2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、その発生の回避と予防に取り組んでおります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが入手可能な情報に基づき判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事業環境に関するリスク

・競合他社の動向について

 当社グループが展開する通信インフラシェアリング事業が提供するソリューションは、従来は携帯キャリア各社が個別に対応する必要のあった設備投資を一本化し、設備投資・運用費用の削減等のメリットを提供するものであります。当社グループは、通信インフラの一端を担うという自負のもと着実に導入実績を積み重ねると共に、携帯キャリアとの資本業務提携を推進し、通信インフラシェアリングのパイオニアとして、国内市場でのポジショニングの強化をはかっております。しかしながら、当社グループを超える営業力、価格競争力、品質、資金力等を有した競合他社が参入した場合、当社グループの優位性が損なわれ、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・財務制限条項に抵触するリスク

 当社グループでは、複数の金融機関との間でシンジケートローン契約を締結しており、当該契約には一定の財務制限条項が付されております。これらの条項に抵触した場合には、借入金の期限前返済義務を負うことがあり、当社グループの財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

・技術革新について

 当社グループが展開する主な事業は、技術革新の進展が早い情報通信産業に関連しております。今後、当社グループが現在展開する事業が適合しない新たな技術革新や市場動向が生じ、かつ、当社グループが当該状況に適合した技術やサービスを提供するような事業を展開することが出来ない場合、当社グループの事業は市場からの需要を喪失し、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・サービスの欠陥や事故、自然災害等の影響について

 当社グループが展開する事業において、欠陥あるいは事故が発生し、または、大規模自然災害、新型コロナウィルス等のパンデミックや突発的な事故等による環境汚染により、サービスの提供が停止した場合、当社グループの信頼性やブランドイメージが毀損されることにより、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・調達および価格変動のリスクについて

 当社グループの事業展開に必要な機械装置や部材等のタイムリーな調達が阻害された場合や、原価管理上予定する価格以上の高騰などにより、製造コストや工事費等の上昇が生じた場合、採算性が悪化する可能性があります。

 

・システムトラブルへの対応について

 当社グループが展開する通信インフラシェアリング事業は、システムを利用して24時間365日体制で設備が有効に機能していることを監視し、有事の際は迅速な対応をすることで安定的な通信インフラの供給に貢献しております。当社グループは、システム強化やセキュリティ強化に取り組んでおりますが、自然災害、ウィルスによる不正アクセス、人為的なミスを含めた事故の発生等に起因したシステムトラブルの発生により重大な被害が生じた場合には、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・特定の調達先への依存について

 当社グループは、当社グループの定める品質テストに合格することができる高い技術を有していること等を勘案して調達先を選定しており、特に共用装置に関しては、特定の調達先からの仕入構成比が比較的高くなっております。特定の調達先へ過度に依存しない体制を構築してまいりますが、大口調達先の事業活動の状況に重大な変化や倒産等が生じた場合は、当社グループのサービスの提供に影響を及ぼす可能性があります。

 

・固定資産の減損に関するリスク

 当社グループは、機械装置、構築物、のれんを中心とした固定資産を保有しており、連結財務諸表に占める金額的重要性は相当程度高い状態にあります。機械装置および構築物は通信インフラシェアリング事業に関する設備であり、のれんは当社が戦略的に事業拡大を図っていくために子会社株式を取得して連結子会社化したことにより発生しております。今後、各事業や連結子会社の収益性が悪化する要因が発生した場合又は市場環境が著しく悪化した場合等には、減損損失を計上する可能性があり、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・海外事業展開について

 当社グループは、海外への事業展開にも取り組んでおり、ベトナムに連結子会社を有しております。各地域における売上・費用・資産・負債等の現地通貨建の項目は、連結財務諸表作成のために円換算されることから、連結財務諸表数値は為替相場の変動による影響を受ける可能性があります。また、これら海外関係会社が所在している国の政治・経済・社会情勢の影響により、事業遂行の不能等のカントリーリスクが顕在化する可能性があります。

 

・日本電信電話株式会社との資本・業務提携について

 日本電信電話株式会社は、当連結会計年度末現在、当社に対する議決権比率が減少し影響力が低下したことにより、当社の関連会社には該当しないものの、グループ全体で当社発行済株式総数の18.5%を保有する主要株主であり、重要な取引先であることに変わりはありません。また、日本電信電話株式会社においては、関係を維持するために必要となる当社株式を継続的に所有する方針であります。

 当社は、通信業界の豊富な知見と経験を有する社外取締役1名を同社グループから招聘しておりますが、出向者の受入れ等その他の人的関係はありません。同社が当社の株式を取得する以前から、当社と同社グループの間で当社通信インフラシェアリングソリューションの利用に係る取引を行っており、当該取引は今後も継続する方針であります。

 日本電信電話株式会社とは事業領域が異なり、それぞれ独立した組織で経営を行っていますが、将来的に両者のサービスまたは製品が競合する状況が生じた場合には、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業体制に関するリスク

・優秀な人材の獲得・育成について

 当社グループは、今後の企業規模の拡大に伴い、当社の理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を継続的に採用し、強固な組織を構築していくことが重要であると考えております。今後、積極的な採用活動を行っていく予定でありますが、当社の求める人材が十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合には、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・特定の人物への依存

 当社代表取締役社長である田中敦史は、当社の創業者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。このため、当社グループは、同氏に過度に依存しない体制を作るために、取締役会等における役員間の相互の情報共有や経営組織の強化を図っております。しかし、現状において、何らかの理由により、同氏が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

・内部管理体制について

 当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。今後、事業規模の拡大に合わせ、内部管理体制も充実・強化させていく方針でありますが、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・機密情報に係る管理について

 当社グループは、取引先の建設計画や事業の方針に関する機密性の高い情報を取得する場合があります。取引先との機密情報の授受においては、秘密保持契約を締結することを徹底し、当社グループ内においてその遵守を含めた情報管理の取組みに関する周知徹底を図っておりますが、今後、コンピュータへの不正アクセスによる情報流出や犯罪行為による情報漏洩などによって問題が発生した場合には、当社グループの信用失墜や費用負担増により、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制に関するリスク

・訴訟等について

 当社グループにおいては、現在まで訴訟を提訴される等の問題を生じたこと及びその逆に訴訟を提訴したことはありません。しかしながら、当社グループが事業活動を行うなかで、顧客等から当社グループが提供するサービスの不備、個人情報の漏洩等により、訴訟を受けた場合には、当社グループの社会的信用が毀損され事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

・事業に関連する法規制について

 当社グループの事業は、電気通信事業法及び建設業法等、日本及び諸外国において、様々な法律及び規制に服しております。また、当社海外子会社の所在する新興国においては比較的最近に法整備がなされており、規制当局や行政機関の規制変更等によって、当社グループの法令遵守のための負担がより増加する可能性があります。これらの法律を遵守することを経営の前提として運営しておりますが、将来において予期せぬ法規制の変更、行政の運営方法の変更などが生じた場合、新たな対応コストが発生し、当社グループの事業展開や経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他

・配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元と同時に、財務基盤を強固にするとともに競争力を確保し、積極的に事業拡大を図っていくことが重要な経営課題であると認識しております。

 今後の配当政策としましては、健全な財務体質の維持及び収益力の強化や事業基盤の整備に備えるための内部留保を勘案したうえで、株主への利益還元の実施を基本方針としておりますが、現時点では今後の配当実施の可能性、実施時期については未定であります。

 

・税務上の繰越欠損金について

 当社グループは、税務上の繰越欠損金を有しており、当社グループの業績が順調に推移することにより、期限内にこれら繰越欠損金の繰越控除を受ける予定であります。しかし、当社グループの業績の下振れ等により繰越期限の失効する繰越欠損金が発生した場合は、課税所得からの控除が受けることができなくなります。その場合、課税所得に対して通常の法人税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課されることとなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

・新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社グループでは、役員、従業員、社外協力者等に対するインセンティブ等を目的としたストック・オプションを発行しております。また、今後においても株式報酬制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権の行使に加え、今後、株式報酬の付与が行われた場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。なお、当連結会計年度末現在における新株予約権による潜在株式数は50,100株であり、発行済株式総数25,686,818株の0.2%に相当しております。

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主還元を適切に行っていくことが重要であると認識しており、剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切な配当を実施していくことを基本方針としております。

 このことから、創業以来配当は行っておらず、今後においても当面の間は内部留保の充実を図る方針であります。なお、内部留保につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、企業体質の強化及び将来の事業展開の財源として利用していく予定であります。

 将来的には、収益力の強化や事業の基盤を整備しつつ、内部留保の充実状況及び当社グループを取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 剰余金の配当を実施する場合、株主総会を決定機関として年1回の期末配当を実施することを基本方針としております。また、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当を取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。