2023年8月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営環境の変化について

 当社グループのSaaS事業は、企業を主要顧客としており、勤怠管理など顧客企業の従業員が毎日使用する機能を提供しています。国内外の経済情勢の変動や景気動向等を理由として直ちに契約が解約される性質の商品ではないため安定的な収益を見込んでおりますが、顧客企業のIT投資マインドが減退するような場合には、新規契約数が鈍化する可能性など、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)クラウド市場の動向について

 当社グループが事業を展開するクラウド市場は着実な成長を続けております。当社グループはこの市場成長傾向は継続するものと見込んでおり、その中で一定のシェアを獲得するべく、商品や営業組織の拡充を図っております。しかしながら、国内外の経済情勢の変動や景気動向等を理由として予期せずクラウド市場の成長が鈍化するような場合には、新規契約数の鈍化など、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)株式会社セールスフォース・ジャパンに関するリスク

 当社グループが顧客に提供しているアプリケーションは、株式会社セールスフォース・ジャパンが提供するクラウドプラットフォーム(Lightning Platform)上に構築されております。なお、同社との契約における解除条項は以下のとおり定められておりますが、現状で解除条項に抵触しておりません。

・相手方が本契約の重大な違反をして、違反のない当事者からの書面の通知の受領後30日以内に、その違反を是正しなかった場合。

・特定の四半期において、当社グループの有効なユーザー合計数が25%以上減少し、さらにその後2ヶ月連続して10%以上減少した場合。

・相手方に、解約しようとする当事者の直接競合者による支配権の変更があった場合。

・相手方が、破産又は、支払不能、管財人による財産管理、清算、債権者への財産譲渡に関するその他の手続の申し立ての対象となった場合。

 また、現状では株式会社セールスフォース・ジャパンに日本からの撤退の予定はなく、今後の契約関係も安定して継続する見込みであります。しかしながら、同社の経営戦略の変更により日本でのLightning Platformの提供が廃止・停止となった場合、Lightning Platformの機能に障害が発生して当社グループのアプリケーションに影響が生じた場合、Lightning Platformの競争優位性が失われた場合、Lightning Platform利用料(当社グループのプラットフォーム仕入価格)の引上げを要求された場合、同社とのOEMパートナー契約の解除事由に抵触し契約を解除された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)営業活動に関するリスク

 当社グループはこれまで、クラウド市場や働き方改革市場の拡大などを背景として事業の拡大をしてまいりました。今後は、より幅広い業種や事業規模の企業との契約を増やしていく予定でございますが、商談日数の長期化や段階的な導入などにより、売上計上時期が変動し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)想定を上回る解約が生じるリスク

 当社グループのSaaS事業は、サブスクリプション型リカーリングレベニューモデルであるため、顧客満足度を高めることで解約率を低く維持するための施策を行っております。しかしながら、顧客企業の利用状況や経営環境の変化などの理由により、毎年一定の解約が発生しております。予算及び経営計画には将来の解約を見込んでおりますが、想定を超える解約が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(6)新規契約数の季節変動について

 当社グループの売上は顧客企業の人事及びIT予算により構成されるため、新規契約時期は顧客企業の予算策定スケジュール、システム刷新計画、人事部門の繁忙期などの影響を受けます。また、既存顧客における人員増加による追加契約時期については、多くの顧客企業の会計年度末である3月末前後となる傾向が見られます。したがって、季節に依らず契約数が推移する業種に比べて、顧客毎の年間スケジュールに依存するほか、契約の獲得件数の変動が大きく下振れ幅が顕著な場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
 

(7)競合について

 当社グループが提供する勤怠管理や経費精算等のフロントウェアソリューション領域においては、特にミッド・スモール市場を中心に多くの競合企業が存在しておりますが、当社グループのサービスは単一機能を提供することに止まらず、勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNSといった従業員が日々利用する機能をひとつに集約することで、複合的な視点で従業員の活動記録(ワークログ)をリアルタイムに可視化し、より効率的で生産的な働き方を実現することを目指しております。また、より幅広いお客さまニーズに対応するため、2023年9月にサービスラインナップを刷新し単機能プランを新設しました。

 エンタープライズ市場においては手組みのスクラッチシステムやカスタマイズされたオンプレ型のパッケージシステムの利用が主流となっており、当社と同じクラウドサービスの競合企業はミッド・スモール市場と比較しても少ない状況です。しかしながら、競合企業の技術力の向上や予期しないサービスの登場などにより、現在以上に競争が激化する場合には、新規契約数の鈍化や既存契約先の解約数増加など、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)単一事業であることのリスク

 当社グループの売上は、「チームスピリット」とその関連サービスで構成されており、SaaS事業の単一事業となっております。国内の労働力人口の現象により、企業の生産性向上に寄与するシステムに対する需要の成長傾向は継続するものと見込んでおりますが、当該市場の成長が鈍化するような場合、事業環境の変化等への対応が適切でない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)海外子会社について

 当社グループは、2017年11月に海外子会社(シンガポール)を設立し、現在は開発業務を中心に事業を行っておりますが、現地の法令、制度・規制、社会情勢等のカントリーリスクが顕在化し、円滑な事業展開を行うことが困難になった場合、当社グループの経営成績及び事業活動に影響を与える可能性があります。

 

(10)人材の確保について

 当社グループのビジネスの成長持続には、優秀なエンジニア、コンサルタント及びセールス人材を安定的に確保することが重要と認識しております。当社グループでは継続的に従業員の採用及び教育を行っておりますが、従業員の採用及び教育が計画どおりに進まないような場合や人材流出が進むような場合には、サービスの円滑な提供及び積極的な受注活動が阻害され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)訴訟について

 本書提出日現在において、重大な訴訟を提起されている事実はございません。しかしながら、当社グループが事業活動を行う中で、顧客等から当社グループが提供するサービスの不備、アプリケーションの不具合、個人情報の漏洩等により、訴訟を受けた場合には、当社グループの社会的信用が毀損し、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)知的財産権に係る方針について

 当社グループは、販売する商品の名称につき、商標登録を行っており、将来展開を計画している商品についても商標権の取得を目指す方針であります。当社グループの保有する知的財産権を保護するために細心の注意を払うと共に、他社の知的財産権を侵害しないように顧問弁護士等と連携し必要な措置を講じてまいります。ただし、当社グループの知的財産権の侵害や当社グループの他社侵害を把握しきれずに、何らかの法的措置等が発生した場合、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)システムトラブルについて

 当社グループが顧客に提供しているアプリケーションは、クラウドという特性上、インターネットを経由して提供されており、その可用性をインターネットに接続するための通信ネットワークやインフラストラクチャーに依存しております。当社グループはシステムトラブルを最大限回避すべく、企業向けクラウドプラットフォームとして多くの企業から信頼されているSalesforce,Inc.が運営するLightning Platform上にアプリケーションを構築しております。しかしながら、自然災害及び事故等による予期しえないトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こるような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)重大な不具合について

 当社グループが提供するアプリケーションは、開発計画から本番リリースに至るまでの開発プロセスが定められております。顧客へ提供する前に、厳しい品質チェックを行った上で本番リリースしておりますが、顧客への提供後に重大な不具合(バグ等)が生じ、補修等追加コストの発生や信用の失墜、損害賠償責任が発生した場合、当社グループの事業活動及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)情報管理体制について

 当社グループでは、業務に関連して多数の顧客企業の情報資産を取り扱っております。情報セキュリティ基本方針を策定し、役員及び従業員に対して情報セキュリティに関する教育研修を実施する等、情報管理体制の強化に努めております。しかしながら、何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩するような場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)内部管理体制の構築について

 当社グループは、今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制をさらに強化する必要があると認識しております。今後は人材採用及び育成を行うこと等により内部管理体制の強化を図っていく方針であります。しかしながら、内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)我が国における働き方の変化について

 当社グループの主力商品である「チームスピリット」は、勤怠・就業管理機能を主要機能の1つとして構成しており、今後、勤怠・就業管理を必要としない成果管理主義型の働き方が浸透した場合や、法規制の改正等により勤怠・就業管理の位置づけに変化が生じた場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。

 株主への利益配分については、経営の最重要課題のひとつと位置付けておりますが、現在は内部留保の充実に注力する方針であります。内部留保資金につきましては、優秀な人材の採用等の必要運転資金や、今後予想される経営環境の変化に対応するための資金として、有効に活用していく方針であります。将来的には、財政状態及び経営成績を勘案しながら株主への利益配分を検討いたしますが、配当実施の可能性及びその実施時期については、現時点において未定であります。

 なお、2021年11月30日開催の第25期定時株主総会において、会社法第459条第1項の規定に基づき、剰余金の配当等を取締役会の決議によって行うことができる旨の定款変更を行っております。