2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業展開上、事業の状況、経理の状況等に変動を与え、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 当社のリスクマネジメント体制

当社グループの事業活動において特に重要なリスクであると認識しているコンプライアンス、保安防災及び環境保全に係るリスクについては、代表取締役の直轄組織である「コンプライアンス室」がその統括部門として、当社及び子会社を横断的に管理する体制としております。

情報セキュリティ、知的財産、海外事業展開および契約などに関わる個別リスクについては、それぞれの担当部門において、社内規程の制定、マニュアルの作成ならびに教育研修の実施などを行うとともに、事前審査や決裁制度を通じて当該リスクを管理する体制としております。また、コンプライアンス室を事務局とするリスクマネジメント検討会を定期的に開催し、当グループにおける主要なリスクの把握とその対策状況についての検討などを行い、グループ全体におけるリスク管理体制の強化を推進しております。海外子会社については、当該会社を管理する事業ユニットと連携し、リスクマネジメント体制を構築しております。各海外子会社を対象に、年一回、リスクの特定、影響度合いと発生確率に応じたリスクの分析・評価、リスク対応策の検討という一連のプロセスでリスクアセスメントを実施し、その結果を踏まえてBCP(事業継続計画)を策定しております。コンプライアンス室では、これらのリスクアセスメントおよびBCPに対して指導・助言を行うことにより、全社的なグローバルリスクを管理しております。

また、事業活動への影響が大きいと想定されるリスクが発生した場合には、「危機管理規程」に基づき、直ちに危機管理委員会を社内に設置し、発生したリスクに対し迅速かつ適切に対処する体制を整えております。

 

 


 

 

(2) 事業等のリスク

項目

リスク内容

当社グループの対策

海外事業リスク

当社グループは、成長戦略の一環としてM&Aによる海外事業展開を行い、米国やアジア圏を中心に海外進出を強化しております。

しかしながら、事業を進めるうえで言語、法制、税制等の日本との相違や政治的、社会的および経済安全保障上のリスクにより事業が停滞することで、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

進出国ならびに域内の政治・経済・社会的状況、及び顧客・取引先その他のステークホルダーに関する情報を調査収集し、グループ内で共有を図っております。また、グローバルリスクマネジメント活動として、「安全保障輸出管理規程」や「安全保障取引管理基準」を定め、グループ内で輸出管理等の指導・助言を行っております。

また、KYC(コンプライアンスツール)導入により取引先・エンドユーザーのチェック体制を強化するなど、海外M&Aで得たノウハウや知見を活かしながら、グループ横断的な、リスク管理体制を構築しております。

制度変更リスク

急速に少子高齢化が進む日本では、政府が健康寿命の延伸を目的とした「全世代型社会保障の構築」の方針を掲げ、高騰する医療費の抑制・適正化を図るための医療制度改革が継続して進められております。そのため、メディカルプロダクツ事業においては、将来、大規模な診療報酬や薬価の改定が行われた場合、当社グループの業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

メディカルプロダクツ事業においては、今後も医療費の適正化政策が継続することが予測される環境下で、医療機関や医療従事者における業務効率化・働き方改革への支援を目的とした製品・サービスの開発・拡充を推進し、変化する市場ニーズへの対応を図っております。

 

 

 

項目

リスク内容

当社グループの対策

自然災害リスク

発生の予測が困難であり頻発化している自然災害(地震、津波、台風、豪雨、豪雪、強風、噴火など)の発生及び、それに伴う停電・断水などのライフラインの途絶や配送ルートの寸断が発生した場合には、生産能力の低下や停止、供給・配送の遅れや停止に伴う売上減少、対処費用や復旧費用、将来への予防対策費用など、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

アグリ&フーズ事業では、自然災害により主要原料である野菜の収量が大きく変動し、加工工場の操業に支障が発生する可能性があります。

当社グループでは、自然災害への対応として、インダストリアルガス事業では、高効率小型液化酸素・窒素製造装置「VSU」と貯蔵・物流拠点の分散配置によって国内による産業・医療用ガスの安定供給インフラネットワークの整備しております。大規模自然災害を想定した防災訓練の定期的な実施や災害備蓄品の充実化を図り、リスクの最小化を図っております。
エネルギー事業の主要事業エリアである北海道では、LPガス受入基地、LPガス充填工場、灯油基地において、LPガス仕様の移動電源車を配備し、停電時にも非常用電源が確保できる体制を整えております。
アグリ&フーズ事業では、栽培・調達する野菜の産地分散化に取り組んでおります。

品質リスク

当社グループは、法的規制あるいは顧客との取り決めにより品質を保証した製品・商品・サービスを多岐にわたる業種において提供しております。このうち特に人命に関わる事業を行うメディカルプロダクツ事業では、医療用ガスや医療機器を薬機法に則り製造・輸入販売しておりますが、リコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、対策費用、賠償金などが発生し、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

アグリ&フーズ事業では冷凍食品やハム・デリカ、飲料、スイーツなど、海水事業では塩・海苔・ふりかけなどの食品を食品安全基本法・食品衛生法・食品表示法などに則り製造・販売しております。重大な品質事故などの問題が発生した場合には消費者の信用を失うとともに、対策費用、賠償金などが発生する可能性があります。

機能材料事業のひとつとして電磁鋼板用途やヒータ用途などに使用される酸化マグネシウムは、サプライチェーンの川上に位置し、また販売地域は約40ヵ国に渡ることから、製品に重大な欠陥があった場合の影響は広範に及ぶ可能性があります。

その他の事業におけるグローバル・エンジニアリング分野では、ロータリー式のUPS(無停電電源装置)を主要製品とする高出力UPS事業を行っております。当該事業はエンドユーザーであるデータセンターや半導体メーカー等のBCP(事業継続計画)において重要な役割を担っており、製品の欠陥・不具合等により顧客に大きな損害を与えた場合、対策費用、賠償金などが発生する可能性があります。

当社グループでは、中期経営計画において、重要な経営課題の一つとして品質コンプライアンスの強化を掲げており、グループ共通の指標として品質コンプライアンスガイドラインを制定し、定期的に品質リスク調査と品質コンプライアンス監査を実施することでリスクの最小化を図っております。

当社及び国内の連結子会社を適用範囲とする包括賠償責任保険を付保し、製商品の品質問題に起因する賠償責任リスクに備えております。

 

 

 

項目

リスク内容

当社グループの対策

調達リスク

インダストリアルガス事業の主力製品である酸素・窒素・アルゴンの製造には、大量の電力を使用しております。電力コストが大幅に上昇し、販売価格に転嫁できない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、希少な天然資源であるヘリウムガスなどは地政学的要因により、水素ガス、炭酸ガス及びドライアイスは石油精製会社等で副生・供給される原料ガスの稼働状況影響での減量により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

エネルギー事業の主力商品であるLPガス、灯油の仕入価格は、概ね原油価格に連動しております。原油価格が想定より大幅に下落した場合、在庫リスクが当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

アグリ&フーズ事業では、野菜や豚肉を主原料とした加工食品を製造・販売しており、これら原材料の価格は天候不順や市場における需給の変化により影響を受ける可能性があります。

その他の事業では、日本のFIT制度において、海外バイオマス発電燃料のサプライヤーに対する安定供給や事業の持続可能性の確認が厳格化される動きがあり、基準を満たす燃料の需給が逼迫し、燃料価格が高騰するリスクがあります。また、バイオマス発電の燃料の大半は海外に依存しており、為替の影響や地政学的リスクにより、価格が上昇するリスクがあります。

当社グループでは、顧客の理解を得ながら、適時適切に販売価格の改定を図り、収益確保に努めております。

また、安定した原料調達及び製品供給のため、国内での貯蔵量増加、代替ソースの確保、代替燃料の投入準備、新規調達ルート開拓などの検討を進めております。

事故リスク

物流事業では、トラックやローリーといった大型車両を用い、一般貨物及び高圧ガスを始めとする危険物の輸送業務を行っております。そのため重大な事故が発生した場合には、損害賠償や車両の使用停止や事業所の営業停止などの行政処分を受け、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの物流事業では、運輸事業者として安全最優先の方針のもと、適切な安全管理体制の構築を図るために、安全管理規程、および交通安全管理規程を厳格に定め、運行管理の徹底、安全教育の実施など、日々安全対策活動に取り組んでおります。

為替リスク

当社グループは、海外事業を成長の柱として位置づけており、M&Aや会社設立を通して日本国外に多くの子会社を有しております。また、ヘリウムガスや半導体向け特殊ガスは、海外からの調達品であります。特に、外貨建てでの輸出入を行う国内子会社及びグローバル・エンジニアリング事業における高出力UPS事業を行う在外子会社では、原材料の仕入れや製品販売、ヘリウムなど海外調達品において、急激な為替レートの変動が起きた場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、為替予約、仕入ルートの多様化複数化、在外子会社での取引通貨の一本化などにより為替リスクの最小化を図っております。

 

 

項目

リスク内容

当社グループの対策

環境リスク

当社グループは国内外の事業活動において、環境関連法規の規制を受けておりますが、環境関連法規の制定や改正によって規制強化が図られた場合、それに伴う事業活動の制限や対応にかかるコスト増加等が当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に、製造工程で大量に電力を使用しているインダストリアルガス事業では、炭素税の賦課や排出権取引制度などの温室効果ガス排出規制が強化された場合、業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、中期経営計画や環境基本方針において、気候変動への対応を重要な経営課題として位置付け、重要評価指標(KPI)として温室効果ガス総排出量の削減目標を定めております。

当社グループではその目標達成に向けて、高効率プラントの導入・更新や徹底した省エネ活動などを行い、温室効果ガス総排出量の削減に取り組んでおります。

感染症リスク

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、現在において収束傾向が見られますが、この先の状況は依然として不透明であることから、新たな感染拡大が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態、キャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事業全般にわたるコスト削減に取り組むとともに、引き続き、グループ全従業員の健康・安全衛生に最大限配慮しつつ、産業・医療用ガスをはじめとした諸製品の安定供給責任を果たすため、時差出勤や新常態としての在宅勤務などのテレワークの実施や徹底した感染拡大防止策や安全配慮策を講じております。また、経済活動の停滞が長期化した局面に備えて十分な財務の安定性を維持するため、M&A投資及び設備投資については、事業環境の変化を慎重に見極めながら厳選していきます。

情報セキュリティ

リスク

当社グループは事業活動を行う中で、顧客の個人情報や他社等の機密情報を入手することがあります。また、当社グループ内で開発した技術情報を含む営業秘密を保持しております。これらの情報はサイバー攻撃などにより外部流出する可能性があります。また、生産設備、管理システムなどへ不正アクセスを受けた場合、情報の破壊や改竄、漏洩につながる可能性があります。これらの事象が発生した場合、顧客からの信用失墜や被害を受けた方への損害賠償、事業停止等が発生し、当社グループの業績に影響がでる可能性があります。

当社グループでは「仕組みによる対策」と「体制・教育による対策」の両面から対策を講じております。

「仕組みによる対策」では、情報端末、サーバー、ネットワーク等に対し、情報セキュリティシステムの強化を行い、外部からのアクセス制限・攻撃検知、マルウェアの侵入検知などの対策を行っております。

「体制・教育による対策」では、世間動向を踏まえつつ、グループ規程の整備、eラーニングや標的型メール訓練などの教育研修による一人ひとりのセキュリティリテラシーの底上げ、グループ各社へのセキュリティ担当の設置による迅速なセキュリティ課題への対応などの対策を行っております。

非金融資産の

減損リスク

当社グループは、有形固定資産、のれん及び無形資産など、多くの非金融資産を保有しております。非金融資産(棚卸資産及び繰延税金資産等を除く)については、当該資産又は資金生成単位(以下、「当該資産」という。)の減損の兆候の有無を判定し、減損の兆候がある場合には、当該資産の回収可能価額を見積り、減損テストを実施しております。なお、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については、減損の兆候の有無に関わらず、毎期減損テストを実施しております。減損損失が発生した場合には、当社グループの事業展開、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、定期的に実施するのれんや無形資産の減損テストを通じて評価額を把握し、適切に処理しております。

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、継続的な企業価値の向上を図るべく経営基盤の強化を進めていくと同時に、株主の皆様への利益還元を経営の最重要課題の一つとして位置付けております。

このため、剰余金の配当につきましては、中長期的な成長のための戦略的投資等に必要な内部留保の充実に留意しつつ、親会社の所有者に帰属する当期利益の30%を配当性向の目標として、将来にわたって業績に見合った安定的な配当を行うことを基本方針としております。

また、内部留保金につきましては、成長性並びに収益性の高い事業分野における設備投資、研究開発投資及び事業買収投資等に活用いたします。

当社は、会社法第459条に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行う旨を定款で定めており、毎年9月30日及び3月31日を基準日とした年2回の配当を行うこととしております。

上記の基本方針に基づき、当事業年度の期末配当金は、1株当たり34円としました。この結果、年間配当金は中間配当30 円をあわせて、1株当たり64円、連結での配当性向は32.9%となりました。

なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月9日

取締役会決議

6,871

30

2024年5月9日

取締役会決議

7,788

34