2025年10月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループは、リスクを「当社グループが目指す持続的な成長と中長期的な企業価値の向上という目的達成に対する不確実性」と捉えております。その上で、これらの目的達成を助長する要因を受け入れること(リスクテイク)、目的を阻害する要因に対処すること(リスクヘッジ)を効果的に行うとともに、これらについてモニタリング・レビューを行うことにより、全社的なリスク管理(ERM:Enterprise Risk Management)を実施しております。

 全社的なリスク管理は、代表取締役社長CEOをリスク管理最高責任者、法務コンプライアンス部門を管掌する執行役員を委員長とする「リスク管理委員会」によって推進しております。

 リスク管理委員会は、グループ全体のリスクを俯瞰的にアセスメントし、グループ全体に影響を及ぼす重大リスクに関しては自ら管理するとともに、重大リスク以外のリスクに関しては当社グループ各社又は業務執行部門が実施するリスク管理を監督することで、リスク管理の体系化を図っております。

 当社グループが、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識しているリスクの概要は以下のとおりです。なお、以下の事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであり、その内容には将来に関する予測も含まれていることから、これらの事項は現時点の状況とは合致しない可能性もあります。また、以下に記載されていない他の事項が当社グループに影響を及ぼす可能性もあります。

 

(1)経営戦略に関わるリスク

 当社グループは、グループ理念である「時代に応える、時代を先取る快適さを実現する。」のもと、交通インフラサービス企業としてさらに進化すべく、2024年12月に2035年中長期ビジョン「モビリティサービスプラットフォーマーへの進化」並びに、2027年10月期 中期経営計画(以下、中期経営計画)を公表しました。また、これらの実現に向け、当社グループが有する人(会員)・クルマ(モビリティ)・街(目的地)・駐車場の「4つのネットワークの拡大・進化・融合」の推進を方針としています。これらは、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものにつき、本「事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされ、計画どおりに遂行できない可能性があります。

 

(2)駐車場事業国内に関わるリスク

 当社グループの主力である駐車場事業国内は、土地や施設付帯駐車場をオーナー様から借り受けるサブリース型が中心であり、多くの賃貸借契約が解約された場合、又は顧客利便性が低下した場合、事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、地価上昇は、オーナー様の売却(解約)意向や賃料上昇を招き、収益性を低下させる可能性があります。

 当社グループは、地域密着営業によるオーナー様との関係強化、地価上昇の影響を受けにくいエリアでの開発推進に加え、キャッシュレス決済やナンバープレート認識システムの導入による顧客利便性の向上により、これらのリスク低減に努めております。

 

(3)モビリティ事業に関わるリスク

 当社グループのモビリティ事業は、同業他社やオートリース会社との間で、品質、価格、サービスを巡る競争にさらされており、競合状況によっては事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、カーシェア用地の地代上昇は、収益性を低下させる可能性があります。

 当社グループは、国内カーシェアリング市場における圧倒的なシェアを活かし、利便性の高いサービス提供を行っております。今後も事業規模の拡大やサービスの拡充に取り組むとともに、継続的なプロモーション活動や地域特性に応じた営業活動などを通して、競争優位性の維持と収益基盤の安定化に努めてまいります。

 

(4)駐車場事業海外に関わるリスク

① 事業に関するリスク

 当社グループは、英国、豪州、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、台湾で駐車場事業を展開しております。一部地域では、特有の商習慣により、駐車場用地の不動産契約について長期的かつ物価変動に連動した賃料が求められる場合があります。こうした条件下で、適切な価格転嫁等が困難な場合には、事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、各地域において、予期できない租税制度や法律、規制等の改正、政治的要因及び経済的要因の変動、予測の範囲を超えた市場や為替レートの変動があった場合、事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、国内の駐車場事業戦略である「小型・分散・ドミナント化」をベースに、各地域の駐車場事業環境に適した短期契約駐車場「各国版タイムズパーキング」の開発を推進することで、長期契約駐車場に偏った事業ポートフォリオを最適化し、事業リスク低減に努めております。

 

② ガバナンス・内部統制に関するリスク

 海外子会社におけるガバナンスや内部統制が十分に機能しない場合、財務報告の正確性が損なわれるリスクがあります。

 当社グループは、各種業務プロセスの明確化や検証プロセスの整備、コンプライアンス教育、不正・コンプライアンス違反の早期発見を目的として、現地の内部通報窓口とは別に、当社に直接通報を行えるグローバル通報窓口を設置するなど、自律的な法令遵守及びリスク管理が可能な内部統制の確立、最適なガバナンス体制の構築を推進します。これらにより、海外におけるリスクを早期に特定し、顕在化する前に具体的かつ適切に対処できるよう取り組んでまいります。

 

(5)ICTシステムリスク

 当社グループは、お客様へのサービス提供及びそれらに付随する業務等、ICTシステム依存度が高い事業を展開しており、今後の事業展開において、その重要度はさらに高まります。自然災害、サイバー攻撃(マルウェア感染、不正アクセス等)、システム障害(機器故障、ソフトウェア不具合)、通信・電力供給の途絶などにより、当社グループのシステム又はネットワークに重大な障害が発生した場合、又は新技術やシステムの開発・導入が計画どおり進まない場合や信頼性の低いシステムを開発・導入してしまった場合において、サービス提供の維持が困難となり、信用失墜を通じて当社グループの事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、オンプレミスのデータセンターに加えクラウド環境も活用し、システムの冗長化やデータバックアップを実施しています。バックアップについては、自然災害などによるリスクを低減するため、クラウドと複数のデータセンターを地理的に分散配置し、サービスの安定稼働を確保しています。また、障害発生時の自動切替機能の整備や災害復旧計画(DR)の策定についても取り組みを進めており、順次強化を図っています。新技術やシステムの開発・導入に関しては、システム委員会を設置し、重要なシステム投資に際してリスクアセスメントを行い、経営レベルでの投資判断とリスク低減を図るほか、開発段階における品質確保のため、事前検証や段階的導入を行い、必要に応じて外部専門家によるレビューを通じて、信頼性の高いシステム構築を目指しています。

 

(6)情報セキュリティリスク

 当社グループは、会員制ポイントプログラム「タイムズクラブ」やモビリティサービス「タイムズカー」などを通じて、多くの顧客情報を保有しており、個人情報保護法をはじめ、各国の関連法令に基づき、これらの情報を適切に管理することが求められています。不正アクセス等のサイバー攻撃や業務上の過失等により大規模な情報漏えいやデータ改ざんが発生した場合、損害賠償や対応費用の発生に加え、信用失墜による事業への重大な影響が生じる可能性があります。また、ランサムウェア攻撃等によりシステムやデータが暗号化され利用不能となる場合、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、グループ横断型の組織を設置し、情報セキュリティ方針をはじめとするグループ共通のセキュリティ基準を策定するとともに、従業員に対する定期的な教育・訓練を実施しています。また、脆弱性管理、アクセス制御、暗号化技術の導入などの技術的対策を講じ、外部からの攻撃や内部不正の防止に努めるとともに、外部専門機関との連携により、定期的なフィードバックを通じて最新の脅威動向や改善点を把握し、継続的な改善を図っています。

 

(7)人的資本に関わるリスク

 当社グループは、2035年中長期ビジョンとして「モビリティサービスプラットフォーマーへの進化」を掲げ、中期経営計画を公表しました。これらの実現と達成のために「4つのネットワーク(人・クルマ・街・駐車場)の拡大・進化・融合」を重要なテーマとし、その推進に向け人材戦略を策定し、取り組んでいます。人材戦略においては、人的資本価値の最大化の指標に「生産性」を掲げ、その向上のために、既存事業の拡大や新規事業の創出による「価値創造」、「効率化及びビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)」の推進、多様な人材が活躍すべく「エンゲージメント」の向上を図っております。さらに、これらの推進に向け、5つの重点テーマとして「個の成長・スキル向上」「DX推進」「組織・制度のあり方」「DEI・健康経営の推進」「グループ理念浸透・風土醸成」を掲げ、各種人事施策を実行しております。人材戦略が十分に浸透・実行されない場合、従業員のエンゲージメント向上や能力開発が進まず、生産性の向上や組織力の強化が不十分となり、結果として中長期ビジョンの実現や中期経営計画の達成が困難となる可能性があります。

 当社グループは、このリスクを低減するため、経営層によるコミットメント強化、人事施策の進捗管理、従業員への継続的なコミュニケーションを通じて、人的資本経営の実効性を確保する取り組みを進めております。

 

(8)財務に関わるリスク

① 資金調達リスク

 当社グループの事業資金は、銀行借入・社債発行等により調達を行っております。今後、当社グループの事業環境が悪化し、信用格付けが格下げされた場合や金融市場の金利上昇等により、当社にとって有利な条件による資金調達が困難又は不可能となる結果、資金調達コストが増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、株主資本等の財務の健全性強化、債務償還額の平準化、債務の長期化及び固定金利での調達や金利スワップなどのデリバティブ取引による支払金利の長期固定化を行うことにより、資金調達にかかるリスクを抑制する方針をとっております。

② 為替変動リスク

 当社グループの連結財務諸表は日本円により表示されており、連結財務諸表作成にあたって海外子会社の現地通貨建ての財務諸表を円換算しているため、為替相場が急激に変動した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、外貨建の負債の一部については通貨スワップなどのデリバティブ取引を行うことにより、為替変動にかかるリスクの低減に努めております。

 

(9)自然災害・戦争・テロ・感染症等に関わるリスク

 地震、津波、洪水、台風、積雪、火山噴火等の自然災害により、駐車場及びモビリティ車両が毀損した場合や管理センター等の設備が壊滅的な損害を被った場合、お客様へのサービス提供が困難になると同時に修復・買替等に多額の費用が発生する等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、巨大地震等の甚大な自然災害やテロ・戦争の勃発による社会的・経済的混乱、深刻な感染症の流行等、予測の範囲を超える変化等により、経済活動の制限やお客様の外出自粛、従業員の被災・被害・罹患等が影響し、当社グループの事業が継続できなくなるおそれがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、駐車場やモビリティサービスの展開地域の分散を図ると同時に、これらの被害による損失を軽減するため、主にお客様及び従業員の生命・身体の安全確保、並びに当社グループの拠点における被害状況の確認及び二次災害の発生防止を目的とした「初動対応ガイドライン」及び事業の継続を目的とした「事業継続計画書」を事業セグメントごとに設置するとともに、これらに基づく教育・訓練の実施などによって事業継続マネジメントの推進を図っております。また、深刻な感染症が発生し、感染が大規模に拡大した場合には、これらに基づいた感染拡大防止策を徹底し、お客様や従業員の安全性を保つとともに、適切な事業運営ができるよう必要な措置を講じます。

 

(10)サービスの安全性に関わるリスク

 当社グループが提供するサービスにおいて、施設・設備・車両の整備や点検の不備、修繕・修理の未実施、又はサービススタッフによる誤操作や案内不備などが原因で重大な事故が発生した場合、お客様への補償対応が必要となるほか、社会的信用の失墜によりサービス利用の減少を招く可能性があります。さらに、行政処分による事業停止や認可取消など、事業や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、「安全性の確保」を最優先課題と位置づけ、法令に基づく点検に加え、当社グループ独自の厳格な基準による定期点検・修繕の徹底、サービススタッフへの安全教育・啓発の強化、事故・トラブル発生時の迅速な安全確保、原因究明、再発防止策の実行を継続的に実施することにより、事故防止と安全性向上を図るとともに、継続的な改善を通じてリスク低減に努めております。

 

(11)人権リスク

 当社グループ内のみならず、お取引先様を含めた当社グループ事業に関わる事業領域全体で人権を侵害する行為が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜やブランド価値の毀損等が生じ、当社グループの事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、国際人権章典(世界人権宣言と国際人権規約)、国際労働機関(ILO)の宣言、国連グローバル・コンパクトの原則などに沿って当社グループの「人権方針」を定めました。また、当社グループは「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿った事業運営を行っており、社内においては、人権に関する従業員教育や啓発活動、経営レベルの会議体における定期的なモニタリング等を実施するとともに、必要に応じて、社外関係先に対しても、直接的に確認・調査を行う等、当リスクの適切な管理に努めております。

 

(12)調達に関わるリスク

 当社グループは、事業運営にかかる資材等の一部につき、外部のお取引先様より調達をしております。お取引先様の事業において、当社への供給に影響するような自然災害や品質問題、供給不足や価格の高騰等が発生した場合、当社グループの事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループのお取引先様における法令違反や人権侵害等に関連する問題等が生じた場合、当社グループへの供給停止、納入遅延、又は発注元である当社グループの企業イメージの低下を招き、当社グループの事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、お取引先様選定に対し、多様化を推進するとともに、お取引先様の法令遵守や人権尊重に関しては、取引に際して、都度評価・選定を行っております。また、新規取引開始時には、基本契約書において当社グループの調達ガイドラインに沿った事業活動にご協力いただくことを定め、取引開始後はアンケート調査を通じてお取引先様とコミュニケーションを強化しております。これらの取り組みにより、最適なサプライチェーンの構築と、安定的な調達に努めてまいります。

 

(13)気候変動及び気候変動に付随する環境リスク

 当社グループが運営する事業領域にかかる次世代技術の進展・普及とお客様の環境意識の高まりにより、大量にEV等の環境配慮車やEV充電器等関連設備の導入が必要になった場合、設備投資コストや環境配慮車に関連した固有の管理コストが増加する可能性があります。さらに、今後エネルギー需要の変化等により燃料価格が高騰した場合、モビリティ事業の運営コストが増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。政策・規制面においては、温室効果ガス排出への課税等、費用負担を伴う環境規制のさらなる強化等が進んだ場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、環境負荷軽減への取り組みが不十分な場合には、当社グループの社会的な評価が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、喫緊の課題である気候変動に関しては、環境負荷低減に向けて気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同と情報開示を行うことで、お客様やお取引先様をはじめ、全てのステークホルダーの皆様と連携して取り組んでおります。なお、TCFD提言に沿った情報は、当社企業サイトにて開示しております。

 

配当政策

3【配当政策】

当社グループは、利益成長による企業価値向上を第一義と考えております。加えて、「2027年10月期 中期経営計画」においては、最適な株主資本の水準を900億円程度に設定するとともに、株主還元方針として、DOE(株主資本配当率)の指標を掲げ、その目安を10%程度と設定しております。

この指標のもと、成長投資と資本効率向上の両立を重視し、中長期的な成長に向けた事業投資及び人材投資を積極的に進めてまいります。さらに、その結果として生じる余剰資金については、配当や自社株買い等の実施により株主の皆様へ還元していくことを基本方針としており、将来的には総還元性向として100%に近い水準を目指します。

当連結会計年度の剰余金の配当については、上記の基本方針を踏まえつつ、業績や財務イベントの実施等を考慮し、1株当たり30.0円とすることを2026年1月29日開催予定の定時株主総会で決議し、実施する予定です。

また、2026年10月期は、1株当たり65.0円の配当予想としております。

 

なお、当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回であり、期末配当の決定機関は株主総会としておりますが、取締役会の決議により、毎年4月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 

■基準日が当事業年度に属する剰余金の配当

決議年月日

配当金の総額

1株当たり配当額

2026年1月29日

定時株主総会決議(予定)

5,119百万円

30.0円