人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数5,060名(単体) 13,814名(連結)
-
平均年齢42.0歳(単体)
-
平均勤続年数17.0年(単体)
-
平均年収9,936,913円(単体)
従業員の状況
5【従業員の状況】
(1)連結会社の状況
|
2025年3月31日現在 |
|
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
|
燃料油 |
7,001 |
[4,170] |
基礎化学品 |
687 |
[75] |
高機能材 |
3,786 |
[649] |
電力・再生可能エネルギー |
327 |
[38] |
資源 |
809 |
[46] |
その他・調整 |
1,204 |
[291] |
合計 |
13,814 |
[5,269] |
(注)従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は〔 〕内に外数で記載しています。
(2)提出会社の状況
|
|
|
|
|
|
2025年3月31日現在 |
従業員数(人) |
平均年齢 |
平均勤続年数 |
平均年間給与(円) |
|||
5,060 |
[1,062] |
42歳 |
0ヶ月 |
17年 |
10ヶ月 |
9,936,913 |
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
|
燃料油 |
2,323 |
[367] |
基礎化学品 |
406 |
[74] |
高機能材 |
1,114 |
[330] |
電力・再生可能エネルギー |
120 |
[21] |
資源 |
144 |
[28] |
その他 |
953 |
[242] |
合計 |
5,060 |
[1,062] |
(注)1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は〔 〕内に外数で記載しています。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
(3)労働組合の状況
当社の労働組合は2024年8月31日に解散し、現在労働組合は結成されていません。なお、当社グループでは、一部の連結子会社で労働組合が結成されていますが、労働組合の有無にかかわらず、労使関係は安定しており、特記すべき事項はありません。
(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
①提出会社
当事業年度 |
||||
管理職に占める女性労働者の割合(%) (注)1、2 |
男性労働者の育児休業取得率(%) (注)1、3 |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注)1、2、4 |
||
全労働者 |
正規雇用労働者 |
パート・有期労働者 |
||
5 |
92 |
76.5 |
75.6 |
59.1 |
(注)1.提出会社から他社への出向者は、提出会社に含んで集計しています。
2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。
4.男女間の賃金格差が生じている要因として、当社の全管理職に占める女性管理職比率が5%であること、また女性社員における女性管理職比率が男性社員における男性管理職比率に比べて低いことが挙げられます。当社の賃金制度および体系において、性別による処遇差別は一切存在いたしません。社員一人ひとりの多彩な能力を最大限に発揮できる環境の整備と職場の意識醸成に向けて、女性管理職のリーダーシップ向上を目指した取り組みや、社員の育児・介護と仕事との両立支援策を推進することにより、男女間の賃金格差の縮小を図っていきます。
②連結子会社
当事業年度 |
|||||
名称 |
管理職に占める女性労働者の割合(%) (注)1、2 |
男性労働者の育児休業取得率(%) (注)1、3 |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注)1、2、4 |
||
全労働者 |
正規雇用労働者 |
パート・有期労働者 |
|||
出光リテール販売㈱ |
4 |
73 |
75.0 |
72.5 |
107.0 |
ソーラーフロンティア㈱ |
10 |
42 |
83.1 |
82.1 |
- (注)5 |
昭和四日市石油㈱ |
0 |
80 |
68.0 |
70.2 |
100.9 |
東亜石油㈱ |
0 |
87 |
76.7 |
78.5 |
62.0 |
出光ユニテック㈱ |
3 |
61 |
83.6 |
84.7 |
55.8 |
㈱ペトロスター関西 |
6 |
0 |
71.5 |
81.5 |
119.2 |
出光NTG㈱ |
5 |
25 |
75.6 |
77.4 |
66.1 |
若松ガス㈱ |
9 |
75 |
82.7 |
79.2 |
149.9 |
出光エナジーソリューションズ㈱ |
6 |
0 |
68.5 |
67.0 |
74.6 |
㈱エス・ディー・エス バイオテック |
6 |
66 |
69.7 |
76.9 |
29.0 |
アポロリンク㈱ |
11 |
50 |
64.4 |
75.7 |
407.1 |
アグロ カネショウ㈱ |
11 |
50 |
73.3 |
78.6 |
28.7 |
(注)1.提出会社から他社への出向者は、提出会社に含んで集計しています。
2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合又は第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。
4.管理職比率等男女間に差異があることで、男女の賃金に差異が生じていますが、賃金制度・体系において性別による処遇差は一切なく、等級別の人数構成の差によるものです。
5.女性は在籍していません。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループは、「真に働く」の企業理念のもと、2050年ビジョンに掲げた「人々の暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たすべく、サステナビリティ推進を経営課題として位置付けています。2021年に取締役会承認により、「出光グループサステナビリティ方針」を定め、取り組みを推進しています。サステナビリティに関する取り組みを明文化し、当社グループが一丸となって環境課題や社会課題の解決に貢献することを目指しています。
(1)サステナビリティ(ESG)共通
①ガバナンス
当社では、気候変動や人権といったESGの中心課題はもちろんのこと、各事業の諸課題もサステナビリティへの関連が強いことから、議題は全て経営委員会で議論される体制としています。経営委員会の委員長は社長が務め、議論された内容は適宜取締役会に付議・報告されています。
また当社では、サステナビリティの専任組織であるサステナビリティ戦略室を経営企画部の中に設置しています。サステナビリティ戦略室が、ESG各課題を主管する部署と部門横断的に関与し、当社のサステナビリティ経営を推進しています。サステナビリティ戦略室からは年に1回以上、サステナビリティに関する課題進捗を取りまとめて経営委員会に報告し、詳細については各主管部署からの付議により、経営委員会で十分なサステナビリティに関する議論、モニタリングができる体制としています。
サステナビリティ推進体制図
②戦略
当社は事業活動を通じて、持続可能な地球環境と社会を実現しつつ、企業としての持続的な成長を目指しています。2030年基本方針に則して、当社グループが貢献していく社会課題である「①カーボンニュートラル、循環型社会への貢献」「②地域社会への貢献(エネルギー&モビリティ)」、それらの達成に向けた注力課題である「③従業員の成長・やりがいの最大化」「④DE&Iの深化」、当社グループ活動の基盤となる「⑤デジタル変革の加速」「⑥ガバナンスの進化」、これらの基礎的要件である「⑦健康、安全、遵法、人権擁護の徹底」の7項目をマテリアリティ(重要課題)として特定し、取り組みを進めています。
当社グループが事業を展開している日本を含むアジア・オセアニア・欧米などの各国では、サステナビリティに関する情報開示基準の国際標準化が急速に進んでいます。この国際的な潮流を受け、当社グループはサステナビリティ情報開示の重要性を改めて認識し、各国の基準に則った適正な情報開示を充実させるべく準備を進めています。
具体的には、現状の取り組みと国際基準との差異を把握するため、情報開示のギャップ分析を実施し、今後のサステナビリティ情報開示対応マップを策定しました。当ロードマップに則り、既存及び新規事業領域におけるサステナビリティ観点での重大な影響や、リスクと機会に対する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」を適宜開示していく方針です。
今後も、多様なステークホルダーの皆さまに対して、当社のサステナビリティに関する取り組みをより分かりやすい形で開示・共有していきます。
③リスク管理
当社グループは、事業活動に関わる様々なリスクを未然に認知・評価し、リスクに応じた適切な対応を講じることで、経営の安定を図っています。経営を取り巻く環境が大きく変化する中で事業構造改革を推進するためには、リスクの予防強化に向けてリスクマネジメントをより全社的、統合的に高めていく必要があり、2025年度からの本格運用に向け統合的なリスクマネジメントの強化を図っています。
取締役会が監督する「リスク経営委員会」は、グループ経営に関わるリスクマネジメント方針の決定とマネジメント状況のモニタリングなどを実施しています。他の委員会などに対し重要な全社リスクに関する報告を随時求めるほか、本委員会の実施状況について、原則年1回取締役会に報告しています。なお、全社リスクという概念には、「リスク」も「機会」も両方含まれています。
「リスク経営委員会」の下、リスクに対応する「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、適時、迅速に必要な対策を取ることを通して、リスクに関する全社リスクマネジメントを推進しています。
リスクのうち、網羅性の高さから組織横断的に管理するリスクを「重要リスク」として位置付け、当社グループでのリスク管理のモニタリングに用いているほか、主要事業部門へのリスクヒアリングを通じて「重要リスク」への対応を確認しています。
④指標及び目標
当社グループは2019年にマテリアリティを初めて特定し、当社にとって重要な社会課題を認識し、事業活動に取り組んできました。それらからの連続性を重視しつつ、中期経営計画(2023~2025年度)や2050年ビジョン、社外を取り巻く環境変化も踏まえ、2022年にマテリアリティを見直し、KPI、モニタリング指標を定めて、サステナビリティ戦略を実行しています。
なお、人的資本に関する指標及び目標については、「(3)人的資本の多様性に関する戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりです。
(2)気候変動対応
カーボンニュートラル(CN)・循環型社会の実現に向けて、当社グループの強みである「社会実装力」を発揮し、「人々の暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たすことを目指しています。気候変動関連対応の取り組みに関しては、2020年に賛同署名したTCFD提言に沿った形での情報開示を継続しつつ、IFRS S2のフレームワークでの開示を念頭に、開示拡充を進め、ステークホルダーの皆さまのご理解と協働のもとで取り組みを加速させていきたいと考えています。
①ガバナンス
化石燃料販売を主たる事業とする当社にとって、気候変動対応は、最重要経営課題の一つであり、中長期の時間軸で大規模な事業ポートフォリオ転換を伴う取り組みです。取締役会は、本課題を様々な角度から多面的に捉えて経営方針を定めるとともに、その方針に基づいたアクションが、迅速かつ着実に実行されることを監督する役割を担っています。気候変動関連の主要な議案は経営委員会に付議され、特に重要な議案は、取締役会に報告されます。これにより、取締役会は全社方針に基づいた執行が着実に行われているかを監督する体制としています。
気候変動対応の取り組みは、全社横断的かつテーマが多岐にわたります。そのため、CN社会の実現に向けた全社戦略の立案・遂行を加速させる必要性を認識し、専門部署(CNX※戦略部)が中心となって推進しています。CNX戦略部は全社CN戦略立案やGHG削減目標設定、CNX人財育成を社内関係部門と連携し主導しています。
※)CNX : Carbon Neutral Transformation
②戦略
気候変動対応の具体的な検討は、2050年までを対象とした長期事業環境シナリオを策定し、シナリオのアウトプットを踏まえてリスクと機会を特定し、具体的な戦略立案へと進めています。
2019年に当社として最初となる事業環境シナリオの対外公表以降、社会の環境変化に応じて、随時シナリオの見直しを行い、中期経営計画(2023~2025年度)の検討においては、3つのシナリオを想定しました。
2024年にシナリオの見直しを行った結果、カーボンニュートラル社会に世界が向かうためには、国際情勢、技術進展、人口動態など多くの条件が揃う必要が有り、いまだに、その方向性・道筋には、不確実性が存在していると考えられます。それ故、当社の事業計画においては、複数のシナリオ(「碧天+」、「虹」、「むら雲」)を利用しています。
次項で記載するリスクと機会の全体像を踏まえ、リスク低減と機会最大化に向け、現在の5つの既存事業ポートフォリオを3つの事業領域(「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」)に有機的に結合・再編し、各領域において必要とされる事業の社会実装を通して、2050年ビジョンの実現を目指します。
③リスクと機会
2050年に向けた長期事業環境シナリオに基づき、気候変動に係わるリスクと機会の洗い出しを行っています。各領域別に、想定される時間軸、財務影響レベル、並びに当社の対応を取りまとめ、下表に記載した内容に沿って、具体的な取り組みを進めています。
リスクと機会への対応として、既存事業の収益強化と資本効率化、事業構造改革投資による新規事業の創出、事業ポートフォリオ転換などに取り組みます。これにより2030年時点で、営業利益+持分損益ベース2,700億円を目標としています。
④指標及び目標
カーボンニュートラル社会の実現に向けては、事業遂行に伴う自社の直接・間接排出量(Scope1+2)の削減と、新たな製品・サービスの提供を通じた他者排出量削減への貢献(Scope3削減、削減貢献量創出)の両面からの取り組みが必要と考えています。
本取り組みを進めていくうえでは、排出量を削減するという環境面への貢献とともに、エネルギー供給という社会面への貢献と、企業収益の維持・拡大という経済面への貢献をいかに同時に実現していくか、という点が重要という認識の下、当社は以下に記載する3つの指標を設定して、関連活動の進捗をモニタリングしています。
|
|
各指標に関する目標値(目指すレベル)は、以下のとおりです。
(サプライチェーンでの取り組み)
顧客を含むサプライチェーン全体での排出削減に関して、環境面への貢献(CO₂削減)と社会面への貢献(社会が必要とする低炭素エネルギー供給)の同時実現の観点から、特に“Carbon Intensity”という指標を用い、目標値を設定して、取り組みを進めています。本分野の社会実装を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきたいと考えています。
(役員報酬における気候関連の業績評価指標)
役員報酬における気候関連の業績評価指標としては、業績連動型株式報酬の評価項目として「CO₂削減」を採用しています(役員報酬体系の表は「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等 ①役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針に係る事項 (報酬構成)」参照)。
(3)人的資本の多様性に関する戦略並びに指標及び目標
①人的資本経営の基本方針
当社は、創業以来「資本は人なり」「人が中心の経営」という考え方を何よりも大切にしてきました。1945年、日本は敗戦により多くの企業が事業を失い、借金を抱え、社員の解雇を余儀なくされていました。当社も例外ではなく、海外から引き揚げてくる800名の社員の雇用の維持が極めて困難になっていました。しかし当社の創業者であり当時の社長である出光佐三は「事業は失われ、借金は残っている。しかし、出光興産には海外に800名の人材がいるではないか。これが唯一の資本であり、これが今後の事業をつくる。人間尊重の出光興産は、終戦の混乱に慌てて馘首してはならない。」と述べ、社員を解雇せずに守ることを宣言しました。その後、社員は一層結束力を高め当社の再建の原動力となりました。「社員がしっかり成長していれば、どんな困難にも立ち向かえる」という創業者の思いは「いかなる場合も会社都合で人員整理を行わない」「世の中の役に立ち、尊重される人の育成こそが企業目的であり、事業はそのための手段である」という基本方針として今日まで受け継がれています。
②当社グループが直面している経営戦略上の課題
1949年に元売り指定を受けて以降、当社グループは日本のエネルギーセキュリティを支える使命を担い、国内外に燃料油ビジネスを中心としたネットワークを構築し事業活動を展開してきました。現在当社グループは、「燃料油」「基礎化学品」「高機能材」「電力・再生可能エネルギー」「資源」という5事業セグメントに多様化していますが、この中で化石燃料に由来する収益の割合は9割を超えます。また、燃料油・基礎化学品は、グループ全体の投下資本及び人員数の7割に達しています。もしこのまま手を拱いて事業構造を変革しなければ当社グループは2050年カーボンニュートラル(CN)時代に多くの事業を失うことになります。低廉なエネルギーの安定供給とCNの実現という一見相反する課題の克服を通じて、当社グループは成長機会を見出していかなければなりません。
当社グループの経営戦略上の最大の課題の一つは2050年に向けたリアリティのある成長戦略の構築です。とりわけ、既存事業セグメントはCNエネルギーが事業の柱となる2030年代半ばまでグループを牽引することが期待されており、そのためには従来の延長線上にない視点での商品サービスの拡大、ビジネスモデルの変革が必要です。
③経営戦略と連動した人財戦略
2050年CN時代という一大変革期を迎えるに当たり、現中期経営計画では事業構造改革投資と人的資本投資を車の両輪として位置づけ、全社員がその能力や個性を最大限に発揮できる環境を整え、社員の成長を通じて企業が成長することを目指しています。
そして、「企業理念・ビジョンの体現」「DE&Iの深化」「個々人の能力・個性の発揮」を人財戦略の3本柱として推進しています。2024年度に実施した施策の一部を紹介します。
図1 人財戦略の3本柱
ア.企業理念・ビジョンの体現
社長をはじめとする経営層と社員の直接対話の場である全社タウンホールミーティングを半期に一度開催しています。毎回多くの社員が参加し、経営層から会社の経営状況をタイムリーに伝えるとともに、企業理念やビジョンについても語りかけ、社員への理解・浸透を図っています。また、タウンホールミーティング以外にも、各役員が事業所・支店などの各拠点に赴いた時に、社員と直接対話を行う機会を月30回ほど設けています。一方、2024年10月に東京都港区北青山に当社の理念や歴史を紹介する「出光興産ヒューマンギャラリー」をリニューアルオープンしました。社内の研修用途以外に社外の方にもご利用いただいており、半年で約800名が来館されています。
イ.DE&Iの深化
女性役職者のリーダーシップ向上を目的に、国内でも先進的な事例である「クロスメンタリング」に取り組んでいます。「クロスメンタリング」とは、メンター(支援者、助言者)とメンティ(支援・助言を受ける立場)が異なる企業同士となる組み合わせでメンタリングを行う、企業横断型のキャリア形成支援の取り組みです。この取り組みのユニークさや、ジェンダーロールバイアスの打破に向けた製造現場における女性社員登用の取り組みなどが評価され、3年連続で2024年度のなでしこ銘柄を受賞しました。また、男女問わず育児休業の取得を推進すべく、取得する育休の最初の一か月間を特別有給休暇として扱う「推奨育休」のトライアルを実施しています。トライアル期間は2025年9月までとし、その期間での抽出した課題を反映後、本格導入に入る予定です。
ウ.個々人の能力・個性の発揮
2024年度は「一般社団法人出光社員会」を設立し、より良い会社と組織風土を創るために、役職者含む社員一人ひとりが議論に参加できる「場」を提供することを目的として活動を開始しています。非管理職の社員から選出された社員会の専任理事と各職場の社員会の代表がより良い職場・やりがいのある職場に向けた議論を重ね経営層への提言を行うことを通じて、やりがいのある職場づくりなどに取り組んでいます。
また社員一人ひとりが自律的にキャリアを考えることを支援する「キャリアデザイン部」を設立し、手上げ式の研修やライフキャリアを検討するツールなどの展開を始めています。
エ.出光エンゲージメントインデックス向上の取り組み
既存事業の構造改革を通じた持続的な成長を実現するために、当社はゴール指標として出光エンゲージメントインデックス(出光EI)を重視しています。これは、当社が独自に開発した指標で、組織に対する社員のコミットメントを測定するもので、「高い当事者意識」「当社に帰属する誇り」「自己の成長実現」「組織への貢献意欲」「企業理念の体現」「組織の垣根を超え変革に挑戦」の6つの要素で構成されています。この出光EIに強い影響を及ぼす要素を明らかにすべく、やりがい調査の質問項目を独立変数、出光EIを従属変数とした重回帰分析を実施し、特に高い寄与率を示すキードライバー6項目を抽出しています。
図2 出光EIとキードライバー
各キードライバーに対する課題と打ち手を講じ、2024年度の出光EIは70%となりました。(2022年度: 67%、2023年度: 69%)
④2025年度の重点課題
中計最終年度を迎えるに当たって、本年重点的に取り組む、人財戦略上の課題を中心に記載していきます。
ア.Post Merger Integration(PMI)に区切りをつけ新たな行動指針を制定
主力製品の内需減少は経年の課題であり、慢性的な供給過剰に陥った業界構造を打開すべく2019年、出光興産・昭和シェル石油は経営統合しました。燃料油セグメントを中心として、統合シナジーを速やかに追及、実現する一方、PMI活動については、生い立ちの違う、100年以上の歴史を持つ企業同士の統合であることから、慎重を期して丁寧に進めました。現在の人事制度及び行動指針は、経営統合時にどちらかの会社の制度に片寄せするのではなく、新しいコンセプトを打ち出すという方針のもと策定・制定されました。しかし、行動指針などで使われた用語が汎用的であるために当社らしい価値観が反映されていない、評価の際の基準が曖昧になりやすいという問題点を抱えていました。そこで、2021年4月に成文化した企業理念「真に働く」に基づき、今般当社らしさにこだわり、新たな行動指針を制定しました。制定した新行動指針は、「徹底的当事者意識」「飽くなき成長意欲」「誠実・相互信頼」の3つの基本姿勢と、「大胆に挑み続ける」「常に考え決断する」「相違を乗り越える」「人を活かす」の4つの能力から構成されています。
表1 新行動指針
この行動指針をもとに人事制度を刷新し、社員が日常業務を通じて企業理念を体現し、持続的な成長を遂げることを目指します。約5年かけたPMI活動に名実ともに区切りをつけ新たなスタートを切ることにします。人財戦略のプラットフォームになるのが人事制度であり、評価項目及びその基準となる「新行動指針浸透率」を新たにKPIとして設定し進捗を確認していきます。
イ.出光成長スコアの設定
前述のとおり、これまでの出光EIは漸次改善している一方、2025年度目標: 75%を達成するためには一段と思い切った施策が必要です。
従来の出光EI分析は、平均値をもとにした対応策検討に終始していたという反省を踏まえ、今般各職場のリーダー層30名強を抽出し、匿名かつ記述式のアンケートを実施して現場の社員が実感している課題を抽出することにしました。アンケート結果を分析したところ、
・成長実感が得られない
・職場での貢献実感が得られない
・個人のキャリアを描けない
の3点が課題として浮かび上がってきました。この3点は、特に出光EIとの寄与率が高いキードライバー6項目のうち、「当社には能力を伸ばし成長する機会がある(成長実感)」「現在の仕事に対する自身の取組みと成果に満足している(貢献実感)」「今後当社でのキャリアを思い描ける(キャリアを描ける)」の3項目と一致しています。
図3 出光成長スコアの設定
そこで、この3つを新たに中間指標として「出光成長スコア」を設定することにしました。なお、出光成長スコアと出光EIの相関係数は0.8です。現状開示を行っている「出光EI」はゴール指標として継続的に開示を行い、出光EIの向上に繋がる先行プロセスであり、喫緊の重要組織課題達成のための中間指標「出光成長スコア」を経営上の重要指標として追跡し、かつ社員全員で向上のためのムーブメントを起こしていきます。これが結果的に既存事業の成長にも繋がっていくものと考えています。
図4 出光成長スコアと出光EIの関係
なお、2024年の出光成長スコアは64%でしたが(2022年60%、2023年62%)、全45部門を3分割すると、上位3分の1に入る15部門の平均スコアが70%であるのに対し、下位3分の1に入る15部門の平均スコアは58%と12ポイントの差がありました。事業内容、所属するメンバー特性など、部門ごとに出光成長スコアにばらつきがあり、部門別のきめ細かな丁寧なアプローチが必要であることを再認識しました。
ウ.出光成長スコアに資する打ち手の展開
出光成長スコアの向上に向けて、本年は以下の4点に取り組みます。
(ア)キャリアを主体的に考える機会の拡大
出光成長スコアを構成する「今後当社でのキャリアを思い描ける」のスコアが51%に留まっていることが課題です。当社では様々なキャリア支援策を用意し、社員に選択肢を提供していますが、それを自分事として受け止め、自ら主体的にキャリアを描ける社員の割合がまだまだ不足しているのが現状です。これを打開すべく、全部門が一堂に会し他部門の業務理解、自身のキャリアを考える機会となる「ジョブフェスティバル」、現職務を継続しながら20%の時間を他部門の業務に充てることができる「社内副業制度」、部門を超えたプロジェクトへの参画、社外への越境学習などへ参加した人の割合を測定する「自部門外活動参加率」をKPIとして設定します。また、これらの経験を経て自ら主体的にキャリアに関し意思決定する社員を後押しする「自律的キャリア意向比率」を併せてKPIとして設定しフォローしていきます。これらは出光EIを構成する「組織の垣根を超え変革に挑戦」にも寄与すると考えています。
(イ)キャリア支援の実感向上と、次世代リーダー層の拡大
各種キャリア支援策や上司をはじめとする周囲の人たちのサポートが社員にどのように実感されているのかを測定し、適宜軌道修正できるようにしていきます。そのため、「キャリア周辺サポート比率」を新たにKPIとして設定します。また、自らのキャリアプランを明確にする過程で当社において現在の女性役職者比率だけではなく、リーダーとして活躍したいと考えている社員の層に厚みを持たせたいと考えています。そのため「リーダー層希望比率」を中間指標として測定していきます。これにより、性差のない将来のリーダー層・役職者のパイプラインを形成します。
(ウ)役職者の面談力向上による、キャリア支援力の向上
部下のキャリア支援に当たって直属の上司の役割は極めて重要です。本年上期は新行動指針に基づく人事制度の考課者訓練、そして本年下期以降、2年をかけて重点的に面談力(傾聴・フィードバック)向上に資する研修を全役職者対象に実施していきます。まずは、上司である役職者に対し、部下の成長実感、貢献実感の向上に資する面談を実施できているかどうかを確認する「効果的面談実施率」をKPIとして設定します。
(エ)人的資本の可視化と最大活用
当社は、人的資本の可視化と最大活用を図るため、生成AI技術を活用したプラットフォームを構築しています。これにより、社員のスキルやキャリアポテンシャルを可視化し、最適な配置や育成計画に役立てています。本年は上記で設定したKPI情報を有機的に組み合わせ、経営情報としての活用を図っていきます。
当社の人的資本経営に関するKPI及び中間指標は下表のとおりです。
図5 当社のKPI及び中間指標
引き続き、当社は人的資本経営を推進し、社員の成長と企業の持続的成長を両立させるための取り組みを続けていきます。
⑤指標及び目標
人財戦略の 重点取り組み |
KPI |
2024年度実績 |
2025年度目標 |
企業理念・ ビジョンの体現 |
出光エンゲージメントインデックス (従業員エンゲージメント) |
70% |
75%以上 |
DE&Iの深化 |
女性採用比率 |
39% |
50%以上 |
女性役職者比率 |
5% |
5%以上 |
|
男性育児休業取得率 |
92% |
80%以上 |
|
個々人の能力・ 個性の発揮 |
従業員一人当たり 教育投資額/年 |
55千円 |
100千円以上 (国内トップクラス) |
⑥人的資本に関する外部機関などからの評価
3年連続「なでしこ銘柄」
|
2年連続PRIDE指標2024ゴールド
|