2026年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

当社グループの事業等において、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、これらは当年度末における事業等に関するリスクのうち代表的なものであり、実際に起こり得るリスクはこの限りではありません。また、本文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 当社グループのリスク管理体制

当社グループ全般のリスク管理のため、リスク管理担当役員を任命するとともに、リスク管理統括部署として統合リスク管理部を設置しています。

統合リスク管理部は、リスク管理の枠組みの構築・整備、リスクの特定・評価・モニタリング及び管理態勢全般の整備等を実施しています。

リスク管理担当役員を委員長とする統合リスク管理会議を年2回開催し、リスク管理PDCAサイクルの評価やリスク対応策の審議等を行い、その結果を取締役会に報告しています。

 

(2) 当社グループのリスク管理方法

① リスクの設定

当社グループの業務遂行上発生しうるリスクを16項目に分類し、さらにリスク分類ごとにリスク項目を設定します。リスク項目は、定期的にリスクの主管部署が評価し、リスク項目・重要度・影響度の見直しを行っています。16のリスク分類のうち、年度ごとに、主に事業活動に関連するものを「リスク管理に関する重点テーマ」として統合リスク管理会議で選定しています。2027年3月期のリスク管理に関する重点テーマは下記のとおりです。

・情報セキュリティ管理態勢の高度化

・多様な働き方に適応した労働環境の質の向上

・継続的なコンプライアンスの順守

・品質リスクに対する適切なマネジメントの継続

・プロジェクトリスクに対するマネジメントの徹底

・サプライチェーンリスクへの適切な備え

・災害・パンデミックへの適切な備え

 

② リスクの対策

リスク項目ごとに、リスク主管部署がリスク低減策を検討し実施します。リスク低減策はリスク管理統括部署に連携し、必要に応じて統合リスク管理会議で審議します。

 

③ モニタリング

リスク低減策の実施状況はリスク管理統括部署に連携し、定期的に統合リスク管理会議に報告し評価します。必要に応じて統合リスク管理会議で追加のリスク低減策の策定・実施を指示します。

 

 

(3) 重要と認識するリスク

当社グループでは、以下の16のリスクを「重要と認識するリスク」と定めています。

このうち、①から⑦は「(2) 当社グループのリスク管理方法 ① リスクの設定」に記載する「リスク管理に関する重点テーマ」に選定しています。

 

① 情報セキュリティに関するリスク

DX化が益々加速する一方で、AIの領域で特に注目されている生成AIもさらなる進化を遂げています。こうした技術の発展により、IT利用者の裾野が広がり利便性が増す一方で、サイバー攻撃等の外部からの不正アクセスやランサムウエアによる情報漏洩等の脅威が増大し、情報セキュリティ管理が社会全般に厳しく問われるようになっています。特に情報サービス産業は、顧客の機密情報を扱う機会が多く、より高度な情報セキュリティ管理や社員教育の徹底が求められます。

マイナンバーを含む個人情報の管理においてはプライバシーマークの付与認定(個人情報保護マネジメントシステムの適合性認定)を受け、また、一部の事業について情報セキュリティマネジメントシステムの認証を取得し、機密情報の適切な管理を行っています。常に高度なセキュリティレベルを維持するため、システムによる入退館の管理や、パソコン・サーバー及びクラウドサービス利用時のセキュリティ管理の徹底、個人情報保護に関する研修の実施等を行っています。特に、顧客の基幹システムの運用を行うデータセンターでは、X線検査装置による持込持出チェックなど、厳重な入退館管理システムを採用しています。さらに、事業活動のグローバル化に伴う海外子会社の増加に対して、情報セキュリティ関連規程の確認やアセスメントの実施など、当社グループ全体の統制強化に努めています。

このような取組みにもかかわらず、情報漏洩等の被害が発生した場合には、顧客等からの損害賠償請求や当社グループの信用失墜等により、業績が影響を受ける可能性があります。

 

② 労務管理に関するリスク

当社グループは、長時間労働や健康管理に関わる諸課題を労務管理に関するリスクと捉えています。労務管理に関する問題が発生し、適切な対応がなされない場合、企業の信頼性の低下や職場環境の悪化をはじめとする社会的・経済的問題に発展するリスクが考えられます。そのため、当社グループでは、労務管理に関する問題の発生を防止するための取組みを行い、モニタリングから適切な対処の実行までを迅速に行う仕組みを構築することの重要性を強く認識しています。健康管理については、全ての社員が心身共に健康に労働できるよう、既に管理体制を強化し、各種施策を実施しています。今後は、既に取得済みのホワイト500認定の維持・ランク向上を目指すとともに、禁煙の促進、女性の健康増進施策の推進や、精神科における外部専門機関との連携等、現在実施している各施策を深化させ、健康リスクの更なる低減に努めます。

長時間労働のリスクについては、今後さらに改善していくべき重要課題と認識しています。これに対しては、定期的なモニタリングにより兆候を早期に把握できる体制が既に構築されています。兆候を確認した際には、特定の従業員に負荷が偏らないよう、速やかに業務調整や増員を行い、長時間労働の発生を未然に防止します。また、産業医との連携のもと、健康面・メンタル面へのケアを同時並行で進めることで、総合的なフォローを行っています。さらにAI活用などにより業務効率化を進め、より生産性の高い組織づくりを継続的に進めていきます。

このような取組みにもかかわらず、労務管理に関するリスクが生じた場合には、人材流出や労働生産性・信用の低下により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

③ コンプライアンスに関するリスク

a. 法令・規制について

当社グループは、事業活動を行う上で、国内外の法令及び規制の適用を受けています。法令違反等のコンプライアンスリスク抑止のために、「NRIグループ企業行動原則」によって会社の行動原則を示すとともに「NRIグループビジネス行動基準」によって社員の行動指針を明らかにしています。さらに、年度毎にこれらの原則や指針から重要な事項をまとめた「RULEBOOK 役職員が守るべき重要なルール」を作成して社員に周知するとともに遵守状況をモニタリングしています。また、リスク探知の仕組みとして社内外に内部通報窓口を設置し、社員からの法令違反等又はその恐れのある事象について通報を可能とする仕組み等を整備しています。

しかしながら、法令違反等が発生した場合、また新たな法規制が追加された場合には、当社グループの事業及び業績が影響を受ける可能性や、当社グループの信用を失う可能性があります。

b. 知的財産権について

情報システム、ソフトウエア、AIに関する知的財産権の重要性が増しています。このような環境認識の下、当社グループは、情報システムの開発等に当たっては第三者の知的財産権を侵害する可能性がないかを調査するとともに、教育研修等を通じて知的財産権に対する社員の意識向上に努めています。一方、知的財産は重要な経営資源であり、契約対応や産業財産権取得によって当社グループの知的財産権の保護にも努めています。

このような取組みにもかかわらず、当社グループの製品やサービスが第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求を受ける可能性があるほか、情報システムの使用差止請求を受けサービスを停止せざるを得なくなるなど、業務遂行に支障を来す可能性があります。また、第三者により当社グループの知的財産権が侵害される可能性があります。

c. 人権について

近年、ビジネスにおいては、世界的にサプライチェーンを含む人権課題への対応が不可欠となっています。

当社グループでは、「NRIグループ人権方針」を策定するとともに、重要なサプライチェーンを含む人権デューデリジェンスを推進し、負の影響の低減に取り組んでいます。また、当社グループの事業においてAIによる研究、開発、利活用を進める場合、人権に配慮した取組みが必要なことから、「NRIグループAI基本方針」を策定し、人権リスクを低減するガバナンス体制の整備を進めています。

しかしながら、人権デューデリジェンスで特定された人権課題への取組みや、AIの利活用等において適切な対応が取られない場合、訴訟等の発生や、当社グループの社会的評価及び事業継続に影響を与える可能性があります。

 

④ システム運用に関するリスク

当社グループが開発する情報システムは、顧客の業務の重要な基盤となることが多く、完成後の安定稼働が重要であると考えています。特に金融サービス業のシステムについては、当社グループの顧客のみでなく金融市場全体の信頼性に関わる場合もあり、その重要性を強く認識しています。

当社グループは、運用面での品質の向上に注力しており、ISO(国際標準化機構)27001に準拠した情報セキュリティマネジメントシステム及びISO20000に準拠したITサービスマネジメントシステムにより、運用サービスの品質の維持及び向上に継続的に努めています。また、金融サービス業のシステムについては重点的に管理状況等の点検を行うほか、万一障害が発生した場合の対応整備を進めています。

データセンターについては、経済・社会に不可欠なインフラであり、その重要性を強く認識しています。一層の安全確保に向けて運営体制を整備し、その運営の評価・検証を定期的に行っています。

また、顧客の業務プロセスを受託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスをはじめとしたアウトソーシング業務については、誤入力や誤送付などのオペレーショナルリスクが内在することを認識しており、より一層の管理体制の整備を進めています。

しかしながら、運用上の作業手順が遵守されないなどの人的ミスや機器・設備の故障、電力等のインフラの障害等により、顧客と合意した水準での安定稼働が実現できなかった場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があるほか、当社グループの信用を失う可能性があります。

 

⑤ プロジェクト監理に関するリスク

情報システムの開発は、原則として請負契約であり、納期までに情報システムを完成させ納品するという完成責任を負っていますが、顧客要請の高度化・複雑化や完成までの諸要件の変更等により、作業工数が当初の見積り以上に増加し、納期に遅延することがあります。また、引渡し後であっても性能改善を行うなど、契約完遂のため想定以上に作業が発生することがあります。特に複数年にわたる長期プロジェクトは、環境の変化や技術の変化に応じた諸要件の変更等が発生する可能性が高くなります。また、情報システムは重要な社会インフラであり、完成後の安定稼働に向け、開発段階からの品質管理、リスク管理が重要であると考えています。特に金融サービス業のシステムについては、当社グループの顧客のみでなく金融市場全体の信頼性に関わる場合もあり、その重要性を強く認識しています。

当社グループは、教育研修等を通じプロジェクトマネージャーの管理能力の向上に努め、また、ISO9001に準拠した品質マネジメントシステムの整備をはじめ、グループ各社のリスクに応じた品質マネジメントシステムを整備するなど、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えています。特に一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼働まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図っています。

しかしながら、作業工数の増加や納品後の性能改善等による追加費用が発生した場合には、最終的な採算が悪化する可能性があります。また、納期遅延やシステム障害等により顧客の業務に支障を来した場合には、損害賠償請求を受ける可能性があるほか、当社グループの信用を失う可能性があります。

 

⑥ サプライチェーンに関するリスク

当社グループは、生産能力の拡大や生産性の向上及び外部企業の持つノウハウ活用等のため、外部企業に業務委託していますが、これらの多くは請負契約の下で行われています。

a. 良好な取引関係について

当年度において、生産実績に占める外注実績の割合は約5割であり、当社グループが事業を円滑に行うためには、優良なパートナー会社の確保と良好な取引関係の維持が必要不可欠になります。

当社グループは、定期的にパートナー会社の評価を実施するほか、国内外を問わずパートナー会社の新規開拓を行うなど、優良なパートナー会社の安定的な確保に努めています。また、特に専門性の高い業務ノウハウ等を持つパートナー会社である「eパートナー契約/fパートナー契約」締結先企業とのプロジェクト・リスクの共有や、パートナー会社に対するセキュリティ及び情報管理の徹底の要請など、パートナー会社も含めた生産性向上及び品質向上活動に努めています。

パートナー会社は、海外にも広がっており、役職員が海外のパートナー会社を定期的に訪問し、プロジェクトの状況確認を行うなど、協力体制の強化に努めています。

このような取組みにもかかわらず、優良なパートナー会社の確保や良好な取引関係の維持が実現できない場合には、事業を円滑に行うことができなくなる可能性があります。特に、海外のパートナー会社への委託については、日本とは異なる政治的、経済的、社会的要因により、予期せぬ事態が発生する可能性があります。

b. 請負業務について

請負契約の下で行われる業務委託に当たっては、労働関係法令に則った適切な対応が求められます。

当社グループは、請負業務に関するガイドラインを策定し全社的な問題意識の共有化・定着化を図り、また、パートナー会社を対象とした説明会を開催するなど、適正な業務委託の徹底に努めています。

このような取組みにもかかわらず、請負業務の趣旨から逸脱して業務が遂行され、偽装請負問題などが発生した場合には、当社グループの信用を失う可能性があります。

c. 価格転嫁について

当社グループでは、パートナー会社との公正な取引関係の維持と健全な価格転嫁の実現を重視しており、政府の「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策」に基づき、「パートナーシップ構築宣言」を行い、適切に価格転嫁が行われるよう努めています。これにより、取引先との持続可能な関係構築とともに、サプライチェーン全体での健全な取引環境の確保を図っています。

これらの取組みが不十分であった場合には、優越的地位の濫用などに該当するおそれがあり、当社グループの社会的信用の低下や、監督官庁からの指導・勧告等を受ける可能性があります。

 

⑦ 災害・パンデミックに関するリスク

事業活動のグローバル化やネットワーク化の進展に伴い、災害やシステム障害など万一の事態に想定される被害規模は大きくなってきており、危機管理体制の一層の強化が求められています。

当社グループは、大地震・台風・水害・富士山噴火などの大規模な自然災害、感染症、大規模障害、サイバー攻撃、事業や業務遂行に関わる事件・事故が発生した場合に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業継続に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。当社グループが入居する主要オフィスは、事業を継続する上で高度防災機能を有しており、特に、東京本社、横浜総合センター及び大阪総合センターは、国内最高水準の高度防災機能を有しています。また、当社グループが保有するデータセンターはセキュリティ対策や耐震等の災害対策においても国内最高の水準にあり、関東地区と関西地区のデータセンターを連携した相互バックアップや機能分散など、広域災害への対策を整備しています。データセンター内にある当社グループの情報資産についてバックアップ体制の更なる強化を図るとともに、顧客から預かる情報資産については顧客と合意した水準に基づいて対策を進めています。

しかしながら、一企業のコントロールを超える特別な事情や状況が発生し、業務の中断が不可避となった場合には、顧客と合意した水準でのサービス提供が困難となり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

⑧ 競争環境に関するリスク

a. 競合他社との競争激化について

当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用サービスまで一貫して提供できる総合力に加え、AIの実装力やセキュリティに関する知見・対応力を強みとして、さらなる事業成長を追求し、V2030で定めた経営ビジョンの実現を目指しています。

しかしながら、コンサルティング事業者によるシステム開発領域への業容拡大や、システム開発事業者によるコンサルティング領域への業容拡大など、情報サービス産業のビジネスモデルは引き続き変化しています。競合他社がM&A等の資本政策を含む投資により企業規模やサービス提供領域を拡大する動きも顕著です。これにより従来当社グループが有していた競争優位性が相対的に低下し、案件受注競争の激化や価格競争の進行に伴って、当社グループの収益機会が減少する可能性があります。

また、AI活用の普及に伴い、競合他社がAI領域を強化することで当社グループの差別化が相対的に困難となり、当社グループの強みが市場で埋没するリスクがあります。

当社グループは競争力の維持・強化に努めていますが、事業環境の変化に機動的に対応できない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

b. 急速な技術革新について

情報サービス産業においては、情報技術の進化とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応することが求められています。特にAIの進化は急速であり、顧客の投資判断、業務プロセス、システム開発・運用の在り方等に与える影響も大きいものと認識しています。このような環境認識の下、当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。

しかしながら、広範な領域において技術革新が急速に進展し、その対応が遅れた場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

c. 予期せぬ顧客からの契約解除、顧客内シェアの低下について

当社グループは、付加価値のあるコンサルティングサービス、ITソリューションサービスを顧客に提供しています。

しかしながら、自然災害や市場環境の急速な悪化等、顧客の予期せぬ特殊事情による契約解除やプロジェクト中断・延期が発生し、当社グループの事業計画に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 地政学に関するリスク

当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、テロや紛争をはじめとする国際情勢の悪化は、従業員等の安全を脅かすとともに、事業活動に支障をきたす可能性があります。また、経済安全保障を巡る懸念の高まりや、それに伴う各国・地域の政策変更及び規制強化は、事業活動の制約要因となり、結果として当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。

こうした地政学リスクの高まりに伴う不確実な情勢下においても機動的な対応を可能にするため、当社グループは、事業を展開する国や地域の政治・経済情勢等の動向を定期的にモニタリングしています。現地の潜在的なリスクや事業環境の変化を常に注視することで、従業員の安全確保と事業への影響の最小化に努めています。

しかしながら、各種の対応策を講じても、地政学リスクを完全に回避または予測することは困難であり、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 規制に関するリスク

当社グループは、国内外において事業活動を行っており、事業展開する国・地域における各種規制・法令の適用、行政当局の政策の影響を受けます。これらの規制・政策は当社グループの関与が困難な事情により、短期間で新設・改正・解釈変更等が行われる可能性があり、当社グループの想定どおりに事業を遂行できない、又は事業活動が制限される等の影響が生じる場合があります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

昨今においては、経済安全保障に関する法令・ガイドラインの整備・厳格化や、米国の輸出管理規制をはじめとする各国の輸出管理・制裁措置等の強化が進んでおり、当社グループにはこれらの遵守が求められています。当社グループは、規制・政策動向が事業に与える影響の重要性が高まっていることを踏まえ、国内外の法令・政策・ガイドライン等に関する情報収集、動向把握及び影響分析を継続的に強化します。加えて、関係省庁等との情報交換を含む連携を強化し、必要な社内体制・運用の整備を通じて、適時適切な対応を行い、安定的な事業運営の確保に努めます。

しかしながら、当社グループがこれらの規制への対応に遅れた場合、行政上の処分や取引制限等に加え、社会的信用の低下を招き、事業戦略やビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性があります。

 

⑪ 人材に関するリスク

当社グループは、社員個々人の高い専門性こそが、高付加価値サービスを顧客に提供するための土台であると考えています。専門性を備えた人材を確保・育成し、十分に能力を発揮できる人事制度や労務環境を整備することが、当社グループが中長期的に成長するために必要であると認識しています。

一方で、近年、労働人口の減少を背景にした人材不足に加え、AI活用ニーズの高まりやサイバー攻撃の複雑化により、特にAI・セキュリティ分野の専門人材の確保において、人材獲得競争が一層激化しています。専門人材の確保が難化する中で、人的資本拡充を重視し、この採用と育成、定着に一層力を入れて取り組むことで、当社グループの更なる発展を実現していきます。

人材の確保・定着については、人材獲得の競争力を高め、リテンションに繋げるべく、処遇の引き上げや、企業業績・成果と処遇の連動強化を実施するとともに、充実したワークインライフを目指し、働き方や価値観の多様化に対応した人事制度の構築及び労務環境の整備に力を入れています。特にAI・セキュリティ分野で高い専門性を有する人材については、市場価値に応じた処遇の適用等の施策により採用を強化していきます。

人材の育成については、各種資格の取得を支援する制度を設けているほか、教育研修の専用施設やオンラインで、AIやセキュリティなど成長領域のアップスキリングをはじめとした多くの人材開発講座を開催しています。また、当社グループ独自の社内認定資格を用意するなど社員の自己研鑽を促しています。加えて、AI活用によるナレッジの形式知化、学びのプラットフォーム提供など、最新テクノロジーも活用した新しい育成手法の確立にも積極的に取り組んでいきます。

専門性を備えた人材に加え、当社グループを牽引する次世代リーダーの育成も、グループとしての成長には不可欠であると捉えています。次世代リーダー人材の層形成とポテンシャルや経験の可視化を行うことで、長期で一貫した育成・機会付与が行える仕組みの整備を行っていきます。

このような取組みにもかかわらず、顧客の高度な要請に的確に応え得る人材の確保・育成が想定どおり進まなかった場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

⑫ 財務に関するリスク

当社グループは、事業活動継続及び中長期的な成長投資に向けた資金を安定的に確保するため、適切な資金調達及びグループ一体となった資金管理に努めています。また、グローバルな事業展開進展に伴い、外貨建て取引や海外グループ会社の財務諸表の円換算における為替変動リスクを認識しています。資金調達及び資金管理については、金融市場動向を定期的にモニタリングし、調達手段の多様化や銀行借入枠の契約締結等により、資金流動性確保と調達コスト抑制を図っています。また、グループ全体の資金動向を可視化するグローバル資金管理システムを活用し、余剰資金の有効活用及び財務統制強化を図っています。為替変動リスクについては、為替予約等のヘッジ取引を活用するほか、通貨別の資産・負債バランスを意識した管理を行い、リスク低減を図っています。

しかしながら、金融市場の急激な混乱や金利の大幅な上昇により資金調達環境が悪化した場合、各国・地域の法規制や特殊事情によりグループ間での機動的な資金移動が制限された場合、または想定を超える為替相場の変動が生じた場合には、資金調達コスト増加、資金効率低下、または為替差損発生等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑬ 事業開発・投資に関するリスク

a.企業への投資について

当社グループは、将来の事業機会を見据え、各事業会社に出資しているほか、事業上の関係強化を図るため、取引先等に対して投資採算性等を考慮に入れつつ出資しています。また、グローバルの事業基盤拡大に向けM&Aや提携を進めています。

これらの実施に当たっては、対象となる企業の財務内容や事業について詳細な事前審査を行い、意思決定のために必要かつ十分な情報収集と検討を行った上で決定しています。

しかしながら、出資やM&A、提携などの実施後に当社グループが認識していない問題が明らかになった場合や、期待した成果を上げられなかった場合には、のれんの減損処理を行う必要が生じるなど、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

b. ソフトウエア投資について

当社グループは、顧客への製品販売、共同利用型サービス及びアウトソーシングサービス等の事業展開を図るため、自社によるソフトウエア投資を行っています。多くの場合、ソフトウエアは特定用途別に設計するため、転用しにくい性質を持っており、投資に当たっては慎重な検討が求められます。

当社グループは、事業計画の妥当性を十分に検討した上でソフトウエアの開発に着手しています。また、開発途中及び完成後であっても、事業計画の進捗状況の定期的なチェックを行い必要に応じて速やかに事業計画を修正する社内体制を整えています。

しかしながら、投資の回収可能性は必ずしも保証されているわけではなく、資金回収ができずに損失を計上する可能性があります。

 

⑭ 自然資本に関するリスク

a. 気候関連について

気候変動に関する将来動向は不確実性が高いものの、その影響が顕在化しつつあり、企業に対する脱炭素に向けた要請は高まっています。

当社グループは、「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」に沿った情報開示に加え、2050年度の環境目標「NRIグループの温室効果ガス排出量(Scope1+2+3)ネットゼロ」を掲げ、様々な取組みを進めています。当社グループにおいては、電力消費量の多いデータセンターにおける対策が特に重要と認識し、当年度末時点で当社グループが国内に保有する全てのデータセンターが国内最高水準の環境性能を有するほか、ISO14001に準拠した環境マネジメントシステムを導入、また、使用する電力は全て再生可能エネルギー化しています。さらにScope3の排出量削減に向け、開発パートナーの環境目標策定を支援するなど、サプライチェーン全体で削減を進めています。

しかしながら、目標とする再生可能エネルギーへの転換やScope3の排出量削減への取組みが遅延した場合、あるいは気候変動に対する社会からの要請が急速に進展しその対応が遅れた場合、気候変動の物理的リスクや移行リスクの顕在化により、対応コストの増加や、顧客離れによる売上減が発生し、当社グループの社会的評価に影響を与える可能性があります。

b. 気候関連以外について

「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の採択や、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言」など、自然資本に対する取組みが加速し、企業への要請も高まっています。

当社グループは「NRIグループ生物多様性方針」を策定し、TNFDのフレームワークを用いて、依存・影響の把握、自然関連のリスク・機会の特定を行っています。

しかしながら、自然資本に関する課題に適切に対応できなかった場合や対応が遅れた場合、物理的リスクや移行リスクの顕在化により、対応コストの増加や、顧客離れによる売上減が発生し、当社グループの社会的評価に影響を与える可能性があります。

 

⑮ 情報開示に関するリスク

当社グループは、法令及び東京証券取引所の規則で定められた情報ならびに当社グループを正しく理解するため有用な情報を、株主や投資家をはじめとしたステークホルダーに対し迅速、正確かつ公平に開示することを重要な経営課題として認識しています。会計基準及び関係諸法令に準拠した適正なディスクロージャーを実現するため、経理業務に関する規程の制定をはじめとした財務報告に対する内部統制を整備・運用しています。特に重要な決算に関連する情報は、経理財務担当役員を委員長とする情報開示会議を開催し、有用な情報開示が行われる重層的な体制を構築しており、これらの内部統制の整備・運用状況については独立した監査部門が監査を実施しています。

しかしながら、内部統制の構築にあたり想定していなかった事象の発生、社内外のコミュニケーションの不備やサイバー攻撃等のリスクにより、重要な会社情報が適時または正確に把握することが困難となり、情報開示に遅延、誤謬や虚偽表示が発生する可能性があります。このような事態が生じた場合、法令・取引所規則への抵触、ステークホルダーからの信頼低下やブランドイメージの毀損により、当社グループの企業価値に影響を与える可能性があります。

 

⑯ 株主に関するリスク

当年度末において、野村ホールディングス㈱が当社の議決権を23.1%保有(間接保有2.9%を含む。)しています。野村ホールディングス㈱による議決権行使が、当社の他の株主の利益と必ずしも一致しない可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

(1) 剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、企業価値の継続的な向上が最も重要な株主還元と考えています。剰余金の配当については、中長期的な事業発展のための内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続することを基本とし、連結配当性向(※)40%を目安に、事業収益及びキャッシュ・フローの状況等を勘案して決定します。

内部留保資金については、既存事業の強化や新規事業展開のための設備投資及び研究開発投資、並びに人材育成投資、M&Aなどの戦略的投資など、今後の事業展開に向けて活用していきます。また、資本効率の向上、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の一環として自己の株式の取得に充当することがあります。

当社は、会社法第459条に基づき、9月30日及び3月31日を基準日として、取締役会の決議により剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めています。

 

※ 連結配当性向 = 年間配当金総額(NRIグループ社員持株会専用信託に対する配当金を含む。)

÷親会社の所有者に帰属する当期利益

 

(2) 剰余金の配当の状況

当年度末(2026年3月31日)を基準日とする配当金は、上記方針及びのれん等の減損損失計上が直接的にキャッシュ・フローへ与える影響はなく、国内事業は好調であることを踏まえ、2025年11月に実施済みの配当金(基準日は2025年9月30日)から7円増額し、1株当たり42円としました。これにより、年間の配当金は、2025年11月に実施済みの配当金と合わせ、1株当たり77円となりました。

 

基準日が当年度に属する剰余金の配当は次のとおりです。

取締役会決議日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり

配当額(円)

基準日

2025年10月30日

20,104

35

2025年9月30日

2026年 5月12日

24,124

42

2026年3月31日

(注) 配当金の総額は、NRIグループ社員持株会専用信託に対する配当金支払額(2025年10月決議分38百万円)を含んでいます。2026年5月決議分はありません。