2026年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

半導体材料 情報通信材料 基礎材料 報告セグメント合計 その他
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
半導体材料 176,565 10.0 39,492 9.3 22.4
情報通信材料 314,595 17.8 31,477 7.4 10.0
基礎材料 390,912 22.1 139,465 33.0 35.7
報告セグメント合計 882,072 49.9 210,434 49.8 23.9
その他 2,566 0.1 1,821 0.4 71.0

3 【事業の内容】

当社グループは、半導体・情報通信分野に欠かせない銅やレアメタルを原料とする先端材料の開発・製造・販売を主な内容としてグローバルな事業活動を行っており、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔を主力製品としています。これらに加えて、銅やレアメタルの資源開発や、製錬・リサイクル事業を手掛けており、上流から下流までをつなぐ強固なサプライチェーンを有することにより、安定的に先端材料をマーケットに供給し、持続可能な経済・社会の発展に貢献しています。

 

当社グループは、半導体材料セグメント、情報通信材料セグメント、基礎材料セグメントの3つの報告セグメントにて構成されています。成長戦略のコアである半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントをフォーカス事業と位置づけ、先端材料分野での技術の差別化や市場創造を通じて、市場成長以上の利益成長を目指しています。一方、基礎材料セグメントをベース事業と位置づけ、銅・レアメタルの安定供給を通じてフォーカス事業を支える役割を担っています。各報告セグメントの主要製品、主要会社は以下のとおりです。

区分

セグメント

事業部・

事業会社

主要製品

主要な会社

フォーカス事業

半導体

材料

薄膜材料事業部

半導体用スパッタリングターゲット、高純度金属、表面処理剤、化合物半導体・結晶材料

当社、JX Advanced Metals USA, Inc.、JX Advanced Metals Singapore Pte.Ltd.、JX Advanced Metals Korea Co., Ltd.、JX金属商事㈱、台湾日鉱金属股份有限公司

 

 

タンタル・

ニオブ事業部

タンタル・ニオブ金属粉末、タンタル・ニオブ酸化物粉末、塩化物・化合物

当社、TANIOBIS GmbH、東京電解㈱

 

情報通信

材料

機能材料事業部

圧延銅箔、チタン銅、コルソン合金

当社、JX METALS  PHILIPPINES, Inc.、日鉱金属(蘇州)有限公司、JX金属商事㈱、台湾日鉱金属股份有限公司

 

 

東邦チタニウム

超微粉ニッケル、高純度酸化チタン、触媒製品、スポンジチタン、チタンインゴット

東邦チタニウム㈱

 

 

タツタ電線

電磁波シールドフィルム、導電性ペースト、ボンディングワイヤ、漏水検知システム、医療機器部材、インフラ・産業機器用電線

タツタ電線㈱

ベース

事業

基礎

材料

資源事業部

銅精鉱、電気銅、モリブデン精鉱、含金珪酸鉱、タンタル精鉱

当社、SCM Minera Lumina Copper Chile、Minera Los Pelambres、Minera Escondida

 

 

金属・リサイクル事業部

電気銅、型銅、貴金属、硫酸

当社、JX金属製錬㈱、パンパシフィック・カッパー㈱、JX金属サーキュラーソリューションズ㈱、eCycle Solutions Inc.、台湾日鉱金属股份有限公司

 

 

以下の事業区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記7.セグメント情報」に掲げるセグメントの区分と同一であり、各事業を構成する主要な関係会社の状況については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載しています。

 

(1) 半導体材料セグメント

(薄膜材料事業部)

高純度化や組成・組織制御などの当社のコア技術を駆使し、半導体や磁性材料向けのスパッタリングターゲットをはじめ、各種高機能デバイス、最先端IT機器、医療機器、電気自動車に用いられる製品をグローバルに展開しています。中でも、ロジックやメモリに用いられる半導体用スパッタリングターゲットが主力製品の一つであり、世界的にも高い評価を得ています。当社は様々な素材の半導体用スパッタリングターゲットを取り扱っており、半導体の主要配線層に用いられる銅や銅合金、そのバリア層に用いられるタンタルに加えて、半導体の回路形成やトランジスタ部分等に用いられるチタン、コバルト及びタングステンの製品でグローバル市場におけるトップクラスの地位を確立しています。

半導体はシリコンウエハ上に数百回以上にわたり回路を形成して製造されますが、半導体用スパッタリングターゲットは回路形成に必要となる素材の層をつくる工程(成膜工程)の材料として用いられます。成膜に当たっては、真空状態の装置内でスパッタリングターゲットにアルゴンイオンを衝突させ、放出したターゲット原子を基板(シリコンウエハ等)上に付着させることによって薄膜を形成します。半導体が目的とする機能を発揮するためには様々な種類の高純度素材による回路形成が必要となりますが、当社の強みである高純度化技術や、多種多様な元素・合金を取り扱う技術により、様々な材料ニーズを満たしたスパッタリングターゲットの製造が可能です。

 

① 半導体用スパッタリングターゲット製造における当社のコア技術

電解精製にて製造された高純度の電気銅を溶解してインゴットにし、そのインゴットを適切な幅に切断したのち、鍛造・圧延を施して必要な直径を持った円盤状の板(ターゲット材)に加工します。その後、熱処理によって結晶組織を均一化したターゲット材を、スパッタリング装置へ固定する役割を果たすバッキングプレートと接合(ボンディング)し、顧客から求められる特性に応じて表面の粗化から鏡面仕上げ等の加工を行い、品質や機能の分析評価を経て製品化されます。この一連の加工の中で、以下に記載する当社の複数のコア技術が活かされており、多数の金属品種において高品質な製品の安定的な供給を実現しています。

 

・高純度化技術

電解精製工程において、創業以来培ってきた高純度化技術により9N(99.9999999%)の銅の製造を実現しています。当技術により高純度銅スパッタリングターゲットに要求される6Nの銅を安定的に生産しています。

・組成・組織制御技術

ターゲット材の結晶組織がスパッタリングに適した大きさや向きとなるように制御・管理しています。これにより、成膜時の組成・組織が均一となり半導体の欠陥を引き起こす不純物であるパーティクル(発塵)の発生を抑えることに寄与しています。

・表面制御技術

バッキングプレートとターゲット材との接合状態が不均一な場合、スパッタリング時にターゲット材の表面温度が不均一になり様々な障害が生じます。そこで、ろう材による接合や異種材料間の拡散接合など、それぞれの材料に適した技術により、均一で強固な接合を実現しています。また、異種材料接合技術の応用により、銅箔と樹脂の複合材など、新しい材料の開発を進めています。

また、スパッタリングターゲットなどの材料は、その組成や純度だけでなく、表面状態も顧客のプロセスにおける製造効率に影響します。そのため、出荷前の最終工程において、エッチングによる表面の粗化から鏡面仕上げまで、求められる特性に応じた最終加工を行っています。

・分析評価技術

当社で製造したスパッタリングターゲットは、材料として顧客のスパッタリング装置に組み込まれて使用されます。当社は自前のスパッタリング装置を所有しており、顧客が使用する条件下で評価を行うことによって最終形態で期待される機能や特性の実現、性能改善を図っています。

 

② 半導体製造装置メーカーとの強固な関係

当社は半導体製造装置メーカーから受ける素材提案を通じて品質技術情報を獲得し、その情報を基に半導体製造装置メーカーに対して材料提案や先行開発を継続して実施してきました。長年にわたるこれらの活動の結果、当社製品の多くが半導体製造装置メーカーから標準材料として指定されており、それにより当半導体製造装置メーカーの製造装置を使用する半導体メーカーからの安定的な受注獲得につながっていると考えています。

事実として、当社は大手半導体メーカーと長年にわたり取引を継続してきた実績を有しています。加えて、高品質な製品の安定的供給が顧客から高く評価されています。

 

③ 半導体メーカー拠点との地理的優位性を有する生産体制

当社は、半導体の世界的生産地である米国、台湾、韓国において、スパッタリングターゲット製造の下工程(注)である機械加工拠点を有し、一定の在庫を保有することで、安定的かつ素早い製品供給体制を構築しています。

また、米国・台湾においては技術サービス拠点としての役割も担い、顧客への迅速な品質対応も行っています。当社の高い技術レベルと各拠点での速やかな技術対応を組み合わせることにより、高い顧客満足度を実現しています。

 

(注) 下工程は、半導体用スパッタリングターゲット製造プロセスにおける加工・ボンディング工程を指します。

 

(タンタル・ニオブ事業部)

当社グループのTANIOBISは、世界各地に製造・販売拠点を有する世界有数のタンタルとニオブの材料メーカーであり、主要製品は半導体用スパッタリングターゲットやコンデンサ用のタンタル粉・ニオブ粉、SAWデバイスや光学レンズ用のタンタル酸化物・ニオブ酸化物、半導体用のタンタルやニオブ等の塩化物、その他の高機能粉末材料です。半導体用スパッタリングターゲット用のタンタル粉については、当社グループの東京電解株式会社(以下、「東京電解」という。)にてインゴット状に加工のうえ当社薄膜材料事業部に供給し、スパッタリングターゲットの材料として使用されています。

また、当社グループは、ブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業に出資しており、安全や人権に配慮した倫理的かつ持続可能な「責任ある調達」を推進するとともに、TANIOBISの年間調達量の一定割合のタンタル鉱石を安定的に調達する体制を構築しています。これらの取り組みによって、当社グループとして半導体用タンタルスパッタリングターゲットを上流から下流まで一気通貫で安定的に供給する体制を確立しています。

 

 

(2) 情報通信材料セグメント

(機能材料事業部)

機能材料事業部では、主力製品である圧延銅箔に加えて、AIサーバ向け等の高機能コネクタなどに使われるチタン銅、コネクタやリードフレームに使われるコルソン合金などの銅合金を取り扱っています。圧延銅箔は、スマートフォンやウェアラブル端末、モビリティ(xEV/ADAS)の分野で使用されるハイエンドなフレキシブル回路基板(FPC)用途に広く採用されています。屈曲性や耐久性といった性能面での高い要求に応える技術力や、市場開拓を含めた継続的な取り組みを通じて、グローバル市場において当該分野で確固たる地位を築いています。銅合金は、銅に様々な元素を添加して製造した製品で、AIサーバやスマートフォン、パソコンなどの電子機器のコネクタ端子や半導体リードフレームなどに使用されており、近年の情報化社会の進展に伴い、これらの用途における重要性が一層高まっています。当社ではTi(チタン)を主な副成分とするチタン銅や、Ni(ニッケル)・Si(ケイ素)を主な副成分とするコルソン合金を中心に、顧客ニーズに合わせた多様な特性の製品を幅広く取り揃えています。

 

① 圧延銅箔製造における当社の技術優位性

圧延銅箔は、電気銅やリサイクル原料を溶解・鋳造して製造されたインゴットを熱間圧延・冷間圧延により必要な厚さにまで薄くして製造します。その後、結晶組織を均一にするための焼鈍や、顧客の要求するスペックにするための仕上げ圧延、表面に微細な凹凸を形成してプリント基板の樹脂との密着性を高めるための表面処理、幅分割等の工程を経て最終的に製品化がなされます。

圧延銅箔の主要用途であるFPCは、導電性金属である圧延銅箔と絶縁性を持った薄く柔らかいベースフィルム(ポリイミド等)とを貼り合わせた基材(FCCL)に電気回路を形成した基板です。僅かな隙間や繰り返し屈曲する可動部に用いられることから、圧延銅箔には優れた屈曲性や耐久性が求められます。当社は、FPC向けにHA箔を生産していますが、当該製品は結晶粒・結晶方位を調整することにより屈曲性・耐久性を飛躍的に向上させており、疲労寿命を迎えるまでに類似品である特殊電解銅箔と比較して高い曲げ耐性を有する製品を提供しています。また、当社は独自のノウハウにより高品質な薄箔の製造を実現しており、FPC用途において6μm(髪の毛の約10分の1)の薄さまで製造可能です。

 

② 市場開発型アプローチ

当社は、FPC向け圧延銅箔のエンドユーザーであるスマートフォンメーカー、ウェアラブル端末メーカー及びモビリティメーカーと長年にわたる取引関係を構築しており、これらのエンドユーザーとの対話を通じて、早期の開発ニーズの把握や、ニーズに基づく材料提案を行ってきました。当社製品がエンドユーザーから材料指定を受けることにより、エンドユーザーに製品供給を行うCCL及びFPCメーカーからの安定的な受注を実現しています。

 

(東邦チタニウム)

チタンは、軽量・高強度・高耐食という特性を持つ金属であり、航空機や海水淡水化プラント、発電プラントなど幅広い分野で利用されています。当社グループの東邦チタニウム株式会社では、金属チタン事業・触媒事業・化学品事業を軸とした事業展開を行っています。金属・チタン事業では、航空機材料用、医療用、産業設備用と幅広い分野で使用されているスポンジチタンやスポンジチタンを溶解・鋳造したチタンインゴットなどを製造しています。触媒事業では、ポリオレフィン製造用触媒などを製造しています。化学品事業では、積層セラミックコンデンサ等に使用される超微粉ニッケルや高純度酸化チタンなどを製造しています。

 

 

 

(タツタ電線)

電線・ケーブル製造で培った技術を多様な製品や事業に発展させており、電子材料事業、電線・ケーブル事業、その他事業を軸とした事業展開を行っています。電子材料事業では、モバイル端末等に使われる機能性フィルム、半導体分野で需要が高まる機能性ペースト、データセンターやサーバ向けの漏水検知システム、医療機器向け材料や部材などのメディカル関連製品を展開しています。電線・ケーブル事業では、ビルや住宅で使用される電力ケーブルからロボット用ケーブル、鉄道やプラントで使われる産業用ケーブルまで幅広く対応しています。

 

 

(3) 基礎材料セグメント

(資源事業部)

資源事業は当社の祖業であり、1905年に日立鉱山を開業して以来、国内外の鉱山を対象として、探鉱から開発、操業、休廃止鉱山の管理に至るまでをステークホルダーと協業しながら行ってきました。長年の現場経験を通じて培った鉱床評価技術、低品位銅鉱石から効率的に銅を分離・回収する技術、低環境負荷技術等を活用し、現在は海外の銅鉱山やレアメタル鉱山への参画や国内の含金珪酸鉱鉱山の操業を行っています。

銅鉱山については、カセロネス銅鉱山(チリ)、ロス・ペランブレス銅鉱山(チリ)及びエスコンディーダ銅鉱山(チリ)の権益を保有しており、当社銅製錬事業の原料となる銅精鉱の安定確保を図るとともに、投資リターンを得ています。このうち、エスコンディーダ銅鉱山及びロス・ペランブレス銅鉱山は、世界有数の生産規模を有しています。カセロネス銅鉱山については、2024年3月期にLundin社を経営パートナーとして迎え、同社の豊富な知見や高い鉱山運営能力を活かして、生産性向上やコスト競争力の強化を進めています。

レアメタルについては、当社グループの半導体材料・情報通信材料事業を支える重要な資源であり、その希少性や地理的遍在性を背景に、長期的な安定確保が重要な経営課題となっています。このため当社は、資源の調達先の多様化及びサプライチェーンの強化を目的として、調査・開発段階からの事業参画を含めた取り組みを進めています。こうした取り組みの一環として、オーストラリアにおけるミネラルサンド鉱床開発プロジェクトに参画しています。当社は、本プロジェクトを通じて、フォーカス事業を支える基盤である基礎材料セグメントとしての役割を一層強化するとともに、将来の事業環境変化に備えた資源ポートフォリオの高度化に取り組んでいます。また、当社グループ会社である鹿児島県の春日鉱山株式会社においては含金珪酸鉱の生産を行っており、銅製錬の副原料(溶剤)としてJX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所などに供給しています。

 

(金属・リサイクル事業部)

金属・リサイクル事業部は、金属製錬とリサイクルの一体的な事業運営を推進しています。銅精鉱と使用済み家電製品・電子機器などのリサイクル原料から、高効率な製錬プロセスを通じて純度99.99%以上の銅地金を生産するとともに、銅を製錬する過程の副産物として、貴金属やレアメタル、硫酸などの生産を行っています。当社グループの主要な製錬拠点であるJX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所は、世界有数の生産能力を持つ製錬所として位置づけられており、原料受入から製錬、回収、精製に至るまでの高度な技術力を活かした安定操業を継続しています。今後、銅の需要はますます伸びていくことが予想されており、この需要拡大を支えるには銅精鉱に加えてリサイクル原料の活用拡大が必要不可欠であることから、当社グループはリサイクル原料の受入・処理能力を拡大し、リサイクル原料処理比率の向上を図っています。

 

① グリーンハイブリッド製錬

JX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所では、リサイクル原料の増処理を進めるに当たり、銅精鉱が自ら発する酸化反応熱を最大限に活用し、化石燃料使用量をミニマイズするグリーンハイブリッド製錬を推進しています。これにより生産された銅は、拡大する需要を支える安定供給体制の構築と脱炭素や資源循環等のサステナビリティを重視した生産と供給という2つの使命を果たすために最適なサステナブルな銅であると考えています。2040年に銅製錬時のリサイクル原料処理比率を50%まで高めることを目標に、技術開発やリサイクル原料の増集荷・増処理体制の構築を進めています。

 

 

 

② 戦略的パートナーシップの構築によるサーキュラーエコノミーの推進

当社は、2022年に策定したサステナブルカッパー・ビジョンの実現に向け、国内商社との戦略的パートナーシップを活用しながらリサイクル原料の増集荷・増処理体制の構築を進めています。

具体的には、2022年8月にeCycle Solutions Inc.をグループに迎え入れた際に、ITAD事業に知見を有する双日株式会社と協業関係を構築し、2023年4月より連携を開始しています。また、2024年4月には、三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」という。)とともに、廃家電や廃電子機器、廃車載用リチウムイオン電池等の再利用を推進することを目的として、JX金属サーキュラーソリューションズ株式会社を新設し、同年7月より事業を開始しました。三菱商事が有する産業横断型のグローバルネットワークや知見を活用することで、リサイクル原料の集荷やサプライチェーン全体の連携強化を図り、銅やレアメタル等の非鉄金属資源のリサイクル拡大を目指しています。採掘された資源を廃棄せずに再利用し続けるサーキュラーエコノミーの実現に向け、貢献してまいります。

 

事業の系統図は以下のとおりです。


 

業績状況

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループを取り巻く環境

当期における世界経済は、米国の関税政策や中東における紛争等の地政学的リスクの高まりが重石となり、全体としては緩やかな拡大にとどまりました。国際的な通商・投資環境においては、関税措置や輸出管理規制・投資規制の強化等が複合的に作用し、企業活動を取り巻く環境は従来以上に不確実性の高い状況となりました。こうした影響を受け、世界経済は成長率の下振れリスクが意識される局面が続きました。国内経済は、米国の関税政策を巡る不透明感が企業収益や輸出動向に影響を及ぼしたものの、所得環境の改善を背景に個人消費には持ち直しの動きがみられるなど、内需を中心に緩やかな回復基調となりました。

円の対米ドル相場は、米国関税政策に伴う市場の不透明感等を背景に、期初には1米ドル当たり140円近辺まで円高が進行しました。その後は、米国経済の堅調な推移に加え、日本において実質的な金融緩和状態が継続したことなどから円安基調へと転じ、当期末には160円、期平均では前年同期比2円高の151円となりました。

銅の国際価格(LME〔ロンドン金属取引所〕価格)は、期初は1ポンド当たり438セントから始まり、米国における銅への関税賦課を巡る懸念に加え、海外鉱山でのトラブル等による供給不安、さらには米国の利下げ観測等を背景とした投機資金の流入等を受け、概ね上昇基調で推移しました。2026年1月29日には当時の史上最高値となる1ポンド当たり628セントを記録しました。その後は高値圏での調整局面を経て、当期末には1ポンド当たり552セント、期平均では前年同期比66セント高の1ポンド当たり491セントとなりました。

半導体市場は、旺盛なAI関連投資を背景に、データセンターにおけるAIサーバやネットワーク機器向け需要の拡大を受け、大きく成長しました。ネットワーク機器では、光通信領域の拡大もみられました。情報通信市場は、スマートフォンやパソコン・タブレットにおいて、Windows11への移行やAI機能搭載等に伴う更新需要を背景に、堅調に推移しました。

これらを背景に、当社グループを取り巻く事業環境は、米国の関税政策や地政学的リスク等による不確実性が続く一方で、AI関連投資の力強い拡大に支えられる状況となりました。

このような経営環境の中、当社の成長戦略のコアであるフォーカス事業の成長をさらに加速させる取組みや、ベース事業における資本効率を意識した事業の強靭化など、「JX金属グループ2040年長期ビジョン」(長期ビジョン)の実現に向けた各施策を推進しました。

また、2026年3月26日には、半導体分野をはじめとする先端材料の新たな中核拠点としてひたちなか工場を開業しました。本工場では、AIデータセンター向けを中心とした先端ロジック半導体や先端メモリ半導体(HBM等)の需要拡大を見据え、半導体用スパッタリングターゲット等の供給力強化に加え、研究開発や新規事業の創出を通じて、先端半導体サプライチェーンにおける競争力の向上を図っていきます。

 

① 財政状態及び経営成績の状況
a. 経営成績

当連結会計年度における当社グループの売上高は、円高に伴う減収要因はあるものの、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔等の主力製品の増販、銅価の上昇等を主因として、前期比23.7%増8,846億円となりました。営業利益は、前期比625億円増1,750億円となりました。金融収益と金融費用の純額59億円を差し引いた結果、税引前利益は、前期比616億円増1,691億円となり、法人所得税費用403億円を差し引いた当期利益は、前期比474億円増1,287億円となりました。なお、当期利益の内訳は、親会社の所有者に帰属する当期利益が1,046億円、非支配持分に帰属する当期利益が241億円となりました。

セグメントごとの経営成績は次のとおりです。

 

(半導体材料セグメント)

円高による減益要因はあるものの、AI関連需要の拡大は継続、データ生成量の増加に対応する大容量データ保存、データ通信高速化等のニーズが高まり、先端ロジック半導体やメモリ需要は高い水準で推移しました。これにより、半導体用スパッタリングターゲットをはじめとする主要製品の増販を主因に、前期比増益となりました。

こうした状況のもと、半導体材料セグメントの当期における売上高は、前期比20%増1,772億円となりました。営業利益は前期比128億円増益395億円となりました。

 

(情報通信材料セグメント)

円高及び2024年8月に実施したタツタ電線株式会社の連結子会社化に伴う負ののれん発生益の剥落等による減益要因はあるものの、スマートフォンの需要回復を受けた圧延銅箔の増販及びAIサーバ用途におけるチタン銅をはじめとする当社高機能銅合金の採用拡大により、前期比増益となりました。これに加えて、収益性向上、生産性改善等を目的に推進した収益構造改革も増益に寄与しています。

こうした状況のもと、情報通信材料セグメントの当期における売上高は、前期比20%増3,187億円となりました。営業利益は前期比64億円増益315億円となりました。

 

(基礎材料セグメント)

円高及び2024年7月に実施したSCM Minera Lumina Copper Chile(以下、「MLCC」という。)株式の一部譲渡による譲渡益の剥落及び持分法投資利益の一部剥落等による減益要因はあるものの、銅価等の上昇及びMLCCにおける繰延税金資産の計上による持分法投資利益の増益を主因に前期比増益となりました。また、金属・リサイクル事業においては、足許の銅精鉱買鉱条件が著しく悪化していることから、当社グループが運営する製錬所において減産措置を実施する方向で検討を進めています。

こうした状況のもと、基礎材料セグメントの当期における売上高は、前期比33%増4,079億円となりました。営業利益は前期比649億円増益1,395億円となりました。

 

b. 財政状態

① 資産

当連結会計年度末における資産合計は、営業債権及びその他の債権、棚卸資産、有形固定資産、持分法で会計処理されている投資の増加等により、前連結会計年度末比2,223億円増加1兆5,053億円となりました。

② 負債

連結会計年度末における負債合計は、営業債務及びその他の債務、借入金、引当金の増加等により、前連結会計年度末比958億円増加6,671億円となりました。

有利子負債残高は、前連結会計年度末比230億円増加3,243億円となり、また、手元資金等を控除したネット有利子負債は同150億円増加2,579億円となりました。

③ 資本

連結会計年度末における資本合計は、配当金の支払いによる減少等があったものの、当期利益の計上等により、前連結会計年度末比1,265億円増加8,383億円となりました。

 

 

なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比0.3ポイント増加48.3%、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末比120.86円増加784.44円、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は前連結会計年度末比0.04ポイント改善し、0.36倍となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ80億円増加し、663億円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、資金は1,075億円増加しました(前期は2,154億円の増加)。これは、営業債権及びその他の債権、棚卸資産の増加、法人所得税の支払等の資金減少要因があったものの、税引前利益の計上、配当金の受取、営業債務及びその他の債務の増加等の資金増加要因が上回ったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、資金は773億円減少しました(前期は221億円の減少)。これは、主に有形固定資産の取得等による資金減少が要因です

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、資金は249億円減少しました(前期は1,722億円の減少)。これは、主に配当金の支払等の資金減少が要因です。

(2) 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績及び受注実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、報告セグメントごとの生産実績及び受注実績を正確に把握することは困難なため、当社の主要な品目等についてのみ「(1) 経営成績等の状況の概要」において、各報告セグメントの業績に関連付けて記載しています。

 

b.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

売上高(百万円)

前年同期比(%)

半導体材料

177,195

119.7

情報通信材料

318,744

120.2

基礎材料

407,877

133.1

その他

9,811

110.7

調整額

△28,989

213.5

連結財務諸表計上額

884,638

123.7

 

(注) 1.セグメント間の取引については、各セグメントに含めて表示しています。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

パンパシフィック・カッパー㈱

204,479

28.6

321,411

36.3

 

 

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しています。連結財務諸表の作成に当たって、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と考えられる様々な要因を考慮したうえで、見積り及び判断を行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「同 4.重要な会計上の見積り及び判断」をご参照ください。

 

② 経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループでは、運転資金及び設備投資等の資金需要に対して、自己資金や必要に応じ金融機関からの借入等で資金調達を行っています。また、子会社の資金調達については、グループ資金の効率性確保の観点から原則として当社が実施し、当社から当社グループ子会社に貸付けを実施いたします。当社グループでは、グループ資金を当社が集中して管理し、グループ全体としての資金の効率的な調達・運用を実現しています。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針

経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

セグメント情報

 

7.セグメント情報

(1) 報告セグメントの概要

当社グループの事業セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、当社の取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象です。

当社グループでは、当社において設置された製品・サービス別の事業セグメントが、取り扱う製品・サービスについて国内及び海外の包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しています。

したがって、当社グループは、製品・サービス別の事業セグメントから構成されていますが、製品・サービスの特性及び販売市場の類似性に基づき、複数の事業セグメントを集約したうえで、「半導体材料」、「情報通信材料」及び「基礎材料」の3つを報告セグメントとし、他の事業セグメントを「その他」としています。

各報告セグメント区分の主な製品・サービス又は事業内容は、次のとおりです。

 

半導体材料

半導体用スパッタリングターゲット、化合物半導体・結晶材料、塩化物等の製造・販売

情報通信材料

圧延銅箔、チタン銅、超微粉ニッケル、電磁波シールドフィルム、電線等の製造・販売

基礎材料

リサイクル原料の集荷・販売、電気銅の受託製錬、貴金属等の製造・販売・受託製錬

 

 

 

(2) 報告セグメントごとの売上高、損益、資産及びその他の項目

前連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(単位:百万円)

 

半導体

材料

情報通信

材料

基礎材料

(注7)

報告セグメント合計

その他

調整額

(注6)

連結財務諸表計上額

売上高

 

 

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高(注2)

147,428

260,885

304,066

712,379

2,561

714,940

セグメント間の内部売上高又は振替高(注3)

613

4,227

2,438

7,278

6,299

△13,577

148,041

265,112

306,504

719,657

8,860

△13,577

714,940

セグメント利益又は損失(△)

(注4)

26,738

25,085

74,517

126,340

△1,648

△12,208

112,484

金融収益

 

2,407

金融費用

 

7,415

税引前利益

107,476

セグメント資産

283,479

357,926

541,568

1,182,973

26,271

73,758

1,283,002

その他の項目

 

 

 

 

 

 

 

減価償却費及び償却費

10,888

16,281

12,549

39,718

181

4,140

44,039

持分法による投資損益

338

61,029

61,367

△98

△310

60,959

持分法で会計処理されている投資 

1,308

310,381

311,689

8,261

319,950

有形固定資産及び無形資産の資本的支出(注5)

23,077

25,575

5,084

53,736

11

10,062

63,809

 

(注) 1.報告セグメントの会計方針は、連結財務諸表作成における会計方針と同一です。

2.外部顧客への売上高には、顧客との契約から生じた収益及びその他の源泉から生じた収益が含まれています。詳細については、注記23.「売上収益」に記載しています。

3.報告セグメント間の内部売上高又は振替高は市場実勢価格に基づいています。

4.セグメント利益又は損失は、連結損益計算書における営業利益で表示しています。

5.資本的支出には、使用権資産の新規取得を含めています。 

6.調整額は以下のとおりです。

① セグメント利益又は損失の調整額△12,208百万円には、各報告セグメント及び「その他」の区分に配分していない全社収益・全社費用の純額△11,357百万円が含まれています。

② セグメント資産の調整額73,758百万円には、セグメント間の債権の相殺消去額△75,912百万円、各報告セグメント及び「その他」の区分に配分していない全社資産149,670百万円が含まれています。

7.各報告セグメントの非金融資産の減損損失の金額及び内容については、注記13.「非金融資産の減損」に記載しています。

 

 

当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)

(単位:百万円)

 

半導体

材料

情報通信

材料

基礎材料

報告セグメント合計

その他

調整額

(注6)

連結財務諸表計上額

売上高

 

 

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高(注2)

176,565

314,595

390,912

882,072

2,566

884,638

セグメント間の内部売上高又は振替高(注3)

630

4,149

16,965

21,744

7,245

△28,989

177,195

318,744

407,877

903,816

9,811

△28,989

884,638

セグメント利益又は損失(△)

(注4)

39,492

31,477

139,465

210,434

1,821

△37,288

174,967

金融収益

 

2,209

金融費用

 

8,094

税引前利益

169,082

セグメント資産

318,515

402,430

668,949

1,389,894

27,205

88,238

1,505,337

その他の項目

 

 

 

 

 

 

 

減価償却費及び償却費

11,872

17,329

10,652

39,853

196

4,630

44,679

持分法による投資損益

79

114,701

114,780

△195

△94

114,491

持分法で会計処理されている投資 

1,603

366,766

368,369

3,784

372,153

有形固定資産及び無形資産の資本的支出(注5)

24,313

27,920

17,002

69,235

61

8,608

77,904

 

(注) 1.報告セグメントの会計方針は、連結財務諸表作成における会計方針と同一です。

2.外部顧客への売上高には、顧客との契約から生じた収益及びその他の源泉から生じた収益が含まれています。詳細については、注記23.「売上収益」に記載しています。

3.報告セグメント間の内部売上高又は振替高は市場実勢価格に基づいています。

4.セグメント利益又は損失は、連結損益計算書における営業利益で表示しています。

5.資本的支出には、使用権資産の新規取得を含めています。 

6.調整額は以下のとおりです。

① セグメント利益又は損失の調整額△37,288百万円には、各報告セグメント及び「その他」の区分に配分していない全社収益・全社費用の純額△32,308百万円が含まれています。

② セグメント資産の調整額88,238百万円には、セグメント間の債権の相殺消去額△104,060百万円、各報告セグメント及び「その他」の区分に配分していない全社資産192,298百万円が含まれています。

7.各報告セグメントの非金融資産の減損損失の金額及び内容については、注記13.「非金融資産の減損」に記載しています。

 

(3) 製品及びサービスに関する情報

「(1) 報告セグメントの概要」における事業セグメントごとの製品及びサービスについて、「(2) 報告セグメントごとの売上高、損益、資産及びその他の項目」に同様の情報を開示しているため、記載を省略しています。

 

(4) 地域別に関する情報

① 売上高

売上高の地域別内訳については、注記23.「売上収益」に記載しています。

 

 

② 非流動資産

非流動資産の地域別内訳については、以下のとおりです。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度末

(2025年3月31日)

当連結会計年度末

(2026年3月31日)

日本

305,509

340,013

その他

94,257

94,376

合計

399,766

434,389

 

(注) 非流動資産は金融商品、繰延税金資産及び退職給付に係る資産等を含んでいません。

 

(5) 主要な顧客に関する情報

連結売上高の10%以上を占める顧客の売上高は、以下のとおりです。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2024年4月1日 
 至 2025年3月31日)

当連結会計年度

(自 2025年4月1日 
 至 2026年3月31日)

パンパシフィック・カッパー㈱

204,479

321,411