事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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半導体材料 | 147,428 | 10.3 | 26,738 | 10.7 | 18.1 |
情報通信材料 | 260,885 | 18.3 | 25,085 | 10.0 | 9.6 |
基礎材料 | 304,066 | 21.3 | 74,517 | 29.7 | 24.5 |
報告セグメント合計 | 712,379 | 49.9 | 126,340 | 50.3 | 17.7 |
その他 | 2,561 | 0.2 | -1,648 | -0.7 | -64.3 |
事業内容
3 【事業の内容】
当社グループは、半導体・情報通信分野に欠かせない銅やレアメタルを原料とする先端素材の開発・製造・販売を主な内容としてグローバルな事業活動を行っており、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔を主力製品としています。これらに加えて、銅やレアメタルの資源開発や、製錬・リサイクル事業を手掛けており、上流から下流までをつなぐ強固なサプライチェーンを有することにより、安定的に先端素材をマーケットに供給し、持続可能な経済・社会の発展に貢献しています。
当社グループは、半導体材料セグメント、情報通信材料セグメント、基礎材料セグメントの3つの報告セグメントにて構成されています。成長戦略のコアである半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントをフォーカス事業と位置づけ、先端素材分野での技術の差別化や市場創造を通じて、市場成長以上の利益成長を目指しています。一方、基礎材料セグメントをベース事業と位置づけ、銅・レアメタルの安定供給を通じてフォーカス事業を支える役割を担っています。各報告セグメントの主要製品、主要会社は以下のとおりです。
以下の事業区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記7.セグメント情報」に掲げるセグメントの区分と同一であり、各事業を構成する主要な関係会社の状況については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載しています。
(1) 半導体材料セグメント
(薄膜材料事業部)
高純度化や組成・組織制御などの当社のコア技術を駆使し、半導体や磁性材料向けのスパッタリングターゲットをはじめ、各種高機能デバイス、最先端IT機器、医療機器、電気自動車に用いられる製品をグローバルに展開しています。中でも、ロジックやメモリに用いられる半導体用スパッタリングターゲットが主力製品であり、市場規模1,462億円のマーケットにおいて世界シェアは64%(注1)です。当社は様々な素材の半導体用スパッタリングターゲットを取り扱っており、半導体の主要配線層に用いられる銅や銅合金、そのバリア層に用いられるタンタルに加えて、半導体の回路形成やトランジスタ部分等に用いられるチタン、コバルト及びタングステンの製品で世界シェアNo.1です(注2)。
半導体はシリコンウエハ上に数百回以上にわたり回路を形成して製造されますが、半導体用スパッタリングターゲットは回路形成に必要となる素材の層をつくる工程(成膜工程)の材料として用いられます。成膜に当たっては、真空状態の装置内でスパッタリングターゲットにアルゴンイオンを衝突させ、放出したターゲット原子を基板(シリコンウエハ等)上に付着させることによって薄膜を形成します。半導体が目的とする機能を発揮するためには様々な種類の高純度素材による回路形成が必要となりますが、当社の強みである高純度化技術や、多種多様な元素・合金を取り扱う技術により、様々な材料ニーズを満たしたスパッタリングターゲットの製造が可能です。
① 半導体用スパッタリングターゲット製造における当社のコア技術
電解精製にて製造された高純度の電気銅を溶解してインゴットにし、そのインゴットを適切な幅に切断したのち、鍛造・圧延を施して必要な直径を持った円盤状の板(ターゲット材)に加工します。その後、熱処理によって結晶組織を均一化したターゲット材を、スパッタリング装置へ固定する役割を果たすバッキングプレートと接合(ボンディング)し、顧客から求められる特性に応じて表面の粗化から鏡面仕上げ等の加工を行い、品質や機能の分析評価を経て製品化されます。この一連の加工の中で、以下に記載する当社の複数のコア技術が活かされており、多数の金属品種において高品質な製品の安定的な供給を実現しています。
・高純度化技術
電解精製工程において、創業以来培ってきた高純度化技術により9N(99.9999999%)の銅の製造を実現しています。当技術により高純度銅スパッタリングターゲットに要求される6Nの銅を安定的に生産しています。
・組成・組織制御技術
ターゲット材の結晶組織がスパッタリングに適した大きさや向きとなるように制御・管理しています。これにより、成膜時の組成・組織が均一となり半導体の欠陥を引き起こす不純物であるパーティクル(発塵)の発生を抑えることに寄与しています。
・表面制御技術
バッキングプレートとターゲット材との接合状態が不均一な場合、スパッタリング時にターゲット材の表面温度が不均一になり様々な障害が生じます。そこで、ろう材による接合や異種材料間の拡散接合など、それぞれの材料に適した技術により、均一で強固な接合を実現しています。また、異種材料接合技術の応用により、銅箔と樹脂の複合材など、新しい材料の開発を進めています。
また、スパッタリングターゲットなどの材料は、その組成や純度だけでなく、表面状態も顧客のプロセスにおける製造効率に影響します。そのため、出荷前の最終工程において、エッチングによる表面の粗化から鏡面仕上げまで、求められる特性に応じた最終加工を行っています。
・分析評価技術
当社で製造したスパッタリングターゲットは、材料として顧客のスパッタリング装置に組み込まれて使用されます。当社は自前のスパッタリング装置を所有しており、顧客が使用する条件下で評価を行うことによって最終形態で期待される機能や特性の実現、性能改善を図っています。
② 半導体製造装置メーカーとの強固な関係
当社は半導体製造装置メーカーから受ける素材提案を通じて品質技術情報を獲得し、その情報を基に半導体製造装置メーカーに対して材料提案や先行開発を継続して実施してきました。長年にわたるこれらの活動の結果、当社製品の多くが半導体製造装置メーカーから標準材料として指定されており、それにより当半導体製造装置メーカーの製造装置を使用する半導体メーカーからの安定的な受注獲得につながっていると考えています。
事実として、当社は大手半導体メーカーと長年にわたり取引を継続してきた実績を有しています。加えて、高品質な製品の安定的供給が顧客から高く評価されており、当社顧客であるIntel社が設定しているEPIC Distinguished Supplier Award(注3)を2021年から2024年まで4年連続で受賞しているほか、TSMC社が設定しているExcellent Performance Awardを2024年に受賞しています。
③ 半導体メーカー拠点との地理的優位性を有する生産体制
当社は、半導体の世界的生産地である米国、台湾、韓国において、スパッタリングターゲット製造の下工程(注4)である機械加工拠点を有し、一定の在庫を保有することで、安定的かつ素早い製品供給体制を構築しています。なお、2025年3月期の当社の半導体用スパッタリングターゲットの販売比率は、台湾向けが約36%、韓国向けが約17%、米国向けが約11%、日本向けが約11%、中国向けが約12%、その他地域向けが約13%となっています。
また、米国・台湾においては技術サービス拠点としての役割も担い、顧客への迅速な品質対応も行っています。当社の高い技術レベルと各拠点での速やかな技術対応を組み合わせることにより、高い顧客満足度を実現しています。
注1.当該市場規模及び世界シェアは、富士経済「2024年 半導体材料市場の現状と将来展望」(2023年実績、アルミニウム系を除く半導体用スパッタリングターゲット市場における市場規模及び当社のシェア、販売金額ベース)より引用。市場規模について、為替レートは2023年末時点(141円/米ドル)で円換算。
2.富士経済「2024年 半導体材料市場の現状と将来展望」(2023年実績、アルミニウム系を除く半導体用スパッタリングターゲット市場における当社のシェア、販売金額ベース)に記載の銅、タンタル、チタン、コバルト及びタングステンを素材とする半導体用スパッタリングターゲットの市場規模及びシェアを参照。
3.全ての評価基準にわたって優れたパフォーマンスを発揮したサプライヤーをIntel社が表彰するものです。 全世界で数千社に及ぶ同社のサプライヤーのうち、わずか数百社のみが当プログラムへの参加資格を有しています。2024年の受賞者は同社のサプライチェーン全体で27社のみでした。
4.下工程は、半導体用スパッタリングターゲット製造プロセスにおける加工・ボンディング工程を指します。
(タンタル・ニオブ事業部)
当社グループのTANIOBISは、世界各地に製造・販売拠点を有する世界有数のタンタルとニオブの材料メーカーであり、主要製品は半導体用スパッタリングターゲットやコンデンサ用のタンタル粉・ニオブ粉、SAWデバイスや光学レンズ用のタンタル酸化物・ニオブ酸化物、半導体用のタンタルやニオブ等の塩化物、その他の高機能粉末材料です。半導体用スパッタリングターゲット用のタンタル粉については、2022年に買収した東京電解株式会社(以下、「東京電解」という。)にてインゴット状に加工のうえ当社薄膜材料事業部に供給し、スパッタリングターゲットの材料として使用されています。
2023年にはブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業に参画し、これまで以上に安全や人権に配慮した倫理的かつ持続可能な「責任ある調達」を推進するとともに、TANIOBISの年間調達量の約2割のタンタル鉱石を安定的に調達する体制を整備いたしました。東京電解の買収及びMibra鉱山の原料事業参画によって、当社グループとして半導体用タンタルスパッタリングターゲットを上流から下流まで一気通貫で安定的に供給する体制を確立しています。
(2) 情報通信材料セグメント
(機能材料事業部)
機能材料事業部では、主力製品である圧延銅箔に加えて、AIサーバ向け等の高機能コネクタなどに使われるチタン銅、コネクタやリードフレームに使われるコルソン合金などの銅合金を取り扱っています。圧延銅箔は、スマートフォンやウェアラブル端末、モビリティ(xEV/ADAS)の分野で使用されるハイエンドなフレキシブル回路基板(FPC)に用いられており、屈曲性や耐久性における技術優位性や市場開発型アプローチの確立により、1stベンダーとしての地位を確保することで、市場規模405億円のマーケットにおいて、78%の世界シェア(注1)を誇っています。銅合金は、銅に様々な元素を添加して製造した製品で、AIサーバやスマートフォン、パソコンなどの電子機器のコネクタ端子や半導体リードフレームなどに使用され、近年の情報化社会には無くてはならない金属材料です。当社ではTi(チタン)を主な副成分とするチタン銅や、Ni(ニッケル)・Si(ケイ素)を主な副成分とするコルソン合金を中心に、顧客ニーズに合わせた多様な特性の製品を幅広く取り揃えています。
① 圧延銅箔製造における当社の技術優位性
圧延銅箔は、電気銅やリサイクル原料を溶解・鋳造して製造されたインゴットを熱間圧延・冷間圧延により必要な厚さにまで薄くして製造します。その後、結晶組織を均一にするための焼鈍や、顧客の要求するスペックにするための仕上げ圧延、表面に微細な凹凸を形成してプリント基板の樹脂との密着性を高めるための表面処理、幅分割等の工程を経て最終的に製品化がなされます。
圧延銅箔の主要用途であるFPCは、導電性金属である圧延銅箔と絶縁性を持った薄く柔らかいベースフィルム(ポリイミド等)とを貼り合わせた基材(FCCL)に電気回路を形成した基板です。僅かな隙間や繰り返し屈曲する可動部に用いられることから、圧延銅箔には優れた屈曲性や耐久性が求められます。当社は、FPC向けにHA箔を生産していますが、当該製品は結晶粒・結晶方位を調整することにより屈曲性・耐久性を飛躍的に向上させており、疲労寿命を迎えるまでに類似品である特殊電解銅箔対比で約3倍の屈曲に耐える(注2)品質の高さを有しています。また、当社は独自のノウハウにより高品質な薄箔の製造を実現しており、FPC用途において6μm(髪の毛の約100分の1)の薄さまで製造可能です。
② 市場開発型アプローチ
当社は、FPC向け圧延銅箔のエンドユーザーであるスマートフォンメーカー、ウェアラブル端末メーカー及びモビリティメーカーと20年以上にわたる強固な関係を構築しており、これらのエンドユーザーとの対話を通じて、早期の開発ニーズの把握や、ニーズに基づく材料提案を行ってきました。当社製品がエンドユーザーから材料指定を受けることにより、エンドユーザーに製品供給を行うCCL及びFPCメーカーからの安定的な受注を実現しています。
注1.富士キメラ総研「2024エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧」(2023年実績、FPC向けのみ、出荷数量ベース)
2.米国のプリント回路業界団体であるIPCが定める規格及びJIS規格に準拠したFPCの耐屈曲性の標準的な試験方法であるIPC屈曲試験(試験方法No.:IPC-TM650 2.4.3E)における疲労寿命までの屈曲回数を比較しています(破断寿命回数HA:約53万回、特殊電解銅箔:約17万回)。
(東邦チタニウム)
チタンは、軽量・高強度・高耐食という特性を持つ金属であり、航空機や海水淡水化プラント、発電プラントなど幅広い分野で利用されています。当社グループの東邦チタニウム株式会社では、金属チタン事業・触媒事業・化学品事業を軸とした事業展開を行っています。金属・チタン事業では、航空機材料用、医療用、産業設備用と幅広い分野で使用されているスポンジチタンやスポンジチタンを溶解・鋳造したチタンインゴットなどを製造しています。触媒事業では、ポリオレフィン製造用触媒などを製造しています。化学品事業では、積層セラミックコンデンサ等に使用される超微粉ニッケルや高純度酸化チタンなどを製造しています。
(タツタ電線)
電線・ケーブル製造で培った技術を多様な製品や事業に発展させており、電子材料事業、電線・ケーブル事業、その他事業を軸とした事業展開を行っています。電子材料事業では、モバイル端末等に使われる機能性フィルム、半導体分野で需要が高まる機能性ペーストなどを扱っています。電線・ケーブル事業では、ビルや住宅で使用される電力ケーブルからロボット用ケーブル、鉄道やプラントで使われる産業用ケーブルまで幅広く対応しています。
(3) 基礎材料セグメント
(資源事業部)
資源事業は当社の祖業であり、1905年に日立鉱山を開業して以来、国内外の鉱山を対象として、探鉱から開発、操業、休廃止鉱山の管理に至るまでをステークホルダーと協業しながら行ってきました。長年の現場経験を通じて培った鉱床評価技術、低品位銅鉱石から効率的に銅を分離・回収する技術、低環境負荷技術等を活用し、現在は海外の銅鉱山やレアメタル鉱山への参画や国内の含金珪酸鉱鉱山の操業を行っています。
銅鉱山については、カセロネス銅鉱山(チリ)、ロス・ペランブレス銅鉱山(チリ)及びエスコンディーダ銅鉱山(チリ)の権益を保有しており、当社銅製錬事業の原料となる銅精鉱の安定確保を図るとともに、投資リターンを得ています。このうち、エスコンディーダ銅鉱山は世界最大の生産量であり、ロス・ペランブレス銅鉱山も世界有数の生産規模となっています(出所:International Copper Study Group 「The World Copper Factbook 2024」)。カセロネス銅鉱山については、2024年3月期にLundin社を経営パートナーとして迎え、同社の豊富な知見や高い鉱山運営能力を活かして、生産性向上やコスト競争力の強化を進めています。
レアメタルについては、当社グループ内の事業シナジーを高めるべく、2023年3月期にブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業に参画したことに引き続き、タンタル鉱山やチタン鉱山の調査・開発等にも積極的に取り組んでいます。また、当社グループ会社である鹿児島県の春日鉱山株式会社においては含金珪酸鉱の生産を行っており、銅製錬の副原料(溶剤)としてJX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所などに供給しています。
(金属・リサイクル事業部)
金属・リサイクル事業部は、金属製錬とリサイクルの一体的な事業運営を推進しています。銅精鉱と使用済み家電製品・電子機器などのリサイクル原料から、高効率な製錬プロセスを通じて純度99.99%以上の銅地金を生産するとともに、銅を製錬する過程の副産物として、貴金属やレアメタル、硫酸などの生産を行っています。当社グループの主要な製錬拠点であるJX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所は、世界有数の生産能力を持つ製錬所となっています(出所:International Copper Study Group「The World Copper Factbook 2024」)。今後、銅の需要はますます伸びていくことが予想されており、この需要拡大を支えるには銅精鉱に加えてリサイクル原料の活用拡大が必要不可欠であることから、当社グループはリサイクル原料の受入・処理能力を拡大し、リサイクル原料処理比率の向上を図っています。
① グリーンハイブリッド製錬
JX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所では、リサイクル原料の増処理を進めるに当たり、銅精鉱が自ら発する酸化反応熱を最大限に活用し、化石燃料使用量をミニマイズするグリーンハイブリッド製錬を推進しています。これにより生産された銅は、拡大する需要を支える安定供給体制の構築と脱炭素や資源循環等のサステナビリティを重視した生産と供給という2つの使命を果たすために最適なサステナブルな銅であると考えています。2040年に銅製錬時のリサイクル原料処理比率を50%まで高めることを目標に、技術開発やリサイクル原料の増集荷・増処理体制の構築を進めています。
② サーキュラーエコノミー実現への貢献
当社は、2022年に策定したサステナブルカッパー・ビジョンの実現に向け、国内商社との戦略的パートナーシップを活用しながらリサイクル原料の増集荷・増処理体制の構築を進めています。
例えば、当社は2022年8月にカナダのリサイクラーであるeCycle Solutions Inc.の株式を取得いたしましたが、ITAD事業に知見を有する双日株式会社の資本参加を受入れ2023年4月から協業を開始しています。
また、2024年4月には三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」という。)とともに、廃家電や廃電子機器、廃車載用リチウムイオン電池等の再利用を推進する目的でJX金属サーキュラーソリューションズ株式会社を新設し、同年7月に事業を開始しました。三菱商事の持つ産業横断型のグローバルなネットワークや知見を活用することで、リサイクル原料集荷やサプライチェーン全体の連携を強化し、銅やレアメタル等の非鉄金属資源のリサイクルの拡大を目指します。採掘された資源を廃棄せずに再利用し続けるサーキュラーエコノミーの実現に向け、貢献してまいります。
事業の系統図は以下のとおりです。
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループを取り巻く環境
世界経済は、地域によって景気の推移が異なり、全体では緩やかな拡大にとどまりました。米国では個人消費が堅調に推移し景気の拡大を牽引する一方、中国では不動産不況が長引き成長の鈍化が継続、欧州ではドイツ経済の減速などもあって景気が低迷しました。国内経済は、物価の上昇などもあった一方で賃金の上昇などもあったことで個人消費に持ち直しが見られたほか、設備投資の増加や好調なインバウンド需要などもあり、景気は緩やかに回復しました。
円の対米ドル相場は、日米の金利差拡大を背景に円安が進行し、2024年6月には約38年ぶりとなる161円台の水準に達しましたが、米国経済指標の悪化や日銀の政策金利引き上げ等により円高が進行しました。その後、日米金利差拡大により再び円安が進行し、期平均では前年同期比8円安の153円となりました。
半導体市場は前期までの在庫調整が一巡し、AI関連が牽引した回復の動きがみられました。生成AIの学習や推論に使われるAIサーバ向けの高価格帯製品の需要が堅調で半導体の出荷金額は高い伸びを維持する一方、出荷数量は緩やかな回復となりました。エレクトロニクス市場において、スマートフォンやパソコン・タブレットは、在庫調整一巡後の回復が見られましたが、端末へのAI機能搭載は十分に広がっておらず、買換え需要の促進にまでは至りませんでした。自動車や産業機械向けエレクトロニクス市場は力強さに欠け、分野ごとに濃淡が見られました。
銅の国際価格(LME〔ロンドン金属取引所〕価格)は、期初は1ポンド当たり405セントから始まり、前年度から続く一部銅鉱山の操業停止による供給懸念等に起因して、2024年5月に492セントと史上最高値を更新しました。その後相場は落ち着くも、2025年初以降、米国による銅への関税賦課の懸念により期末にかけて上昇し、期末には439セントとなり、期平均で前期比46セント高の425セントとなりました。
このような経営環境の中、当社の成長戦略のコアであるフォーカス事業の成長をさらに加速させる取り組みや、ベース事業における効率的な資産運用を意識した事業の強靭化など、「JX金属グループ2040年長期ビジョン」の実現に向けた各施策を推進しました。また、次世代半導体向けCVD・ALD材料の本格生産に向けた能力増強や先端半導体材料パッケージの早期事業化などに取り組んできました。
① 財政状態及び経営成績の状況
a. 経営成績
当連結会計年度における当社グループの売上高は、SCM Minera Lumina Copper Chile(以下、MLCC)及びパンパシフィック・カッパー株式会社(以下、PPC)の一部株式譲渡によって両社が連結子会社から持分法適用会社へ変更となり、両社の売上高が連結範囲から外れたことを主因として、714,940百万円(前年同期比52.7%減)となりました。一方、営業利益は、円安基調の継続、金属価格の高止まり、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔等の主力製品の増販等により、112,484百万円(同26,312百万円増)となり、税引前利益は107,476百万円(同28,762百万円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は68,271百万円(同34,353百万円減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(半導体材料セグメント)
当第3四半期にTANIOBIS GmbHにおいてのれんの減損損失を計上したものの、AI関連需要の拡大を受けた半導体用スパッタリングターゲットなどの製品の増販や円安を主因に増収となり、営業利益は前年同期並みとなりました。
半導体材料セグメントの当連結会計年度における売上高は、前年同期比20.2%増の148,041百万円となりました。営業利益は前年同期比328百万円増益の26,738百万円となりました。
(情報通信材料セグメント)
サプライチェーンにおける在庫調整の一巡による圧延銅箔の増販、AIサーバ用途での当社高機能銅合金の採用拡大等による増販を主因に、前年同期比増収増益となりました。これに加えて、収益性向上、生産性改善等を目的に推進した収益構造改革も増収増益に寄与しています。なお、2024年8月にタツタ電線株式会社の公開買付が成立し、同社は当社の連結子会社となり、同年11月に完全子会社となりました。
情報通信材料セグメントの当連結会計年度における売上高は、前年同期比41.0%増の265,112百万円となりました。営業利益は前年同期比24,152百万円増益の25,085百万円となりました。
(基礎材料セグメント)
円安や銅価上昇に伴う増益要因はあるものの、2023年7月に実施したMLCC株式の一部譲渡に伴い生じた為替差益や2024年3月に実施したPPC株式の一部譲渡による同社売上高及び利益の剥落を主因として、前年同期比減収減益となりました。
基礎材料セグメントの当連結会計年度における売上高は、前年同期比75.0%減の306,504百万円となりました。営業利益は前年同期比2,723百万円減益の74,517百万円となりました。
b. 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、1,283,002百万円となり、前連結会計年度末と比べ42,885百万円減少しました。主な内容は、グループ通算制度に基づきENEOSホールディングス株式会社に対して計上していた通算税効果額に関する未収金の入金があり、これを借入金の返済に充当したことによるものです。
負債合計は、571,248百万円となり、前連結会計年度末に比べ33,837百万円減少しました。主な内容は、2024年7月に実施したMLCC株式の一部譲渡に対する受取額を借入金の返済に充当したことによるものです。
資本合計は、711,754百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,048百万円減少しました。主な内容は、親会社の所有者に帰属する当期利益を計上した一方で、配当を実施したこと等による利益剰余金の減少によるものです。なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比0.7ポイント増加し48.0%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ21,537百万円増加し、58,316百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は215,431百万円増加しました(前期は38,400百万円の増加)。これは、税引前利益や法人所得税の還付及び配当金の受取等によるものです。法人所得税の還付については、グループ通算制度に基づきENEOSホールディングス株式会社に対して計上していた通算税効果額に関する未収入金の入金があったものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は22,118百万円減少しました(前期は90,241百万円の増加)。これは、MLCC株式の一部譲渡等による収入要因があったものの、有形固定資産の取得やタツタ電線株式会社の子会社化のための株式取得等の支出要因が上回ったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は172,249百万円減少しました(前期は154,360百万円の減少)。これは、主に短期借入金の返済や配当金支払いによるものです。
(2) 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、報告セグメントごとの生産実績及び受注実績を正確に把握することは困難なため、当社の主要な品目等についてのみ「(1) 経営成績等の状況の概要」において、各報告セグメントの業績に関連付けて記載しています。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については、各セグメントに含めて表示しています。
2.基礎材料セグメントにおける販売実績は、前連結会計年度対比で大幅に下落しています。これは、2024年3月31日をみなし売却日として当社が67.8%を保有していたPPC株式の持分のうち20%を丸紅株式会社に譲渡したことに伴いPPCが当社の持分法適用会社となり、以降の基礎材料セグメントにおける販売実績にPPCの事業活動の影響が反映されなくなったことによるものです。
3.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積もり
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しています。連結財務諸表の作成に当たって、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と考えられる様々な要因を考慮したうえで、見積り及び判断を行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「同 4.重要な会計上の見積り及び判断」をご参照ください。
② 経営成績等の状況に関する分析・検討内容
(売上高)
MLCC及びPPCの株式一部譲渡によって両社が連結子会社から持分法適用会社へ変更となり、両社の売上高が連結範囲から外れたことを主因として、714,940百万円(前年同期比52.7%減)となりました。
(営業利益)
売上高が減少した一方で、円安基調の継続、金属価格の高止まり、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔等の主力製品の増販等により、営業利益は112,484百万円(対売上収益比率15.7%)となりました。
(税引前利益)
受取利息や受取配当金、為替差益、デリバティブ利益等の金融収益の発生(2,407百万円)及び支払利息や為替差損、デリバティブ損失等の金融費用の発生(7,415百万円)等により、当連結会計年度の税引前利益は107,476百万円(対売上高比率15.0%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
法人所得税費用26,089百万円の計上となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は68,271百万円(対売上高比率9.5%)となりました。
財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
③ 資本の財源及び資金の流動性について
当社はENEOSグループ金融制度に基づいてENEOSファイナンス株式会社等からの借入れを行っておりましたが、2024年9月までに外部金融機関への借換えを完了することによってこれを離脱し、当社独自のグループ金融制度に移行しています。
当該制度の下、当社グループでは、運転資金及び設備投資等の資金需要に対して、自己資金や必要に応じ金融機関からの借入等で資金調達を行っています。また、子会社の資金調達については、グループ資金の効率性確保の観点から原則として当社が実施し、当社から当社グループ子会社に貸付けを実施いたします。当社グループでは、グループ資金を当社が集中して管理し、グループ全体としての資金の効率的な調達・運用を実現しています。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
セグメント情報
7.セグメント情報
(1) 報告セグメントの概要
当社グループの事業セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、当社の取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象です。
当社グループでは、当社において設置された製品・サービス別の事業セグメントが、取り扱う製品・サービスについて国内及び海外の包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しています。
したがって、当社グループは、製品・サービス別の事業セグメントから構成されていますが、製品・サービスの特性及び販売市場の類似性に基づき、複数の事業セグメントを集約したうえで、「半導体材料」、「情報通信材料」及び「基礎材料」の3つを報告セグメントとし、他の事業セグメントを「その他」としています。
各報告セグメント区分の主な製品・サービス又は事業内容は、次のとおりです。
(2) 報告セグメントごとの売上高、損益、資産及びその他の項目
前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(単位:百万円)
(注) 1.報告セグメントの会計方針は、連結財務諸表作成における会計方針と同一です。
2.外部顧客への売上高には、顧客との契約から生じた収益及びその他の源泉から生じた収益が含まれています。詳細については、注記23.「売上収益」に記載しています。
3.報告セグメント間の内部売上高又は振替高は市場実勢価格に基づいています。
4.セグメント利益又は損失は、連結損益計算書における営業利益で表示しています。
5.資本的支出には、使用権資産の新規取得を含めています。
6.調整額は以下のとおりです。
① セグメント利益又は損失の調整額△16,035百万円には、各報告セグメント及び「その他」の区分に配分していない全社収益・全社費用の純額△17,335百万円が含まれています。
② セグメント資産の調整額130,844百万円には、セグメント間の債権の相殺消去額△15,510百万円、各報告セグメント及び「その他」の区分に配分していない全社資産146,354百万円が含まれています。
7.各報告セグメントの非金融資産の減損損失の金額及び内容については、注記13.「非金融資産の減損」に記載しています。
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
(単位:百万円)
(注) 1.報告セグメントの会計方針は、連結財務諸表作成における会計方針と同一です。
2.外部顧客への売上高には、顧客との契約から生じた収益及びその他の源泉から生じた収益が含まれています。詳細については、注記23.「売上収益」に記載しています。
3.報告セグメント間の内部売上高又は振替高は市場実勢価格に基づいています。
4.セグメント利益又は損失は、連結損益計算書における営業利益で表示しています。
5.資本的支出には、使用権資産の新規取得を含めています。
6.調整額は以下のとおりです。
① セグメント利益又は損失の調整額△12,208百万円には、各報告セグメント及び「その他」の区分に配分していない全社収益・全社費用の純額△11,357百万円が含まれています。
② セグメント資産の調整額73,758百万円には、セグメント間の債権の相殺消去額△75,912百万円、各報告セグメント及び「その他」の区分に配分していない全社資産149,670百万円が含まれています。
7.基礎材料セグメントにおける外部顧客への売上高の前連結会計年度からの主な減少要因は、電気銅等を販売していた子会社のPPCが、前連結会計年度に、持分法適用会社となったことによるものです。
8.各報告セグメントの非金融資産の減損損失の金額及び内容については、注記13.「非金融資産の減損」に記載しています。
(3) 製品及びサービスに関する情報
「(1) 報告セグメントの概要」における事業セグメントごとの製品及びサービスについて、「(2) 報告セグメントごとの売上高、損益、資産及びその他の項目」に同様の情報を開示しているため、記載を省略しています。
(4) 地域別に関する情報
① 売上高
売上高の地域別内訳については、注記23.「売上収益」に記載しています。
② 非流動資産
非流動資産の地域別内訳については、以下のとおりです。
(単位:百万円)
(注) 1.非流動資産は金融商品、繰延税金資産及び退職給付に係る資産等を含んでいません。
2.前連結会計年度において独立掲記していた「チリ」は、金額の重要性が乏しくなったため、当連結会計年度より「その他」に集約して記載しています。この変更に伴い、前連結会計年度の非流動資産は当連結会計年度区分に合わせ、修正再表示しています。
(5) 主要な顧客に関する情報
連結売上高の10%以上を占める顧客の売上高は、以下のとおりです。
(単位:百万円)