2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業展開その他に関連して、リスク要因と考えられる主な事項を以下に記載しております。これらには、現時点で当社グループが必ずしも重要なリスクとは考えていない事項及び実際に具体化する可能性が高くないと想定される事項も含まれておりますが、投資判断や当社グループの事業活動への理解を深めていただく上で重要と捉え、情報開示の観点から開示しております。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その回避及び発生時の適切な対応に努めてまいります。ただし、株式への投資判断は、以下の事項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載のうち、予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、特段の記載がない限り、本書提出日現在において判断したものであり、不確実性を内包しているため実際の結果とは異なる可能性があることにご留意下さい。

 

1.法的規制等に関する事項

(1) 許認可等に関するリスク

 当社グループは、主にバイオシミラー原薬等の販売に当たり、医薬品医療機器等法その他の規制を受けますが、これらについて法令違反があった場合、あるいは必要とされる資格を保有する人財が離職しその補充ができない場合には、監督官庁から業務の停止や許認可の取消し等の処分を受けることになり、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在において、業務の停止や許認可の取消し等の処分を受ける原因となる事由は発生しておりません。

主な許認可等の状況

許認可等の名称

所管官庁等

許認可等の内容

有効期限

取消し等となる事由

医薬品販売業許可

東京都

東京都保健所長

許可

(5302250083)

2031年4月30日

(6年ごとの更新)

医薬品医療機器等法、その他薬事に関する法令若しくはこれに基づく処分に違反する行為があったとき、医薬品医療機器等法第75条第1項により、その許可が取り消されまたは期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命じられることがある。

 

(2) 医薬品の研究開発における医薬品医療機器等法その他の規制に関するリスク

 当社グループが業を営む医薬品業界では、研究、開発、製造及び販売の各段階において、国内外の薬事に関する法令、薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けております。当社グループは、日本国内市場に留まらず欧米を含む国外市場への進出も想定して各開発品の研究開発を進めておりますが、これらの開発品を医薬品として上市させるためには、パートナー製薬企業等との連携の下、各国の薬事に関する法令、関連するガイドライン及びその他の規制に準拠して製造販売承認の申請を行い、同企業が規制当局から承認を取得することを想定しております。このため、臨床試験等において、医薬品としての品質、安全性及び有効性等を示すことができない場合には、承認を得られず、上市できないため、当社グループの事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、現在の日本の医薬品医療機器等法においては、原薬等の外部委託製造が可能となっておりますが、今後このような外部委託製造に関する規制や海外品の輸入等に関する規制が改定された場合、当社グループの事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 医療制度改革の影響に関するリスク

 日本では、医療費の抑制を目的とした薬価改定等の医療制度改革が進められており、高齢化社会に対応するため、今後も継続されると考えられます。その結果、当社グループ開発品の上市後に当該医薬品の薬価が影響を受ける可能性があり、これにより当社グループがパートナー製薬企業に販売するバイオシミラー原薬等の価格や、パートナー製薬企業の販売実績に応じて当社グループが受領するロイヤリティ収益にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

2.医薬品開発事業に関する事項

(1) 医薬品開発事業全般に関するリスク

 医薬品の研究開発は、基礎研究から製造販売承認の取得、上市に至るまで、段階的なプロセスを踏む必要がありますが、非臨床試験や臨床試験において予期せぬ副作用が発生した場合や期待する治療効果が確認できない場合には、当該開発品の研究開発が中止される可能性があります。当社グループの開発品について、これらの理由により研究開発が中止された場合、事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、研究開発の進行において計画通りの結果が得られない場合や、各種試験の開始または完了に遅延が生じた場合、あるいは治験薬製造等において問題が発生した場合等には、製造販売承認の取得が遅れる可能性があります。当社グループは、このような事態を極力回避すべく、各開発品の評価及び進捗管理を適切に実施し、必要に応じて追加の経営資源を投下する等の対策を講じております。しかしながら、研究開発が計画どおりに進行しない場合には、事業計画並びに財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 医薬品の品質・副作用に関するリスク

 当社グループが開発に関与する医薬品の安全性に関する情報は、限られた被験者を対象に実施した臨床試験から得られたものであり、上市前に副作用の全てを把握できない可能性があります。現時点において、当社グループは、直接医薬品を販売する計画はありませんが、パートナー製薬企業によって販売される製品について、上市後に予期せぬ副作用が発生する可能性を完全には否定できません。重篤な副作用が発生した場合、製品の回収あるいは販売中止を余儀なくされ、当社グループの原薬等の販売についても継続することが困難となり、以後の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(3) 医薬品業界における競合に関するリスク

 国内外の製薬企業、バイオベンチャー、アカデミア等の研究機関がそれぞれ独自に、または協力して医薬品の研究開発を行っており、同じ疾患を対象とした開発品が複数存在することは珍しくありません。この競合環境において、他社の開発品が市場で優位性を示した場合、当社グループの開発品の研究開発が中止を余儀なくされる可能性があります。当社グループでは、競合環境を綿密に調査し、開発品の選定・優先順位付けを行うことでリスクの低減に努めていますが、競合品の新規参入等による影響により、当社グループの事業計画及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、バイオシミラー事業においては、2019年に上市したダルベポエチンアルファのバイオセイム以降、新たなバイオセイムの上市はなく、当社第3製品のラニビズマブバイオシミラー及び第4製品のペグフィルグラスチムバイオシミラーについても、現在のところ他社のバイオシミラーは上市されておりません。しかし、今後バイオセイムや他社のバイオシミラーが上市された場合、営業活動を通じた市場シェア争いが激化し、薬価下落や市場シェアが低下し、当社グループの事業計画及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 細胞治療事業(再生医療)における新規開発品の創出に関するリスク

 細胞治療薬をはじめとする新たな創薬モダリティの領域では、革新的技術の創出や、複数の先端技術の融合による進展が急速に進んでおります。当社グループは、自社独自の発明技術を軸としながらも、他のバイオベンチャーやアカデミア等の研究機関との連携を含むオープンイノベーションを通じて、新規開発品の探索及び創出を推進しております。しかしながら、これらの取り組みにより、常に新規開発品の創出が実現するとは限らず、想定通りの成果が得られない可能性もあります。仮に、何らかの要因によりこれらの活動に支障が生じた場合、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.事業モデルに関する事項

(1) 収益計上に関するリスク

 医薬品の基礎研究開始から上市に至るまでには通常10年以上の年月を要し、研究開発の成果が事業収益として計上されるまでには長期間を要します。また、医薬品開発の成功確率は近年低下傾向にあり、上市に至らないケースも多いため、最終的に事業収益が計上されない可能性もあります。そのため、当社グループは、自社で臨床開発や製造販売を実施せず、パートナー製薬企業に臨床開発以降のプロセスを主導してもらうことを基本方針とし、契約一時金や開発マイルストンペイメントの設定による早期収益化を目指しています。また、バイオシミラー事業と細胞治療事業の組み合わせによるハイブリッド型事業体制を構築し、当社グループ全体として、またそれぞれの事業において開発品ポートフォリオの最適化に取り組むことで、開発リスクと収益計上リスクの分散を図っています。しかしながら、提携時期や研究開発の遅延、研究開発の中断等が発生した場合には、当社グループの事業計画や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) パートナー製薬企業との契約に関するリスク

 当社グループは、研究開発の基本方針として、臨床開発以降のプロセスをパートナー製薬企業が主導することを想定しています。そのため、適切なパートナーが見つからない場合には、有望な開発品であっても開発が遅延し、または当該開発品の開発中止を判断することになります。このようなリスクを低減するため、当社グループは、国内外の製薬企業との定期的な面談を通じて、幅広いネットワークの構築と関心領域の把握に努めるとともに、バイオシミラー事業においては新たな開発候補品の選定・細胞株の構築段階から、細胞治療事業においては基礎研究・製造プロセスの開発段階から、パートナー製薬企業候補との協議を開始することで、早期提携に向けたパートナリング活動を推進しています。しかし、パートナー製薬企業との契約締結に至らない場合には、当社グループの事業計画や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) パートナー製薬企業の方針変更等に関するリスク

 当社グループは、バイオシミラー事業及び細胞治療事業において、パートナー製薬企業と提携し、協働で開発活動を行っておりますが、提携先企業の経営環境の変化や経営方針の変更等、当社グループが制御し得ない要因によって、開発活動が中断あるいは中止になる場合、または当該契約が解除された場合には、当社グループの事業戦略や事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、現在バイオシミラー事業においては、パートナー製薬企業の販売方針と需要予測に基づき、上市済みバイオシミラー原薬等の製造をCDMOに委託していますが、何らかの理由により当該販売方針が変更され、需要予測が大幅に下方修正された場合には、原薬等の製造・納品計画についても修正を求められる可能性があります。その際、CDMOとの製造計画の調整が進まない場には余剰在庫が発生し、当社グループの経営成績や資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) バーチャル型研究開発に関するリスク

 当社グループは、開発品ごとに最適な外部機関と連携し研究開発体制を構築する、「バーチャル型」の研究開発体制を構築しています。この体制は、限られた経営資源を効率的に活用し、柔軟かつ迅速な開発を可能にするという利点がありますが、連携先の外部機関において、品質や納期、技術的対応に問題が生じた場合、当社グループが直接コントロールできないため、研究開発スケジュールに遅れが生じるリスクがあります。特に、当社グループが取り組むバイオシミラーや再生医療等製品のように高い専門性が求められる分野では、代替機関の確保や技術移管が容易ではなく、場合によっては研究開発の中断や中止を余儀なくされ、当社グループの事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 更に、バイオシミラー事業においては、上市済みバイオシミラーの原薬等の安定供給を担っていますが、CDMOでの安定的な商業製造や、CROでの品質試験が滞る場合には、当該バイオシミラーの供給不足が発生し、これにより、売上機会の損失やパートナー製薬企業からの信頼低下を招き、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 知的財産権に関するリスク

 バイオ医薬品の分野では、先行する製薬企業を含む複数の第三者が特許権等の知的財産権を保有していることが一般的です。当社グループのバイオシミラー事業活動においても、候補品の選定時だけでなく、開発の各段階で国内外の特許調査を継続的に実施し、関連する第三者の特許権等を特定し、侵害行為が発生しないように努めております。

 しかしながら、開発の途中で第三者特許権等が判明した場合や、既存特許の解釈が変更された場合には、開発の遅延や中止を余儀なくされ、特許権者とのライセンス交渉や損害賠償請求への対応が必要となる場合には、当社グループの事業計画に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 同様に、細胞治療事業(再生医療)においても、技術の高度化と複雑化により、多数の特許が存在する領域であるため、研究開発の各段階で特許調査を行い、関連しうる第三者特許権等の侵害の回避に努めておりますが、万が一侵害が発生した場合には、開発の中断や訴訟リスクが生じ、事業への影響は避けられません。このような観点を踏まえて、細胞治療事業では、自社開発品の特許出願を通じて知的財産の保護と競争力を高めることにも注力しております。現在出願中の特許出願については、戦略的な観点からその成立を目指していますが、かならずしも成立が保証されるものではなく、仮に成立しても、その保護範囲が限定的であったり、代替技術の存在により充分な競争優位性を確保できない可能性があります。更に特許権が成立した後は、その権利を侵害する第三者に対して法的措置を講じる必要があり、紛争の規模によっては解決に多大な時間と費用を要する可能性があります。

 なお、本書提出日現在、当社グループの事業活動において使用している知的財産は、当社グループが権利を保有または出願中であるもの、第三者から適法に使用許諾を受けたもの、または権利が既に消滅したものであると認識しています。また、現時点において知的財産権に関する第三者との紛争は発生しておりません。

(6) 研究所の使用に関するリスク

 当社グループは、札幌市及び東京都江東区に研究所を置いております。札幌研究所は北海道大学創成研究機構生物機能分子研究開発プラットフォーム推進センターが民間企業との共同研究等のために設けているオープンラボラトリスペースの一部を、東京研究所は三井不動産株式会社が運営するレンタルラボ施設を使用しております。このため、共同研究契約あるいは賃貸借契約の終了等何らかの理由により、同施設の使用ができなくなった場合には、研究所の移転を余儀なくされ、追加的な設備投資や賃借料の発生等によって、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.業績等に関する事項

(1) 財政状態及び経営成績に関するリスク

 当連結会計年度においては、バイオシミラー事業の急激な成長に加え、研究開発費の適正化及び一部期ずれを主な要因として、上場来初の全社ベースでの営業黒字を確保しております。一方で、事業収益や製造運転資金とのバランスを取りながら、適正な範囲でバイオシミラー事業と細胞治療事業(再生医療)の事業価値最大化に向けた研究開発投資を積極的に行っていくため、現時点では安定的な連結営業黒字を計上することができておりません。

 当社グループは、2026年度以降に安定的な連結営業黒字を実現することを目標に収益基盤の強化に取り組んでいますが、事業計画が想定通りに進捗しない場合には、連結黒字化の時期が遅れたり、繰越利益剰余金がマイナスからプラスに転じる時期が遅れる可能性があります。

 

(2) 特定の販売先への依存に関するリスク

 当社グループの売上高の大半はバイオシミラーの原薬等の供給にかかる売上であり、特にラニビズマブバイオシミラーのパートナーである千寿製薬、ペグフィルグラスチムバイオシミラーのパートナーである持田製薬に対する依存度が非常に高い状況です。今後、新規バイオシミラーまたは再生医療等製品等を新規パートナー製薬企業と開発することで、特定の販売先への売上依存度の引き下げを図る方針でありますが、開発が想定どおりに進まない可能性があります。また、現在契約を締結している販売先との契約解消等が生じた場合には、当社グループの経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

(3) 資金調達に関するリスク

 バイオシミラー事業においては、上市済みバイオシミラーの需要が拡大し事業収益が大きく成長しました。その一方で、パートナー製薬企業向けの原薬等の製造量が増加したことに伴い、CDMO等に対する支払い増加により現預金残高が減少し、売掛金や仕掛品といった製造運転資金を構成する資産は増加傾向にありました。これらの資産が再度現金化されるまでには一定の期間を要することから、事業の拡大が短期的には製造運転資金の増加を招き、資金繰りに影響を与え、財務の柔軟性の低下や資金調達の必要性を高めるリスク要因となります。

 このような状況を踏まえ、当社では2023年度以降パートナー製薬企業との間で支払い条件の変更等に取り組み、19億円超の製造運転資金の圧縮を達成しましたが、バイオシミラー事業の収益が引き続き拡大傾向にある状況において更に資金繰りを安定させるためには、引き続き金融機関からの借入が不可欠です。特に借入額の拡大のためには、財務健全性の指標である負債資本倍率の改善を求められることがあり、その対応として増資による資金調達が必要となる可能性があります。なお、増資によって調達した資金は、バイオシミラー原薬の製造や新規バイオシミラーの開発活動に充て、企業価値の増大を図りますが、実施の際に発行済株式総数が増加するため、企業価値の増加が相対的に小さい場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 細胞治療事業においては、引き続き研究開発投資が先行している状況にあり、2024年4月以降は、当社から分社化したエスカトルと協力して、事業会社との資本業務提携や、ベンチャーキャピタル等との連携を通じた資金調達に取り組んでいます。このため、増資による資金調達が実施された場合、エスカトルに対する当社の持分比率が低下します。当社グループでは、調達資金を活用し、再生医療等製品等の研究開発活動を推進することで、企業価値の向上と当社が保有する持分価値の増大を図ってまいります。しかしながら、増資に伴い発行済株式総数が増加することから、企業価値の拡大が十分でない場合には、1株当たりの価値が希薄化し、当社の持分価値が減少する可能性があります。加えて、当初の想定を上回る研究開発資金等が必要となり、迅速な資金調達が困難となった場合には、研究開発活動等の継続が困難となり、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

 

(4) 財務制限条項への抵触リスク

 当社の一部借入金には財務制限条項が付されており、当該条項に抵触した場合、期限の利益を喪失し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 為替レートの変動に関するリスク

 当社グループは、バイオシミラー事業において、原薬の製造費用を外貨建てで海外CDMOに支払っており、売上原価の一部が為替レートの変動に影響を受けます。当該事業の製品売上が拡大する中、海外CDMOに対する外貨建て払いは増加しており、為替変動の収益性に対する影響も増しています。また、細胞治療事業においても一部の試験を海外のCROに委託しているため、為替レートの変動は研究開発費の増加要因にもなり得ます。

 今後は、海外市場への事業展開に取り組み外貨建ての売上高を得ることで、為替レート変動の業績への影響を一部相殺できるようにするとともに、パートナー企業等との契約においても、為替レート変動に伴う製造費用の増減について取り決めることで、業績への影響を抑える方針です。しかし、事業規模の拡大に伴い、更に外貨建取引の規模が大きくなった場合や支払サイトの長い外貨建取引を行う場合には、為替レートの変動が当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 投資有価証券の価値変動に関するリスク

 当社グループは、本書提出日現在において投資有価証券を保有しております。このため、当該投資有価証券の価値変動に伴い評価損が計上された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 配当政策に関するリスク

 当社は、創業以来配当を実施しておらず、本書提出日現在においても、会社法上の配当可能利益が計上されていないため、配当を実施可能な状態にはありません。当連結会計年度(2024年度)では上場来初の連結営業利益を計上しておりますが、2025年度には細胞治療事業(再生医療)の臨床開発の推進等、研究開発投資を積極的に行う計画であり、連結営業損失を見込んでおります。このため、安定的な営業利益の確保は2026年度以降になる見通しです。

 このような状況を鑑み、当面は収益基盤の確立と財務体質の強化を最優先とし、内部留保を活用した研究開発活動への再投資を重点的に行う方針です。一方で、株主への利益還元についても重要な経営課題と認識しており、将来的には財政状態や経営成績を総合的に勘案した上で、配当の実施を検討する予定です。

 ただし、利益計画が想定どおりに進捗せず、安定的に利益を計上できない状態が継続した場合には、配当を通じた株主還元が困難となる可能性があります。

 

5.その他

(1) 情報流出に関するリスク

 当社グループは、研究開発の過程で得られるノウハウ等、重要な機密情報が多数保有しております。これらの情報が外部へ漏洩した場合には、当社グループの信用や事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、厳格な管理が求められます。当社グループでは、役職員お及び取引先との間で秘密保持契約を締結し、情報の取り扱いに関するルールを設定するとともに、一般的なリスク管理手法を踏まえ、アクセス制限や監査体制の整備等、技術的及び組織的な対策を講じています。

 しかしながら、役職員や取引先がこれらの規定を遵守しない場合には、重要な機密情報が流出し、当社グループの事業活動や競争優位性に重大な影響を与える可能性があります。

 

(2) システム障害等に関するリスク

 当社グループはシステム障害、セキュリティ侵害等を未然に防止するための対策を講じておりますが、ウイルス感染、不正アクセス、自然災害、通信障害あるいは電気障害等によるインシデント発生の可能性を完全に排除することは困難です。これにより、当社グループが保有する重要な情報の喪失または漏洩が発生した場合、データ復旧に係る金銭的・時間的負担や、研究開発の遅延、更には取引先からの損害賠償請求等が生じる可能性があります。これらの事象は当社グループの信用失墜や社外提携関係への悪影響を及ぼし、事業計画の遂行に重要な影響を与える恐れがあります。

 

(3) 訴訟等に関するリスク

 当社グループは、法令遵守や契約管理の強化等を含むコンプライアンス体制の構築に努めております。しかしながら、知的財産権の解釈や技術の重複等を巡り、製薬企業等から特許侵害等を理由として損害賠償請求を受ける、または訴訟を提起される可能性があります。また、製造物責任、環境関連問題、労務管理等を含む事業活動に付随する分野においても、第三者との間で訴訟が発生する可能性があり、これらの訴訟の結果によっては、当社グループの社会的信用が損なわれるだけでなく、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 小規模組織であることに関するリスク

 当社グループは、開発品ごとに最適な外部機関と連携し研究開発体制を構築する、「バーチャル型」の研究開発体制を構築しています。このため、高度な専門知識、技能や経験を有するバイオ人財による少人数組織体制を前提としています。しかしながら、バイオ医薬品の研究開発経験を有する人財は限られており、想定どおりに人財の確保ができない場合、あるいは人財の流出が生じた場合には、研究開発の推進や社外との提携関係の構築に支障が生じ、当社グループの事業計画や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、事業の拡大に伴い、内部管理体制の強化も求められる一方で、少人数の組織であることから、管理部門の人財確保や体制整備が遅れるリスクがあります。このため、人財の確保が想定どおりに進まない場合や流出が生じた場合には、内部管理体制の質の低下を招き、当社グループの社会的信用を損なう可能性があります。

 

(5) 企業再編、企業買収、合併等に関するリスク

 当社グループは、企業価値向上を目的として、技術力や資金力等の補完、事業領域の拡張、効率的な経営体制の構築等を視野に入れ、将来的に他社との経営統合や企業買収等の実施を検討する可能性があります。この際、経営統合や企業買収等にかかる費用が、一時的に当社グループの経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。また、当該経営統合や企業買収等が計画どおりに進捗しない場合や、統合後の組織運営や人財・文化の融合が想定どおりに進まない場合には、業務の非効率化や意思決定の遅延、従業員の離職等が発生し、統合効果が十分に得られない可能性があります。更に、事業環境や競合状況の著しい変化により、期待していた効果が得られない場合には、投資価値の減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの経営成績、財政状態に様々な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 災害及びパンデミック等の緊急事態に関するリスク

 当社グループは、事業活動の中心となる事業所を東京都と北海道に設置し、地理的なリスク分散を図っております。また、研究開発活動の一部を外部の受託機関に委託しており、実質的にはより分散した体制が構築されている状況です。しかしながら、これらの地域において大規模の地震等や災害、あるいは新型コロナウイルス感染症に類するパンデミック等が発生した場合、設備等の損壊やインフラの機能停止等により、当社グループの事業活動が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは小規模組織であるため、限られた人員や設備に依存した業務が多く、代替手段の確保が困難な状況です。そのため、緊急事態が発生した場合には、研究開発の遅延、提携先との関係悪化、財務面での負担増加等が生じ、当社グループの経営成績及び企業価値に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 継続企業の前提に関する重要事象等について

 当連結会計年度において、当社グループは上場来初の営業利益を計上いたしました。一方、今後も適正な範囲でバイオシミラー事業と細胞治療事業(再生医療)の事業価値最大化に向けた研究開発投資を積極的に行っていくため、一時的に期間損益がマイナスとなる可能性があり、継続企業の前提に重要な疑義を生じる状況となっております。これに対し、内部留保で対応することに加え、金融機関からの借入等による適時調達を行い、事業継続に必要な資金を確保しております。その結果、継続企業の前提に関する重要な不確実性は存在しないと判断しております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社グループは、継続的な営業黒字化を目指し、内部留保による財務体質の強化及び研究開発活動への再投資を優先する方針であります。一方で、株主への利益還元についても重要な経営課題として捉え、財政状態及び経営成績を勘案しつつ配当の実施を検討してまいります。

 当社グループは、会社法第454条第5項に基づき、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めておりますが、剰余金の配当は期末配当の年1回を基本方針としております。なお、配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会となっております。

 当社グループは現在、バイオシミラー事業において一定の売上収益はあるものの、新たな製品の研究開発は継続していること、細胞治療事業(再生医療)も研究開発の過程にあり、これまで配当を実施しておらず、当連結会計年度の剰余金の配当については無配としております。