発・漏洩、設備・機械の損傷・故障の発生や、船舶・鉄道事故等による原燃料調達の遅延により、生産活動に重大な支障を生じた場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。また、負傷者等人的被害、環境・近隣地域への影響が生じる可能性があります。

 

生産活動の中断による悪影響を最小限に抑えるために、日常的及び定期的な設備保全を実施しています。加えて、災害対策に関する規程を策定し、グループ会社と一体となって防災に取り組んでいます。
 

感染症パンデミック

当社グループにおいては、新型コロナウイルス等の重大な感染症が拡大した場合、業務の一部又は全部が停止する事態が生じ、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

従業員・顧客等の安全を確保し、当社の事業活動への影響を最小限に抑えるため、感染症危機管理基準に則り、感染症危機対策本部(本部長:社長)を設置し情報共有と対策を検討します。なお、感染症は、感染力・毒性の強弱により影響度・リスク度が変化するため、危機レベルに応じた適切な対応を実施していきます。

 

カントリーリスク

当社グループの製品は、日本、米国、アジア、欧州等に販売されており、各国の経済状況及び市場・業界の構造変化が、当社グループの製品販売に大きな影響を与える可能性があります。加えて、テロ・戦争その他要因による社会的混乱やその長期化等のリスクが発生した場合は、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

当社グループは経済環境の変動に強く、持続的に成長する強靭な事業体質に転換すべく、生産性の向上や高品質を目指しながら、コスト削減を推進しています。加えて、顧客動向、当該国・エリアにおける政治的・社会的状況、事業環境を常に注視して適切な対応を取っていきます。

 

 

 

 

リスクの項目

リスクの内容

リスクに対する対応策

情報セキュリティリスク

サイバー攻撃やシステム設備・機器の故障等により、当社グループが利用するシステムで障害が発生した場合、生産、販売、研究開発、調達、会計等、ITに依存するビジネスプロセスが停止し、当社グループの事業継続に重大な影響が生じる可能性が存在します。また、研究開発等を通じて得た新技術やノウハウ、情報等が、外部に漏洩した場合、社会的信頼の失墜を招くとともに、研究開発等に投下したコストが回収できない可能性があり、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

当社では、基幹システムのサーバーをセキュリティの高いデータセンターに設置し、運用しています。加えて、定期的にデータのバックアップを取得し、万が一の時のリスク分散を行っています。また、グループ内で推進体制整備、教育等を実施し、機密情報や個人情報の管理の徹底を図り、情報セキュリティの保護強化に努めています。さらに、サイバー攻撃による電子データの漏えいやITシステムの停止等の不具合が生じるリスクの低減に向け、サイバーセキュリティに係る専担組織を中心に、サイバー攻撃の早期検知・早期対処、IT導入・改変時のリスクアセスメント、従事者教育など、平時・有事のサイバーセキュリティ管理体制の強化に取り組んでいます。
 

脱炭素社会への対応リスク

当社グループは、石炭火力発電所を有し、資源・エネルギーを大量に使用して様々な事業を営んでいます。今後環境に関する規制の強化や環境保護の新たな社会的責任を要求される事態が発生する場合、また、カーボンプライス等が導入された場合、これに対応する設備・研究開発への投資や既存事業の再評価を行うことにより当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。また、ESGなどの非財務情報に係る風評等が当社グループの資金調達に大きな影響を及ぼす可能性が存在します。

中期経営計画2025において「地球温暖化防止への貢献」を重点課題の一つとし、「2050年度カーボンニュートラル達成」を目標としました。その達成のために原燃料の脱炭素化、環境貢献製品の開発・実装及び水素やアンモニア等の次世代エネルギーの技術開発の加速、事業化を目指します。また、徳山製造所内のプロセス改善に取り組むとともに、国内外のバイオマス燃料の開発・利活用を推進し、GHG排出量(Scope1、2)は2030年度に2019年度比30%削減の実現を目指します。加えて、サステナビリティ委員会内に当リスク対応のタスクフォースを立上げ、世界情勢・動向をウォッチし、経営への提言を行っています。

 

市場リスク

市場ニーズの変化、マーケティングの失敗・不足、新規競合の出現、開発の失敗・陳腐化、急速な技術革新への対応遅れ、海外展開の遅れ等により当社グループの製品の競争力が失われた場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

当社グループの製品に係る市場調査は継続的に実施するとともに、顧客との情報交換及び関係強化を図り、市場変動のリスクに対応できる事業計画の立案と精査を進めていきます。

人的資源に対するリスク

日本国内においては少子高齢化が進み労働力人口が減少すると見込まれることから、将来的に生産活動に必要な人材の確保が困難になる可能性が存在します。その場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。加えて、先端材料の研究開発に係る人材、DXやサイバーセキュリティ対策を推進する人材の確保が困難になる可能性があり、その場合、当社の考える成長戦略を達成することが困難となり、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

計画的な定期採用に加え、高度専門職を確保する仕組みとしてジョブ型雇用制度なども導入し、積極的な経験者採用を実施しています。また、DXを推進して省人化・省力化を進め、得られた人員余力を事業ポートフォリオ転換の要員として仕向けてまいります。さらに、仕事と育児の両立支援制度をはじめとするワークライフバランスの支援制度を充実させ、働きやすさと働きがいを追求し、必要な人材の確保に努めていきます。

 

 

リスクの項目

リスクの内容

リスクに対する対応策

財務リスク

当社グループは、金融機関からの借入や社債発行により事業運営に必要な資金を調達しています。金融環境の変化や外部格付の状況により、借入や社債発行が適時に適切な期間で実施できない場合、当社グループの資金調達に大きな影響を及ぼす可能性が存在します。また、金利等の市場環境の変化により、資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。加えて、当社グループは、外貨建ての製品輸出及び原燃料等の輸入を行っており、為替相場の変動が当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。また、連結財務諸表の作成において海外連結子会社の財務諸表の円換算額に影響を及ぼす可能性が存在します。

 

金利等の市場環境の変化に備え、原則、固定金利での契約もしくは金利スワップによる固定化等のヘッジ取引によりリスクを軽減する措置を講じています。また、不測の事態に備えて流動性資金確保のためコミットメントラインの設定を必要に応じて実施するとともに、ESGの観点に配慮したサステナブルな事業運営に努めています。為替変動に対しては外貨建て資産と負債の均衡化による為替エクスポージャー管理や為替予約等のヘッジ取引によりリスクを軽減する措置を講じています。
 

製造上のリスク

当社の生産設備は導入後、相当期間が経過したものも多く、設備の老朽化により長期間にわたり生産設備が停止した場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

日常的なメンテナンスに加えて、定期的なメンテナンスを行い、生産設備が安全・安定稼働出来るよう努めています。

事業リスク

当社グループは、生産に必要な原燃料を全世界から調達しており、一部の製品においては調達先が限られる特殊な原料、資材等を使用しています。市況の高騰や資源ナショナリズム等による原燃料等の供給の逼迫、納期の遅延等が発生する場合、当社グループの生産活動に大きな支障をきたす可能性が存在し、また、製造コストが急激に上昇する場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。加えて、当社グループが展開する各事業においては、競合他社が全世界に存在します。安価な競合品が市場に流入したり、あるいは予期せぬ事情により競合他社との間で価格競争が発生し、その期間が長期化した場合、当社グループの収益性を低下させ、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。
 

当社グループは、顧客に対して安定的かつ継続的に製品供給を果たすため、品質、価格等の競争優位性の維持が重要と考えています。このため、原燃料の調達においては、中長期契約及びスポット市場での購入等を組み合わせて、長期的、安定的、かつ安価な調達を可能にするよう取り組んでいます。併せて、複数調達先の確保や、代替原料・資材調達の検討を進めています。

重大な製品・品質リスク

想定外の事情により、当社製品の無償回収等に発展する品質問題や製品の安全性に関連する製造物責任(PL)問題が発生した場合、また、輸出時の化学品安全性管理上の不備があった場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性があります。

 

製品特性に応じた適正な品質を確保できるよう、品質管理の強化・化学品管理・製品安全の強化に全力をあげて取り組んでいます。また、製造物責任賠償保険に加入し、万一の事故に備えています。

 

 

リスクの項目

リスクの内容

リスクに対する対応策

重大な環境リスク

当社グループは、原料調達から製品の製造、流通、販売、廃棄、リサイクルの各過程において、環境事故や取り扱いの不備による有害汚染物質流出、土壌地下水汚染、地域住民からの騒音・臭気等クレーム、廃棄物の不法投棄・違法処理といった環境や生物多様性に対して負の影響を与えるリスクを有しています。
また、水源の枯渇といった水リスクの発生により、生産量の減少など操業に影響を及ぼす可能性があります。それら、重大な環境事故や事象等が発生した場合は、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性があります。

 

環境事故や汚染の防止のため、法規制に則った管理に加え、自主規制値による管理、定期的なモニタリング、機器校正などを行っています。また、水資源の維持のため新たに淡水使用量の目標を設定、水使用量及び水質の管理、生物多様性を守るための活動を行うなど環境保全に全力をあげて取り組んでいます。サプライチェーンに対しても、社会的責任を果たし持続可能な調達を実現するためにCSR調達ガイドラインを制定・公表するとともにサプライヤーとのエンゲージメントに取り組んでいます。

ビジネスと人権

当社グループは、事業活動を通じて様々なステークホルダーの人権に負の影響を引き起こし又は助長する可能性があること、当社グループの事業・製品・サービスが人権への負の影響と直接関連する可能性があることを認識しています。当社グループでは、生産に必要不可欠な原燃料を全世界から調達しており、生産した製品は世界各国に販売しています。これらのサプライチェーンにおいて、人権侵害に直接あるいは間接的に関係があるとみなされた場合、取引停止、不買運動、事業縮小・撤退、企業価値毀損につながる恐れがあります。その場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性があります。

当社グループは、人権尊重をあらゆる事業活動の基本に据え、企業としての人権尊重責任を果たすため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「トクヤマグループ人権方針」を2022年12月1日に制定し、全従業員にて遵守しています。人権対応等の組織横断的な取り組みについては、サステナビリティ委員会が中心となって推進しています。特に、人権に負の影響が発生しやすいとされるサプライチェーンにおいては、CSR調達に関するガイドラインを制定・公表し、取引先への遵守を求めるとともに、セルフアセスメントシートを用いたエンゲージメントを行うなど、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを進めています。
 

法務・コンプライアンス上のリスク

当社グループは、国内及び海外事業に関して、法的な紛争・訴訟の対象となる可能性が存在します。また、大規模な訴訟等が提起された場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。また、当社グループの従業員、役員にコンプライアンス上の違反が判明した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、課徴金の支払い等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

特許紛争・契約紛争・訴訟等に対しては、法務グループや知的財産部を中心に日常的な予防措置を講じています。加えて、コンプライアンスリスクを低減するため、新任のグループ会社取締役及び監査役に対する法的責務研修を実施しているほか、従業員を対象にした独占禁止法、下請法他の各種コンプライアンス研修を実施しています。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要な施策の一つとして位置付けております。継続的な安定配当を基本としつつ、健全な財務体質の維持と、将来に向けた株主価値向上ならびに経営環境の変化に対応するために必要な内部留保を確保した上で、利益還元を継続的に行うことを基本方針としております。こうした方針の下、次期配当は、業績の動向、中長期事業計画、資本コスト等を総合的に勘案して、単年度の業績の影響を受けにくいDOE(株主資本配当率)3%を目標として、配当性向30%以上を目指してまいります。

当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、期末配当は株主総会、中間配当は取締役会です。なお、中間配当については、会社法第454条第5項の規定に基づき、取締役会の決議を以って行うことができる旨を定款に定めています。

当期の期末配当につきましては、上記の方針適用に先立ち、更なる株主価値向上に向けて、1株当たり45円を実施することを決定致しました。これにより、年間配当は、2023年12月に実施した1株当たり35円の中間配当と合わせ、前期比10円増配の80円となり、当期の配当性向は32.4%となります。次期の配当については、年間配当は、前期比20円増配の1株当たり100円(うち中間配当50円)を予定しております。

基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりです。

 

決議年月日

種類

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年10月27日

取締役会決議

普通株式

2,522

35.00

2024年6月25日

定時株主総会決議

普通株式

3,242

45.00