事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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(単一セグメント) | 5,082 | 100.0 | 28 | 100.0 | 0.5 |
事業内容
3【事業の内容】
(1) 事業環境
医薬品産業の成長を支える新薬創出は、従来の化学合成による低分子医薬品から、抗体医薬品を中心とするバイオ医薬品、更には細胞医薬・遺伝子治療薬等の新規創薬モダリティへと大きく移行しています。この技術革新により、従来治療が困難であった疾患に対する新たな治療薬が次々と開発され、グローバルな医薬品売上高における上位半数以上をバイオ医薬品等が占めるようになりました。また、創薬モダリティの多様化に伴い、現在では新薬創出の80%をバイオベンチャーが担う等、医薬品産業におけるバイオベンチャーの重要性は世界的に増しております。
このようにして生み出された治療薬が多くの患者様の健康に寄与している一方で、技術の高度化や医薬品開発の複雑化等により、研究開発期間の長期化や開発費・製造費の増加が進んでいることが課題となっています。これに伴い、新たに開発された医薬品の薬価が上昇し、医薬費全体の増加を招いている状況があり、このような医薬費抑制への対応策として、日本を含む多くの国々においては、低分子医薬品の後発品であるジェネリック医薬品の使用が広く普及しています。また、バイオ医薬品についても、先行品の特許期間・再審査期間の満了時期を今後順次迎えることから、その後続品であるバイオ後続品(バイオシミラー)の普及が進むことが期待されております。
(2) 当社グループの事業モデル
当社グループは、当社において、バイオシミラーの開発及び開発品上市後の原薬・製剤(以下、「バイオシミラー原薬等」)の供給を行う「バイオシミラー事業」、当社100%子会社の株式会社S-Quatre(以下、「エスカトル」)において、エスカトルが独自開発した乳歯歯髄幹細胞(以下、「SQ-SHED」。SHED(シェド)はStem cells from Human Exfoliated Deciduous teethの略)を活用した再生医療等製品の実用化を目指す「細胞治療事業(再生医療)」の2事業に取り組んでおります。なお、有限な経営資源を戦略的かつ集中的に投下するという経営方針に基づき協議した結果、創業来の事業であったバイオ新薬事業については、2023年度以降、既に取得済みの研究成果を基に外部機関における研究活動を更に進めるための事業開発活動に専念しております。
なお、当社グループは、以下の2点を特長とした事業活動を行っております。
① ハイブリッド事業体制
当社グループは、バイオシミラー事業と細胞治療事業(再生医療)の組み合わせによるハイブリッド事業体制を採用しています。
バイオシミラー事業においては、2012年以降パートナー製薬企業と共に4製品を上市し、既にバイオシミラー原薬等の供給による持続的な収益を生み出しています。なお、バイオシミラーの開発においては、先行バイオ医薬品と同等の品質、安全性及び有効性を有する医薬品を、既存の科学的知見を基盤として開発することが可能であり、革新的技術への依存度が相対的に低いために、計画に沿った予見性のある開発推進が容易です。このため、外部機関との連携により限られた経営資源でも効率的かつ確実性の高い開発が可能であり、今後先行バイオ医薬品の特許切れに合わせて新規バイオシミラーの上市を重ね、パートナー製薬企業にバイオシミラー原薬等を安定的に供給することによって、更に強固な安定収益基盤の実現が見込まれます。
一方で、2019年に本格的に参入した細胞治療事業(再生医療)においては、従来の医薬品では治療が困難な疾患に対して革新的な医薬品を創出することを目的としており、技術的な不確実性等による開発リスクは大きいものの、将来的には高い収益成長が期待される事業です。
この両事業を組み合わせたハイブリッド事業体制においては、バイオシミラー事業において生み出される持続的な収益と長年の取り組みを通じて蓄積したバイオ医薬品の研究開発ノウハウ・知見・経験等(以下、「ノウハウ等」)を、高い成長性が期待される細胞治療事業の研究開発に再投資・活用することで、事業間シナジーを最大化し、「安定と成長の両立」を目指しています。なお、「安定と成長の両立」の実現に向けては、事業の進捗に応じて、柔軟かつ迅速に財務的健全性と成長性のバランスを再調整することが求められ、パートナー企業や外部機関との連携強化、各事業の特性に応じた多様な資金調達手段の活用、研究開発品の優先順位付けの見直し等にも継続的に取り組んでいます。
② バーチャル型研究開発及びプロジェクトマネジメント
医薬品の開発には、薬効・薬理研究、製造プロセス開発、GMP製造、臨床開発等、多岐にわたる専門的な知見と高度な設備が必要とされるため、すべての工程を単独で遂行することは困難です。そこで当社グループは、バイオシミラー及び細胞治療事業において、アカデミア、開発・製造受託機関(CDMO)、製薬企業等との連携による「バーチャル型」の研究開発体制を構築しています。
バイオシミラー事業では、これまでの豊富な開発実績に基づくプロジェクトマネジメント力を活かし、パートナー企業や外部機関と連携しながら、各開発工程を着実に推進しています。開発早期から外部機関と連携し、開発から製造まで一気通貫して取り組みことで、有限な経営資源を効率的に活用し、連続的な新規バイオシミラーの開発と上市後のバイオシミラー原薬等の製造を両立し、事業単独での営業黒字の確保と更なる収益成長を実現します。
細胞治療事業においては、革新的治療法の創出を目指し、自社独自の発明技術を軸としながらも、外部機関との連携を通じて最先端の知見や技術を積極的に取り入れることで、高い専門性の確保と柔軟な研究開発体制を構築しています。
このように、当社グループ主導でプロジェクトごとに最適な研究開発体制を構築することで、研究開発力の強化とスピードの向上を実現しつつ、複数の研究開発プロジェクトを同時並行で推進可能な柔軟性と効率性を確保しています。結果として、開発リスクの分散と経営資源の最適配分が可能となり、ハイブリッド事業体制で目指す「安定と成長の両立」の実現に寄与しています。
(3) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針
① バイオシミラー事業
バイオシミラーの開発は、CDMO等との連携による産生細胞株の構築、またはCDMO等により構築済の細胞株の導入から開始され、続いて原薬製造プロセスの開発・最適化が進められます。バイオ医薬品の原薬製造は、化学合成による低分子医薬品と比べて工程が極めて複雑です。加えてバイオシミラー原薬の製造プロセス開発においては、製造販売承認の取得に向けて先行バイオ医薬品と同等の品質(物性、工程由来不純物、活性等)を維持するだけでなく、薬価制度上、新たな製造プロセスによる高い生産性を達成し、より安価な原薬製造を実現する必要があります。また、承認取得後の上市に向けては、安定供給の実現に向けた製造プロセスの高い安定性や、先行バイオ医薬品メーカーによる特許権侵害訴訟等を避けるために、先行特許に抵触しないように開発を進めることも不可避です。このような多面的な要件を満たすためには、バイオシミラー開発の諸段階における精緻な検討と状況に応じた柔軟な調整が必要であり、豊富な開発経験に裏打ちされた高度な技術力と課題解決力が求められます。
また、迅速かつ確実な開発の推進と上市後の事業価値最大化に向けては、上記以外のプロセス、すなわち臨床開発や製造販売承認申請等の重要な役割を担うパートナー製薬企業との早期連携が開発成功の鍵となります。このため、当社では産生細胞株の構築・導入等の開発初期段階からパートナー製薬企業候補と協議を開始し、上市後の安定供給までを見据えた連携体制の構築を進めています。これにより、バイオシミラー原薬製造プロセス開発後速やかに、パートナー製薬企業と連携して、製剤プロセス開発、非臨床試験、臨床開発へ移行することが可能です。
なお、臨床開発では、当社がCDMOに製造委託した原薬等をパートナー製薬企業に提供します。また、臨床試験において先行バイオ医薬品との安全性及び有効性の同等性が確認された後の、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への製造販売承認申請に際しては、製造・品質に関する申請資料の整備や当局からの照会対応について、当社の専門的知見を活かした技術支援を行っています。なお、上市後は、パートナー製薬企業への安定的な原薬等の供給を通じて、当該バイオシミラーの持続的な供給に貢献しています。
現在の事業モデルにおけるバイオシミラー事業の収益構造は、臨床試験開始、製造販売承認の申請、上市等、各開発段階における進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる一時金収益と、バイオシミラー原薬等をパートナー製薬企業に供給することによる販売収益の二本柱で構成されています。また、契約の内容によっては、パートナー製薬企業の販売実績に応じたロイヤリティ収益を得る場合もあります。なお、これらの収益の一部は、持続的な収益を生み出すバイオシミラー原薬等の製造運転資金として、また、更なる成長のための新規バイオシミラー開発や細胞治療事業における研究開発にも活用されます。
図表1 開発の流れと収益モデル(バイオシミラー事業)
(注)開発開始から上市に至るまでの一般的なバイオシミラーの開発所要年数は約7~8年であります。
図表2 事業系統図(バイオシミラー事業)
なお、バイオシミラーの事業化においては、上市の順番に応じて市場シェアが大きく左右される可能性が高いことから、一番手での上市を目指して開発に取り組みます。そのためには、先行品の特許期間・再審査期間の満了時期を見据え、当該時期から逆算して計画を立て、開発を進める必要があります。また、先行バイオ医薬品の市場規模や開発対象品の競合となるバイオシミラーの有無は、当該開発対象品の採算性に大きな影響を与えます。そのため当社では、特許期間・再審査期間の満了時期、市場規模、競合他社による開発状況等を総合的に勘案し、開発対象品を選定しています。なお、市場規模の算定にあたっては、先行品の薬価を基に推定される当該バイオシミラーの薬価、処方量、及びバイオシミラーへの置換率等の要素を掛け合わせて推計します。更に、この推計市場規模に当社開発品の想定シェア、原価率等を加味することで当社の売上及び利益を予測し、想定される開発費等と併せて正味現在価値を評価した上で、最終的な開発判断を行っております。
② 細胞治療事業(再生医療)
細胞治療事業の研究開発においては、SHEDに関するサイエンスの探求と科学基盤の構築が最も重要な要素です。当社グループはエスカトルにおける独自研究を中核に据えつつ、アカデミアやパートナー製薬企業等との共同研究も並行して進めています。また、研究の加速や研究データの信頼性・再現性の確保を目的に、試験受託機関への研究委託も積極的に活用しています。こうした基礎研究活動から得られた科学情報に基づき、SQ-SHEDを活用した再生医療等製品等の対象疾患を選定し、有効性と安全性に関する非臨床試験を進めています。製品製造においては、独自の製法を確立した上で、製造受託機関への技術移管を実施し、現在、初期治験製品の試製造が順調に進捗しております。更に、後期治験及び上市後の安定供給を見据え、独自の大量培養製法の確立にも成功しており、現在、製造受託機関及び培養機器メーカーと協力して、本格的な製造プロセス開発の段階に移行しております。
なお、細胞治療事業においては、自社開発品の知的財産を保護するための特許戦略も極めて重要です。当社グループは、基礎研究及び製造プロセス開発から得られたデータを基に、他社特許の調査結果を踏まえながら、積極的に特許出願を進めています。
また、上述の取り組みと並行して、パートナー候補となる製薬企業等との協議も進めています。臨床開発段階以降は、原則としてパートナー製薬企業と協働し、臨床試験において安全性及び有効性が確認された後、厚生労働省に対して再生医療等製品等の製造販売承認の申請を行います。当段階においては、エスカトルが製造受託機関に治験製品の製造を委託し、それをパートナー製薬企業に有償で提供するほか、非臨床試験及び製造・品質に関する治験申請並びに承認申請資料の作成も担います。更に、再生医療等製品等の上市後においても、原薬となる細胞等の供給、もしくはその製造ライセンスの提供を通じて、当該再生医療等製品等の安定供給に貢献していきます。
細胞治療事業の収益としては、パートナー製薬企業との提携時に得られる契約一時金収益と、臨床試験開始や製造販売承認の申請、上市等、各開発段階における進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる一時金収益、更には、開発段階及び上市後において、再生医療等製品等の原料となる細胞等をパートナー製薬企業に供給することによって得られる販売収益があります。また、契約内容によっては、開発段階において、当社グループのノウハウ等をパートナー製薬企業に提供することで得られる役務収益や、パートナー製薬企業の販売実績に応じたロイヤリティ収益を得る場合もあります。
図表3 開発の流れと収益モデル(細胞治療事業)
図表4 事業系統図(細胞治療事業)
なお、細胞治療事業の対象疾患の選定に際しては、その科学的妥当性が最も重要であるものの、加えて、治療ニーズ、市場規模、収益性、競合状況等も重要な要素と位置づけております。更に、研究開発の進捗や規制等含む外部環境の変化を捉え、対象疾患の優先順位の見直しや、場合によっては開発中止の判断を行う等、開発パイプラインの最適化に努めています。
(4) 主力上市品・開発品
① バイオシミラー事業
・フィルグラスチムバイオシミラー(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん)
フィルグラスチムは、白血球の一種である好中球の分化・増殖促進、及び骨髄からの好中球放出促進や好中球機能の亢進を目的とした製品です。当社は、2007年10月より富士製薬工業株式会社(以下、「富士製薬」)と共同で当該バイオシミラーの開発を推進し、2012年11月に富士製薬と持田製薬株式会社(以下、「持田製薬」)が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月に上市されました。現在、当社は富士製薬に当該バイオシミラー原薬等を提供しており、富士製薬が販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオシミラーの産生細胞株は韓国のDong-ASTCo.,Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。なお、他社によるバイオシミラーを含めて、先行品からの置き換え率は80%を超えています。
・ダルベポエチンアルファバイオシミラー(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患)
ダルべポエチンアルファは、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品です。当社は、2014年1月より日本市場に向けて株式会社三和化学研究所(以下、「三和化学」)と当該バイオシミラーの共同開発を開始し、2019年9月に三和化学が国内での製造販売承認を取得し、2019年11月に上市されました。以後、製造販売については三和化学が単独で行い、当社は販売売上に応じた利益の分配を受けております。なお、他社によるバイオシミラー等を含めて、先行品からの置き換え率は80%を超えています。
・ラニビズマブバイオシミラー(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患)
ラニビズマブは、世界的な高齢化社会の進展や生活習慣の変化に伴い患者数が増加している黄斑変性症等の眼疾患に対する治療を目的とした製品です。当社は、2015年11月より千寿製薬株式会社(以下、「千寿製薬」)と共同で開発を推進し、2021年9月には同社が厚生労働省より国内での製造販売承認を取得、同12月に上市されました。現在、当社は千寿製薬に当該バイオシミラー原料等を提供しており、千寿製薬が販売を行っております。販売開始後には当初想定を大幅に上回る受注があり、2023年9月には適応症の追加も承認され、今後も更なる需要拡大が見込まれております。当社は、今後の需要拡大に対応し収益性の一層の向上を図るため、千寿製薬及びCDMOと連携し、安定供給体制の更なる強化及び原価低減策に向けた取り組みを継続してまいります。
・ペグフィルグラスチムバイオシミラー(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん)
ペグフィルグラスチムは、がん化学療法に伴う発熱性好中球減少の抑制を目的とした次世代型フィルグラスチム(ペグフィルグラスチム)製品です。本製剤は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで投与回数を減らし、効果の持続性を向上させた高付加価値製剤です。当社は、2016年12月より持田製薬と共同で当該バイオシミラーの開発を推進し、2023年9月に同社が国内での製造販売承認を取得、同11月に上市されました。現在、当社は持田製薬に当該バイオシミラー原薬等を提供しており、持田製薬及びニプロ株式会社(以下、「ニプロ」)が販売を行っております。販売開始後には当初想定を上回る受注があり、今後も更なる需要拡大が見込まれております。これに対応するため、安定供給体制の強化及び収益性の一層の向上を図り、引き続き持田製薬及びCDMO等と連携しながら、供給量の拡大や原価低減策に取り組んでまいります。
・新規バイオシミラー製品の開発等に向けた取り組み
日本においては、医療財政逼迫や高額な医薬品への患者アクセスの課題がある中で、バイオシミラーへの社会的な需要がますます高まっています。こうした環境下において、当社は持続可能な医療体制の構築に貢献するとともに、バイオシミラー事業の安定的かつ持続的な収益基盤を更に強化すべく、新規バイオシミラーの開発に向けた取り組みを積極的に推進しております。2024年6月には、抗体医薬品の新薬開発に強みを持つカイオム・バイオサイエンス株式会社(以下、「カイオム」)との間でバイオシミラー開発に関する業務提携契約を締結し、2005年5月には、カイオム、Mycenax Biotech Inc.(以下、「MBI」)との間で、新規バイオシミラー開発に関するMaster Service Agreementを締結しました。なお、この契約下で開発される新規バイオシミラーについては、既に、パートナー企業候補である複数の国内外製薬企業等と秘密保持契約下での協議を進めております。
更に2025年5月には、厚生労働省「医療施設等施設整備費補助金(バイオ後続品国内製造施設整備支援事業)」に採択されたことを受け、今後は、アルフレッサホールディングス株式会社(以下、「アルフレッサホールディングス」)、カイオム、MBIとの協働により当該事業の目的であるバイオシミラーの原薬・製剤製造施設の国内候補地での整備を推進してまいります。
② 細胞治療事業(再生医療)
・開発番号:GCT-103(対象疾患:脳性麻痺)
脳性麻痺は、出産前後の周産期において酸素欠乏や感染症等が原因となって脳が損傷を受けた結果、成長の過程で運動障害等の症状が現れる疾患です。出産直後の急性期には症状が明確でないことが多く、将来的な症状の予測も困難です。しかしながら、急性期を過ぎて病状が固定した後の遠隔期(慢性期)からでは治療は難しいと一般的に考えられており、有効な治療法が求められているにも関わらず、その開発はほとんど行われてきませんでした。エスカトルはこの遠隔期に対する治療法開発に取り組んでおり、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(以下、「名古屋大学」)医学部附属病院小児科と共同で、自家SQ-SHED(患者自身の細胞)の臨床研究を実施中です。これまでに2例の患者様への投与が完了済みでしたが、2025年6月に最終3例目の患者様への投与も完了しました。今後、2025年12月頃に名古屋大学による当該臨床研究に関する中間解析結果が公表される見込みです。健常児ドナーから提供された乳歯を用いて構築したマスターセルバンク(MCB)を原料とする同種SQ-SHEDについては、2025年3月に持田製薬と共同事業化契約を締結し、同社と共同で、国内治験実施に向けた準備を進めております。海外市場についてはエスカトルとして独自に展開を進めており、海外の開発受託機関等との契約の下、治験責任医師や治験実施施設の選定含む開発体制の構築等に取り組む一方で、海外でのパートナー企業候補との協議も進めております。
・開発番号:GCT-102(対象疾患:腸管神経節細胞僅少症)
腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を制御する神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病で、治療法が確立されていません。SQ-SHEDは腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与されたSQ-SHEDが不足している腸管神経節細胞を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動を回復させる可能性が期待されています。本疾患の研究開発については、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)が公募する「令和7年度 成育疾患克服等総合研究事業:先制医療実現に向けた周産期・小児期臨床研究開発等の推進」に九州大学と共同で申請し、2025年4月に採択されました。エスカトルは今後も当該疾患に対する新規治療法の創出に向けて研究開発を推進してまいります。
・SQ-SHEDを活用した再生医療等製品の開発(対象疾患:虚血性骨疾患)
虚血性骨疾患は、血流の減少(虚血)によって骨が壊死する病態であり、特に股関節を形成する大腿骨頭は虚血に陥るリスクが高い部位とされています。そのため、骨折後に治癒せず壊死に至るケースや、骨折がなくても特発性大腿骨頭壊死症と呼ばれる疾患を発症することがあります。この疾患は、骨頭が虚血性壊死を起こし、圧潰により股関節の機能が失われる指定難病で、現在圧潰を防ぐ治療法は確立されていません。エスカトルは当該疾患に対する新規治療法の創出を目指し、2024年9月以降、骨疾患に対する診療実績が豊富な獨協医大、及び骨充填剤の開発実績を有するHOYA Technosurgical株式会社(以下、「HOTS」)と共同研究を進めております。
・SQ-SHEDの次世代大量製造技術開発
SQ-SHEDを用いた再生医療等製品の次世代製造技術開発にも独自に取り組みを進めており、その一環として、世界的な培養機器メーカーである米国のコーニング社の協力の下、新規の大量培養製法の開発に成功しました。更に、後期臨床試験及び商用製造への適用を見据えた本格的なプロセス開発に向け、製造受託事業を展開するニプロと共同開発契約を締結し、エスカトルからの技術移管を完了しております。今後も引き続き、各社と協働の下、次世代製造体制の構築に向けた開発を進めてまいります。
・次世代SQ-SHEDの研究
エスカトルでは、より高い治療目標の達成や新たな疾患領域への展開を目指し、遺伝子導入や培養法改変により機能強化を図った次世代SQ-SHEDの研究開発にも取り組んでいます。これまでに、名古屋大学医学部附属病院脳神経外科との脊髄損傷を対象とした共同研究、浜松医科大学との脳腫瘍と対象とした共同研究を実施しており、これらの成果を踏まえ、現在、臨床試験を見据えた製法開発等を進めております。
業績
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前連結会計年度との比較分析は行っておりませんが、参考情報として一部、前年同期の提出会社個別の財務諸表との比較を記載しております。
① 経営成績の状況
当社グループの連結業績につきましては、売上高5,082,053千円、研究開発費767,877千円、営業利益27,882千円、経常利益5,187千円、親会社株主に帰属する当期純損失21,140千円となりました。
バイオシミラー事業においては、バイオシミラーの需要拡大を踏まえ、原薬等の製造及び納品スケジュールについて継続的にパートナー製薬企業及びCDMOと調整を重ねた結果、予定通りに製造及び納品を完了いたしました。また2023年度以降、一部製品で製造運転資金の効率化を目的に実施していた支払い条件変更に伴い、製造原価部分を除いた粗利益相当額のみを売上高に計上処理しておりましたが、当第3四半期末には通常の支払い条件に戻り当該影響が減少されました。更に、海外での物価上昇及び円安により増加した製造費用について、バイオシミラーの販売を担うパートナー製薬企業との供給価格改定交渉の一部が奏功した結果、売上高は前年同期比で大きく伸長いたしました。また、細胞治療事業においては、エスカトルが開発を進めている脳性麻痺を対象とした再生医療等製品(開発コード:GCT-103)について、持田製薬との共同事業化契約の締結により契約一時金を受領しています。一方で、研究開発活動の進捗及び事業性に基づく開発品の優先順位の見直しと、研究開発費の適正化に加え、一部費用の計上が2025年度以降にずれ込んだ結果、研究開発費は前年同期比で大きく減少しています。
以上から、バイオシミラー事業の売上高増加と利益率改善、細胞治療事業での契約一時金受領、及び研究開発費の減少が寄与し、当グループ連結での営業利益並びに経常利益は、上場後初となる全社ベースでの黒字化を達成いたしました。一方、最終的な親会社株主に帰属する当期純利益については、バイオシミラー事業の黒字拡大による税金費用等の増加が影響し、依然赤字の状況となっております。しかしながら、バイオシミラー事業単体を指す当社単体決算においては、引き続き黒字を確保している状況です。
当連結会計年度における各事業の進捗状況は以下のとおりであります。
イ バイオシミラー事業
当該事業の事業進捗として、まず主にGBS-007とGBS-010に対する堅調な需要拡大に伴う製造運転資金増加に対応するため、支払条件等の見直しについてパートナー製薬企業との交渉に取り組みました。この結果、売上高が大きく増加した期間において、これまでに19億円を超える製造運転資金の圧縮を達成しております。また、海外における物価上昇及び円安の影響を受けて増加した製造費用については、供給価格への一部反映を実現いたしました。今後も、外部環境の変化等に応じた製造運転資金及び供給価格の適正化に取り組んでまいります。
更に、当社はかねてより一部バイオシミラー原薬等の安定供給体制の強化・維持、及び製造原価低減等を目的とし、新規CDMOへの技術移管・製造プロセス開発等にも注力してまいりました。承認取得時期は当初計画より半年程遅延しましたが、当該新規CDMOの追加について独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認を2025年5月に確認し、これによる当該バイオシミラーの原価率低減を通じた当社の利益率改善は2026年度から実現する見込みであります。
加えて、新たな収益源の創出を通じた当該事業の更なる成長を目指し、当社は、2024年6月、抗体医薬品の新薬開発に強みを持つカイオムとバイオシミラーの開発に関する業務提携契約を締結いたしました。本契約に基づき、両社で合意した新規バイオシミラーの開発候補品については、両社のバイオ人材、バイオ医薬品の開発ノウハウや経験等を組み合わせ、また開発費用を分担し、主に細胞株や製造プロセス等の共同開発を進めてまいります。また、この協業によって開発された細胞株や製造プロセス等を製薬企業等へ導出あるいは譲渡した場合に得られる収益や、当該製薬企業等への開発支援に伴う業務提供による収益は、両社でプロフィットシェアする形とし、効果的にシナジーを生み出す協業モデルを目指します。なお、既に当該業務提携に基づき新規バイオシミラー開発計画の具体化を進めていましたが、2025年5月にカイオム、MBIとの間でMaster Service Agreementを締結し、当該新規バイオシミラー細胞株構築に着手しました。既に、新規バイオシミラーについてはパートナー候補である複数の国内外製薬企業等と秘密保持契約下での協議を進めており、海外市場における事業展開も見据えた共同事業化契約等を2025年9月末までに締結することを目指しております。
また、今後更なる需要拡大が想定されるバイオシミラーについて、開発から製造・供給までをカバーする国内初のバイオシミラーのサプライチェーン構築と安定供給の実現を見据え、昨年よりアルフレッサ ホールディングス及びカイオムとの協議を開始し、更に当社の取引先でバイオシミラーを含むバイオ医薬品の製造及び製造施設の整備に豊富な実績を有する台湾のバイオ医薬品製造受託機関であるMBIとも協業の可能性について協議を進めてまいりました。こうした各社との協議をベースに、国内製造施設の整備・稼働に協働して取り組むことに合意に至り、先般、厚生労働省「医療施設等施設整備費補助金(バイオ後続品国内製造施設整備支援事業)」に係る公募への共同申請に至りました。2025年5月の採択を受け、今後は4社の協働により、同補助事業の目的であるバイオシミラーの原薬・製剤製造施設の国内候補地での整備を含むバイオシミラー事業を推進に取り組んでまいります。
ロ 細胞治療事業(再生医療)
細胞治療の研究開発活動においては、これまでSQ-SHEDの特徴に基づきその治療効果が期待できる疾患として脳性麻痺(遠隔期)、骨疾患等を選択し、研究を進めてまいりました。その成果として、脳性麻痺については、名古屋大学と共同で実施中の臨床研究において、SQ-SHEDが初めてヒトに投与されました(ファースト・イン・ヒューマン)。本研究では自家SQ-SHEDを3例の患者様に投与する計画で、これまでに全例の患者様への投与が完了し、観察が進行中です。更に、構築済みのMCBを用いた、日本国内における同疾患を対象とした同種SQ-SHED(当社開発コード:GCT-103)については、2025年3月に持田製薬との間で共同事業化契約の締結に至りました。今後は持田製薬が治験等を、当社グループがSQ-SHEDの製造等を主な役割として共同で開発を推進します。
一方、海外市場におけるGCT-103の臨床開発に向けては、海外開発受託機関等との契約を締結し、治験責任医師や治験実施施設の選定含む開発体制の構築等に取り組んでいます。その取り組みの一環として、海外治験開始に向け、当社グループが保有する非臨床試験データと構築中の製剤製造プロセス、及び今後の試験計画について海外大手CROにて充足性の評価を実施し、必要なデータ取得及びプロセスが順調に進んでいることを確認しました。
骨疾患については、これまでの北海道大学との共同研究成果に基づき、2024年9月に新たに獨協医科大学及びHOTSと虚血性骨疾患の新規治療法開発を目指した共同研究契約を締結し、実用化に向けた共同研究に取り組んでいます。
SQ-SHEDの次世代大量製造技術開発についても独自に取り組みを進めており、世界的な培養機器メーカーである米国のコーニング社の協力の下、新たな大量培養製法の開発に成功し、2025年5月に米国で開催された国際細胞治療学会(ISCT)にて同社と共同で発表を行いました。更に、後期臨床試験及び商用製造への適用に向け、本格的なプロセス開発を進めるべく、製造受託事業を展開するニプロと共同開発契約を締結し、エスカトルからの技術移管を完了しました。今後も引き続き、各社と協働の下、次世代製造体制の構築に向けた開発を進めてまいります。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産の残高は、7,008,496千円となりました。
主な内訳は、現金及び預金が2,995,435千円、仕掛品が1,475,092千円、売掛金が1,267,189千円であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、5,597,518千円となりました。
主な内訳は、当連結会計年度において、上市済みバイオシミラーに関連する製造費用について、パートナー製薬企業との交渉を通じ、製造運転資金の効率化を目的とした支払条件の変更が一部実施されました。パートナー製薬企業との協議は継続しておりますが、結果として契約負債(前受金)は2,970,000千円、長期借入金(1年内返済予定を含む)が1,337,960千円であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、1,410,977千円となりました。
主な内訳は、資本金2,317,578千円、資本剰余金が11,623,179千円、利益剰余金が△12,730,223千円であります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、2,995,435千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加した資金は936,707千円となりました。
これは主に、棚卸資産の増加が599,438千円、売上債権の増加が385,782千円あったものの、契約負債(前受金)の増加が1,852,225千円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により増加した資金は65,077千円となりました。
これは主に、投資有価証券の売却による収入が88,948千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は240,061千円となりました。
これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入が505,286千円あったものの、長期借入金の返済による支出が737,040千円あったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
区分 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
||
バイオシミラー事業 |
3,441,934 |
- |
|
|
原薬等販売収益 |
3,441,934 |
- |
合計 |
3,441,934 |
- |
(注)当社グループは当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期比については記載しておりません。
b.受注実績
フィルグラスチムバイオシミラー及びラニビズマブバイオシミラーにつきましては、ロット単位での受注であり、各ロットの生産高に応じて売上高が変動し、受注金額を確定できないことから、記載を行っておりません。
なお、上記以外の品目につきましては、研究開発段階での売上であり、その不確実性に鑑み、記載を行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
区分 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
||
バイオシミラー事業 |
4,930,345 |
- |
|
|
原薬等販売収益 |
4,718,876 |
- |
|
知的財産権等収益 |
211,469 |
- |
細胞治療事業(再生医療) |
151,707 |
- |
|
|
知的財産権等収益 |
151,707 |
- |
合計 |
5,082,053 |
- |
(注)1.当社グループは当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期比については記載しておりません。
2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
販売高(千円) |
割合(%) |
|
千寿製薬㈱ |
2,832,962 |
55.7 |
持田製薬㈱ |
1,652,622 |
32.5 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの経営成績は、売上高5,082,053千円(前年比109.03%増)、営業利益27,882千円(前年は1,335,597千円の営業損失)、経常利益5,187千円(前年は1,389,601千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失21,140千円(前年は1,422,078千円の純損失)となり、収益性が大幅に改善しております。なお、前年(2024年3月期)の数値は非連結決算であり、参考値として扱っています。
売上高は前年の2,431,236千円から2,650,817千円増加し、5,082,053千円となりました。主な要因は、バイオシミラー事業におけるGBS-007及びGBS-010の需要増に対応する形で原薬等の製造・納品が計画通りに完了したこと、更にパートナー製薬企業との供給価格等の調整が進んだことによるものです。加えて、細胞治療事業(再生医療)においては、持田製薬との共同事業化契約の締結により契約一時金を獲得したことが売上高増加に寄与しています。
営業利益は、前年の営業損失1,335,597千円から1,363,479千円改善し、27,882千円の営業利益を計上しました。これは売上高の増加要因に加え、研究開発活動の優先順位見直しによる支出の適正化や、一部費用の翌期以降への計上繰越が影響しております。なお、営業利益の黒字化達成は当社の上場来初であり、2023年度以降の経営改革、事業構造改革の成果が明確に表れたものと考えております。
経常利益も同様に、前年の経常損失1,389,601千円から1,394,788千円改善し、5,187千円の黒字を計上しました。営業利益の改善に加え、財務費用の抑制や為替差損の縮小等が寄与しています。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前年の当期純損失1,422,078千円から1,400,938千円改善し、当期純損失21,140千円まで赤字幅が縮小しました。当社単体での当期純利益に対する税務負担の影響で依然として連結ベースでは損失を計上するものの、財務体質の改善が進んでおり、今後の黒字化に向けた基盤が整いつつあります。なお、当連結会計年度における主な特別損益として、保有する投資有価証券の一部売却により66,330千円の特別利益(投資有価証券売却益)を計上した一方、投資有価証券の評価損として31,128千円の特別損失も計上しております。これらの特別損益は、当期純損失の縮小に一定の影響を与えましたが、本業の収益改善が主因であることに変わりはありません。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、研究開発費を除く事業活動に関しては、バイオシミラー事業における上市済バイオシミラーの販売収益等を財源として安定的に運営しております。しかしながら、2023年度においては、GBS-007及びGBS-010がそれぞれの当初需要想定を大きく上回るペースで成長したことによる原薬等の製造追加等に伴う製造運転資金の確保や、海外での物価上昇及び円安の影響による製造コスト増加に対応する必要がありました。そのため、2023年7月には第三者割当による第18回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、未行使である新株予約権を除いて約10億円、更に金融機関からの借入による10億円、総額約20億円規模の資金を調達いたしました。
一方で、第18回新株予約権の発行を受けて下落した株価の回復及び中長期的な株価の適正化に向け、資金調達手段の見直しについて継続的に検討を進めてきました。まず、資金調達手段の見直しに向けた第一歩として、バイオシミラー事業の売上高成長に伴い大きく増加した製造運転資金の適正化を目的に、パートナー製薬企業との間で支払い条件の見直し等に関する協議・調整を重ねた結果、19億円以上の製造運転資金の圧縮を達成しております。また、当該製造運転資金の圧縮に伴う資金ニーズの削減を受けて、2024年12月26日に、第15回及び第18回新株予約権(既存予約権)の買入消却と第23回及び第24回新株予約権(新規予約権)の発行(リファイナンス)を決議しました。
本リファイナンスにおいては、上述の資金ニーズ削減に沿って発行規模を縮小することで、株式価値の希薄化に配慮しました。また、本リファイナンスにより、行使価格と株価との乖離によって長期化している既存予約権による資金調達を中止し、当社株価実勢に合わせた行使価格での新規予約権に置き換えることで、株式市場からの資金調達の早期完了を目指しています。資金調達を早期完了させることで、オーバーハング懸念の軽減に伴う
当社株式の需給バランスを改善させ、当社の事業成果が適切に株価に反映される環境を整えることに努めております。なお、本有価証券報告書開示時点では、第24回新株予約権のすべてについて行使が完了し、既存の第4回無担保転換社債型新株予約権付社債の一部転換が進む等、着実に資金調達の実現とオーバーハング懸念の軽減が進んでおります。
以上の通り、当社グループは資金流動性の確保に取り組む一方、バイオシミラー事業及び細胞治療事業の成長に必要な研究開発投資は継続して行う必要があります。そのための資金確保手段として、開発パートナー企業等との資本業務提携や契約一時金の獲得、各種助成金等の活用を想定する他、必要に応じた間接金融等から借入等、資金調達手段の多様化と最適化を2025年度も継続いたします。また、両事業において、研究開発活動の進捗及び事業性に基づいて開発品の優先順位を機動的に見直すことや、早期のパートナリング等による役割と費用負担の分担を進めること等を通じて、メリハリのある研究開発投資の実行と研究開発投資リスクの低減に取り組み、将来の成長性を毀損することなく、「安定と成長の両立」に向けたバランスの良い財務基盤の確立を目指します。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りには不確実性が伴うため、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
セグメント情報
(セグメント情報等)
【セグメント情報】
当社グループの事業セグメントは、医薬品開発事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。
【関連情報】
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
1.製品及びサービスごとの情報
単一の製品・サービスの区分の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため記載を省略しております。
2.地域ごとの情報
(1)売上高
本邦以外の外部顧客への売上高がないため、記載を省略しております。
(2)有形固定資産
本邦以外に所在している有形固定資産がないため、記載を省略しております。
3.主要な顧客ごとの情報
(単位:千円) |
顧客の名称又は氏名 |
売上高 |
関連するセグメント名 |
千寿製薬㈱ |
2,832,962 |
医薬品開発事業 |
持田製薬㈱ |
1,652,622 |
医薬品開発事業 |
【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
当社グループの事業セグメントは、医薬品開発事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。
【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
該当事項はありません。
【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
該当事項はありません。