リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)人材の確保と人件費、外注費の高騰について
当社グループの事業継続及び拡大においては、更なる技術革新に対応しうる技術者の確保、また世界マーケットに当社製品を販売していくための営業部門や管理部門等の優秀な人材も充実させる必要があります。
当社グループでは、優秀な次世代経営幹部や従業員の採用等を進め、従業員の意識向上と組織の活性化をはかるとともに優秀な人材の定着をはかる方針であります。しかしながら、計画どおりの人材の採用、パートナーの確保が十分できない場合、または現在在籍している人材が流出するような場合、また、近年の採用難や働き方改革を背景にして人件費や外注費の高騰が起こった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(2)顧客の経営状態に関連するリスクについて
当社グループの組込みソフトウェア事業の顧客層は、自動車、産業機器、ロボット、医療機器、通信機器等、様々な産業分野に及んでおります。それら顧客企業の個別の経営状態の変動に関しては、多様な産業セクターへの営業活動を行ってその影響をできるだけ小さくするよう努力をしております。しかしながら大幅な為替変動や、グローバルな政策要因、地政学的要因等によって、それらの産業全体が業績に悪影響を被る場合があります。当社グループの組込みソフトウェア事業は、顧客企業の数年先の開発案件に対する受注が多く、数年先に向けた顧客企業の投資計画に影響を与えるほどの事象が発生した場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(3)特定取引先への依存について
当社グループは、取引先上位顧客による占有率が逓増傾向にあり、当連結会計年度では、株式会社オーバスを含めたデンソーグループへの売上高が連結売上高の31.4%を、またソニーグループへの売上高が21.6%を、合計で53.0%を占めております。当社グループの方針として株式会社デンソーや株式会社オーバスを中心にした自動車関連の取引は今後も拡大をさせていく計画でありますが、特定の取引先に依存するような事業構造を脱却するよう、他の顧客開拓に尽力してまいりたいと考えております。しかし、その努力が実を結ばず、少数の特定取引先の経営状態の悪化や経営戦略の変更があった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(4)株式会社オーバスとの取引及び自動車関連市場への売上の偏重トレンドについて
当社は、2016年4月に株式会社デンソー、日本電気通信システム株式会社と合弁で株式会社オーバスを設立いたしました。当社は、株式会社オーバスに提供している当社の自動車向けソフトウェア製品は他社へは販売しない方針を取っております。自動車関連市場は、自動運転等の技術トレンドにのって今後も拡大していくと考えており、当社の最重点市場と位置付けておりますので、今後は、当社グループの自動車関連市場との取引がより一層拡大していくと考えております。しかし、激しい自動車メーカ間、自動車部品メーカ間の競争の結果、もしくは何らかの要因によって、自動車関連市場全体の成長トレンドが減速、下降していった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(5)持分法適用関連会社である株式会社オーバスとの取引における未実現利益について
当社は、関係会社である株式会社オーバスに対しソフトウェアの受託開発とソフトウェアライセンス及び保守の販売を行い、同社ではそれをもとに車載基盤ソフトウェアの開発及び販売を行っています。同社は当社の持分法適用関連会社であることから、当社からのいわゆる仕入れのうち、同社が売り上げていない(実現していない)部分に関しては、当社業績において未実現利益として調整をしております。
未実現利益の調整額は、株式会社オーバスの販売進捗等に影響されますので、当社グループの予算策定時における未実現利益の調整額の見積りは、同社と連携の上、同社製品の販売計画等を十分精査した上で行っており、その後の製品販売の進捗等につきましては、月次でその状況を把握して未実現利益の調整額を算出し、当社グループの財政状態及び業績に反映してまいりますが、予算策定時の未実現利益の見積り額と実際の調整額に大きな乖離が生じた場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
なお、当社は2024年4月1日に株式会社オーバスへの出資持分の全部を株式会社デンソーに譲渡する予定であり、それにより株式会社オーバスは当社の持分法適用関連会社から除外されます。
(6)品質不良による損害賠償のリスクについて
組込みソフトウェア事業のRTOSとエンジニアリングサービス、センシングソリューション事業における車載プリンタやハンディターミナル等による物流関連ビジネスにおいて、品質不良による損害賠償が発生する可能性があります。特に自動車・医療機器向け機器に対する損害賠償は甚大なものとなる可能性があります。当社グループは代表取締役社長直下の品質管理委員会のもと、全社的な品質管理に努めており、当社納品先でも厳密なテストを実施しておりますが、万が一、当社グループの責による品質不良から損害賠償が発生し、当社の加入している業務過誤賠償責任保険(IT保険)及び生産物賠償責任保険(PL保険)では損害賠償額を十分にカバーできなかった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(7)その他訴訟等による賠償責任に関するリスクについて
当社グループが属する情報・通信の業界においては技術革新のスピードが速く、他社から知的財産権の侵害についての申し立てを受ける可能性は否定できません。また、当社グループが保有している個人情報や組込みソフトウェア開発に関する仕様等の情報が社外に流出するリスクが存在します。また、安全衛生等の労務上の問題により訴訟が発生する可能性があります。当社グループは、セキュリティ委員会を設置し、各種情報の管理体制を強化すると同時に、eラーニングによる従業員への教育等を行っております。また、労働安全や労働災害に関しても従業員のワークライフバランスを重視した経営を行っております。しかしながら、何らかの事由によって訴訟となる事案が発生し、当社が賠償を求められた場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(8)不採算プロジェクトの発生について
当社グループの組込みソフトウェア事業におけるエンジニアリングサービスやセンシングソリューション事業のプロジェクトで不採算プロジェクトが発生する可能性があります。不採算となる理由は、発注側の責任となるもの、当社側の責任となるものがあります。具体的には組込み機器メーカーの要求仕様変更や、ハードウェアの開発遅れ、開発した組込みソフトウェアの品質不良等があります。当社グループでは、エンジニアリングサービス案件は全てプロジェクトとして個別に品質管理、予算管理、スケジュール管理を実施しております。しかし、それにもかかわらず、発注側の責任によるものであって交渉しても十分な補償が得られない場合、また、当社グループのプロジェクト管理が十分でない場合、不採算プロジェクトが発生し、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(9)技術革新への対応に関するリスクについて
当社グループの組込みソフトウェア事業とセンシングソリューション事業のいずれも開発費が発生します。コンピュータ技術の進歩は著しく、最新技術への対応の遅れは、ソフトウェア製品の陳腐化につながります。このため新規に開発したソフトウェア製品であっても、その直後からリビジョンアップ(機能維持)作業が必要となります。当社グループは、研究開発費用とリビジョンアップ費用の合計で売上高比10%程度を開発投資の基準としておりますが、近年、増加傾向にあります。当社グループの収益が投資額に見合うだけの利益を上げられない場合、あるいは当社の開発体制が技術革新のスピードに追い付けなかった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(10)センシングソリューション事業について
当該事業の物流関連ビジネスは、今後の成長を見込むことが難しいと考えられるため新たにセンサネットワーク関連ビジネスを主力とするよう事業の再編を行っております。IoTの成長が社会的にも想定されている一方で、様々な企業も参入し競争の激化が予想されます。センシングソリューション事業でも様々な引き合いを多くいただいてはおりますが、現時点では、リサーチ段階での販売にとどまっており、将来を安定化できるかは不透明な状況であります。将来的に、事業再編が想定どおりに進展しない場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(11)eSOL Europe S.A.S.について
当社は、2018年3月にフランスに連結子会社 eSOL Europe S.A.S.を設立いたしました。当面はコストセンターとの位置づけではありますが、将来的に海外売上高の拡大に貢献しない等、子会社運営が想定どおりいかない場合、投資に見合うだけの収益が得られなくなり、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(12)法令違反、法的規制に関するリスクについて
当社グループの事業において、税制や商取引、労働問題、知的財産権等、様々な法的規制を受けております。当社グループはコンプライアンス重視のもと、これら法規制やルールを遵守した経営を行っておりますが、万が一これら法規制、ルールを遵守できなかった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(13)自然災害や大規模な感染症等の発生に関する事項について
自然災害や大規模な感染症等の発生により、当社グループの事業拠点、従業員等に大きな被害や感染が生じた場合、または通信、交通機関等の社会インフラに棄損が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、不測の事態への備えとして、災害・感染症等への対策基準の制定、安否確認システムの導入、全従業員を対象にテレワーク(在宅勤務)制度を導入する等、リモート環境での業務遂行の円滑化等に取り組んでおり、今後さらなる事業継続体制の強化を推進してまいります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主への利益配分を経営上の重要な課題として認識し、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、株主還元の向上とのバランスに留意しながら、配当を実施することを基本方針としております。配当の実施については、資金需要等の内部留保の必要性を勘案した上で、安定的な配当を継続できるよう注力してまいります。
当事業年度の配当につきましては、上記方針を踏まえた上で、1株当たり5.5円の配当(うち中間配当1.5円)を実施することを決定いたしました。
内部留保資金の使途につきましては、一層の事業拡大を目指すための研究開発投資、MA投資及び人材育成等、有効な投資資金として活用し、企業価値の向上に努める考えであります。
当社は、原則として中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、その決定機関については、中間配当は会社法第454条第5項の規定により取締役会、期末配当は株主総会である旨を定款に定めております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(千円) |
1株当たり配当額(円) |
2023年8月10日 |
30,595 |
1.5 |
取締役会決議 |
||
2024年3月28日 |
81,588 |
4.0 |
定時株主総会決議 |