2024年4月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

AI/DX事業 AI Security事業
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
AI/DX事業 2,213 45.6 677 46.2 30.6
AI Security事業 2,640 54.4 789 53.8 29.9

事業内容

3【事業の内容】

当社は「驚きを心に」をコンセプトとして、人々の生活が便利に楽しくなるように、AIを活用したサービスをBtoCおよびBtoB領域で展開しております。第16期は、各領域におけるオーガニックでの成長を目指した取り組みに加え、2024年5月に新規SaaS「HEROZ ASK」を正式リリースし、またグループ全体では、第15期にグループ会社化したバリオセキュア株式会社(以下、「バリオセキュア」という。)及び株式会社ストラテジット(以下、「ストラテジット」という。)との連携強化・シナジー増大に取り組んだほか、AI・SaaS関連領域でさらに事業拡大・成長を成し遂げるべく、2023年11月に株式会社エーアイスクエア(以下、「エーアイスクエア」という。)を、2024年3月には株式会社ティファナ・ドットコム(以下、「ティファナ・ドットコム」という。)を新たにグループ会社化しました。

AI市場においては、OpenAI社による「ChatGPT」のリリースに端を発した、各産業におけるAIトランスフォーメーション(以下、「AIX」という。)に関する投資の加速が続いており、まさに現在進行形で、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAIの技術競争・需要拡大・社会実装が急激なスピードで進んでおります。なお、当社グループでは、AIXとは、AIを社会に浸透させることにより、その力を通じて既存の業務プロセスやビジネスモデル等を含めて社会全体に抜本的な変革を起こすこと、ととらえております。

また、SaaS市場においても、導入の需要のみならず、「ニーズの多様化に伴うSaaS間連携」「統合管理の複雑化によるセキュリティ要件の高度化」等に関する需要拡大が見込まれるほか、セキュリティ市場においても、サイバーセキュリティ攻撃による脅威が年々増加しており、近年ではランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃被害が国内外の様々な企業や医療機関等で続き、国民生活や社会経済に影響が出る事例も発生しています。2023年3月には「Emotet(エモテット)」の活動再開が確認され、国民の誰もがサイバー攻撃の懸念に直面しており、セキュリティ対策は必然となっております。

このように、国内外においてより急激に技術革新やAIXを含むIT関連投資が進む中で、当社グループは、改めてこの時代に求められる「AI革命」とは何かを再定義し、新たにHEROZ3.0としてグループ戦略「AI BPaaS」を掲げました。これは、単なるSaaSツール提供会社にとどまらず、生成AI等を駆使し大幅に自動化されたWorkというかたちで価値提供を行い、社会全体にAIXを起こしていくことを目指しており、AIが人間の仕事を奪うのではなく、AIを活用したWorkの提供により、人がより本質的な意思決定や自己実現等に注力できるようにする、人とAIが当たり前のように協創していく社会を実現するものであります。

 

図:当社が考えるAI革命とは

 

 

図:当社が将棋界で起こしたAI革命

 

図:HEROZ3.0のグループ戦略「AI BPaaS」

 

 

 具体的な事業内容としましては、「AI/DX事業」「AI Security事業」の各セグメントにおいて、各企業・業界の

AIX推進やグループシナジーの強化に努めているほか、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含む

AI・SaaS・セキュリティ関連分野において積極的に研究開発を進め、グループ全体の事業拡大を目指しておりま

す。その取り組みの一環として、2024年5月に、当社で生成AIを用いたAIアシスタントSaaS「HEROZ ASK」を、ス

トラテジットでSaaS連携プラットフォーム「JOINT iPaaS for SaaS」を正式リリースいたしました。これらのSaaS

のほかにも、エーアイスクエアにおける「QuickSummary2.0」やティファナ・ドットコムにおける「AIさくらさ

ん」シリーズ等、グループ全体で様々なSaaS・プロダクトを展開しており、HEROZ3.0である「AI BPaaS」を推進す

るドライビングフォースとして、今後も機能拡充・強化や新製品の研究・開発等に取り組んでいきたいと考えてお

ります。

 

図: 当社グループの事業セグメント

 

図:当社グループの事業全体像

 

 

 

(1)AI/DX事業

AI/DX事業は、当社グループに蓄積されたAI・SaaS関連技術・ノウハウ・データ等を活用し、AI関連ソリューションの提供やSaaS導入支援・SaaS間連携開発等を提供することにより各企業・業界のAI/DX化推進を目指すセグメントとなります。当セグメントは、「BtoCサービス」と「BtoBサービス」に分類されます。

 

① BtoCサービス

BtoCサービスは、主に当社の将棋アプリ「将棋ウォーズ」を個人ユーザに提供するサービスとなります。

当社のAI技術は、将棋のような頭脳ゲームAIの開発過程で蓄積されました。具体的には、ビッグデータと呼ばれる、従来のデータ処理技術では処理することが困難であると考えられる膨大なデータ群から、機械学習等の技術に基づいて重要な示唆を導き出す技法になります。例えば、将棋AIの開発においては、過去のプロ棋士の棋譜を活用した機械学習の導入以降、評価関数と呼ばれる局面の優劣を判断する関数の精度が大幅に向上し、コンピューター将棋の棋力の向上が見られました。

 

 

図:将棋AI開発について

 

上図のとおり、機械学習導入以前の将棋AI開発においては、エンジニアによる手作業、つまり最善と考えられる指し手を規定するためのプログラムを一行ずつ記述することによって、AIを開発することが一般的でした。しかしながら、手作業によるプログラミングでは将棋AIの棋力向上には限界がありました。そこで、より精度が高い将棋AIを高効率に開発するために機械学習が導入されることになりました。機械学習を用いることにより、コンピューターが過去のプロ棋士の棋譜データを自ら反復学習し、パラメーター調整等を自動で行いながら、手作業では記述しきれない精緻なプログラムを構築することが可能となりました。その結果、当社エンジニアが開発した将棋AIが2013年に現役プロ棋士に勝利するなど、AIが日進月歩で進化していることが示されております。また、2015年10月には、情報処理学会から「コンピューター将棋プロジェクトの終了宣言」が出されております。

 

図:将棋AI分野での機械学習の適用とその進歩

 

現在は、このような手法に加えて、深層学習(ディープラーニング)(注1)や強化学習(注2)といった手法を実施しながら、日々AIの精度を向上させております。

当社ではこのAIを活用したアプリケーションを、主に、Google Inc.が運営するGoogle PlayやApple Inc.が提供するApp Store等世界標準のプラットフォーム(注3)を通じてBtoCサービスとして展開しており、主な収益はそれらの有料課金収入となります。またアプリケーションの運営効率化のためにもAIを活用しております。現在提供しているアプリケーションの特徴としては、当社の戦略的な重点分野であるAIの活用に加えて、リアルタイムオンライン対戦技術を活用したサービスとしていることが挙げられます。当社では、同時対戦型アプリケーションの豊富な開発経験をもとに、高品質なリアルタイムオンライン対戦をユーザに提供することが可能となっております。主力アプリケーションである将棋ウォーズは、会員数600万人以上を誇る世界最大のスマートフォン将棋ゲームアプリ(日本将棋連盟公認)で、現代特有のAIとグラフィックや音楽により、ユーザは新しい将棋の世界観の中で全世界のプレイヤーとオンライン同時対戦が可能です。本アプリにおいては、ユニークな課金を行っております。これは、ユーザがオンライン対戦しているときに、アプリ内で「棋神」と呼ばれる、当社エンジニアが開発したAIが、ユーザに代わって指し手を進めてくれる機能であり、5手160円でユーザに販売されております。また、終局後にはAIが算出する評価関数に基づいてプレイ中の分析結果を振り返ることもでき、棋力向上に役立てることができます。日本将棋連盟公認の免状・認定状(六段~5級)申請も可能となっており、将棋の全国大会の予選において使われることもあるほか、民放キー局のAIをテーマにしたテレビドラマで使用される等、各種メディアとの連携を強化しています。なお、将棋ウォーズは2024年4月期に通算対局数が9億局を突破するなど、利用拡大が続いているほか、将棋人口最大化の達成に寄与すべく、藤井聡太竜王・名人の八冠達成を受けたキャンペーンにも力を入れております。

また、BtoCサービスにおいては、2022年5月より、当社の将棋AIを活用したプロ仕様の将棋AI研究をサポートするプラットフォーム「棋神アナリティクス」の提供を開始し、2022年12月には同サービスのライト版もリリースいたしました。「棋神アナリティクス」は、ブラウザで手軽に最新の将棋AI解析が出来るサービスであり、高額な初期投資をせずに、誰でも簡単に操作できるUI/UX環境を用意したところに特徴があります。そして、2024年春には、将棋の第82期名人戦七番勝負に関して、毎日新聞社が運営するユーチューブチャンネル「囲碁将棋チャンネル 毎日新聞」での将棋対局中継に、棋神アナリティクスが活用されました。歴史も深く、将棋界の最高峰ともいえる名人戦において、局面の評価値・解析において棋神アナリティクスが用いられ、ライブ配信を通じて「観る将」を含む多くの将棋ファンにお楽しみいただきました。現状、棋神アナリティクスは主にプロ棋士・アマチュア強豪を対象にサービス提供を拡大しておりますが、将来的に将棋人口の最大化に寄与できるよう、より多くの将棋ファンに利用されるサービスとなるべくサービス充実に努めてまいります。

そのほか、2023年10月には、将棋初段昇段を目指すeラーニングサービス「棋神ラーニング」をリリースいたしました。「棋神ラーニング」は、将棋初心者~級位者を対象にした、将棋アマ初段昇格を目指すe-ラーニングサービスであり、「将棋ウォーズ」ならではのカリキュラムを、メディアで活躍級の人気棋士の動画解説と共に楽しめる内容となっております。通常、将棋初心者が初段になるまでは数年かかると言われるところを、将棋初心者が1年で初段になれるサービスとして設計しており、楽しく、短期間で確実に強くなれるコンテンツを多数ご用意しております。

 

図:棋神アナリティクスによる棋譜解析画面(実際の名人戦の配信画面とは異なります)

 

 

図:棋神ラーニング

 

 (注)1.深層学習(ディープラーニング)とは、入力に対して出力を決める処理の層を深く(ディープ

に)したニューラルネットワーク(人間の脳機能を模すことで効率の良い学習を施すことができ

る数学モデル)を用いることで、教師データが持つ特徴を手作業ではなくコンピュータープログ

ラムが抽出し、精度向上を目指す機械学習の一手法のことを指します。

 (注)2.強化学習とは、明確な教師データが与えられない環境において、コンピュータープログラムが試

行錯誤によってその価値を最大化するように振る舞う、機械学習の一手法を指します。

 (注)3.プラットフォームとは、ソフトウエアやハードウエアを動作させるために必要な、基盤となるハ

ードウエアやOS、ミドルウエア等のことをいいます。また、それらの組み合わせや設定、環境のことで、Google Inc.が運営するGoogle Play及びApple Inc.が提供するApp Store等が含まれます。

 

② BtoBサービス

BtoBサービスは、HEROZがBtoB向けに提供するAIソリューション関連サービスのほかに、グループ会社である「ストラテジット」「エーアイスクエア」「ティファナ・ドットコム」が展開する各種ビジネスが分類されます。各産業においてAIX・AI革命を巻き起こすべく、個別のソリューション提供とAI SaaSの両軸からビジネスを展開し、成長に向けた取り組みを行っております。

 

(ⅰ)HEROZ

当社は、BtoBサービスとして各産業へ様々なAIソリューションを展開しているほか、2024年5月には生成AIを活用したアシスタントSaaS「HEROZ ASK」も正式リリースし、今後ストック型ビジネスとしての事業成長も目指していきたいと考えております。

当社が提供するBtoB向けのAI関連ソリューションビジネスにおいては、金融、建設、エンターテインメント等の各業界に当社のAI技術を活用してBtoB向けAIを提供しておりますが、精度の高いAIサービスを提供するためには、各業界に蓄積されたデータを継続的に機械学習する必要があります。そのため、当社では積極的にパートナーシップ戦略を実行しております。すなわち、各産業を代表する事業会社と資本を含む提携を実施することで、長期的な視点に立ち、継続的にデータを活用した学習を行うことが可能となっております。

当社では、下記表に掲げた「金融」「建設」「エンターテインメント」を重点領域として設定し、AIシステムの初期設定構築から運用・継続フェーズにおいてAIサービスを提供しております。

 

領域

提供しているAIの内容

金融

株価等の市場予測を行うAIや、ユーザの投資行動を分析し投資パフォーマンス向上に資するフィードバックを行うAI等

建設

物件の構造や類似物件の設計情報等を活用して最適な構造設計を行うAI等

エンターテインメント

機械学習により頭脳ゲームにおいてユーザの対戦相手となるAI、ユーザの行動分析を行いその精度やユーザの継続率を向上させるAI等

 

収益構造については、AIシステムの構築時に、顧客から初期設定フィーを受領し、その後、AIシステムを運用して継続利用する顧客から月次で継続フィーを受領する収益構造を基本としております。すなわち、当社のビジネスモデルはフロー収入となる初期設定フィーに加えて継続フィーを受領しているストック型ビジネスとなります。また、AIの性質上、機械学習を継続するほどその精度が向上することから、顧客にとっては当社のAIサービスを継続使用するインセンティブが働くため、当社は安定した収益基盤を確保することが可能となります。

 

図:当社のAIソリューションの仕組み

 

図:AI SaaSの収益性

 

また、OpenAI社によるChatGPTのリリースを受けた大規模言語モデルに関する機運の高まりを受け、当社のBtoBサービスにおいても、ChatGPTを含む生成AIに関する取り組みを強化しております。その一環として、先述したとおり、2024年5月に生成AIを活用したAIアシスタントサービス「HEROZ ASK」を正式リリースいたしました。

HEROZ ASKは、ChatGPTを活用したエンタープライズ向けSaaSであり、一般的な対話・作文だけでなく、社内に存在する様々なデータの検索・要約・翻訳や、音声の言語化などを通じて日々の業務をリードします。直観的なUIと合わせて、生成AIを自社独自のドキュメント等を用いて使用するための基本的な機能が備わっており、1ユーザ月額900円~とお気軽に生成AIの世界を体験・お試しいただくことが可能となっています。

そのほか、徹底したセキュリティ対策による安心安全な生成AI利用環境の提供や、組織・目的別のユーザ管理機能も備えており、目的に応じたカスタマイズも簡単に設定可能です。また、これまで各種領域・分野における様々なAIソリューション提供の中で培ってきたノウハウ・経験を持つメンバーも携わっており、多種多様な観点からのビジネスソリューション提供力・実践力も活用しつつ開発・運用を行っております。

 

    図:HEROZ ASKの特長

 

HEROZ ASKは、単なる生成AIツールにとどまらず、「AI BPaaS」の基幹となるSaaSとしてAIXを推進するドライビングフォースであると捉えており、今後も、積極的で妥協のない機能拡充や新製品開発に取り組んでまいります。

 

(ⅱ)ストラテジット

ストラテジットは、「戦略(Strategy)」と「IT」を統合し経営改善に貢献するというVisionと、SaaSのチ

カラを全ての企業にというMissionを掲げ、SaaSの活用・価値向上を進めるうえで課題となる穴を埋める存在と

して、SaaS事業者向けシステムの開発や、SaaS連携アプリストアの運営、および、SaaS導入コンサルティング

事業を展開しております。また、2024年5月には、より簡単でシームレスなSaaS間連携の実現と、ストック型ビジネスへの転換を目指し、SaaSベンダー向け連携プラットフォーム「JOINT iPaaS for SaaS」を正式リリースいたしました。

 ストラテジットが提供するSaaS導入支援サービスでは、Oracle社が提供するクラウドERP「NetSuite」等の導入に関して、様々な企業に支援を行っております。ERPとは、「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略で、統合基幹業務システム、基幹システムと言われております。ERPは、企業の「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」などの基幹となる業務を統合し、効率化、情報の一元化を図るためのシステムであり、企業全体の業務を効率化し、敏速に適切な経営判断をくだすために重要な基幹となるシステムです。従前はオンプレミス型ERPの導入が主流でしたが、近年ではクラウド環境で使用できる「クラウドERP」の普及が進んでおり、オンプレミス型よりも短期間かつ低コストで導入でき、メンテナンスが不要であるなどメリットが多く、大企業のみならず中小企業の需要も急速に拡大しております。

 

 

図:SaaS市場の外観と当社グループが考える大きなトレンド

 

また、同様にストラテジットが提供するAPI連携開発サービスに関しては、近年大企業のみならず中小企業においても、急速に、会計・人事だけでなく様々なSaaSプロダクトを活用する状況となっております。一方で、企業においては会計・人事等の各SaaSプロダクトを単独で利用する場合は、各SaaSでのデータ管理が必要となり、重複したデータ登録等が発生し、業務効率の向上が困難となる事象が発生しており、SaaS間のデータ連携が重要になってきております。ストラテジットにおいては、これらのSaaS間のデータ連携において、API(Application Programming Interface)を活用したAPI連携開発サービスを提供しております。APIを活用することで、互いのSaaSのデータ連携を行うことが可能となり、各SaaSプロダクトが保有する機能を拡張させ、双方のSaaSプロダクトを更に便利に利用することが可能となります。

特にストラテジットにおいては、SaaS連携開発に必要なノウハウを結集した開発プラットフォームに関した特許を保有しており、一般的な受託開発に比べ、高品質なシステム連携を低コストで提供し、安定的に運用することが可能となっております。

そして、2024年5月には、SaaSベンダー向けの連携プラットフォーム「JOINT iPaaS for SaaS」(以下、「JOINT」という。)を正式リリースいたしました。複数のSaaSを利用している場合、各種SaaSが連携されていないことによる手作業の発生や業務効率・利用満足度の低下等が起こりやすく、かつ連携を実現するに際しても主に技術的な面でハードルを抱えがちですが、JOINTは、国内外50以上の主要なSaaSとの連携を実装してきた実績を活かし、各種SaaSの連携開発・管理・運用までを、効率的に、簡単に対応できるプラットフォームとなっております。JOINTの活用により、「①連携アプリの構築」「②アプリストアの構築」「③アプリ提供後の管理の標準化」等を簡単に実現可能となっているほか、ChatGPTなどのLLM外部連携についても、本来数カ月かかる連携アプリ開発を最短1週間で実装できるなど、実装期間の大幅な削減が可能となっております。

SaaS市場は今後も拡大を続けると見込まれており、生成AI等も急激に広まっていく中で、各種SaaS間のシー

ムレスな連携は今後も重要なニーズ・トレンドとなるものと想定しております。今後、JOINTの拡販・機能拡充・新製品の開発等を通じて、ストック型ビジネスとしての更なる事業成長・ARR拡大を目指してまいり

ます。

 

 

図:JOINT iPaaS for SaaS

 

 

(ⅲ)エーアイスクエア

 エーアイスクエアは、「最先端の自然言語処理AIによる業務の高度化の実現」を掲げ、機械学習やディープラーニングを自然言語処理へ応用し、コンタクトセンター領域において、自動応答システムや自動要約・分類システムをはじめとする業務自動化ソリューションを展開しております。同社が展開するコンタクトセンター向けの生成AIを活用したソリューションとして、各種AIツールの提供を行っております。

 また、コンタクトセンター領域における周辺サービスとして、高度なAI開発力やサービス実装のノウハウを活かし、AIモデルの作成や、業務の高度化に向けたコンサルティング等のサービスも展開しております。

コンタクトセンター領域、その中でも特にコールセンター領域においては、今後も市場規模は引き続き成長す

ることが想定されている一方で、継続的な採用の難しさと高い離職率により慢性的な人手不足が大きな課題と

なっています。

 

 

図:コンタクトセンターが抱える課題

 

 昨今、ChatGPTをはじめとする生成AIの進化は著しいものがありますが、コールセンター白書の調査におい

ても、現時点においてはコールセンターでの生成AIの活用は依然として非常に低い状況となっております。

 

図:生成AIのコールセンターでの活用について

 

 コールセンター領域においてはより一層の生成AI活用が進むものと考えられることから、今後、当社とエ

ーアイスクエアにおいては、コールセンター領域へ継続的なソリューションを提供してきたエーアイスクエアの知見を活かしながら、当社が2024年5月に本格的にサービスを開始した「HEROZ ASK」を組み合わせた、コールセンター領域における統合的な生成AI活用に向けたサービスの提供を進めていく予定です。

 

 

図:当社とエーアイスクエアによる統合的な生成AI活用のサービス提供図

 

(ⅳ)ティファナ・ドットコム

 ティファナ・ドットコムは、「WebとAIの力で、世の中を笑顔にしたい」という思いのもと、主に、法人

向けAIを用いてDXソリューションの開発・販売事業を行うAI事業を展開しております。

 具体的には、現在多数の駅や商業施設で導入され、案内・接客対応で活躍中のDXソリューション「AIさく

らさん」シリーズを提供しております。AIさくらさんは、駅や空港などにおいてアバターを通じた接客や受

付として活躍しているほか、社内ヘルプデスクや窓口等でのお客様対応、企業の業務改善、メンタルヘルス

のモニタリング等、企業のニーズに合った様々なシリーズを展開し、各社に適したサービスを通じて顧客の

業務自動化を実現しております。

 

図:AIさくらさん

 

図:AIさくらさんシリーズ(一部)

  

 

 

図:AIさくらさんの導入実績(一部)

      

  JR東日本     横浜相鉄ジョイナス   最高裁判所     羽田エアポートガーデン

 

 LLMを含む先端AI技術が更に社会に浸透・実装されることが推進される一方で、現在の日本のビジネスの現

場では、情報の精度の低さや情報統制の観点からLLMを信頼しきれないという声や、LLMの活用方法のイメー

ジが湧きづらく、難しくとっつきにくい・検索ツールとしての使い方しかできていないという声が上がって

おります。このような状況を踏まえ、LLMのポテンシャルをビジネスの現場でフルに活用していくには、LLM

の情報の精度やセキュリティ面を整備する事はもちろん、業務における活用イメージの解像度を上げる分か

りやすさや、日本の企業に特化した使用感の改善が急務であると考えられます。

 このような環境の中で、ティファナ・ドットコムは、AIさくらさんシリーズの展開を通じて、生成AIを誰

にでもわかりやすく、親しみやすいかたちで社会実装し、人とAIが当たり前のように共存・協創する社会の

実現を目指しております。本報告書提出日現在も、AIさくらさんの利活用に関して多くのお問い合わせ・引

き合いをいただいており、今後も様々なAIさくらさんシリーズの開発・展開を通じて事業拡大に努めるとと

もに、グループ内の各種SaaSとのシナジー創出・増大にも取り組み、AIの社会実装・AIXを推進してまいりま

す。

 

[事業系統図]

AI/DX事業の事業系統図は、以下のとおりです。

 

 

(2)AI Security事業

AI Security事業は、バリオセキュアが提供するインターネットセキュリティ関連の事業となります。同社は、「インターネットを利用する全ての企業が安心で快適にビジネスを遂行できるよう、日本そして世界へ全力でサービスを提供する。」という経営理念のもと、インターネットに関するセキュリティサービスを提供する企業として、インターネットからの攻撃や内部ネットワークへの侵入行為、またウィルスの感染やデータの盗用といった各種の脅威から企業のネットワークを守り、安全にインターネットを利用することができるようにする総合的なネットワークセキュリティサービスを提供しております。

 

(1)事業の特徴

 a.独自のビジネスモデル

 バリオセキュアは、セキュリティサービスで利用する機器の調達、機器にインストールする基幹ソフトウエ

アの開発、機器の設置/設定、機器設置後の監視/運用までをワンストップで行っております。

 エンドユーザは、機器の選定や運用サービスを個別に検討する必要がなく、手間がかからずにサービスを

利用することが可能となります。また、バリオセキュアがワンストップでサービスを提供しているため、問題

が発生した際に原因の究明と対応が行い易く、エンドユーザは、問い合わせやトラブルに対するサポートを迅

速に受けることができます。

 

 b.リカーリングレベニューの構造

 バリオセキュアは、監視/運用サービスを基本に各種セキュリティサービスを月額費用により提供しており

ます。導入企業が増加すれば、年々収益が積み上がる「リカーリングビジネス」と呼ばれるモデルであり、収

益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。2024年2月末で、全国47都道府県に7,796拠点(VSR設

置場所数)のマネージドセキュリティサービスを提供しており、継続的な収益の安定化を実現しております。

バリオセキュアの第9期事業年度の「リカーリングビジネス」であるマネージドセキュリティサービスによる

売上収益の売上収益全体に占める比率は87.4%です。

 

[リカーリングレベニューモデル]

 

 c.ビジネスパートナー(販売代理店)モデル

 バリオセキュアの販売モデルは、販売代理店を介した間接販売及びバリオセキュアによる直接販売に分類で

きますが、間接販売が中心となっております。通信事業者やインターネットサービス事業者、データセンター

事業者など、バリオセキュアのサービスを付帯することでお客様へ付加価値を提供することを期待する販売代

理店と契約しております。これら販売代理店と日本全国をカバーする販売網を構築し、継続的な営業案件の創

出が可能となっております。

 販売代理店は、「相手先ブランド提供パートナー(以下、「OEMパートナー」という。)」及び「再販売

パートナー」に大別されます。「OEMパートナー」とは、販売代理店自らのブランドでセキュリティサービ

スを提供し、顧客(エンドユーザ)と直接、契約を締結するパートナーを指します。「再販売パートナー」

とは、バリオセキュアの代理店として顧客(エンドユーザ)の開拓、営業活動を行い、顧客(エンドユーザ)

との契約主体はバリオセキュアとなるパートナーを指します。

 バリオセキュアでは、さらに営業活動を推進するためにセキュリティの専門家であるバリオセキュアが、販

売代理店の代わりにお客様に対して直接技術面の説明をする営業同行や、サービスの導入から設置までワンス

トップで支援することも実施しております。

 

(2)サービスの概要

 バリオセキュアは、インターネットセキュリティサービス事業の単一セグメントであることから、セグメン

ト別の記載は省略しており、サービス毎に記載しております。バリオセキュアが提供しているサービスは次の

とおりであります。

 

a.マネージドセキュリティサービス

 マネージドセキュリティサービスで提供している商品は、VSRを利用した統合型インターネットセキュリテ

ィサービス、データのバックアップサービス(VDaP)、エンドポイントセキュリティサービス(Vario EDR)

及びVarioマネージドLAN/Wi-Fiサービスの4種類があります。

 

(a)VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービス

 インターネットからの攻撃や内部ネットワークへの侵入行為、またウィルスの感染やデータの盗用とい

った各種の脅威から企業のネットワークを守り、安全にインターネットの利用を行えるようにする総合的

なネットワークセキュリティを提供するものです。

 バリオセキュアの統合型インターネットセキュリティサービスでは、ファイアウォール、IDS(不正侵入

検知システム)、ADS(自動防御システム)などの多様なセキュリティ機能を1台に統合した自社開発のネ

ットワークセキュリティ機器VSRをインターネットとユーザの社内ネットワークとの間に設置し、攻撃や侵

入行為、ウィルスといった脅威を取り除くいわばフィルタとして作動します。VSRは、バリオセキュアデー

タセンターで稼働する独自の運用監視システムにより自動的に管理・監視され、運用情報の統計情報や各

種アラートが人手を介することなくリアルタイムに処理されます。統計情報やアラートはコントロールパ

ネルと呼ぶレポーティング機能により、インターネットを介してユーザ企業の管理者にリアルタイムに提

供されます。また、バリオセキュアでは24時間365日のサポートセンターを構築しており、国内全都道府県

に対応した保守網並びに機器の設定変更等の運用支援体制を構築しております。

 従来は、前述のようなセキュリティシステムを導入するには、各種のセキュリティ機器を購入し、これ

らを自社で導入、メンテナンスする必要がありました。そのためには高度な技術を有する技術者や、高額

な投資を要求されることから多くの企業では十分なネットワークセキュリティ対策を導入することが困難

な状況でした。また、セキュリティシステム導入後も監視やアラートへの迅速な対応、ソフトウエアのア

ップデートなどの運用面での負担は非常に大きい状況でした。

 バリオセキュアのサービスではVSRが1台で多様なセキュリティ機能を提供します。機器の購入は不要で

レンタル機器にてセキュリティシステムを導入することができます。また、セキュリティ機能ごとに月額

費用が設定されており、ユーザ企業は多様なセキュリティ機能の中から必要なオプションを選択すること

ができ、VSRは様々なニーズに対応可能です。ユーザは、契約の開始時点のみ発生する初期費用及び月額費

用を払うだけで、コントロールパネルの利用や設定変更、ソフトウエアのアップデート、監視や出張対応

による現地での保守など、ネットワークセキュリティの運用に際して必要となる殆どの工数をバリオセキ

ュアに委託することができ、業務負担を低減することができます。

 このように、バリオセキュアの統合型インターネットセキュリティサービスは、ネットワークセキュリ

ティの導入から管理、運用・保守までをサービスとしてワンストップで提供し、ユーザから初期費用及び

定額の月額費用を徴収する積み上げ型のビジネスモデルとなっております。

 ユーザは、自社で専門技術を持つIT責任者を設置することが困難な中堅、中小企業がメインです。

2024年2月末で2,865社に導入され、7,796拠点(VSR設置場所数)の日本全国で稼働しております。

 

 

 バリオセキュアのVSRは自社開発品です。自社の技術者やシステムインテグレーター(SIer)(*1)を

通じてセキュリティ機器を導入・運用する企業は、海外の仕様書を見ながら初期設定やカスタマイズを施

し、自社で定期的なソフトウエアのアップデートを行い、トラブル発生の際には海外メーカーに数日間か

けて問い合わせるなど、一般的には多大な労力と時間を必要とします。バリオセキュアは自社開発品を初

期導入から運用・保守までワンストップで提供しているため、迅速な対応が可能となっております。不具

合やトラブルは、顧客(エンドユーザ)からバリオセキュア又は販売代理店への問い合わせのほか、バリ

オセキュアがリモート監視により能動的に検知してサポートを行っております。運用・保守は、バリオセ

キュアのエンジニアが可能な限り、遠隔操作により対処します。ハードウエア等の故障については、業務

委託先の倉庫等全国68か所(2024年2月末)に在庫を配備し、4時間以内の駆け付け目標により機器交換

に迅速に対応しております。

(*1)システムインテグレーター(SIer)とは、情報システムの設計、構築、運用等の業務を顧客より

請け負う情報通信企業を言います。

 

(b)データのバックアップサービス(VDaP)

 一般的に企業の大切なデジタルデータが、インターネットの脅威から隔離され、障害が発生した場合で

もそれまでの事業の継続性を担保することが、企業の大きな課題となっております。

 バリオセキュアのバックアップサービスは、ハードウエアの機器にバックアップデータが保存される

VDaPとデータセンターへの保存を組み合わせたバックアップサービスとなっております。一時的に企業の

デジタルデータをVDaPにバックアップした後に、自動的にデータセンターへもデータを転送することで、

より一層の耐障害性を高めております。バックアップデータの保持は、最新及び過去のデータがバージョ

ン管理されたデータとして保持されております。データの復旧を行う際にも、お客様が利用しやすいイン

ターフェースを提供することで、必要なデジタルデータを簡単に選択して、復旧することができます。

 VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービスの監視/運用サービスにおける経験を活か

し、機器の設置、障害時の対応に関しても、その仕組みを活かすことで効率的に全国をカバーしたサービ

ス提供を実施しております。

 

(c)エンドポイントセキュリティサービス(Vario EDR)

 サイバー攻撃が巧妙になり、従来のウィルス対策ソフトでは検知できないウィルスやマルウェアによる

企業のセキュリティ被害の拡大が懸念されます。

 バリオセキュアのマネージド型EDRサービス「Vario EDR」では、社内やテレワーク利用PCのセキュリテ

ィリスクを検知し安全な業務環境を実現します。EDR(Endpoint Detection & Response)は、ウィルス対策

ソフトが検知できずに侵入したウィルスやマルウェアの行動を監視し、サイバー攻撃の実行を阻止する仕

組みです。サイバー攻撃対策に有効なEDRですが、リスク判定や判断後の対応が難しいことから運用負担が

大きくなる傾向にありますがVario EDRサービスでは、リスクレベルのスコア化と、サイバー攻撃の発見と

対応を支援する仕組みにより、セキュリティ対策を少ない運用負担で実現します。

 

(d)VarioマネージドLAN/Wi-Fiサービス

 企業のDX化に伴い情報システム担当者への業務負担は増加傾向にあります。

 バリオセキュアのVarioマネージドLAN/Wi-Fiサービスでは、オフィスLAN/Wi-Fi環境の管理負担やセキュ

リティ強化をマネージドサービスとして機器の管理や脆弱性対応を行うことで、オフィス内のネットワー

ク環境の安全性を維持します。オフィスのネットワークは、構成するネットワークスイッチやWi-Fiアクセ

スポイントの安定稼働が前提に成り立っています。現在のネットワーク環境をより安定的に運用するため

に必要不可欠な脆弱性対応をはじめとするセキュリティリスクの軽減や、不測の事態に備えた迅速な障害

特定に対応する仕組みをマネージドサービスとして提供することで、安心のビジネスインフラを最小限の

管理負担で実現します。

 

b.インテグレーションサービス

 バリオセキュアのインテグレーションサービスには、中小企業向け統合セキュリティ機器(UTM)である

VCR(Vario Communicate Router)の販売とネットワーク機器の調達や構築を行うネットワークインテグレー

ションサービス(以下、IS)があります。

 

(a)VCR

 サイバーセキュリティ基本法の改定といった法規制の影響もあり、より小規模(従業員数50名未満)の

事業者やクリニックなどでセキュリティ意識が高まっていることを受け、セキュリティアプライアンス機

器であるVCRの販売も行っております。VCRは、マネージドセキュリティサービスと異なり、UTM製造の世界

有数の企業であるSOPHOS Ltd.の製品を自社ブランドとして輸入し、中小企業を専門とする販売代理店を通

じてエンドユーザに販売する事業として実施しております。なお、販売した機器、ハードウエア障害など

については、バリオセキュア又は販売代理店のサポート窓口経由で、メーカーが保証期間に亘りサポート

しております。

 

(b)ネットワークインテグレーションサービス(IS)

 統合型インターネットセキュリティサービスでは、外部へのアクセスを可能にするインターネットと社

内のネットワークの境界を監視するゲートウェイとしてバリオセキュア機器を設置することから、企業よ

りゲートウェイ周辺で利用するネットワーク機器の調達や設定、インターネットへの接続全般の設計や構

築のニーズがあります。そのため、通信ネットワーク及び機器等の導入のための設計、調達、構築を専門

に行う人員を配置し、ネットワークの設計/調達/構築全般を実施し、企業ネットワーク領域全般への業容

拡大を図っております。なお、販売した機器、ハードウエア障害などについては、バリオセキュア又は販

売代理店のサポート窓口経由で、メーカーが保証期間に亘りサポートしております。

 

[事業系統図]

 AI Security事業(バリオセキュア)の事業系統図は以下のとおりです。

 

注:販売代理店との間の契約では、一部、顧客(エンドユーザ)とバリオセキュアが直接代金の授受及びサポートを行う契約があります。また、Vario EDRについては定額の月額利用料のみ発生いたします。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

Ⅰ 経営成績等の状況の概要

(1)財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国の経済状況は、所得・雇用環境が改善される中、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が期待されているものの、世界的な金融引締めや急激な為替変動、中東地域をめぐる情勢及び物価の上昇などによる景気の下振れリスクが懸念されています。

 その一方で、情報サービス業界においては、従来なかったスピード感での技術革新や、少子高齢化・生産年齢人口の減少等を受け、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が引き続き拡大を続けています。特に、AI市場においては、OpenAI社による「ChatGPT-3.5」「ChatGPT-4.0」のリリースに端を発した、各産業におけるAIトランスフォーメーション(以下、「AIX」という。)に関する投資の加速が続いており、まさに現在進行形で、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAIの技術競争・需要拡大・社会実装が急激なスピードで進んでおります。なお、当社グループでは、AIXとは、AIを社会に浸透させることにより、その力を通じて既存の業務プロセスやビジネスモデル等を含めて社会全体に抜本的な変革を起こすこと、ととらえております。

 また、SaaS市場においても、導入の需要のみならず、「ニーズの多様化に伴うSaaS間連携」「統合管理の複雑化によるセキュリティ要件の高度化」等に関する需要拡大が見込まれるほか、セキュリティ市場においても、サイバーセキュリティ攻撃による脅威が年々増加しており、近年ではランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃被害が国内外の様々な企業や医療機関等で続き、国民生活や社会経済に影響が出る事例も発生しています。2023年3月には「Emotet」の活動再開が確認され、国民の誰もがサイバー攻撃の懸念に直面しております。

 このような環境の中で、当社グループは、HEROZ3.0として「AI BPaaS」を掲げ、単なるSaaSツール提供会社にとどまらず、生成AI等を駆使し大幅に自動化されたWorkというかたちで価値提供を行い、社会全体にAIXを起こしていくことを目指しております。

 また、当連結会計年度は、2023年11月に、コンタクトセンター領域において各種ソリューションを提供している株式会社エーアイスクエア、2024年3月にAI事業を行っている株式会社ティファナ・ドットコムの株式を取得し、子会社化を行いました。HEROZグループでは、グループ各社が持つ強みと当社が持つAI技術力でシナジーを創出・拡大し、社会やビジネスにおけるAIXをさらに推進させるべく、今後も「オーガニックな成長」「企業価値向上のためのM&A」の両方に積極的に取り組んでまいります。

 

 なお、セグメント別の経営成績の概況は以下のとおりです。

(ⅰ)AI/DX事業

 当連結会計年度において、当社グループのAI/DX事業については、BtoC領域における新サービスリリース・機能追加やBtoB領域における稼働案件数の増加等の効果により、安定した収益を上げました。また当連結会計年度に子会社化した株式会社エーアイスクエア及び株式会社ティファナ・ドットコムの両社の事業はAI/DX事業となります。

 BtoC領域については、藤井聡太竜王・名人による史上初の八冠獲得に伴う将棋への注目度向上等の効果により、「将棋ウォーズ」「棋神アナリティクス」ともに安定した収益を上げました。2023年10月には、将棋初段昇段を目指すeラーニングサービス「棋神ラーニング」をリリースいたしました。また、BtoB領域についても、LLMを含むAIに関する投資拡大・注目度向上を受け、案件数・引き合いの増加や大型案件の獲得等もあり、収益が拡大しております。同領域においては、各種展示会の出展等を受け、生成AI関連の引き合いも増加しているほか、株式会社ポケモンと共同開発した「Pokémon Battle Scope」が、「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2024」のゲーム部門に導入、また2024年5月には株式会社ストラテジットでSaaS連携プラットフォーム「JOINT」の新プロダクトとして、「JOINT iPaaS for SaaS」の正式版をリリースするなど、事業拡大に向けた活動を積極的に展開しております。

 当セグメントにおいて、LLMの活用・社会実装は事業戦略の中核となるテーマであり、今後も、2023年5月に新設された専門組織を中心にスピード感をもって研究開発を進めてまいります。その取り組みとして、2024年5月に生成AIを活用したエンタープライズ向けAIアシスタントSaaS「HEROZ ASK」を本リリースしました。2023年9月よりクローズドβ版、2024年2月よりアーリーアクセス版を提供していましたが、本リリース版ではさらなる機能をアップデートし、より進化した形でサービス提供を行います。

 

(ⅱ)AI Security事業

 当社グループ会社であるバリオセキュア株式会社が提供するインターネットセキュリティ関連の事業となります。

 同社は、中小企業向けのセキュリティ対策を支援するため、「マネージドサービスの対応領域拡大・競争力強化」「成長セキュリティ市場への参入」「既存販売網と異なる新規営業体制の強化」を中期経営計画の目標として定め、実現に向けて当連結会計年度より人材の獲得、サービス企画・事業開発の強化、ソフトウエア開発等の事業投資を行ってまいりました。

 そして、当連結会計年度においては、ネットワーク機器、Wi-Fiアクセスポイントのファームウェアのアップデートやネットワークトラブルの早期発見を行い、オフィスLAN環境を健全に維持する運用アウトソーシングサービスを開始しました。また、自社のセキュリティ環境の脆弱性を診断する「脆弱性診断サービス」の提供を行い、企業のニーズに対応したサービスラインナップを拡充しました。

 このような状況のもと、マネージドセキュリティサービスの売上収益は、ストック型の積み上げとその低解約率により、安定的に推移しました。特にエンドポイントセキュリティ対策としてサイバー攻撃の兆候を検知するVarioマネージドEDRは、引き続き高い成長となりました。一方で、ワンショットの収益モデルであるインテグレーションサービスにおいては、統合セキュリティ機器(UTM)の販売低迷により、前年を下回りました。

 

 費用面に関して、当社にてオフィス体制の見直しを行う等、適切なコストコントロールを進めましたが、一方で、事業・サービス拡大に伴う人材採用強化による人件費等の増加や、取締役・執行役員に関する業績連動報酬の概算計上のほか、広告宣伝強化・追加のM&Aに関連したデュー・デリジェンス費用等の発生・為替の影響によるサーバ利用料の増加等により、売上原価・販売費及び一般管理費は増加しております。そのほか、営業外費用として株主優待関連費用37,771千円、特別損失としてのれんの一部の一括償却891,209千円及びのれんの減損損失184,966千円が発生しております。なお、特別損失ののれんの一部の一括償却は、バリオセキュア社株式の市場価格の下落に伴うのれんの一部の一括償却であり、バリオセキュア社の個別決算で計上しているのれんの再評価を行ったものではありません。また、のれんの減損損失は、株式会社ストラテジットに関して連結決算で計上していたのれんについて、減損処理を行ったものであります。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は4,841,640千円(前期比62.4%増)となり、EBITDA(注)901,190千円(前期比47.8%増)、営業利益451,351千円(前期比75.0%増)、経常利益368,859千円(前期比70.6%増)、親会社株主に帰属する当期純損失1,134,535千円(前期は574,334千円の損失)となりました。

 

(注)EBITDA:(営業利益+減価償却費+敷金償却+のれん償却額(特別損失計上分を除く)+株式報酬費用+

        棚卸資産評価損)

 

 なお、当社グループの当連結会計年度におけるセグメント別の損益状況については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。

 

 当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ981,814千円減少し、7,691,233千円となりました。これは主に、売掛金が102,132千円、ソフトウエア仮勘定が321,612千円増加した一方で、現金及び預金が1,060,378千円、のれんが348,168円減少したことによります。

 負債につきましては、前連結会計年度末に比べ44,559千円減少し、2,548,159千円となりました。これは主に、未払金が143,068千円増加した一方で、未払法人税等が50,848千円、契約損失引当金が50,797千円、長期借入金が113,488千円減少したことによります。なお、長期借入金は、主にバリオセキュア株式会社に係るものとなります。

 純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ937,254千円減少し、5,143,074千円となりました。これは主に、非支配株主持分が149,093千円増加した一方で、利益剰余金が1,134,535千円減少したことによります。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、期首より1,056,958千円減少し、2,741,433千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、464,004千円(前年同期は483,382千円の収入)であります。

 この主な要因は、税金等調整前当期純損失707,315千円、減価償却費181,443千円、減損損失184,966千円、のれん償却額1,063,348千円、長期前受金の減少額103,899千円、法人税等の支払額272,506千円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、1,217,003千円(前年同期は、144,475千円の使用)であります。

 この主な要因は、有形固定資産の取得による支出147,528千円、無形固定資産の取得による支出295,680千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得による支出793,882千円があったこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、303,958千円(前年同期は200,785千円の使用)であります。

 この主な要因は、長期借入金の返済による支出201,560千円、非支配株主への配当金の支払額104,437千円があったこと等によります。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

② 受注実績

 提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年5月1日

至 2024年4月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

AI/DX事業

2,201,968

130.8

AI Security事業

2,639,671

203.6

合計

4,841,640

162.4

(注)1、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年5月1日

至 2023年4月30日)

当連結会計年度

(自 2023年5月1日

至 2024年4月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社USEN ICT Solutions

373,153

12.5

797,465

16.5

Apple Inc.

556,238

18.7

614,212

12.7

ソフトバンク株式会社

584,728

12.1

Google Inc.

331,523

11.1

3.ソフトバンク株式会社の前連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合並びにGoogle Inc.の当連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。

 

Ⅱ 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(1)重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

① のれん

 のれんについては、2022年9月にバリオセキュア株式会社を、2023年11月に株式会社エーアイスクエアを、2024年3月に株式会社ティファナ・ドットコムを連結子会社化した際に発生したものであり、いずれも取得時点での対象会社の将来の事業計画等に基づいて超過収益力を検討し、計上しております。

 のれんの減損判定については、グループ会社における継続した営業損失の発生、経営環境の著しい悪化、事業計画からの大幅な乖離等の有無をもとに減損の兆候の有無を検討しています。減損の兆候を識別した場合には、のれんの残存償却期間に対応する期間における割引前将来キャッシュ・フローを事業計画に基づいて算定し、帳簿価額と比較して減損損失の認識の要否を判定しています。減損損失の認識が必要と判定された場合、当該のれんについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として認識しています。

 なお、当連結会計年度においては、株式会社ストラテジットに係るのれんについて184,966千円の減損損失を計上しておりますが、その他のグループ会社ののれんについては、減損の兆候はありません。

 減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討していますが、グループ会社の事業計画や経営環境の変化等によって影響を受ける可能性があり、実際の業績が見積りと異なる場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。

 

② 繰延税金資産

 繰延税金資産については、将来事業年度の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しています。今後の経営環境の変化等によっては、翌事業年度において、当該将来事業年度の課税所得の見積り及び繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。

 

③ グループ会社における契約損失引当金の評価

 当社のグループ会社であるバリオセキュア株式会社におきまして、仕入先との間で締結した契約の最低購入保証条項に基づき、最低購入保証の未達に備えるため、将来発生する損失見込みに基づき契約損失引当金を計上しております。

 当該引当金は、バリオセキュア株式会社が仕入先との間で締結した契約の最低購入保証条項に基づき、最低購入保証の未達に備えるため、将来発生する損失見込額を計上しております。将来発生する損失見込額は、合理的な仕入計画に基づき、将来に発生が見込まれる金額を見積もっております。また、合理的な仕入計画の策定にあたっては、予測販売数量を主要な仮定として用いており、予測販売数量については、過去の実績等を基礎として見積りを行っております。

 上記見積りの予測販売数量及び当該数量に基づく合理的な仕入計画には不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により結果として、契約損失引当金の追加計上または戻入が必要となる可能性があります。

 

④ 関係会社株式

 市場価格のある株式等は、その時価が著しく下落した時は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当事業年度の損失として認識しております。

 また非上場の関係会社に対する投資等、市場価格のない株式等は取得価額をもって貸借対照表価額としていますが、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した時には、回復可能性が十分な論拠によって裏付けられている場合を除いて、相当の減額を行い、評価差額を当事業年度の損失として認識しております。

 なお、当連結会計年度においては、バリオセキュア株式会社の株式について1,506,362千円、株式会社ストラテジットの株式について359,594千円の関係会社株式評価損を計上しております。

 株式の評価については慎重に検討を行っておりますが、今後の経営環境の変化等によって発行体の業績・事業状況が悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。

 

 そのほか、貸倒引当金、賞与引当金、株主優待引当金の計上基準については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおり計上を行っております。いずれも過去の実績に基づき算定しており、会計上の見積りの重要性は低く、当社の経営成績等に与える影響は軽微であると判断しております。

 

(2)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 ①財政状態の分析

 財政状態に関する分析は、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

 ②経営成績の分析

a 売上高

 当連結会計年度の売上高は、4,841,640千円(前期比62.4%増)となりました。セグメント別の分析は以下のとおりです。

・AI/DX事業

 AI/DX事業については、BtoC領域におけるイベント開催やBtoB領域における稼働案件数の増加等の効果により安定した収益を上げ、売上高は2,201,968千円となりました。なお、売上高については連結内部の取引消去後の金額となります。

 BtoC領域については、藤井聡太竜王・名人による史上初の八冠獲得に伴う将棋への注目度向上等の効果により、「将棋ウォーズ」「棋神アナリティクス」ともに安定した収益を上げました。2023年10月には、将棋初段昇段を目指すeラーニングサービス「棋神ラーニング」をリリースいたしました。

 また、BtoB領域についても、LLMを含むAIに関する投資拡大・注目度向上を受け、案件数・引き合いの増加や大型案件の獲得等もあり、収益が拡大しております。

 

・AI Security事業

 AI Security事業については、主にマネージドセキュリティサービスでの堅調な成長達成により、売上高は2,639,671千円となりました。なお、売上高については連結内部の取引消去後の金額となります。

 マネージドセキュリティサービスでは、VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービスにおいて、主に上位機種へのアップセル等により売上高が増加しました。VDaPは、前期及び当期の新規契約に係る上位機種の月額課金の積み上がりにより売上高が増加しました。Vario EDRは主要代理店でのエンドポイントセキュリティサービスの案件獲得等によるライセンス数増加により売上高が増加しました。

 また、インテグレーションサービスについては、ネットワーク構築も含めたセキュリティ導入を行うネットワークインテグレーションサービス(以下、IS)においては、人員を増加し納品件数が増加したことで売上高が増加しました。VCRにおいては、前事業年度より競合環境が激化しており当事業年度も販売数の回復に至っていないため売上高が減少しました。

 

b 売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益

 当社グループの売上原価、販売費及び一般管理費については、人材関連費用、機械学習用サーバ等設備の減価償却費・通信費、BtoCサービスに係る課金決済手数料、支払手数料及び技術研究・自社プロダクト開発のための研究開発費が主な内容となります。

 当連結会計年度は、当社にてオフィス体制の見直しを行う等、適切なコストコントロールを進めましたが、一方で、事業・サービス拡大に伴う人材採用強化による人件費等の増加や、取締役・執行役員に関する業績連動報酬の概算計上のほか、広告宣伝強化・追加のM&Aに関連したデュー・デリジェンス費用等の発生・為替の影響によるサーバ利用料の増加等により、売上原価・販売費及び一般管理費は増加しております。

 これらの結果、当連結会計年度における売上原価は2,449,558千円となり、当連結会計年度の売上総利益は2,392,082千円となりました。また、当連結会計年度における販売費及び一般管理費は1,940,731千円となり、当連結会計年度の営業利益は451,351千円(前期比75.0%増)となりました。

 

c 営業外収益、営業外費用、経常利益、特別損益

 営業外収益及び費用については、当社が出資する投資事業組合に関する運用損益や、グループ会社における支払利息等が主な内容となります。そのほか、当連結会計年度は営業外費用として株主優待関連費用37,771千円、特別損失としてのれんの一部の一括償却891,209千円及びのれんの減損損失184,966千円が発生しております。

 これらの結果、当連結会計年度の経常利益は368,859千円(前期比70.6%増)、税金等調整前当期純損失は707,315千円(前期は517,675千円)となりました。

 

 上記a~cの結果を受け、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は1,134,535千円(前期は574,334千円)となりました。なお、法人税等調整額を含む法人税等合計は223,610千円となっております。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 キャッシュ・フローの分析・検討内容については、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りです。

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3 事業等のリスク」に記載した通り、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

 

(5)経営戦略の現状と見通し

 当連結会計年度における我が国の経済状況は、所得・雇用環境が改善される中、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が期待されているものの、世界的な金融引締めに伴う影響や物価上昇等による景気の下振れリスクが懸念

されています。

 その一方で、情報サービス業界においては、従来なかったスピード感での技術革新や、少子高齢化・生産年齢人口の減少等を受け、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が引き続き拡

大を続けています。特に、AI 市場においては、OpenAI 社による「ChatGPT-3.5」「ChatGPT-4.0」のリリースに端を発した、各産業におけるAIトランスフォーメーション(以下、「AIX」という。)に関する投資の加速が続いており、まさに現在進行形で、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAIの技術競争・需要拡大・社会実装が急激なスピードで進んでおります。

 このような環境の中で、当社グループは、HEROZ3.0として「AI BPaaS」を掲げ、単なるSaaSツール提供会社にとどまらず、生成AI等を駆使し大幅に自動化されたWorkというかたちで価値提供を行い、社会全体にAIXを起こしていくことを目指しております。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や自社サーバ購入等を目的とした資金需要は自己資金によることを基本としておりますが、必要に応じて多様な調達手段を検討してまいります。

 なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,741,433千円、有利子負債の残高は1,404,056千円となっております。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

1.報告セグメントの概要

  当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。

 当社グループは、事業内容の関連性及び事業規模に基づき事業セグメントを集約し、「AI/DX事業」及び「AI Security事業」の2事業を報告セグメントとしております。

・AI/DX事業

 当社グループに蓄積されたAI技術・ノウハウ・データを活用し、AI・SaaS導入支援やSaaS間連携開発等を提供することにより各企業・業界のAI/DX化推進を目指す事業が対象となります。具体的には、HEROZ株式会社のBtoCサービス、BtoBサービスに加えて、株式会社ストラテジットが提供するSaaS導入支援やAPI連携開発、株式会社エーアイスクエアが提供するコンタクトセンター領域のサービス等が含まれています。

・AI Security事業

 マネージドセキュリティサービス・インテグレーションサービスを中心に、AI技術を利用して高度なインターネットセキュリティの実現を目指す事業が対象となります。具体的には、バリオセキュア株式会社が提供するAI Security事業になります。

 

2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法

 報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と概ね同一であります。

 報告セグメントの利益は、営業利益ベースの数値であります。セグメント間の内部収益及び振替高は市場実勢価格に基づいております。

 

3.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報

前連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)

 

 

 

 

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額

(注)1

連結財務諸表計上額

 

AI/DX事業

AI Security事業

売上高

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高

1,683,993

1,296,679

2,980,673

2,980,673

セグメント間の内部売上高

又は振替高

480

480

△480

1,683,993

1,297,159

2,981,153

△480

2,980,673

セグメント利益

494,976

380,452

875,429

△617,534

257,894

その他の項目

 

 

 

 

 

減価償却費

117,236

46,748

163,984

163,984

のれん償却額

10,162

77,870

88,033

88,033

(注)1.セグメント利益の調整額△617,534千円は、各報告セグメントに配分していない全社費用であり、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費であります。

2.セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。

3.セグメント資産及び負債は、取締役会に対して定期的に提供されておらず、経営資源の配分決定及び業績評価の検討対象になっていないため記載を省略しております。

 

当連結会計年度(自 2023年5月1日 至 2024年4月30日)

 

 

 

 

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額

(注)1

連結財務諸表計上額

 

AI/DX事業

AI Security事業

売上高

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高

2,201,968

2,639,671

4,841,640

4,841,640

セグメント間の内部売上高

又は振替高

10,573

752

11,326

△11,326

2,212,542

2,640,423

4,852,966

△11,326

4,841,640

セグメント利益

677,064

789,192

1,466,256

△1,014,905

451,351

その他の項目

 

 

 

 

 

減価償却費

73,372

108,071

181,443

181,443

のれん償却額

33,871

138,267

172,139

172,139

(注)1.セグメント利益の調整額△1,014,905千円は、各報告セグメントに配分していない全社費用であり、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費であります。

2.セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。

3.セグメント資産及び負債は、取締役会に対して定期的に提供されておらず、経営資源の配分決定及び業績評価の検討対象になっていないため記載を省略しております。

4.その他の項目ののれん償却額は、販売費及び一般管理費に計上されている金額であり、特別損失で計上しているのれん償却額891,209千円は含めておりません。

 

【関連情報】

前連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)

1.製品及びサービスごとの情報

製品及びサービスの区分が報告セグメント区分と同一であるため、記載を省略しております。

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

 本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

(2)有形固定資産

 本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

Apple Inc.

556,238

AI/DX事業

Google Inc.

331,523

AI/DX事業

株式会社USEN ICT Solutions

373,153

AI Security事業

 

当連結会計年度(自 2023年5月1日 至 2024年4月30日)

1.製品及びサービスごとの情報

製品及びサービスの区分が報告セグメント区分と同一であるため、記載を省略しております。

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

 本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

(2)有形固定資産

 本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

Apple Inc.

614,212

AI/DX事業

株式会社USEN ICT Solutions

797,465

AI Security事業

ソフトバンク株式会社

584,728

AI Security事業

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

前連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)

該当事項はありません。

 

当連結会計年度(自 2023年5月1日 至 2024年4月30日)

該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

前連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

AI/DX事業

AI Security事業

全社・消去

連結財務諸表計上額

当期償却額

10,162

77,870

88,033

88,033

当期末残高

209,357

2,102,515

2,311,872

2,311,872

 

当連結会計年度(自 2023年5月1日 至 2024年4月30日)

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

AI/DX事業

AI Security事業

全社・消去

連結財務諸表計上額

当期償却額

33,871

1,029,476

1,063,348

1,063,348

当期末残高

890,665

1,073,038

1,963,704

1,963,704

(注)1.株式会社ティファナ・ドットコムの株式取得にともない、AI/DX事業において発生したのれんについては、取得原価の配分が完了していないため、その時点で入手可能な合理的な情報に基づき暫定的な会計処理を行っております。

2.バリオセキュア株式会社の株式の市場価格の下落により、当社の個別決算にて当該株式の減損処理を行い、それに伴い連結決算において、のれんの一部の一括償却を行っております。なお、当該事象によるのれんの償却額891,209千円は特別損失として計上しており、セグメント利益には含まれておりません。

なお、上記ののれん償却は株価の下落に伴う連結決算上の処理であり、バリオセキュア株式会社が個別決算で計上しているのれんの償却を行うことを意味しているものではありません。

3.株式会社ストラテジットに関して連結決算で計上しているのれんについて、184,966千円の減損損失を計上しております。詳細に関しては、「注記事項 (連結損益計算書関係) ※5 減損損失」をご参照ください。

 

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

前連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)

該当事項はありません。

 

当連結会計年度(自 2023年5月1日 至 2024年4月30日)

該当事項はありません。