リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要リスクは、以下の通りであります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 人権・コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、事業活動における人権の尊重及びコンプライアンスの確保を経営上の最重要課題の一つと位置付けております。しかしながら、将来において重大な人権の侵害や法令違反、または社会的規範や倫理から逸脱する行為等が発生した場合には、当社グループの社会的信用が著しく毀損される可能性があります。また、その結果として、顧客や視聴者・ユーザーの皆様や広告主をはじめとするお取引先の皆様などの信頼を損ない、業績に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
今般の当社子会社である㈱フジテレビジョンにおける人権・コンプライアンスに関する事案では、実際に当該リスクが顕在化いたしました。その結果、㈱フジテレビジョンの広告収入が大幅に減少したことを受けて連結業績は減収減益となり、当社グループに重大な影響を及ぼすこととなりました。
当該リスクに関して、当社グループでは、4月に取締役会・グループ社長会においてグループ各社のコンプライアンス事案の報告を必須化するとともに、5月には当社社長を委員長、人権分野を専門とする弁護士を副委員長とする「グループ人権委員会」の活動をスタートさせており、人権デューデリジェンスの継続的な実施と、実効性のある人権救済メカニズムの構築を進めてまいります。あわせて、人権の尊重を最優先としたうえで、人材の価値を最大限に引き出す人的資本経営を推進するとともに、従業員の「心理的安全性」を高めるための職場環境整備や研修、ガイドラインの策定とその徹底にも積極的に取り組んでまいります。
(2) メディア・コンテンツ事業に関するリスク
①景気変動等による影響
当社グループのメディア・コンテンツ事業の中核である放送事業の売上高の多くはCM枠の販売による広告収入で構成されています。今後、景気変動のほか大規模災害や感染症の拡大その他の様々な要因に基づき国内景気が悪化するなどして国内の総広告費が減少した場合、CM枠の販売価格を決定する上で重要な要素である視聴率が低下した場合、そのほか当社グループの他のメディア及びコンテンツ関連事業において景気悪化等の影響が波及した場合には、当社グループの業績等に負の影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、㈱フジテレビジョンを中心に収益力を強化するメディア・コンテンツ事業と、投資を拡大し中長期的に一層の成長を目指す都市開発・観光事業をグループの中心事業としつつ、今後もコンテンツのラインナップの一層の充実とともに、様々なメディアや販路を通じて、当社グループが提供するコンテンツやサービスの領域を拡げ、ビジネス圏の拡張を図る方針としております。
以上の考えに基づき、当社グループは過度に特定の事業に頼ることなく、多種多様な事業を展開して強固な事業ポートフォリオを構築することで互いのビジネスを補完しあい、安定的でバランスのよい成長を目指していく方針です。
②メディア・コンテンツ事業を取り巻く競争環境
昨今、インターネットでの動画配信や音楽配信、動画広告が飛躍的に拡大し、生活者のコンテンツへの接触方法の多様化・細分化が加速しています。こうした環境変化により、生活者による既存のメディアへの接触時間が減少し、媒体価値が低下した場合には、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、㈱フジテレビジョンを地上波広告収入が中心のメディア企業から、コンテンツから多様な収益を得ていく「コンテンツカンパニー」へと進化させ、コンテンツを基軸に、地上波だけでなく、配信デジタル事業・映画など多様な収益機会を得る事業構造への抜本的な改革を進めていく方針です。また、メディア・コンテンツ・セグメント全体で、コンテンツIPの開発・取得や配信関連ビジネスに注力し、中長期的に成長が期待できる分野や競争力を有するビジネス領域に集中的に経営資本を投下してまいります。さらに新しいウェブメディアの開発や、海外マーケットへの進出も加速させ販路の拡大を図ります。
③著作権など知的財産権について
当社グループでは、テレビ番組などのコンテンツの放送・配信等を行うにあたって、著作物、レコード、実演をはじめ、多様な権利処理に真摯に取り組む必要があります。万が一、当社グループが著作権者等に対して不適切な対応を行った場合には、放送・配信等の差し止めや損害賠償請求等により、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。当社グループは他者の著作権・著作隣接権などを侵害することのないよう権利処理に真摯に取り組むほか、著作権や権利処理に関する社員教育にも引き続き注力してまいります。また、ビジネスの核となる「コンテンツ」の価値を守るため、知的財産の適切な保護・管理に努めています。㈱フジテレビジョンでは、番組コンテンツの無許諾アップロードや海賊版DVD販売などの著作権侵害行為の監視・削除要請等を行っています。
(3) 都市開発・観光事業に関するリスク
都市開発・観光事業は、景気変動のほか大規模災害や感染症の拡大その他の様々な要因に基づく景気動向の影響を受けやすく、都市開発事業の中核事業であるビル事業・資産開発事業・住宅事業は、国内経済情勢と連動した不動産市況の動向によっては、空室の発生・賃料水準の下落及び販売価格の下落により当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。
また、観光事業においても、景気の悪化等によるインバウンドを含む旅行・観光需要の減少、国際情勢の変化等により利用客が減少し、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、本事業に加えて、㈱フジテレビジョンを中心に収益力を強化するメディア・コンテンツ事業をグループの中心事業と位置づけ、さらに多様なコンテンツと様々なメディアや販路の強化によりグループの一層の事業成長を目指す方針としており、事業ポートフォリオとしてのバランスのよい成長を目指していきます。また、本事業の中核であるビル事業・資産開発事業・住宅事業では、一定の財務規律のもとで、資産の開発や売却、さらにはREITを活用した保有資産リスクの分散化など経営環境に応じた保有資産の見直し等によりリスクを適切にコントロールしております。観光事業はわが国の成長産業として拡大が見込まれており、中長期的に高い成長を期待できる分野と考えています。国内及びインバウンドの需要拡大に合わせてホテルの開発を進めるなど、引き続きリスクをコントロールしながら長期的な視点で投資を継続していく方針です。
(4) 設備投資及び投資等について
当社グループは、持続的な成長を促進していくために、適切な設備投資及び投資を継続し、当社グループ事業の強化を図る方針ですが、投資額に見合う十分な利益を確保することができない可能性もあります。
当該リスクに関して、当社グループでは、設備投資及び投資について専門部局をメンバーとする会議体や専門部署等を配するなどして、専門的見地から検討を進めることとしております。なお、大型の出資・投資案件については、経営会議にも付議し、取締役会でも決議を行う等、複数のチェック体制を確保し、慎重かつ多角的に検討する仕組みとしております。
(5) 当社グループ事業に対する法的規制に関するリスク
当社は、放送法に基づく認定放送持株会社として総務大臣の認定を受けております。認定放送持株会社の認定には放送法で定める要件に適合する必要があり、当該要件に適合しなくなった場合は、認定を取り消される可能性があります。また、当社グループの中核事業である放送事業では、放送法・電波法に基づく放送免許又は認定を受け、事業を行っております。
仮に法令に基づく認定若しくは放送免許の取消し等の処分を受けた場合又は再免許を受けることができなかった場合は、当社グループの業績等に負の影響を及ぼす可能性があります。当社では、要件や認定条件への適合状況についてモニタリングとチェック体制を強化し適切な運用を図るよう努めております。
当社グループでは、グループ経営に重要な影響を与える法的な問題及びリスクに対しては、グループコンプライアンス等規程に基づき、取締役及び使用人等の法令順守について適切な体制を構築しております。また、当社では内部監査規程に基づき、当社の内部監査部門が、当社グループのコンプライアンスの状況を定期的に監査しております。
(6) 大規模災害等による事業継続に関するリスク
大規模災害等により、当社グループの中核である放送事業において、番組を放送するために使用している放送機材及び放送施設に障害が発生した場合や、その他イベントや映画における興行の中止や減少、通信販売事業、映像音楽事業などにおける商品等の製造、調達や流通への被害、都市開発・観光事業における保有・開発資産の毀損等が発生した場合には、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、放送設備等に障害が発生した場合でも、バックアップ用放送設備または放送用リース設備の代替システムの利用等により放送を継続する仕組みを備えております。ただし、既存対応では対処しきれない自然災害が発生した場合等は、放送を長期間停止するリスクが想定されます。
なお、当社グループでは、年に数回、安否回答確認訓練やBCP訓練を定期的に開催し、平常時から防災意識の向上と連絡体制の確認に努めております。
(7)気候変動に関するリスク
当社グループでは、気候変動は環境・社会、事業活動にとっての脅威であり、これらへの対応は重要な経営課題の一つであると認識し、2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明しました。また、気候変動が当社グループの事業にもたらすリスクと機会について、放送事業、通販事業及び都市開発・観光事業を軸に特定し、その対応策などについて検討を進め、2023年5月にTCFD提言に基づく情報開示を行い、適宜その進捗情報を開示しております。当社グループは分析結果とその対応策を経営計画へ反映するなどして、引き続き気候変動への対応を積極的に進めてまいります。
TCFD提言に基づく情報開示につきましては当社ホームページに掲載しております。
[掲載ページ] https://www.fujimediahd.co.jp/ir/pdf/tcfd241107.pdf
(8) 個人情報の取扱いに関するリスク
当社グループは、視聴者情報、番組出演情報、通信販売事業ほか各事業における顧客情報などのデータベースを管理・運営しておりますが、当該情報が外部から不正にアクセスされた場合や、個人情報の外部流出等が発生した場合には、当社グループの業績及び企業としての社会的信用に負の影響を与える可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、データベースにおける顧客等の個人情報について社内でのアクセス権限を設定するなどその取扱いには十分な注意を払い、セキュリティの強化に努めております。
また個人情報のみならず、事業活動を通じて取得する全ての情報の適正な管理及び保護を重要な経営課題と認識しており、情報を安全に管理する諸方針を、2024年11月に改めてグループの「情報セキュリティ基本方針」としてまとめました。本方針に基づいてグループ全体で情報セキュリティ対策を推進してまいります。
(9) 人材に関するリスク
当社グループにおいて、多様な「価値」を生み出す要となるのは「人」です。しかし、各事業を取り巻く環境が急速に変化し、それに対応するスキルを持つ人材の獲得競争が激しさを増す中で、必要な人材を獲得できない場合や、優秀な人材が流出した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、5月に公表した「改革アクションプラン」において、人的資本経営の推進のもと、「ビジネスマインドをもった人材の育成・獲得」や「多様な人材の活躍促進」を掲げています。外部人材の積極的な採用や交流、リスキリングの推進、スキルアップ研修の充実に力を入れてまいります。また、子育てや介護、病気などで休業・休職を余儀なくされる従業員にも配慮し、多様な働き方に対応した職場環境の整備も進めています。さらに、社員一人ひとりが自己の成長と幸せを実感しながら日々の業務に取り組めるよう、健康経営の推進にも注力してまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題のひとつとして位置づけ、認定放送持株会社体制のもと、企業価値の向上に向け積極的にグループ事業の成長に向けた投資や新たな事業領域への参入等を行うとともに、業績に応じた成果を株主に配分することを基本方針としております。
当期(2025年3月期)は、剰余金の配当については連結ベースの目標配当性向40%を基本に、株主への利益還元を重視する観点から配当の安定性等を考慮して決定する方針としております。当期は、㈱フジテレビジョンの当期及び今後の業績動向を踏まえ、当社及び㈱フジテレビジョンの固定資産の減損損失の計上及び㈱フジテレビジョンの繰延税金資産の取り崩しを行ったことにより、当期の親会社株主に帰属する当期純損益は損失を計上いたしました。しかしながら、期末配当金につきましては、配当の安定性等を考慮して決定する方針のもと、従来の配当予想と同額の1株当たり25円とさせていただきます。
これにより年間配当金は中間配当金25円と合わせて1株当たり50円となります。
当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本とし、配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は定時株主総会であります。なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めております。
基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下の通りであります。