2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループを取り巻くリスクは一層多様化・複雑化しておりますが、当社グループでは、事業を取り巻くさまざまなリスクを認識・評価し、適切にリスクを統制しております。

 当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクは、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項及び記載したリスクは、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、記載は将来発生し得るすべてを、必ずしも網羅したものではありません。

 

①経済変動に係るリスク

当社グループは、基礎化学品からスペシャリティケミカルに渡る多種多様な製品を扱い、グローバルかつ幅広い用途に事業を展開しています。そのため、当社グループの製品及び商品が販売されている国又は地域の経済状況が大幅に変化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、最終用途が自動車、電子部品である製品を多く取り扱っており、これら業界の生産動向に大きな変化が生じた場合にも、同様の影響を与える可能性があります。

リスク対策:当社グループを取り巻く経済状況や業界動向の変化を把握するために常に情報収集を行い、変化に応じた生産、在庫調整等により、これらの影響の低減を図っております。

 

②国内外の事業継続に係るリスク

当社グループの国内外における事業展開エリアでの経済成長鈍化、政情不安、労働問題、インフラ障害、テロ・戦争勃発による社会的混乱、予期しない法的規制、異常気象、天候不順等による自然災害、感染症等が発生した場合、当社グループの財政状況、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、大規模な災害・事故、地政学リスクの顕在化・発生・拡大等に起因して、生産・販売・研究開発の停止・制限により事業活動の継続に重大な影響が発生した場合、当社グループの財政状況、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:国内外における拠点での情報収集と共有を行い、当社グループが直面するリスクを洗い出し、優先的に対処すべきリスクに対しては戦略の立案、見直しを行っております。

また、万が一の災害発生に備え、設備の保全強化、被害拡大防止のための防災訓練の実施、BCP復旧計画の策定と実行性を高めるための見直しを年一回実施し、気候変動リスクを含む大災害等の緊急時においても事業活動への影響を最小限にとどめるよう備えています。

 

③為替レートの変動に係るリスク

当社グループは、製品の一部を海外に輸出し、原材料の一部を海外から輸入しております。そのため、為替レートに大幅な変動があった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:為替変動の影響を最小限に抑えるため、一部取引については将来の為替レートを事前に固定することで、リスクを軽減しております。

 

④原材料調達及び価格変動に係るリスク

当社グループが使用する原材料においては、地政学的リスク、環境問題等の発生により、サプライヤーが生産停止・操業停止した場合、需給のタイト化による調達リスク、相場上昇による仕入価格変動リスク等を抱えております。この場合、需給タイト化、納入遅延、仕入価格上昇等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:複数購買化を推進し、新規サプライヤーの探索と評価体制を構築することで、調達リスクと仕入価格変動リスクを低減しております。

 

 

⑤在庫に係るリスク

当社グループは、顧客の需要予測をもとに適正在庫を保有しながら販売を行っている製品や商品があります。しかしながら、実際の受注が需要予測を下回った場合には、大量の在庫を抱える可能性があり、在庫の削減が進まなければ廃棄処分や評価損が発生する可能性があります。また、棚卸資産の再調達価格(原材料)又は正味売却価額(仕掛品、製品、仕入品)の下落に起因して、多額の棚卸資産評価損を計上する可能性があります。この場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:適正な在庫量を保つため、顧客の需要動向と景気動向から生産量と購買量をマネジメントしています。また、定期的に在庫量と在庫回転数を管理評価し、適正在庫量を見直すと共に、収益性の低下による簿価切下げについて懸念のある一部原料については、原材料価格が製品価格に連動する価格決定フォーミュラを導入しております。なお、長期滞留の恐れのある棚卸資産については、調達先や調達方法・調達時期を見直して、リードタイムの短縮を図っております。

 

⑥固定資産の減損に係るリスク

当社グループは、さまざまな有形固定資産及び無形固定資産を有しております。事業環境の急激な変化に伴う生産設備の遊休化や稼動率の低下等により、保有資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:設備投資の計画段階から、将来の収益計画や投資額の回収見込みを意識して取り組み、重要な生産設備の新設、改造及び処分については、取締役会の承認を経て、減損リスクの極小化に努めています。投資判断についてはハードルレート(WACC)を設定しており、年一回資本コストと合わせて見直しを実施しております。また、大型投資案件については投資後の回収状況をチェックする体制を整えております。

 

⑦法的規制等に係るリスク

当社グループは、化学品の製造及び販売を主たる事業としており、それに関連した各種の法的規制を受けております。これらの法的規制の大幅な変更等があった場合は、生産活動に支障をきたし、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:化学品の法的規制の動向に関し、複数の情報源から最新情報を入手して適切に対応しております。

 

⑧研究開発に係るリスク

当社グループでは、既存製品の改良や新規製品の開発を積極的に行っております。これらの研究開発には、多くの人的、財務的資源及び長い期間を必要とします。しかし、開発期間中の市場環境の変化や技術の進歩等により、開発テーマの中止・変更を余儀なくされる場合があり、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:研究開発テーマの選択及びその後の管理の徹底、他企業や大学・研究機関との連携やアウトソーシング等による研究開発の迅速化を図っています。

また、顧客との面談、やり取り等を通じて顧客の最新状況を確認しており、研究テーマ戦略については、半年毎の審議会にて審査、軌道修正が行われております。研究開発に係る技術の知的財産化によりリスク低減に努めています。

 

⑨知的財産に係るリスク

当社グループは、研究開発や製品製造において独自の技術を有しており、その保護のため、知的財産権の取得を積極的に行っており、第三者の知的財産の尊重にも努めております。当社グループの知的財産が第三者により侵害を受けた場合、また第三者から知的財産権の侵害を訴えられた場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:知的財産権保護のための体制を整え、第三者の知的財産権を侵害しないよう、先行する技術の調査を行っております。また、社員教育を通して知的財産に対する意識の向上を推進しております。これらに加え、各案件において秘密保持契約書等を締結することで当社開発品の秘密情報を保護しております。

 

 

⑩情報セキュリティーに係るリスク

当社グループでは、サイバー攻撃や不正アクセス等により、情報の流出やネットワーク障害等の問題が発生した場合、競争力の低下、事業活動の停滞及び信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:当社グループで使用する情報システムに、様々なセキュリティを施すことで、防衛策を強化しております。

 

⑪気候変動に係るリスク

気候変動1.5℃シナリオにおいては、政府の環境規制強化にともなう炭素税導入や、再生可能エネルギー需要の増加による価格上昇等費用の増加、世界規模での地球温暖化対策が講じられることによる資源調達費用の増加が想定されます。

また、気候変動4℃シナリオにおいては、異常気象による自然災害の発生に伴う事業活動の停止やサプライチェーンの断絶が大きなリスクとなります。自然災害は、発生の予測が難しく、一度発生すれば、当社の製造拠点が被災し、化学物質の漏洩等甚大な被害をもたらす可能性があります。設備損傷や化学物質漏洩による操業停止等を回避するためには、災害対策に関する設備投資が必要となり、投資による製造コスト上昇も想定されます。

GHGの削減が計画通り行われない場合、炭素税や排出権などのコスト負担が増え、さらに顧客や社会からの評判が落ちて事業存続が難しくなる可能性もあり、これら想定されるリスクの発生により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:気候変動リスクに係る大災害に対応できるよう、専門の委員会を設置することで、BCP(事業継続計画)体制を構築し、緊急時においても事業活動への影響を最小限にとどめるよう備えています。また、GHGの排出量を算定・把握し、削減計画を立てて削減に取り組んでおります。

 

⑫コンプライアンスに係るリスク

当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、国内外における法令や企業倫理等の社会的規範に抵触し、刑事罰、行政処分、損害賠償責任等の法的責任の追及や、社会的制裁を受ける懸念があります。この様な事象が発生した場合、当社に対する信頼やブランド価値の低下により当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:社内でのコンプライアンス教育を徹底し、全社員が法令遵守の重要性を理解するよう推進しており、定期的に内部監査を実施しコンプライアンス状況をチェックする体制を整えております。また、有識者からのアドバイス等を活用し、関係する法令への対応とその進捗管理を行う体制を整えております。

海外各拠点においては、現地の法令や規制の変更を適宜調査し、最新の情報の把握と情報共有を推進しております。必要に応じて現地のビジネスパートナーや法律専門家との協力により、現地の法令や規制に迅速に対応できる体制を整えております。

 

⑬事業基盤に係るリスク

当社グループが事業を継続し、成長するためには、人材確保と経営戦略に連動した人材戦略が必要です。生産労働人口の減少や特定領域における人材ニーズの高まり等により、必要な人材を確保できないといったリスクや社員のエンゲージメント低下による離職の増加といったリスクにより当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの企業活動は、様々なステークホルダーからの理解の下に成り立っており、社会の評価基準の多様化や、当社グループからの情報開示の不足、当社への理解が進まないことにより、企業価値の毀損等が発生した場合、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:多様な人材の確保のために女性活躍推進、キャリア採用推進、外国人採用推進を進めるとともにワークライフバランスを充実させ、健康経営や労働安全衛生を推進し、心理的に安心して働ける職場環境を構築することで離職低下につなげてまいります。

また、決算説明会、IR・SR面談等により、株主、機関投資家との積極的なコミュニケーションを図り、企業の経営理念や長期的なビジョンを共有し、理解を深めてもらうよう努めております。統合報告書、ホームページ、外部評価機関等を通して財務・非財務情報の積極的な開示も積極的に行っております。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主重視の基本方針の下、安定的かつ継続して配当を行うことを経営上重要な施策の一つとして位置付けており、将来に向けての成長を目指した投資等に必要な内部留保資金を確保しつつ、配当を高める経営努力を続けております。

 当期の期末配当金は、先に行いました中間配当金46円と同額の1株につき46円を予定しております。これにより、当期の年間配当金は、前期実績から22円増配の1株当たり92円を予定しております。

 また、今後、2027年3月期までの中期経営計画期間の配当につきましては、総還元性向40%又はDOE2%のいずれか高い方を配当の基準といたします。これにより、次期の年間配当につきましては、当期の年間配当金より14円増額の1株当たり106円(中間配当金53円、期末配当金53円)とさせていただく予定であります。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は、以下の通りであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年11月12日

406

46

取締役会決議

2025年6月26日

401

46

定時株主総会決議(予定)