2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    4,269名(単体) 40,015名(連結)
  • 平均年齢
    46.5歳(単体)
  • 平均勤続年数
    21.3年(単体)
  • 平均年収
    7,990,466円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

2024年3月31日現在

 

セグメントの名称

従業員数(人)(注1)

デジタルワークプレイス事業

31,048

プロフェッショナルプリント事業

ヘルスケア事業

3,557

インダストリー事業

3,839

報告セグメント計

38,444

その他

651

全社(共通)

920

合計

40,015

(注1)従業員数は就業人員数であります。

(注2)デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業につきましては、総じて同一の従業員が両事業に従事しております。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

2024年3月31日現在

従業員数(人)(注1)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)(注2)

4,269

46.5

21.3

7,990,466

 

セグメントの名称

従業員数(人)(注1)

デジタルワークプレイス事業

1,762

プロフェッショナルプリント事業

ヘルスケア事業

381

インダストリー事業

1,113

 報告セグメント計

3,256

その他

93

全社(共通)

920

合計

4,269

(注1)従業員数は就業人員数であります。

(注2)平均年間給与は、賞与及び基準外賃金が含まれております。

(注3)デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業につきましては、総じて同一の従業員が両事業に従事しております。

 

(3)労働組合の状況

 当社及び一部の子会社において労働組合が組織されております。

 当社においては、コニカミノルタ労働組合があります。同組合は、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会に加盟しております。労使間には労働協約が締結されており、労使における経営協議会を通じて円滑な意思疎通が図られております。2024年3月31日現在の組合員数は、3,960名であります。

 また、一部の子会社における労働組合に関しましても、労使関係は良好であります。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注1)

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

10.6

75.2

76.6

76.5

72.8

(注1)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

(注2)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注1)

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

コニカミノルタジャパン㈱

6.5

66.7

83.0

83.9

78.0

コニカミノルタメカトロニクス㈱

1.9

50.0

76.3

80.3

91.7

キンコーズ・ジャパン㈱

9.2

(注3)

65.1

74.8

80.8

㈱コニカミノルタサプライズ

3.2

(注3)

83.6

88.9

75.9

コニカミノルタテクノプロダクト㈱

4.3

0.0

81.4

79.2

63.2

コニカミノルタIJプロダクト㈱

(注3)

(注3)

80.5

80.5

79.1

コニカミノルタプラネタリウム㈱

18.8

(注3)

(注3)

(注3)

(注3)

コニカミノルタビジネスアソシエイツ㈱

19.6

(注3)

104.3

82.1

91.6

コニカミノルタウイズユー㈱

(注3)

(注3)

108.9

109.5

104.9

コニカミノルタ情報システム㈱

3.7

(注3)

(注3)

(注3)

(注3)

(注1)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

(注2)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

(注3)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する基本的な考え方 ―中長期の成長に向けて

 当社の考えるサステナビリティとは、「事業によって社会・環境の課題を解決することで持続可能な社会の実現に貢献し会社が成長していくこと」です。社会・環境課題の解決を、経済合理性のある事業として実行することで、当社の持続的な成長を遂げることができると考えております。

 この考えに基づき、2020年には、10年後の2030年のあるべき「持続可能な社会」の姿を見据えて、取締役会の決議を経て長期経営ビジョンを策定し、当社が向き合うべきマテリアリティ(重要課題)を特定しました。

 

①長期経営ビジョン-2030年の社会と当社の存在意義

 当社は2020年に2030年の社会を考察し、世界人口の構造変化、デジタル革命の進行、バイオテクノロジーの産業利用拡大、世界構造の多極化、気候変動・温暖化の潮流から、「組織や個人が、爆発的に増加するデータを活用して多様な価値を創造し、持続的に発展する自律分散型の社会」が訪れると考えました。このような社会においては、組織や個人が求める豊かさが個別化・多様化し、それらの充足ニーズが高まる一方、資源不足や気候変動による影響、社会保障費の増大、雇用や創造への機会格差といった課題の解決が求められます。

 この世界観のもと、当社は独自のイメージング技術をコアに、ニーズと課題のトレードオフを解消し、「人間中心の生きがい追求」と「持続的な社会の実現」とを高次に両立することが当社の存在意義であると結論付け、「Imaging to the People」という長期の経営ビジョンステートメントに集約しました。

 当社発足以来不変の「経営理念」の下、価値創造の源泉としての企業文化・風土である「6つのバリュー」を基盤に経営ビジョンステートメント「Imaging to the People」の実現を目指しております。

 

 

②マテリアリティと価値創造プロセス

 当社は自社が向き合うべき重要課題として、「働きがい向上および企業活性化」、「健康で質の高い生活の実現」、「社会における安全・安心確保」、「気候変動への対応」及び「有限な資源の有効活用」の5つをマテリアリティとして特定しました。

 2030年に想定される社会課題からバックキャストして、当社の強みである無形資産(顧客関係、技術の融合、多様な人財)を融合させ、4つの事業群を通じた顧客との共創により生み出される顧客価値、結果としての経済価値であるキャッシュ・フローを創出し、環境・社会課題の解決のインパクトを拡大していく価値創造プロセスを持続的に繰り返していくことで企業の成長を図ってまいります。

 

価値創造プロセス

 

③持続的な価値創造を支える無形資産

 次の3つの無形資産は当社が継続的に価値を生み出すための源泉となるものです。

 

●顧客関係

 当社は長年にわたり事業活動を通じて世界各地で顧客との関係性を築いてきました。デジタルワークプレイス事業では、オフィス事業で培ったグローバルの顧客基盤からの知見を活かすとともに、オフィスや病院、物流、製造、教育といった様々な業種・業態の現場の課題に向き合い、顧客のワークフロー改革や価値創造を支援することで、顧客との関係性をより強固なものとしております。インダストリー事業では、業界をリードする先進的な顧客との長期的な関係性構築により、時代の先を行く技術の実用化やバリューチェーンの変革等、当社が社会に大きな価値を提供する機会につながっております。

 

●技術の融合

 当社が根源的に持つ強みは、創業以来150年にわたり、社会の“みたい”に応え続けてきた4つのコア技術(材料・光学・微細加工・画像)です。このコア技術にAI技術を組み合わせることに2014年から取り組み、介護支援サービス等の事業創出や、製造現場の安全安心対策等、様々な社会課題の解決に応用できる技術に進化させてきました。また4つのコア技術を事業をまたいで「融合」させることで新たな価値を創造する取組みも始まっております。プロフェッショナルプリント事業のデジタル印刷機に対する自動品質最適化ユニット「IQ-501」の搭載はその一例で、「光学」、「微細加工」、「画像」を組み合わせ、印刷作業の自動化によるワークフロー改革を実現しております。

 

●多様な人財

 当社の人財における優位性は、グローバルな事業展開や積極的なM&A等を通じて獲得してきた多様性にあります。獲得した多様性を活かすため、人事制度の整備とともに、ポテンシャルのある人財が挑戦できる機会の提供を進めており、特に女性活躍推進は、これを経営課題と位置付けて注力しております。同時にグループとしての一体感の醸成に向け、従業員の満足度調査をグローバルで毎年実施し、経営方針の浸透、職場の課題の抽出と解決を行っております。また前述のコア技術とAI、IoTの技術を組み合わせる人財の増強にも目標値を設定して推進しております。

 

(2)重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針

 

①ガバナンス <サステナビリティ関連のリスク・機会を監視及び管理するしくみ(プロセス・統制・手続き)>

 当社では、取締役である代表執行役社長がサステナビリティマネジメント全体についての最高責任と権限を有し、その有効性について責任を担っております。代表執行役社長のもと、サステナビリティを担当する各役員がグループ全体のサステナビリティマネジメントを推進しております。

 

 重要なサステナビリティ課題に関する議論や意思決定は、ほかの重要な経営課題と同様に、社長及び執行役・執行役員が参加する経営審議会その他の会議体の場で行っております。

 サステナビリティ中期経営計画は、担当する各役員が策定し、会社全体の経営計画としてとりまとめ、経営審議会その他会議体での審議・承認を経て、取締役会の承認を得ます。またマテリアリティについても、中期経営計画の策定プロセスの中で、経営企画を担当する役員を中心にサステナビリティを担当する各役員がリスクの変化度合いを見直すローリングを行い、必要に応じて見直しを行い、経営審議会その他の会議体での審議・承認のうえ、取締役会の承認を得ております。

 サステナビリティを担当する各役員は、サステナビリティに関する中期計画を検討・推進する機関として、必要に応じて「推進会議」を設定しております。例えば、環境に関する中期計画を検討・推進する機関として「環境推進会議」を設定しております。環境を担当する役員が議長となり、各事業部門やコーポレート部門等の各組織長に任命された推進責任者が参加し、環境に関する中期計画、年度計画の審議、四半期ごとの進捗状況の確認やグループの環境課題に関する検討を行っております。

 

② リスク管理 <サステナビリティ関連のリスク・機会を識別・評価・管理するプロセス>

 当社は、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付け、中長期的な視点でリスクを評価しております。

 サステナビリティ関連の中長期のリスクは、マテリアリティをマネジメントするプロセスの一環として継続的に監視し、必要に応じてマテリアリティの改訂に反映させます。具体的には、中期経営計画の策定プロセスの中で、経営企画を担当する役員を中心にサステナビリティを担当する各役員がリスクの変化度合いに基づいて、必要に応じて見直すことで、その妥当性を継続的に担保しております。

 短期・中期のリスクを含む全リスクはリスクマネジメント委員会において管理しております。

 執行役及び執行役員の職務分掌に基づき、それぞれの担当職務ごとにリスク管理体制の構築と運用にあたっております。リスクマネジメント委員会は定期的(年2回)及び必要に応じて臨時に開催しており、抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。リスクマネジメント委員会の協議内容は定期的に監査委員会に報告しております。

 なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスの詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(3)サステナビリティ課題に関する重要性の評価と優先順位付け <サステナビリティ課題を特定するプロセス>

 当社では2020年に、10年後の2030年にあるべき「持続可能な社会」の姿を見据えて、社会・環境課題が当社に与える影響をリスクと機会の観点から評価し、そこからのバックキャスティングによって「今なすべきこと」を「5つのマテリアリティ」として特定しました。その際のプロセスは次のとおりです。

 

STEP1:課題のリストアップ

 GRIスタンダードやSDGs等の国際的なフレームワークやガイドライン、各専門分野のマクロトレンド等を参照しながら環境・社会・経済面での課題を広範囲にリストアップしました。ストックホルム・レジリエンス・センターの「SDGsウェディングケーキモデル」をベースとし、「ECONOMY(経済)」「SOCIETY(社会)」「BIOSPHERE(環境)」の関係性を念頭に置きながら、課題を抽出しました。抽出にあたっては、当社が関連する、あるいは関連する可能性がある事業領域、そのサプライチェーン/バリューチェーンを範囲として、社会・環境変化や規制・政策動向、ステークホルダーからの要請事項等を考慮して進めております。

 

STEP2:課題の抽出と重要度評価

 リストアップした課題の中から、特に当社に関連性の高い分野を抽出したうえで、マテリアリティ分析(重要度評価)を行いました。当社のマテリアリティ分析は、リスクと機会の側面をそれぞれ評価している点に特徴があります。リスクと機会をそれぞれ評価することで、SDGsを進めるにあたり、企業に期待されている「社会課題を機会と捉えビジネスを通じて解決することで事業成長を図る」ことを実践しております。マテリアリティ分析は、それぞれ「ステークホルダーにとっての重要度(顧客、取引先、株主・投資家、従業員等)」と「事業にとっての重要度(財務的な影響度)」の2軸で5段階評価し、優先順位を付けました。

 

STEP3:妥当性確認、特定

 経営企画を担当する役員は、これらのマテリアリティの評価プロセス及び評価結果の妥当性を検証し、優先的に取り組むべきマテリアリティを特定しております。特定したマテリアリティは、経営層による審議のうえ、取締役会による承認を受けております。またマテリアリティを定期的にレビューし、必要に応じて見直すことにより、その妥当性を担保してまいります。

 

(4)重要なサステナビリティ課題と、関連するリスク及び機会<特定したサステナビリティ課題の詳細と関連するリスクや機会>

 2023年時点でのマテリアリティと関連するリスクと機会は次の表のとおりです。

 当社の各事業はマテリアリティを意識した価値創造に取り組んでおります。例えば、インダストリー事業では、製造現場で熟練工の経験値に基づくスキルに依存していた検査工程を自動化・省人化することで熟練工の技術継承問題解決に貢献すると同時に、最終製品の高品質化に貢献することで「働きがい向上および企業活性化」に寄与しております。また、プロフェッショナルプリント事業では、適時・適量・適所での生産による輸送・保管・廃棄・中間材の低減といった顧客サプライチェーンの変革を通じて「気候変動への対応」と「有限な資源の有効利用」に寄与しております。さらに、ヘルスケア事業では早期発見・早期診断による「健康で質の高い生活の実現」に寄与しております。

 なお、サステナビリティに関するリスクは、マテリアリティのマネジメントやリスクマネジメントのプロセスに落とし込んで対応しております。

 

 

社会・環境課題

(2030年想定)

リスク

機会

働きがい向上

および

企業活性化

デジタル格差

人手不足の解消

雇用や創造への機会格差

ダイバーシティを重視した環境づくりの停滞による、従業員の自律性、イノベーション力の低下

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客の生産性の向上と創造的な業務へのシフトを支援

健康で質の高い生活の実現

医療や介護の持続性が低下

医療アクセスの制限

社会保障費抑制

イメージングと医療ITサービスによる早期診断、医療費抑制、QOLの向上への貢献

社会における安全・安心

確保

設備老朽化等による労働災害発生のリスク

製品・サービスに起因する重大事故による企業や社会における損害の発生

画像監視による企業や社会の安全・安心の確保

高度な計測・検査による顧客の品質確保

気候変動への対応

脱炭素社会への移行による変化への適応

気候変動による社会・経済・生態系への影響

持続可能なエネルギーへの転換遅れによる競争力低下

ペーパーレスの進行に対応する事業転換の遅れ

異常気象によるサプライチェーンの寸断

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客企業や社会におけるエネルギー・CO2負荷低減

有限な資源の有効利用

循環型社会への移行による変化への適応

資源枯渇による社会・経済・生態系への影響

持続可能な原料への転換遅れによる競争力低下

資源不足による部材コストアップと供給不安定化

ワークフロー、サプライチェーンの変革による顧客企業や社会における資源抑制・資源有効利用

 

 

各事業の取組みと関連するマテリアリティ(主要なもののみ)

 

(5)重要なサステナビリティ課題への取組み及び指標

 

① 気候変動

 当社の環境経営は、「環境課題を解決していくことで、事業を成長させていくこと」をコンセプトとし、社会から必要とされる会社になることを目指しております。地球規模での気候変動問題を解決するには、自社だけの取組みでは限りがあります。そのため、当社は、取引先、顧客を中心とするステークホルダーとの連携によって地球上のCO2削減に積極的に関わっていく「カーボンマイナス」の実現を目指しております。カーボンマイナスとは“自社責任範囲と定められるCO2排出量(スコープ1,2,3排出量)(注)に比べて、責任範囲外でのCO2削減貢献量(スコープ1,2,3以外での削減)を多くすること”と当社では定義しております。

 また、自社責任範囲のCO2排出量において「ネットゼロ」を目指す長期の目標を設定しております。ステークホルダーが社会的責任を果たす活動の支援をするだけでなく、自社の社会的責任を果たすことで、脱炭素化の効果を加速するとともに、当社とステークホルダーの結びつきを広げ、ともに事業成長していくことを目指しております。

 

(注)スコープ1:燃料の使用などを通じて企業が「直接排出」する排出量

スコープ2:他社から供給された電気、熱、蒸気を使用した事による「間接排出」の排出量

スコープ3:スコープ1,2以外の、原料調達・物流・製品使用などバリューチェーンで発生する自社の事業活動に関連した排出量

 

〔ガバナンス〕 気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンス

 当社では、気候変動への対応をサステナビリティマネジメントの管理対象の一つと位置付けており、主要な目標値の設定や変更等の意思決定は、最終的には取締役会の承認を得て実施しております。具体的には、2008年、2017年、2020年、2023年に取締役会で目標値の設定や変更の承認を実施しております。

 サステナビリティマネジメント体制については、「(2)重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針 ①ガバナンス」に記載しております。

 

〔戦略〕 気候関連のリスク及び機会に係る組織の事業・戦略・財務に対する影響

 当社は気候変動リスクに対処するため、2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス排出ネットゼロを目指すビジョンを設定しております。気候変動に起因するリスクを事業リスクに融合し、気候変動対策にかかわる中期目標及び年度計画を、製品の企画・開発、生産・調達、販売等の事業中期計画と連動させることで、ビジネスを通じて目標の達成を目指しております。

 また機会の観点では、顧客企業や社会におけるエネルギー・CO2削減の貢献度を高め事業成長を図る「カーボンマイナス」を2025年に達成することを目指しております。創業以来150年かけて各事業が育ててきたコア技術を、AI活用(データ駆動型開発・生産)と事業領域を跨ぐ技術融合で“進化したコア技術群”として強化し、ワークフロー、サプライチェーンの変革によるエネルギー・CO2削減の貢献度を高め、インダストリー事業の成長と、社会に必要とされる企業となるための事業創出を進めてまいります。

 

<気候変動シナリオ分析の実施と結果>

 当社では、気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合と、気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合の2つのシナリオを想定し、2030年の視点で当社グループの業績に影響を及ぼす事業リスクと、気候変動における課題の解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれ特定しております。

 シナリオ分析を行う際の枠組みとして、気候変動シナリオ分析の対象事業分野の特定、重要な気候関連リスク及び機会の特定、気候変動に関する既存の科学的シナリオの検討、シナリオに対するリスク及び機会とその財務影響の検討と明確化、今後の対応の方向性・方針・戦略の検討のプロセスを経て実施しております。

 

●気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合

 

気候変動の「リスク」への対処

当社への影響

対象セグメント

分類

財務影響

時間軸

対処

調達・製造コストの上昇

ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達の要求

インダストリー事業

デジタルワークプレイス事業

市場

評判

短期

生産・研究開発・販売拠点における再生可能エネルギー由来電力の導入

化石資源・化石燃料の代替化

インダストリー事業

政策・法律

中~長期

CO2フリー燃料の導入検討、ICP(注1)の導入検討、調達戦略の最適化

新たな排出規制・税制への対応

インダストリー事業

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

ヘルスケア事業

政策・法律

短~中期

省エネ生産技術開発

製品開発コストの上昇

新たな製品エネルギー効率規制と市場への対応

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

政策・法律
市場

短期

環境ラベル新基準相当の製品省エネ設計、公共調達・入札要件への対応

製品サービスの需要変化による売上減少

オフィスにおける紙への出力機会の減少

デジタルワークプレイス事業

市場

短~中期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

(注1)インターナル・カーボンプライシング

 

気候変動の「機会」

当社への影響

対象セグメント

分類

財務効果

時間軸

製品サービスの需要変化による売上増加

印刷産業及びアパレル産業のサプライチェーンを変革するデジタルソリューション

プロフェッショナルプリント事業

製品/サービス

短~中期

製品カーボンフットプリントを低減した機能材料、使用済みプラスチックの分別性・リサイクル率向上に貢献する材料技術・センシング技術、インクジェット技術による生産プロセスの変革、メタンガスの漏えいの早期発見と排出量の削減に貢献できるガス漏えい検査システム

インダストリー事業

製品/サービス

短~中期

 

●気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合

 

気候変動の「リスク」への対処

当社への影響

対象セグメント

分類

財務影響

時間軸

対処

生産能力減少による収益減

気候パターンの変化に伴う自然資源の供給量不足・供給停止

インダストリー事業

慢性物理

長期

特定の自然資源に依存しない製品設計と開発

大規模気候災害の発生に伴うサプライチェーン分断

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

急性物理

中期

事業継続管理(BCM)の構築、消耗材の域別分散生産及び供給

製品サービスの需要変化による売上減少

異常気象及び森林火災の発生に伴う森林資源へのアクセス制限

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

慢性物理

長期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

 

気候変動の「機会」

当社への影響

対象セグメント

分類

財務効果

時間軸

製品サービスの需要変化による売上増加

急性的な異常気象・自然災害への防災・減災に貢献するセンシングソリューション

インダストリー事業

製品/サービス

中期

 

「リスクと機会の分類」

移行リスク

政策・法律、技術、市場、評判

物理的リスク

急性物理、慢性物理

機会

資源効率、エネルギー、製品/サービス、市場、レジリエンス

 

「財務影響」の定義と評価基準

追加コスト又は利益減少 10億円以上

追加コスト又は利益減少 1~10億円

追加コスト又は利益減少 1億円未満

「財務効果」の定義と評価基準

利益創出 100億円以上

利益創出 10~100億円

利益創出 10億円未満

「時間軸」の定義と評価基準

長期

10年以上

中期

3~10年以内

短期

1~3年以内

 

〔リスク管理〕 気候関連のリスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス

 当社は、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付け、中長期的な視点でリスクを評価しております。気候変動を含む環境リスクは、中長期的な観点から、「気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、低炭素社会へ移行した場合」と「気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合」の2つのシナリオで気候変動リスクの影響度と不確実性を評価し、管理しております。またこの環境リスクをグループ全体の経営リスクの一つとして位置付け、リスクマネジメント委員会において管理しております。

 気候変動への対応に関する計画や施策について、四半期ごとにグループ環境推進会議において審議するほか、リスクの変化度合いを見直すローリング作業を同会議にて毎年2回行い、リスクを再評価しております。計画の進捗状況については、グループ環境責任者から代表執行役社長に毎月報告されております。また重要な環境課題についても、グループ環境責任者から経営審議会その他の会議体、リスクマネジメント委員会等に報告されております。取締役会では、気候変動への対応に関する経営計画の進捗について定期的に報告を受け、その執行状況を監督しております。

 なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスの詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

〔指標と目標〕気候関連のリスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標

 当社では、気候変動のリスクと機会を管理する指標として前述の「カーボンマイナス目標」、「製品ライフサイクルCO2排出量」(スコープ1,2,3)、「再生可能エネルギー由来電力比率」に加え「CO2削減貢献量(スコープ1,2,3以外での削減)」を定めております。

 「カーボンマイナス目標」においては、当社の製品ライフサイクルの範囲外において、私たちが排出するCO2(製品ライフサイクルCO2排出量)よりも多くの排出削減貢献(CO2削減貢献量)を社会・顧客で創出する、「カーボンマイナス」の状態を2025年までを期限として実現することを目標としております。

 また、「製品ライフサイクルCO2排出量」には、スコープ1,2の全て(生産段階、販売・サービス段階のCO2排出量)と、主要なスコープ3(調達段階、物流段階、製品使用段階のCO2排出量)を含めております。中期的には2025年までに2005年度比で61%削減(80万トン)、2030年までに70%削減(62万トン)することを目標として設定しております。2023年度は、約75万トン(スコープ1は15万トン、スコープ2は14万トン、主要なスコープ3は46万トン)で2022年度の58%削減から63%削減まで到達しました。当社ではCO2排出量の実績値について第三者保証を取得し妥当性を担保しております。長期的には、2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス排出をネットゼロにする目標を設定しております。

 

◆製品ライフサイクルCO2排出量削減の推移と目標

2005年度比

2022年度

2023年度

2025年度目標

2030年度目標

2050年度目標

製品ライフサイクルCO2排出量

(スコープ1,2,3)

58%削減

(85万トン)

63%削減

(75万トン)

61%削減
(80万トン)

70%削減
(62万トン)

ネットゼロ

◆直近のCO2排出量の内訳

実績

2022年度

2023年度

スコープ1

15万トン

15万トン

スコープ2

15万トン

14万トン

主要なスコープ3

55万トン

46万トン

合計

85万トン

75万トン

(昨年度比12%削減)

 

 「再生可能エネルギー由来電力比率」では、化石燃料を利用できなくなる将来予測を踏まえ、当社の事業活動で使用する電力における再生可能エネルギー由来の割合を、中期的には2030年までに50%以上に高め、2050年までに100%にする目標を設定しており、スコープ2の削減に寄与します。再生可能エネルギー由来電力比率は、マレーシアの生産拠点における再エネ電力使用の本格稼働により、2022年度の12.3%から2023年度は約13%程度まで高まりました。

 「CO2削減貢献量(スコープ1,2,3以外での削減)」では、主にプロフェッショナルプリント事業で、アナログからデジタル印刷への作業工程変革による生産性向上を実現するデジタルプリンターの販売拡大に取り組んでおります。その結果「CO2削減貢献量」は2023年度の目標63万トンに対して実績は63万トンでした。

 また、中期経営計画の目標達成へのインセンティブを高めるとともに自社株保有の促進を図るため、中期株式報酬(業績連動型)を構成する評価指標のうち、非財務指標として「施策によるCO2排出削減量(注)」を設定しております。執行役社長及びその他の執行役の役員報酬は、中期経営計画の終了後、目標達成度に応じて0%~200%の範囲で決定され、当社株式が交付されます。

 

(注)当初「CO2排出量削減率」を指標として設定した気候変動への対応においては、生産量・販売量の影響を考慮し、「施策によるCO2排出削減量」に改定することを2024年4月23日開催の報酬委員会において決議しました。

 

② 自然資本

当社は、自然資本による事業への依存と影響、その評価及び機会とリスクに取り組んでいく姿勢を明確にするため、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD:Task Force on Nature-related Financial Disclosures)」の提言に賛同しております。2024年1月、スイスで開催された世界経済フォーラムにおいて、TNFDアーリーアダプター企業として登録いたしました。自然資本の依存と影響の評価及びその情報をTNFDフレームワークに沿って開示いたします。

 

〔ガバナンス〕 自然関連のリスク及び機会にかかる組織のガバナンス

 当社では、代表執行役社長が生物多様性への対応を含む環境マネジメント全体についての最高責任と権限を有し、環境マネジメントの有効性について責任を担っております。 サステナビリティマネジメント体制については、「(2)重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針 ①ガバナンス」に記載しております。

 また自然関連の依存・インパクト、リスク・機会を評価・管理する際に考慮すべきステークホルダーの影響については、当社の人権方針、人権デュー・デリジェンスに沿って考慮しております。当社の人権方針、人権デュー・デリジェンスについては、「(5)重要なサステナビリティ課題への取組み及び指標 ④人権」に記載しております

 

〔戦略〕 自然関連のリスク及び機会にかかる組織の事業・戦略・財務に対する影響

2023年5月、当社はマテリアリティの1つである「有限な資源の有効利用」について、当社の長期的な環境ビジョンである「エコビジョン2050」において2050年の定量的な目標を設定することを意思決定しました。具体的には、地球資源(注)使用ゼロに向けて、自社製品における地球資源使用量を90%以上削減するとともに、自社製品以外での地球資源の削減貢献量を拡大していきます。自社製品やサービスの提供に使用する資源において、枯渇資源に該当する地球資源に依存しない事業形態へ変革するとともに、事業活動を通じた取組みにより非財務価値を財務と同期させて企業価値を向上することを目指しております。

中期的に取り組む活動計画の具体化にあたっては、2023年9月に発表されたTNFDの提言内容を参照し、当社事業における地球資源及び生物多様性への依存と影響を評価しております。TNFDが提唱する9つのグローバル中核指標の視点においてイシューを抽出して事業活動における自然への依存と影響を評価し、リスクと機会を特定しております。

 

(注)地球資源:原油や鉱物資源等の新たな採掘を伴う資源。一般に枯渇性資源と同義

 

TNFD中核指標

当社への影響

自然の変化要因

9つの中核指標

リスク

機会

依存

土地/淡水/海洋利用の変化

1 土地の総フットプリント

2 土地/淡水/海洋利用の変化の範囲

資源の利用

3 水ストレス地域からの取水・消費

・サプライチェーン:取水制限等による高い水ストレス地域(東南アジア)からの供給量が低下

・捺染ドライプロセス:水ストレスが高い地域(インド、トルコ、イタリア)での水レス染色システム

4 土地/海洋/淡水から調達する高リスクの天然資源

・天然資源:規制強化等によるリスクの高い天然資源の供給不足

・紙:森林資源へのアクセス制限、社会嗜好変化などによる紙利用・出力機会が減少

影響

汚染・汚染除去

5 土壌汚染

・有害物質フリー技術:残留性有害物質等のフリー技術の提供

6 排水量

・デジタル印刷/捺染、インクジェット技術:水質汚染の深刻な地域(南アジア)での廃水削減技術

7 廃棄物の発生と処分

・使用済み製品:循環型社会促進策等による製品へのリサイクル義務化

8 プラスチックによる汚染

・プラスチック:循環型社会促進策等による製品への再生資源利用への要求

・再生プラスチック技術:循環型社会形成促進策等による再生技術・材料技術・センシング技術の需要増

9 非GHG大気汚染物質

 

<自然シナリオ分析の実施と結果>

 当社では、2030年の視点で業績に影響を及ぼす事業リスクと、課題解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれ特定しております。政策強化により自然が保護・回復に向かう場合と、現行の延長で自然が劣化し続ける場合の2つのシナリオを想定し、リスクの発現あるいは機会獲得の可能性がある対象セグメント、分類、時間軸及び対処を、それぞれ特定しております。

 シナリオ分析を行う際の枠組みとして、自然シナリオ分析の対象事業分野の特定、重要な自然リスク及び機会の特定、自然に関するシナリオの検討、今後の対応の方向性・方針・戦略の検討のプロセスを経て実施しております。分析にあたっては、直接操業だけでなく、上流・下流における自然関連の依存・インパクトを含め、リスク・機会の特定・評価・優先順位付けを行っております。

 

●政策強化により自然が保護・回復に向かう場合

 

自然に関連する「リスク」への対処

当社への依存と影響

自然の変化要因

対象セグメント

分類

時間軸

対処

調達・製造コストの上昇

循環型社会促進策等による製品への再生プラスチック資源利用への要求

影響

インダストリー事業

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

政策、技術

短~中期

環境ラベル新基準相当の製品サーキュラーエコノミー設計、公共調達・入札要件への対応

製品開発コストの上昇

使用済み製品へのリサイクル義務化

影響

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

政策

中期

環境ラベル新基準相当の製品サーキュラーエコノミー設計、公共調達・入札要件への対応

製品サービスの需要変化による売上減少

森林生態系保護による森林資源へのアクセス制限

依存

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

政策、市場

短~中期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

 

自然に関連する「機会」

当社への依存と影響

自然の変化要因

対象セグメント

分類

時間軸

ビジネスパフォーマンスに関わる機会

印刷産業のサプライチェーンを変革するデジタルソリューション技術

影響

プロフェッショナルプリント事業

製品/サービス

短~中期

アパレル産業のサプライチェーンを改革するデジタルソリューション

影響

プロフェッショナルプリント事業

製品/サービス

短~中期

生産ラインのインクジェット化による顧客のワークフロー改革、水・溶剤削減

影響

インダストリー事業

製品/サービス

短~中期

水ストレスが高い地域での水レス染色システムの需要増

依存

プロフェッショナルプリント事業

製品/サービス

短~中期

サステナビリティパフォーマンスに関わる機会

循環型社会形成促進策等による再生プラスチック技術・材料技術・センシング技術の需要増

影響

インダストリー事業

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

天然資源の持続可能な利用

中期

残留性有害物質等のフリー技術の提供

影響

インダストリー事業

生態系の保護・回復・再生

長期

 

●現行の延長で自然が劣化し続ける場合

 

自然に関連する「リスク」への対処

当社への依存と影響

自然の変化要因

対象セグメント

分類

時間軸

対処

生産能力減少による収益減

気候パターンの変化に伴う天然資源の供給量不足・供給停止

依存

インダストリー事業

慢性物理

長期

特定の天然資源に依存しない製品設計と開発

水資源の枯渇・取水制限による生産・調達拠点の生産能力低下

依存

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

インダストリー事業

慢性物理

長期

生産・調達拠点の水リスク評価、水使用量の削減

製品サービスの需要変化による売上減少

異常気象及び森林火災の発生に伴う森林資源へのアクセス制限

依存

デジタルワークプレイス事業

プロフェッショナルプリント事業

慢性物理

長期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

 

自然に関連する「機会」

 なし

 

リスクと機会の「分類」

移行リスク

政策、市場、技術、評判、法的責任

物理的リスク

急性物理、慢性物理

システミックリスク

生態系不安定化、金融不安定化

ビジネスパフォーマンスに関わる機会

市場、資本の流れと資本調達、製品/サービス、資源効率、評判資本

サステナビリティパフォーマンスに関わる機会

天然資源の持続可能な利用、生態系の保護・回復・再生

「時間軸」の定義と評価基準

長期

10年以上

中期

3~10年以内

短期

1~3年以内

「自然の変化要因」

依存

土地の総フットプリント、土地/淡水/海洋利用の変化の範囲、水ストレス地域からの取水・消費、土地/海洋/淡水から調達する高リスクの天然資源

影響

土壌汚染、排水量、廃棄物の発生と処分、プラスチックによる汚染、非GHG大気汚染物質

 

 

〔リスクとインパクト管理〕 自然関連のリスクとインパクトを識別・評価・管理するために用いるプロセス

 当社では、森林生態系等、生物多様性を含む環境リスクは、グループ全体の経営リスクの一つとして位置付け、リスクマネジメント委員会において管理しております。また、特定の自然資源への依存を有する事業においては、事業中期計画の中で、生産・調達リスクを評価・特定して対応を行っております。なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスの詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。また、自然関連の依存・インパクト、リスク・機会の特定・評価・優先順位付けのプロセスについては、「〔戦略〕」に記載しております。

 

〔指標と目標〕 自然関連のリスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標

 当社の長期的な環境ビジョンである「エコビジョン2050」において、「地球資源使用ゼロに向けて、自社製品における地球資源使用量を2050年までに90%以上削減する」「自社製品以外での地球資源の削減貢献量を拡大する」及び「生物多様性の修復と保全に取り組む」を目標設定しております。この長期目標を達成するためのマイルストーンとして、中期経営計画(2023-2025)に紐づく「中期環境計画2025」において管理指標を設定しております。2025年度に自社製品における地球資源使用量を20%削減すること、自社製品以外での顧客・社会における資源削減貢献量を40万トン創出することを目標として設定し、年度計画を策定して四半期ごとに達成度を確認するとともに追加施策の検討を行っております。

 また、各国地域における法規制及び条例順守に関連する環境項目につきましては、排水量、廃棄物、非GHG大気汚染物質を管理指標として設定し、定常的にモニタリングしております。

 

③ 人的資本

〔人財育成方針、人財育成及び社内環境整備方針〕

 少子高齢化による生産人口の減少やデジタル革命の進行、加えて新型コロナウイルス感染症の拡大による人々の価値観やワーク・ライフスタイルの変容といったマクロ環境の中、当社は、Imaging to the peopleという経営ビジョンを掲げ、新たな成長戦略・事業転換方針を中期経営計画にて打ち出しております。この実現のために当社が求める人財像も大きく変化しており、従業員一人ひとりが、優れた知識・知見や経験に裏打ちされた独自のスキルをもち、課題解決のために自律的に考え、行動する人財、すなわち、プロフェッショナル人財であることが必要と考えております。

 このプロフェッショナル人財のポテンシャルとパフォーマンスを最大化し、ビジネスへの貢献につなげるため、当社は、全社員の行動指標となる6バリューと社員の健康を基礎に、自己成長支援(最大150万円/年の自己啓発支援、豊富な社内教育プログラム等)、チャレンジ風土の醸成(通年の社内公募の導入等)、多様な働き方の実現(他社に先駆けた副業の解禁等)を通じて、個の力の最大化と同時にこれら人財の力を最大限引き出せる組織風土づくりに取り組んでおります。さらにこれら多様なプロフェッショナル人財をエンパワーし、強固なチームワークを実現する強いマネジメント人財の育成にも注力しております。これらを通して、「プロフェッショナル人財個々の持つ違い」が有機的につながり、違いが“力”になることで、イノベーションが生まれ、エンゲージメント(注)及びレジリエンス力が向上し、会社の持続的成長につながっていくと考えております。

 

(注)エンゲージメント向上にむけたグローバルエンゲージメントサーベイ「Your Voice」の継続的実施

 当社では、グローバルでの社員エンゲージメントサーベイを”Your Voice”と名付け、2021年度からグローバルレベルで年一回のサーベイを実施しております。2023年度は2023年10月に実施し、回答率90%を超える約3万5千人の社員から、エンゲージメントに関連する内容や職場環境に対する意見・フィードバックを得ることができました。

 当社では、この社員エンゲージメントのスコアを、2025年度に業界の平均水準まで向上させ、2030年度には業界の上位25%に入ることを目標に掲げております。2023年度のエンゲージメントスコアは6.8となり、前回よりも0.2ポイント向上しました。

 また、エンゲージメントと同様に、会社に対する満足度・ロイヤリティに関しても順調に向上しており、社員の声に向き合いながら更なる向上を目指してまいります。

 

 

 

〔指標と目標〕

-DX専門技術人財の育成・活用-

 事業の選択と集中を加速させ、コニカミノルタが社会に必要とされる企業であり続けるためには、保有するコア技術を最大限に活かし、それをさらに進化させていくことができるDX専門技術人財の強化がますます重要になっていくと認識しております。

 コニカミノルタは、長年磨き続けてきたコア技術に最新のIoTやAI技術を組み合わせた「画像IoT技術」の開発に注力し、2014年度から本格的に新規事業創出に取り組み、そのために人財の育成・獲得を進めてきました。

これを軸に、DX推進に必要なロールを定義し、そのロールに紐づけた育成体系の明確化を行っております。また、各ロールの人財数とレベルを可視化し、効果的な人財配置を進めております。

 現在、2023年度末に目標としていた1,000名を超える1,085名をDX専門技術人財として認定し、その活躍の場を広げるべく、活動を進めております。

 今後はDX専門技術人財の数を、2023年度の全技術者の約35%という水準から、2024年度に各事業それぞれにおいて技術者の40%以上、2025年度には50%以上とすることを目標とし、拡大してまいります。

-当社の多様性のある人財の姿-

 当社グループ約4万人の社員のうち、日本以外で働く社員が約4分の3を占めております。

 また、女性活躍推進という観点では約3割の社員が女性であり、いわゆる管理職に占める女性の割合について、当社グループとして20%を超えるレベルにあります。また女性人財確保が難しいとされる開発部門における女性管理職比率も8%という水準を確保しております。

 当社の強みは、これらの多様性ある人財にあり、これらの人財が有機的につながり、違いを力にできていることが重要と考えております。

 当社では、なかでも女性活躍推進を重要なステップと捉え、当社グループ並びに当社での管理職における女性比率を戦略的に高めるべく、2025年度に当社グループ23%以上、当社13%以上、2030年度に当社グループ26%以上、当社18%以上という目標を定め、この目標に向け、様々な施策を実行しております。

 例えば、当社においては、管理職候補の女性社員に対する中長期的なキャリア形成支援を2020年度から実施、また管理職へのプール人財を補強するための採用強化などを行っております。

 こうした活動を通じて、着実に管理職における女性比率は高まっており、2023年度末に当社グループでは21.1%、当社においては10.6%に達しております。

 今後も女性活躍における現場の課題に丁寧に向き合い、継続的に働きかけを行ってまいります。

 

(注)当社グループの女性管理職比率は、全グループ会社での集計が困難なため、当社及び国内連結子会社並びに200名以上の海外連結子会社の主要な約50社を集計したものです。

 

 [人財強化施策]

 現在、経営戦略を実行するためのさまざまな人財強化施策を「事業の選択と集中、そしてその後の持続的成長を実現する人財創出」、「多様性の確保による経営判断の質の向上」、「組織、個人のポテンシャルとパフォーマンスの最大化」の3つのカテゴリーに分け、実行しております。以下に代表的な取組みを紹介します。

 

●事業の選択と集中、事業成長を実現する人財創出

・人財シフト

 当社が持続的成長を続けるため、中期的には、事業の選択と集中、特にインダストリー・ヘルスケアといった強化事業への人財リソースの集中が最重要と考えております。

 そのために、事業構造の変化と合わせた人財ポートフォリオの転換を積極的に行っております。すなわち、強化事業において既存人財では埋めきれない部分は、外部からのハイスペック人財の獲得、または、他事業からのシフトにより必要リソースを確保しております。一方では定年退職等による人員減も鑑み、全社的な人員増は抑制しており、個々の事業領域の成長に見合った要員管理を行っております。

 特に、キャリア採用においては、ハイスペック人財の獲得競争は年々激しくなってきております。これに対して、採用チームと事業部門が一体となったプロセスを実行し、役員自ら面談するなど、面接を「候補者の見極め」から「動機付け」の場へと意識・言動を変えながら強化事業への人財獲得を進めております。

 

・グローバル人財

 当社グループ約4万人のうち4分の3を占める海外人材の活用も優先順位の高い課題です。それを加速するためにDX関連で実績のあるスイスのビジネススクールIMDと協業し、グローバルビジネスリーダー育成を進めております。全グループの優秀人財を可視化し、選抜された人財に対し、育成プログラムや経営トップによるコーチングの提供、個別育成計画の策定を経て、実際の国境を越えたアサイメントを進めております。

 具体例としては、ヨーロッパのハイポテンシャル人財を日本本社に呼び、中期経営戦略策定メンバーに加えました。その中で、現場意見の計画への反映、そして海外販社施策との整合性を取ること等、目に見える貢献をしてくれております。ほかにもアメリカとオーストラリアの間での戦略的な人財ローテーションを実現する等、このプログラムの成果として表れております。現在はこのプログラムをプロフェッショナルプリント事業やヘルスケア事業にも拡大、実行中であり、そのほかの強化領域にも展開する準備をしてまいります。

 

・複線型人事制度

 当社では2022年にいわゆる管理職制度を単線型から複線型に変更しております。昨今のビジネス環境の変化を受け、その中で求められる管理職のミッションを明確化し、専門性を突きつめビジネスに貢献する人財「エキスパート」と、多様な人財の力を引き出し組織に活力を与え実行力を上げる組織リーダー人財「エンパワーメントリーダー」に分け、それぞれの任用要件も大幅に見直しております。またこの変更に伴い、従来の管理を連想させる「管理職」という名称を「エグゼンプト」に変更しております。

 そしてエキスパートに関しては、報酬制度も刷新し、高い成果を上げたエキスパートには執行役員レベルの報酬を提供できることとしており、これは社外優秀専門人財の採用にも大きく貢献しております。

 また、エンパワーメントリーダーには、コーチングやチームビルディング、コミュニケーションスキルをはじめとしたマネジメントスキル強化のためのプログラムを体系的に、継続的に実施しており、これは組織力、そして実行力の向上に寄与しております。

 

●多様性の確保による経営判断の質の向上

・グローバル女性リーダー

 多様性のあるマネジメントを育成していく観点で、当社では第一ステップとして、女性リーダーシップ人財のグローバルでの育成に取り組んでおります。

 この目的を「意思決定の場における多様性の確保と公平性の更なる強化」と据え、グローバルでの更なる女性リーダー創出と活用推進に向け、次世代リーダーを選抜・育成する「Women 2 Lead プログラム」を2023年度から展開しております。このプログラムは、上述のグローバルビジネスリーダー育成と同様にIMDと協働し、IMDのメソッドを活用したアセスメントを経て選抜した営業、マーケティング、財務、人事等、様々なバックグラウンドを持つ12名の次世代女性リーダー候補を第一期生として選抜、それぞれの強みと弱みの把握と理解させた上で、キャリアパス構築、リーダーとしての心構えやビジネスリーダーとしての知見等を植え付ける教育を約8ヶ月間実施しました。今後はこのプログラムの卒業人財が学びを活かし、リーダーへの確実なステップアップを実現させるべく、直属上司にとどまらず、トップマネジメントや人事部門のサポートをもって、役割拡大やアサインメント付与を実行してまいります。

 

・海外派遣プログラム「GLOW」

 将来を担うマネジメント人財のパイプラインを戦略的に強化していく「GLOWプログラム」を進めております。

このプログラムは6ヶ月短期海外派遣で、2022年度より一新し、適用範囲を日本人のみから海外グループ社員にも広げ、日本から海外だけでなく、海外から日本、海外から海外という派遣も可能としております。

 また、このプログラムは会社主導で派遣候補者を選定しミッションを与えるのではなく、強い意志をもった社員が自ら手を挙げることに始まり、様々な選考プロセスを経て選抜される点も特徴的です。派遣候補者は、自ら派遣先への受入交渉を行い、現地での貢献やミッション、そして派遣プラン策定を実施します。自らがチャレンジする機会をつかみ、現地の協力を得て目標に挑むことで、過去に培ったスキルや武器を国外でも通用するものに磨き上げながら、派遣者の多様性やグローバル視点を養い、世界と戦える真のグローバル人財の持続的な育成を目指しております。

 GLOWプログラムでは、まず2023年5月から第1期として11名の派遣を実施し、2024年4月からは第2期として10名の派遣を開始しております。

 

●組織、個人のポテンシャルとパフォーマンスの最大化

・レジリエンス

 組織の変革と成長への回帰を目指すにあたり、この変革はトップから起こすことが重要だと考え、まずは、経営層がプロフェッショナル人財・プロフェッショナル経営チームになるために当社では社長を含む役員と役員候補に対し、「レジリエンスプログラム」を導入しております。

 「レジリエンスプログラム」とは、医学・脳科学・心理学的な観点から、人と組織が最高のパフォーマンスを出すために本質的に必要な要素について学び、それを1年間かけて習慣にしていくプログラムです。

 具体的には、身体・情動・思考・精神性という4つの切り口にわかれております。例えば、脳のパフォーマンスを高めるための運動・栄養・睡眠だけではなく、困難で複雑な状況においても、高い視座と広い視点で自身と組織を統合する「人間性」も高めていくものになっております。

 経営層自らが変革することで、その影響を次世代そして会社全体に波及させ、当社がプロフェッショナル人財集団へ変貌する根幹になると考えております。

 

 

④人権

〔人権に関する基本的な考え方と取組み〕

 人権は、全ての人間が持って生まれた権利であり、普遍的な価値の一つです。2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」が採択されたことにより、人権尊重に関する企業の責任が明確になりました。各国で人権に関連した法規制化が進み、UNGPsに沿った人権取組みの重要性が益々高まっております。

 これらの背景を踏まえて、当社グループは、UNGPsに基づき、コニカミノルタグループ人権方針を2021年9月に制定しました。本方針に基づき、当社グループの事業に関連するビジネスパートナーやその他の関係者に対しても、人権の尊重を求めております。また2022年4月に改訂したコニカミノルタグループ行動憲章においても、事業活動における最も基本的な要件の一つとして人権尊重を規定し、グローバルの従業員を対象に毎年実施するコンプライアンス研修に組み込んで周知を行いました。

 当社は、人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築し、当社グループの事業活動や取引の結果、潜在的または顕在的に負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題を抽出し、抽出した負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題に対して影響度を評価し、特に優先度が高いと思われる人権課題(当社グループ従業員の人権、サプライチェーンにおける人権、顧客の人権)を特定しております。評価は定期的に見直すとともに、特に優先度が高いと思われる人権課題に関しては、人事/法務/調達/品質/IT/サステナビリティを担当する各部門がそれぞれ目標設定、施策の検討・実施を行っております。

 また、人権に関する懸念を通報できる制度を活用して、速やかに調査し、当社が人権に対する負の影響を直接的に引き起こした、あるいはこれに関与したことが明確である場合、社内外のしかるべき手続きを通して是正策を講じてまいります。