2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、潜在的リスクや不確定要素はこれらに限られるものではありません。

 

(1)事業の環境、外部環境

① 広告市場の動向について

 当社グループは、1億人規模の月間利用者数を誇る総合メディア事業者となっております。現状において、メディア事業の売上に占める広告売上割合は依然高く、広告市況の影響を受けやすい環境にあり、広告売上依存度の相対的低下を目指しております。当社グループでは、課金モデルを始めとする収益モデルの多様化施策を通じ、収益の安定化に努めておりますが、大幅な景気の減速や現在も低迷が続くアドネットワーク広告市況の更なる長期化や一層の広告単価下落等が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 金融市場の動向について

 当社グループのソリューション事業は主に金融・経済情報を商材として金融機関等を対象に事業を展開しているため、景気の減速や急激な市況変動等の事態が発生した際には、金融機関の広告出稿、並びに金融機関による当社グループのソリューションプロダクトへの投資等の事業活動が大きく減退する可能性があります。当社グループでは、商材の拡充や販売チャネル・顧客層の拡大、収益モデルの多様化や比較的高収益なパッケージ化等の施策を通じ、収益の安定化に努めておりますが、急激かつ大幅な景気の減速や市況変動が生じた場合には、個人投資家による口座開設数や課金サービスの利用、又は金融機関からの受注量等が減少し、また、これらの事象が同時に発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 競合について

 当社グループのメディア事業の月間利用者数は1億人規模に上り、また専門性や独自性の高いクリエイター群と、高い情報発信力を掛け合わせたグループ内における新たなエコノミクス創出力はユニークかつ競争優位なポジションを有していると考えております。また金融・資産形成情報メディアにおいては投資家の予想データ等のクラウドインプットとAIの融合によって生成される独自性の高いコンテンツを有しており、ソリューション事業においてメディア事業の特色を活かした独自のソリューション提案を行うことで他社との差別化を図っております。このため、情報ソリューションサービス分野における競合の要素は比較的少ないと考えております。さらに当社グループでは、継続して蓄積されるノウハウや、テクノロジーを活用した独自性による強みを市場のニーズに照らし適切に活用することで、競合要素の排除及び強固なポジションの維持に努めております。しかしながら、今後、他社が当社グループと異なるアプローチで独自のノウハウや強みを活用し、当社グループが提供するサービス領域での競合となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、事業拡大の中で新たに展開する事業について、類似サービスに対する差別化が十分に実現できなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 技術革新について

 当社グループのサービス展開の基礎となるインターネットや当社の強みであるAI等を活用した情報配信の自動化の分野においては技術革新が激しく、また、それに伴う顧客のニーズも常に変化をしております。当社グループもこれらの変化に迅速に対応すべく、最新の技術に対応したサービスやプロダクトの開発を推進しております。しかしながら、今後、当社グループの想定外の急激な技術革新により、その対応に遅れが生じた場合、当社グループの有する技術サービスの陳腐化が顧客への訴求力の低下などに繋がり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業上のリスク

① システム及びサービスの不具合について

 当社グル―プの事業は、主にクラウドサーバーを中心とするコンピュータシステムからインターネットを介して顧客にサービス提供しているため、これらのサービスにおいては、システムの冗長化等、安定稼働のための対策を講じております。しかしながら、機器の不具合、自然災害、コンピュータウイルス等によるコンピュータシステムや通信ネットワークの障害、不正なアクセスによるプログラムの改ざん等により、サービスに不具合が発生した場合、顧客に機会損失又は利益の逸失を生じさせる可能性があります。さらにそれらが当社の責による重大な過失の場合、損害賠償請求や著しい信用力の低下等につながり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② サイト運営の健全性について

 当社がグループメディア事業にて提供する情報サイトは、UGCメディアやユーザーがコメント等を投稿することが可能なサイトを含んでおり、誹謗中傷など健全性を欠くコンテンツやコメントが投稿される可能性あります。当社グループでは、サイト運営に関して利用規約をサイト上に明示し、サービスの適切な利用を促すように努めるとともに人的・機械的の両面で恒常的に監視し、利用規約に違反する不適切なコンテンツや投稿データについては削除等、健全なサイト運営を維持しております。しかしながら、不適切な投稿に対して当社グループが十分な対応ができない場合には、当社グループがサイト運営者としての信頼を失い、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 検索サイトの仕様変更や世界的なプライバシー重視傾向について

 当社グループのメディア事業では、ウェブ検索エンジンの最適化を主なユーザー獲得ルートの1つとしております。当社では、ユーザーに資する良質なコンテンツを提供することを基本に、検索の動向等を調査分析する体制を構築し、ユーザーの検索ニーズへの対応に努め、好位置への掲載に努めております。しかしながら、Google LLCを始めとした検索エンジンの仕様変更が、当社グループの想定を超える大幅かつ急激なものであった場合等において、当社グループの分析・対策が十分かつ適切に行われない場合には、検索によるユーザーの獲得が低迷し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、いわゆるサードパーティークッキー規制については、Google LLCの方針転換はあったものの、業界全体としては引き続きプライバシー重視の方向に進んでおります。これによりターゲティング広告を始めとするWeb広告配信や広告効果測定への影響が懸念され、インターネット広告市場にも影響を与える可能性があります。当社は継続して情報収集やファーストパーティデータの活用等必要な対応に努めてまいりますが、一連のプライバシー重視による影響が、当社グループの想定を超える大幅かつ急激なものであった場合等において、当社グループの分析・対策が十分かつ適切に行われない場合には、広告単価の下落等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります

 

④ ユーザーの継続率について

 当社グループのメディア事業にとって、ユーザーの継続率は重要な要素であり、ユーザーの利便性の向上やコンテンツを含めた良質な情報の拡充等の施策を通じて、継続率の維持向上を図っております。しかしながら、施策の見誤り等により継続率が想定を大きく下回る事態が続いた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 契約の継続について

 当社グループでは、各種ニュースや、株価データ、企業の決算情報等の配信情報の一部を証券取引所をはじめとした第三者から取得しております。当社グループは、安定的な仕入れ先の確保、及びニーズの変化に則した情報やサービスの提供を通じ販売先との継続的かつ良好な取引関係の維持に努めておりますが、先方事由等により、これら仕入れ及び販売における契約の中止や取引条件等に大きな変更が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 法的規制等について

 当社グループには、電気通信事業者として届出、及び銀行代理業者として許可を受け業務を行っている子会社があります。当社グループは、事業領域の拡大に則し、法令また自主規制等の制定、改正、改定あるいは社会情勢の変化による既存の法令解釈等の変更に対し、情報収集のうえ、早期に対策を講じられるよう努めておりますが、今後、関連する領域において新たな法規制、業界内での自主規制が求められた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、証券等の金融商品情報事業におきましては、金融業界をとりまく法令や規則の改正、慣行や法令解釈等変更があった場合、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 知的財産権について

 当社グループが提供しているサービスに使用する商標、ソフトウエア、システム等について現時点において、第三者の知的財産権を侵害するものはないと認識しております。今後も、権利侵害を回避するための監視・管理等を行っていく方針であり、知的財産権の保護についてはコンプライアンス基本方針に明記してこれを周知徹底し、知的財産権に関する社内教育に努めておりますが、当社グループが認識していない知的財産権がすでに成立している可能性や、使用しているフリーソフトウエアが第三者の知的財産権を侵害している可能性等から、当社グル―プによる第三者の知的財産権の侵害が生じる可能性があり、その第三者より、損害賠償請求、使用差し止め請求及びロイヤリティの支払い請求等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績、並びに信用力に影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 情報管理体制について

 当社グループでは、当社グループが提供するサービスの利用者を識別できる情報や顧客が保有する個人情報を知り得る場合があります。当社グループではこれらの個人情報を取り扱う際の個人情報取扱規程を制定するとともに、社内教育を徹底する等、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。しかしながら、外部からの不正アクセスや人為的ミス等により知り得た情報が漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ カスタマイズ開発に関するリスク

 当社グループではソフトウエア開発に関し、自社製品、外部販売によらず、ソフトウエア開発プロジェクトに関する期間や費用の見積り及び将来収益計画につき適宜定期的に進捗状況や妥当性の確認を行い、当初計画からの乖離が生じないよう管理体制を構築しております。しかしながら、顧客のニーズによる開発途中の要件変更や品質改善要求、開発遅延等により当初計画どおりの納品又は役務提供がなされなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 企業買収、合弁事業及び戦略的提携等に係るリスク

 当社グループは、企業価値を向上させるために必要な技術や事業等の獲得が、事業の成長を加速させる有効な手段となる場合は、他企業の買収や事業の合弁、外部パートナーとの戦略的提携を検討する可能性があります。これらの実施に際しては、市場動向やニーズ、対象企業の財務・法務・事業等、当社グループの事業ポートフォリオ等のリスク分析結果を十分に吟味し正常収益力を分析した上で行います。しかしながら、事前の調査・検討にも関わらず、買収等実施後の市場環境の著しい変化や偶発債務の発生、未認識債務の判明等、事前の調査で把握出来なかった問題が生じた場合、また、買収した企業が計画どおりに進展することが出来ず、投下した資金の回収が出来ない場合等において、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)組織関連

① グループの組織体制について

 当社は、当連結会計年度末において、子会社4社(グループ組織再編により前期末比2社減)、その従業員数はグループ合計で443名(平均臨時雇用者数202名を含む。前期比7名増(うち平均臨時雇用者数197名)。)であります。当社グループでは企業価値の持続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理感に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しております。今般、事業の選択と集中への方針転換を行ったことを踏まえ、取締役会をスリム化するものとし、より迅速かつ柔軟な意思決定を可能にするとともに、事業執行とガバナンスのバランス並びに経営上のリスクを適切に把握しコントロールするための内部管理体制の強化を図る方針であります。しかしながら、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材の獲得及び育成について

 当社グループは、継続的な成長の実現には、当社グループの理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を継続的に雇用し、育成していくことが重要であると考えており、従業員が高いモチベーションをもって自律的に働く環境の整備を継続的に推進する他、教育制度の充実、ワークライフバランスや多様な働き方を支える各種制度の整備など社員が働きやすい社内環境の構築に努め、採用活動においては人材紹介サービスも活用しております。現時点では、人材確保に重大な支障を生じる状況にはないものと認識しておりますが、当社グループの求める人材の確保に支障が生じた場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他

① ストック・オプションについて

 当社は、当社の役職員に対してインセンティブを目的としたストック・オプションを付与しており、これらストック・オプションが権利行使された場合、発行済株式数が増加し、株式価値が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在の潜在株式数は、245,200株(自己保有新株予約権137個に相当する潜在株式13,700株を除く)であり、発行済株式総数の1.64%に相当します。

 

(5)重要事象について

当社グループは当連結会計年度において、営業損失1,911,248千円、経常損失1,993,227千円及び当期純損失5,529,280千円を計上、返済期日が1年内の借入額は3,125,000千円と、手元資金542,610千円に比して多額であり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していると認識しております。当社グループは、こうした状況を解消すべく、安定した利益確保のためのコスト削減及び資金の安定化に向けた環境整備を推進してまいりました。当連結会計年度におきましては大規模な事業・資産整理や固定費の見直しを行い、また、取引金融機関全行の同意を得て、5億円の新規借入枠を設定した他、タームローン5,680,000千円及びシンジケートローン1,900,000千円について、2025年6月20日付で取引金融機関全行と変更契約書を締結し、2025年3月期を財務制限条項の遵守の対象外とするとともに、返済額をリスケジュールいたしました。

しかしながら、今後の事業の状況によっては上記の施策による効果を十分に得られず、今後の資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があることから、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。なお、連結財務諸表は継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表に反映しておりません。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は上場来、「高成長と高還元の両立」を掲げ、2020年3月期より5期連続で配当を実施してまいりましたが、3期連続の業績悪化により、その継続が困難な状況となりました。こうした状況から早期に改善すべく、前述のとおり、当連結会計年度におきまして選択と集中の方針のもと大規模な事業・資産整理を行いました。当面は安定的な利益創出が可能な事業体制の再構築を最優先とさせていただき、金融機関借入金の返済並びに可能な限りの内部留保の確保に努め、財務の健全性確保と将来の持続的成長への素地固めを優先すべきと判断し、当期の配当につきましては無配とさせて頂きます。

 株主の皆様への利益還元は重要な経営課題のひとつであると認識しており、将来的には、成長投資とのバランスを図りつつ、復配も視野に入れてまいります。今後も、企業価値の向上と株主還元の両立を目指し、適切な資本政策を検討・実行してまいります。