2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    1,339名(単体) 34,238名(連結)
  • 平均年齢
    44.0歳(単体)
  • 平均勤続年数
    17.0年(単体)
  • 平均年収
    10,686,238円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメント

従業員数(人)

当社

1,339

(6)

石油製品ほか

20,108

(11,628)

石油・天然ガス開発

1,215

(2)

機能材

3,181

(16)

電気

302

(0)

再生可能エネルギー

568

(14)

その他

7,525

(369)

合計

34,238

(12,035)

(注)1.従業員数は就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)です。

2.従業員数の( )内は、臨時従業員数です。(外数、年間平均雇用人数)

臨時従業員は、主にパートタイマー、アルバイト等の従業員であり、派遣社員は含みません。

3.当社の従業員数は、当社とENEOS株式会社の合同組織に所属する従業員です。

石油製品ほか事業の従業員数は、当該合同組織に所属する従業員数を含みません。

4.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記7.セグメント情報」に記載のとおりであり、従業員数は変更後の報告セグメント区分に基づき記載しています。

5.従業員が前連結会計年度に比べ9,445名減少した主な要因は、JX金属株式会社(以下、JX金属)及び同社子会社等を連結除外したことによるものです。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢

平均勤続年数

平均年間給与(税込)

(円)

1,339

(6)

44歳

0ヵ月

17年

5ヵ月

10,686,238

(注)1.従業員数は就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)です。

2.従業員数の( )内は、臨時従業員数です。(外数、年間平均雇用人数)

臨時従業員は、主にパートタイマー、アルバイト等の従業員であり、派遣社員は含みません。

3.従業員が前連結会計年度に比べ451名増加した主な要因は、2024年4月1日付の当社とENEOS株式会社の組織改正によるものです。

4.当社従業員のうち、一部出向者の平均勤続年数については、出向元での勤続年数を通算しています。

 

(3)労働組合の状況

特記すべき事項はありません。

 

(4)多様性に関する指標

当連結会計年度の当社及び主要な事業会社の多様性に関する指標は、以下のとおりです。

 

当社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注2,3)

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注1,3)

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

12.8

 

主要な事業会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の育児休業取得率

  (%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注1)

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

ENEOS株式会社

3.3

(注3)101.5

(注3,4,5)75.5

(注3,4,5)75.3

(注3,4,5)33.6

ENEOS Xplora株式会社

7.3

80.0

74.8

77.7

10.1

株式会社ENEOSマテリアル

3.2

122.9

72.4

71.8

73.2

ENEOS Power株式会社

2.4

100.0

(注3)      -

(注3)      -

(注3)      -

ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社

3.9

82.4

72.1

73.8

41.2

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号。以下、女性活躍推進法)の規定に基づき算出したものです。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号。以下、育児介護休業法)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。

3.当社及びENEOS Power株式会社における「男性労働者の育児休業取得率」及び「労働者の男女の賃金の差異」は、出向元のENEOS株式会社で算出しています。

4.ENEOS株式会社から他社への出向中の社員を含みます。

5.管理職比率等の男女差により賃金差が生じていますが、賃金制度において性別による差はなく、資格別の人数構成の差によるものです。

6.上記の会社を除く「女性活躍推進法」及び「育児介護休業法」に基づき、開示の義務を有する会社の多様性に関する指標については、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報」に記載しています。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。

 

1.ガバナンスの高度化・コンプライアンスの徹底

(1)ガバナンス

・ESG経営推進体制

企業が持続的に成長するためには、事業活動を通じて社会ニーズに応え続けるとともに、社会課題の解決に貢献することで社会から信頼され、価値を認められる存在でなければなりません。

この認識のもと、当社グループは「ESG経営に関する基本方針」を定め、当社経営会議において将来の経営に大きな影響を及ぼし得るリスクや事業機会を分析し、特定したリスク・重点課題への対応状況を適切に管理する体制を取っています。

 

 

[リスク・重点課題の特定及び対応状況確認プロセス]

ア.包括的な協議(原則年1回)(次頁、図①)

経営会議では、議論の実効性及び意思決定の迅速性を高めるため、下記の事項を包括的に協議しています。

(ア)全社的なリスクマネジメントに基づいて特定する重点対応リスク事象(第1四半期)

(イ)ESGに関するリスク分析に基づいて特定するESG重点課題(第4四半期)

(ウ)内部統制システムに基づいて特定する内部統制上のリスク事象(第1四半期)

 

イ.対応方針決定及び状況確認(原則年1回、第1四半期)(次頁、図②)

当社所管部署主導のもと、関係部署及び主要な事業会社(注)が組織横断的に連携し、特定したリスク・重点課題への対応方針を策定・実行しています。

経営会議では、前年度の対応状況確認とともに、当該年度の対応方針確定・決定を行っています。

(注)主要な事業会社とは、ENEOS株式会社、ENEOS Xplora株式会社、株式会社ENEOSマテリアル、ENEOS Power株式会社及びENEOSリニューアブル・エナジー株式会社の総称です。

 

ウ.事業機会の議論(適宜)(次頁、図③)

経営会議では、中期経営計画や年度ごとの事業計画及びそれらに基づく予算の審議を行っています。

その都度、事業機会について議論しています。

 

エ.取締役会への報告(適宜)(次頁、図④)

取締役会は、経営及び中期経営計画・予算等の事業戦略を決議するとともに、経営会議で決定したリスク・重点課題とそれらへの対応状況の報告(原則年2回)を受けることで、監視・監督しています。

2024年度に取締役会に報告されたESG関連事項は、下記のとおりです。

(ア)2023年度ESG活動状況実績及び2024年度ESG重点課題のKPI方針について

(イ)2025年度ESG重点課題

(ウ)サステナビリティ情報開示への対応

(エ)個別課題への対応

カーボンニュートラル基本計画の更新について

カーボンニュートラル推進委員会に関する状況報告について

人的資本経営の枠組みや取組について

 

オ.グループ会社との共有(適宜)(次頁、図⑤)

特定したリスク・重点課題をグループ各社と適宜共有し、グループ各社が自律的に自社の事業戦略に反映することで対応しています。

 

 

(2)リスク管理

・ESG重点課題の検証と特定

当社グループは、各種ガイドライン、ESG評価機関の評価項目や評価ウエイト等を踏まえ、毎年ESG重点課題を特定しています。

2025年度については、特定手順に沿って9個の課題を特定したあと、経営との議論を経て当社において重要な「コーポレートガバナンス」及び「リスクマネジメント」を加えた計11項目をESG項目に選定し、項目の類似性等を踏まえて以下の通り4項目のESG重点課題として集約しました。ESG重点課題ごとに責任部署・KPIを設定しており、ESG重点課題におけるKPIの進捗状況、取組結果を経営会議及び取締役会に報告することとしています。

 

 

 

<2024年度ESG重点課題 >

区分

ESG重点課題

環境

脱炭素社会形成への貢献

社会

安全確保・健康増進

ガバナンス

コンプライアンスの推進

社会

国際的な人権原則の遵守

社会

人材の育成・確保

ガバナンス

コーポレートガバナンスの適切な構築・運営

環境

生物多様性リスクの適切な把握・管理

社会

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進

環境

循環型社会への貢献

社会

ステークホルダー(投資家等)とのコミュニケーション

(注)上から評価点の高い順に記載しています。また、2024年度の結果については2025年度公表予定の

統合レポートに記載しますのでそちらをご覧ください。

 

 

<2025年度ESG重点課題、及び目標(KPI)>

ESG重点課題

ESG項目

目標(KPI)

安全確保の強化

安全確保

重大労災件数(注1) ゼロ

TRIR(注2) 1.94以下(2024年度対比▲15%)

LTIR(注3) 0.67以下(2024年度対比▲15%)

ガバナンスの

高度化・コンプライアンスの

徹底

コーポレートガバナンスの

適切な構築・運営

取締役会実効性評価を通じた改善プロセスの実行

社外取締役比率50%以上、社外取締役議長の維持

役員向け研修の実施(計4回)

コンプライアンスの推進

重大なコンプライアンス違反(注4) ゼロ

実効的なリスクマネジメント

グループ横断的なリスクマネジメント体制の拡充

サプライチェーンにおける

社会的責任

取引先支援教育プログラム4カテゴリーの展開

CSR調達アンケートに基づく取引先フォローアップ訪問調査の100%実施

国際的な人権原則の遵守

2023年度実施済み人権デュー・ディリジェンスのフォローアップ

人的資本経営の実現

人材の確保・育成

1人当たり教育研修費用 10万円/年(2027年度)

エンゲージメントサーベイにおける成長機会スコア75%以上(2027年度)

ダイバーシティ・エクイティ

&インクルージョンの推進

エンゲージメントサーベイにおける働きがいスコア75%以上(2027年度)

エンゲージメントサーベイにおける働きやすさスコア75%以上(2027年度)

健康増進

プレゼンティーイズム(注5) 中計期間中20%以下の達成・維持

持続可能な

地球環境の

保全・形成への貢献

脱炭素社会の形成への貢献

CO排出量 2,700万トン以下

メタン排出量 1,072トン以下

削減貢献量(素材)150万トン以上

循環型社会形成への貢献

循環型社会実現に向けた具体的取組(2件)の推進(廃プラ油化事業開始、低炭素潤滑油基油製造プロセス実証)

廃棄物最終処分率 ゼロエミッション(1%未満)の維持

生物多様性リスクの適切な

把握・管理

主要な事業セクターのサプライチェーンにおける自然資本への依存度及び影響度の把握

(注)1.死亡労災

2.100万労働時間当たりの不休業以上労災件数

3.100万労働時間当たりの休業以上労災件数

4.対象会社の経営に重大な影響を及ぼす、又は、レピュテーションを大きく毀損するコンプライアンス違反案件

5.心身の不調を抱えながらも欠勤をせず就業し、生産性が低下している状態(労働生産性の損失割合)

 

(3)サステナビリティ情報開示への対応

当社グループは、グループ全体のESG経営の推進と新たに導入されるSSBJガイドラインに則したサステナビリティ情報開示を確実に行うため、2025年4月経営企画部内に「サステナビリティ推進室」を新たに設置しました。当社のガイドライン適用時期である2028年3月期有価証券報告書開示までに周到な準備を行い、財務情報とサステナビリティ情報の両面から当社グループの持続可能性を発信していきます。

 

 

2.持続可能な地球環境の形成・保全への貢献

(1)気候変動対応(TCFD)

ア.シナリオ分析

当社グループは、シナリオ分析においてIEAのWEO(World Energy Outlook 2024)(注1)やIPCC AR6(注2)を参照し、物理的なリスク評価(気候や海面変化への対応等)についてはIPCCのRCPを参照しています。

エネルギー・素材をめぐる国際情勢は不確実性がより一層高まっており、不確実性に対してより柔軟に対応するため、カーボンニュートラル基本計画2025年度版を策定しました。同基本計画において、当社グループは、IEA WEOのSTEPS(注3)、APS(注4)、NZE(注5)及びIPCC AR6を参考に将来予測を行い、以下の3つの社会シナリオを想定しています。

Beyondシナリオ(+1.5~2.0℃):化石燃料需要は減少傾向、再エネ導入が大幅に進展、水素やCCS等の革新技術導入により経済効率性が大幅に向上し、世界全体で脱炭素が進展

Currentシナリオ(+2.0~2.5℃):LNG・バイオマス等の低炭素施策や経済合理性のある再エネ導入が進展し、CCS等の脱炭素技術も一部導入され、先進国を中心に環境取組・政策が進展

Driftシナリオ(+3.0~4.0℃):低コストな化石燃料への依存が続き、再エネや脱炭素革新技術の導入は限定的となり、世界の脱炭素進展は限定的

 

当社グループは、化石燃料中心のポートフォリオから低炭素・脱炭素分野へシフトしていくトランジションの過程において、燃料油の需要動向等にも注視しながら、「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」との両立に向けて挑戦していきます。当社グループで策定したカーボンニュートラル基本計画2025年度版は、1.5℃を含む様々なシナリオに対応する高いレジリエンスを有しています。社会全体がよりカーボンニュートラル実現に向けて進展し、日本全体で1.5℃シナリオに向かっていく環境により近づけば、当社グループの取組もさらに加速させることで日本のトランジションとサーキュラーエコノミーに資するエネルギー・素材の供給をリードし、脱炭素社会の形成に大きく貢献します。

(注)1.International Energy Agency:国際エネルギー機関。同機関が発行しているWorld Energy Outlookにおいて複数の脱炭素シナリオが公表されています

2.Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)が公表した第6次評価報告書

3.Stated Policies シナリオ(現在公表されている各国の政策を反映したシナリオ)

4.Announced Pledges シナリオ(各国の意欲的な目標が達成されると仮定したシナリオ)

5.Net Zero Emissions by 2050 シナリオ(2050年に世界でネットゼロを達成するシナリオ)

 

イ.リスクと機会

当社グループは、全社的リスクマネジメント(ERM)を導入しています。このプロセスから気候変動対応は経営上の重要なリスクと捉え、かつ機会とも認識しており、次頁の項目を特定しています。

財務影響において、移行リスクのうち、カーボンニュートラル達成のために要するコストの増加についてはCO排出削減目標、石油需要減のリスクについては当社の想定する社会シナリオの範囲で試算しています。また、物理リスクはストレスケースとしてIPCC RCP8.5シナリオ(注6)に基づき試算していますが、多くの潜在的リスク・不確実な要素・仮定を含んでおり、実際には、重要な要素の変動により大きく異なる可能性があります。

なお、リスク・機会を含むTCFD推奨の開示項目については、毎年発行する「ESGデータブック」に詳細を記述しています。2025年11月に公表予定ですので、そちらをご参照ください。

(注)6.IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価シナリオで、世界の平均気温が2100年までに

1986年~2005年と比べ約4℃相当上昇するシナリオ

 

<リスク・機会と時間軸ごとの財務影響>

 

項目名

財務影響

短期

(2027年)

中期

(2030年)

長期

(2040年)

評価方法

移行リスク

・カーボンニュートラル 達成のために要するコストの増加

なし

450億円/年

1,100億円/年

2030年の目標削減量600万トン、

2040年の目標削減量1,500万トン全量に内部炭素価格※を掛けた場合の営業利益減少額

※50ドル/tCO

・エネルギートランジションの進展による石油需要減

・環境意識の高まりによる石油需要減

影響は限定的

約200億円/年減少

約800億円/年減少

国内石油需要について2023年比で2030年約1割減、2040年に4割減を見込んだ場合の営業利益減少額

(2023年度の営業利益をベースに算出)

・石油上流資産の座礁化

リスクは限定的

保有する石油上流資産の埋蔵量を、現行生産量で割り戻した可採年数から推定

物理リスク

・異常気象(大型台風等)と海面水位の上昇による極端な風水害の発生、過酷度の増加

1~2億円/年

IPCC RCP8.5シナリオを参照し、国内に保有する製油所・製錬所等31箇所の設備・資産を対象に、WRI Aqueduct(注7)等を用い被害総額(営業利益減少額)を試算

・温暖化に伴う海面上昇

リスクは限定的

Aqueductが予測する2040年時点の日本近海における海面上昇量(約0.2メートル)から推定

 

 

 

・脱炭素(再生可能エネルギー、水素、カーボンニュートラル燃料等)に対する需要増加

〜100億円/年

〜300億円/年

〜1,800億円/年

脱炭素・循環型社会の進展に伴い、再生可能エネルギー、水素、カーボンニュートラル燃料等に対する需要の増加が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した営業利益

・低炭素(LNG、バイオ燃料、グリーン素材等)に対する需要増加

〜500億円/年

〜1,200億円/年

〜2,200億円/年

カーボンニュートラルに向けた移行期におけるエネルギーとして、LNGやバイオ燃料等に対する需要の増加が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した営業利益

(注)7.世界資源研究所(World Resources Institute)が開発した水リスク評価ツール

 

ウ.指標と目標 ~カーボンニュートラル基本計画2025年度版~

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、当社グループはカーボンニュートラル基本計画2025年度版(2025年5月公表)を策定しました。本計画では、当社グループの温室効果ガス排出削減を製造・事業の効率化やCCS、森林吸収等によって進めるとともに、社会の温室効果ガス排出削減に貢献するため、化石燃料・製品の低炭素化、再生可能エネルギー、バイオマス等の資源利活用、化石燃料の脱炭素化、水素の利活用による「エネルギー・素材のトランジション」と循環資源の活用・省資源化等による「サーキュラーエコノミーの推進」を掲げ、具体的な目標やロードマップを定めています。

 

当社グループのカーボンニュートラル基本計画2025年度版の詳細は、以下のとおりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

エ.2024年度の主な取組

(ア)カーボンニュートラル推進委員会の設置

エネルギー・素材をめぐる国際情勢の不確実性が高まる中、事業環境に応じてカーボンニュートラルに関する基本戦略をアップデートするため、2024年5月にCTOを委員長とする「カーボンニュートラル推進委員会」を設置しました。2024年度は主に、温室効果ガス排出削減経路に影響を与える不確実性の高いキードライバーを特定し、複数の社会シナリオを想定したうえで、当社グループのカーボンニュートラル・循環型社会の実現に挑戦する指針となる「カーボンニュートラル基本計画2025年度版」に関する議論を行いました。今後もカーボンニュートラル戦略に関して経営レベルでの議論を継続し、国や社会とともに、カーボンニュートラル・循環型社会を実現するための各取組を推進します。

 

(イ)CO₂の見える化

製油所での削減推進のために排出量の適時把握が重要となる事から、CO₂見える化システムを導入し、全社の排出量一元管理と製品ごとの排出量(CFP:カーボンフットプリント)算定ができる体制を構築しました。法定報告の効率化、月次予実管理による計画の実行管理を行うとともに、一部製品のCFPデータの顧客への提供を開始しています。製油所で実際に取得されたデータを用いたCFP算定は、国内石油業界初となります。また、2024年10月には潤滑油・グリース製品についてもCFP算定システムを開発し、顧客へのデータ提供を開始しました。潤滑油・グリース製品のCFP算定は国内潤滑油業界初となります。今後、低炭素製品の環境価値訴求によるビジネス機会創出を目指します。さらに、GHG排出削減に資する事業を推進すべく、インターナルカーボンプライス50$/t-CO₂を導入し、感応度分析を行っています。

 

(ウ)CCS

国内CCSの事業化に向け、石油製品ほかセグメントに属する子会社であるENEOS株式会社(以下、ENEOS)、石油・天然ガス開発セグメントに属する子会社であるENEOS Xplora株式会社(以下、ENEOS Xplora)及び電源開発株式会社の3社で検討を進めており、2024年10月に独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による令和6年度「先進的CCS事業に係る設計作業等」に採択されました。本事業ではCO₂分離回収・輸送・貯留に関する設計作業及び貯留層評価等を行っており、貯留については2023年2月に設立した合弁会社である「西日本カーボン貯留調査株式会社」が主体となり検討を行うことで、ENEOSグループとしてCO₂の分離回収、輸送、貯留まで一気通貫したCCSバリューチェーンの構築を目指しています。

さらに海外CCSの事業化検討も進めており、2024年9月にENEOS、ENEOS Xplora、三菱商事株式会社、マレーシア国営石油会社であるペトロナスの関係会社であるPETRONAS CCS Solutions Sdn Bhd等と令和6年度「先進的CCS事業に係る設計作業等」に採択され、東京湾を排出源とするCO₂の分離・回収・集積から船舶輸送、そしてマレーシアでのCO₂貯留までの海外CCSバリューチェーン構築を目指しています。

これまでの石油・天然ガス開発の知見を活かし、CCSの取組が進む地域の企業との連携を強化しCCSバリューチェーンを構築していくことにより、日本のカーボンニュートラル計画達成に貢献していきます。

 

(エ)自然吸収

森林プロジェクトについて、国内においては2024年度に連携を始めたわかやま森林と緑の公社、ふくしま緑の森づくり公社、北海道鶴居村森林組合を含め、これまで6件の連携先とJ-クレジット創出に向け取組を進めています。森林由来のJ-クレジットによる収益を森林整備にかかわる事業に使用いただき、森林の持つCO₂吸収能力のさらなる活性化を目指します。この取組を進めることにより、引き続き健全な森林の育成を通じて木材生産はもとより、森林のもつ多面的な機能の維持・増進に積極的に取り組んでいきます。

また、海外においては2023年7月に住友林業株式会社グループが組成する米国の森林ファンドEastwood Climate Smart Forestry Fund Iへ出資を行いました。本ファンドは、日本企業10社が各社の米国子会社等を通じて出資参画しています。カーボンクレジットのマーケットや制度が先行している米国でカーボンクレジットの創出を行います。ファンドの仕組みを活用し、森林アセットの購入を通じて、適切に管理する森林を大幅に拡大しグローバルな気候変動対策、生物多様性保全に貢献します。国内外問わず、森林の循環利用による脱炭素・循環型社会の形成に貢献していきます。

さらに、産官学連携による大規模ブルーカーボン創出の検討を2023年12月から開始しています。海洋生態系に取り込まれた炭素「ブルーカーボン」は、CO₂の吸収源対策の新しい選択肢として期待されています。大気中のCO₂は、海草・海藻藻場等のブルーカーボン生態系の光合成により取り込まれ、海底に堆積したり海洋中深層に分解されながらも長期間留まることによって、ブルーカーボンとして大気から隔離されます。このメカニズムを広域で適用し人が積極的に関与することで、大規模ブルーカーボン創出を目指します。

 

当社グループにおける、2023年度のGHG排出量(Scope1,2)は2,541万トン、2024年度は2,441万トン(注8)でした。

(注)8.速報値です。確定値については、2025年11月公表予定の「ESGデータブック」をご参照ください。

 

 

(2)循環型社会形成の貢献

当社グループは、「循環型社会形成への貢献」に向けて、自社及び社会全体の廃棄物低減や循環資源の活用に努めます。グループ内で資源の有効活用や廃棄物の発生抑制、省資源化等を推進するとともに、サプライチェーン全体でサーキュラーエコノミーの取組を強化していきます。

 

ア.廃棄物の削減

製油所等から排出される汚泥や集塵ダストのセメント原料化、製錬所で発生する中和滓(注1)の繰り返し使用等を推進しています。また、一部の潤滑油製品の開発評価にあたっては、LCA手法(注2)を用いています。それらのほか、当社グループは、生産の効率化による原材料の使用量削減、リサイクル原料の使用量拡大を進めています。

(注)1.製錬工程での中和反応によって生じる生成物。

2.製品製造について、原料等の調達から製造、輸送、使用、廃棄までのライフステージ全体の環境影響を定量的に評価する手法。

 

イ.サーキュラーエコノミーの推進

当社グループは、従来型資源に依存しない循環型社会の実現に向けて、サーキュラーエコノミー(注3)を推進します。

社会が、リニアエコノミー(注4)からサーキュラーエコノミーへ、すなわち、大量生産・大量消費型の経済から資源循環型の経済へと移行しつつあります。3Rから一歩進み、製品設計段階からの配慮、メンテナンスによる製品寿命の延長、リースやシェアリングによる利用効率の向上等も重視されています。

当社グループは、循環資源を活用した製品の供給や省資源化に寄与する素材・サービスの提供を通じて、限りある資源を守ります。また、廃棄物の利活用及び資源循環の取組に必要なクリーンエネルギーの供給を担うことでサプライチェーン全体のCO₂排出を削減し、環境への負荷を低減します。消費者の行動変容や環境貢献の価値化といった社会変化を機会と捉え、サーキュラーエコノミーを推進することで、カーボンニュートラル・循環型社会の実現に貢献していきます。

(注)3.バリューチェーン上のあらゆる段階における資源の効率的な利用により資源循環を目指す経済の仕組み

4.消費された資源をリサイクル・再利用することなく廃棄してしまい、直線的(Linear)にモノが流れる経済の仕組み

 

 

ウ.指標と目標

当社グループは、「ゼロエミッション(最終処分率1%未満)の維持」を目標に掲げ、廃棄物の適正管理・再資源化に取り組んでおり、2023年度の実績は1.2%、2024年度の実績は0.6%(注5)でした。

(注)5.速報値です。確定値については、2025年11月公表予定の「ESGデータブック」をご参照ください。

 

また、廃棄物の削減に加え、カーボンニュートラル基本計画2025年度版では、サーキュラーエコノミーの推進として、グリーンケミカルの製品比率・グリーン潤滑油の生産量の目標を掲げています。2024年5月に環境省の公募事業に採択された廃潤滑油のリサイクルに向けた実証事業において低炭素基油の製造に成功する等、サーキュラーエコノミーの推進に向けて取組を進めています。

 

(3)生物多様性リスクの適切な把握・管理

当社グループは、操業・生産拠点の周辺環境に影響を与えかねない事業特性を持つことから、生物多様性の保全を重要なテーマと考えており、これをENEOSグループ行動基準に定めています。

操業・生産拠点の新設等にあたっては、あらかじめ環境影響調査を行い、植生や鳥類・動物・海洋生物等の生態系を確認する等、事業活動のあらゆる分野で生物多様性に配慮した取組を推進しています。

また、生産拠点の多いENEOSでは、「エネルギーグループ(注1)生物多様性ガイドライン」を定めています。

 

(注)1.ENEOS及びそのグループ会社。

 

ア.国内での主な取組

当社グループは製造拠点において、地域の生物多様性保全活動に参加するほか、周辺の広大な緑地を豊かな生態系ネットワークの1つとして保全する活動に取り組んでいます。その他の事業所においても、周辺環境に合わせた環境保全活動を実施しています。

 

(ア)緑地管理の事例

ENEOS根岸製油所は、東京湾に面し、周囲を三渓園、根岸森林公園等の緑地に囲まれ、海と山の自然が交差する地域に位置しています。そこで、里山管理の手法を用いて、地域生態系ネットワークの拠点の一つとすべく環境整備に取り組んでいます。同製油所は、良好な生態系ネットワーク形成等の活動が評価され、2020年2月に「いきもの共生事業所認証(ABINC認証(注2))」を取得し、2023年10月には環境省の「自然共生サイト」に認定されています。また、ENEOS仙台製油所も2025年2月に「いきもの共生事業所認証(ABINC認証)」を取得しています。

(注)2.一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)が開発した、いきもの共生事業所推進ガイドラインの考え方に沿って計画・管理され、かつ土地利用通信簿で基準点以上を満たし、当審査過程において認証された事業所。

 

(イ)藻場創出の事例

ENEOS堺製油所は大阪湾奥部に位置しています。大阪湾奥部は、陸域から流入する窒素・燐等の栄養塩が滞留しやすく、赤潮発生が見られる等、いきものの棲みにくい水質と言われています。同製油所では、護岸部に藻類が着生するためのブロックを設置し、藻場創出に取り組んでいます。藻場創出により、栄養塩の吸収と酸素の供給による水質改善、海生生物の産卵・成育場所の増加、藻類の光合成を通じたブルーカーボンの蓄積等、多面的な効果を期待できます。

 

(ウ)国外での主な取組

①バラスト水(海水)対策

日本から産油国へ向かうタンカーは、空船時の運航安定性を維持するため、「重し」としてバラスト水を積んでいます。そのため、日本の海域に生息する微生物やプランクトンがバラスト水とともに遠く産油国の海域に運ばれ、生態系バランスを崩す原因となっていました。

当社グループでは、2004年から外洋でバラスト水を入れ替える方法や新造船にはバラスト水処理装置(注3)を搭載する方法を採用し、産油国の湾内海域の生態系バランスに配慮しています。2022年度に、当社グループが所有するタンカー15隻全船にバラスト水処理装置の搭載を完了しました。

(注)3.バラスト水中の水生生物を一定基準以下にして排水する装置。

 

イ.指標と目標

「生物多様性リスクの適切な把握・管理」は2024年度ESG重点課題として、「主要な事業セクターにおける自然資本への依存度及び影響度の把握」を行いました。2025年度は主要な事業セクターのサプライチェーンにおいて生物多様性リスクの抽出及び対応方針の検討を行っていく予定としています。

 

 

 

3.人的資本経営の実現

(1)ENEOSグループの人的資本経営

当社グループでは、人的資本経営の考え方に立脚し、グループ経営戦略に紐づく人材戦略を徹底することを、グループ人材戦略の基本的な考え方としています。実効性の高い「グループガバナンス」のもとで、「適所適材を基本とする効果的な制度の具現・実行」及び「安心して誇りを持って働ける企業文化づくり」を2本柱とする取組を強力に推進しています。それぞれの取組は次のとおりです。

 

ア.適所適材を基本とする効果的な制度の具現・実行

グループ全体の組織能力を最大限に発揮するためには、事業活動において特に重要性が高く戦略的育成が必要なキーポジションにおける適所適材の人材配置が不可欠と考えています。このため、各キーポジションに求められる要件を明確化し、各人が有する能力・経験等を可視化したうえで、当該ポジションへの選任及び後継者候補の選抜・育成に関する意思決定を行う仕組みを具現化し・実行していきます。

2024年度においては、経営層に求められる要件設定の明確化やリーダーの選抜・育成の仕組みの構築を行いました。

 

イ.安心して誇りを持って働ける企業文化づくり

企業文化は、組織の成長と人的資本の活用の土台であり、実効性の高い人材戦略の結果、価値観として組織に根付き、行動や意思決定に重要な影響を及ぼすとの考えのもと、健康経営(働くうえで大前提となる従業員の心身の健康の維持・向上)、働きやすさ(心理的安全性の確保、多様性の受容)、働きがい(存在承認を前提とする組織づくり)の3つに焦点をあてて取り組み、従業員がエンゲージメント高く安心して誇りを持って働ける企業文化を定着させます。

2024年度においては、グループで健康経営を推進していくための健康経営戦略マップの策定や、特にENEOSにおいて、「安心して働くための3か条」を策定し、各職場で実践することで、心理的安全性の高い職場づくりの取組を行いました。

 

ウ.グループガバナンス体制の構築

グループ全体において、先に述べた人材戦略の2本柱に関する取組が高い実効性を持って、確実に実行されていることを定期的に確認するPDCAサイクルを構築します。

2024年度においては、ENEOSホールディングスのCHROを議長に主要な事業会社の人事担当役員をメンバーとする「CHRO会議」を設置・開催(年4回)し、グループ共通KPIの設定やグループ主要事業会社の人材戦略の確認、共同取組事項の議論等を行いました。

 

エ.指標及び目標

第3次中期経営計画において、当社グループは以下の定量目標を設定していましたが、第4次中期経営計画の公表に伴い、「成長機会スコア」、「1人当たり教育費用」、「働きがいスコア」、「働きやすさスコア」、「健康(プレゼンティーズム)」を新たな定量目標として設定しました。2025年度からはグループで定量目標の達成を目指していきます。

 

<第3次中期経営計画における定量目標>

項目

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

2025年度目標

大卒採用者の女性比率

事務系 52%

事務系 57%

事務系 37%

事務系 50%以上

 

技術系 16%

技術系 17%

技術系 24%

技術系 20%以上

女性役職者数

51名

58名

63名

100名以上

経験者採用役職者数

56名

71名

78名

80名以上

男性育児休業取得率(注)

83.9%

81.1%

89.4%

90%以上

ENEOS Learning Platform

延べ利用人数

589名

800名

1,205名

1,500名以上

(注)ENEOS基準の計算方法により、算出した数値です。

 

<第4次中期経営計画におけるグループ人材戦略及び定量目標>

 

(2)国際的な人権原則の遵守

当社グループは、グローバルに事業を展開する企業グループとして、従業員を含むすべてのステークホルダーの人権を尊重することが、持続的な社会の発展に貢献していくうえで根本的かつ必須の重要テーマであると考えています。

当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関(ILO)の中核的労働基準(「結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認」「あらゆる形態の強制労働の禁止」「児童労働の実効的な廃止」「雇用及び職業における差別の排除」)、「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」等の国際規範を支持しています。

また、従業員に限らず、サプライヤー、お客様、お取引先、地域社会等のさまざまなステークホルダーの方々の人権を尊重し、事業活動を進めています。

 

 

ア.人権ポリシー

当社グループは、人権尊重の基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、これを補完する人権ポリシーを制定しています。当社グループの事業活動に関連するすべてのビジネスパートナーに対して理解・協力を要請し、これらの周知徹底と遵守に努めています。

 

 

イ.人権デュー・ディリジェンス

当社グループは、人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)、サプライチェーンにおけるCSR調達アンケート、そして人権への負の影響が疑われた場合の対応フローという3つの仕組みを通じて、網羅的に人権リスクの把握に努めています。

2019年度から隔年で国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)に沿った人権DDを実施しています。事業活動における人権侵害リスク範囲の特定と評価、改善策立案、教育の仕組み構築を内容とするものです。人権DDのサイクルは以下のとおりです。

 

 

①人権リスク調査の対象となるステークホルダー・人権リスクのスコーピング

ステークホルダー:従業員、お客様、製油所・サービスステーション(SS)の周辺住民、

サプライヤー等

人権リスク:表「人権DDにおいて確認する人権課題」参照

 

<人権DDにおいて確認する人権課題>

ステークホルダー

人権DDにおいて確認する人権課題

従業員

ハラスメント

労働時間管理

差別

健康

安全

ワークライフバランス

結社の自由(団結権・団体交渉権)

公正かつ良好な労働基準

サプライヤー

サプライヤーによる人権侵害事象の発生

顧客・取引先

品質不良(コンタミネーション含む)

不適切な商品情報の提供

不適切な商品化学物質管理

情報セキュリティ(プライバシー)

地域社会

環境(地球の環境破壊、健康被害、事故被害含む)

 

② 人権リスクの評価・検証

①でスコーピングした各人権リスクに対し、業務を通じた人権侵害を行っていないか、各部で自己評価

評価後、外部専門家に確認を依頼し、対応を優先すべき人権リスクを特定

 

③ 今後の対応策検討

自己評価の結果及び外部専門家の意見を踏まえ、対応を優先すべき人権リスクに対する対応策を検討

 

④ 対応策の導入

検討を踏まえ対応策を導入

 

⑤ 開示

対応について報告

 

ウ.指標と目標

当社グループでは、「人権DD・人権研修の実施」を取組目標としています。

2023年度に第3回人権DDを実施し、主要な事業バリューチェーン上における重大な人権侵害事例が生じていないことを確認しています。同時に、優先的に対応すべき人権リスクの懸念(潜在的なリスクを含む)への対応策を検討し、次回人権DD実施(2026年度予定)に向け順次取り組んでいます。より詳細な情報は2025年11月公表予定の「ESGデータブック」をご参照ください。

また、人権研修については、グループ各社で、人権意識の向上と職場における人権侵害の発生防止を目的として、役員・従業員を対象に人権啓発研修やeラーニングを継続しています。

 

(3)健康増進

当社グループは、従業員及びその家族の健康を大切にすることが、従業員の活力向上、生産性改善及び組織活性化につながり、ひいては成長戦略実現の原動力や競争力の源泉になると考えています。このような考え方のもと、健康に関する基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、従業員の自律的な健康管理及び健康増進に寄与すべく「健康経営」を推進しています。

 

 

ア.健康経営の全体像

当社グループは、「ENEOSグループ理念」において、「安全・環境・健康」を“大切にしたい価値観”の一つとして掲げています。「ENEOSグループ長期ビジョン」実現のためにも、企業活動の根幹である従業員一人ひとりの心身の健康を維持・増進することが大切です。

健全な労働環境の整備及び適切な働き方の実現に向けた取組、また、従業員の健康管理をサポートしつつ自律的な健康管理意識を醸成する取組が、個人の健康は勿論、職場全体の活力や生産性の向上につながり、ひいては「健康経営」の実現に至ると考え活動しています。

 

 

イ.健康経営のサポート体制

健康経営を推進するため「健康経営のサポート体制」を整え、事務局を人事部内に設置し、健康保険組合や関係会社・各事業所と連携しながら様々な取組を行っています。国内の各事業所においては、安全衛生委員会又は衛生委員会を毎月開催し、会社側と労働組合又は従業員の代表が衛生について話し合いを行っています。

 

 

ウ.指標と目標

ENEOSグループ(注1)は、定期健康診断の受診率100%実施に加え、生活習慣病予防に向けたサポートとして、喫煙率の低減(注2)及び適正体重(BMI25未満)維持者比率の改善(注3)を目標に取り組んでいます。海外渡航者・海外勤務者に対しては、疫病・感染症予防接種や医療サポート制度等の整備に努めています。また、健康増進法の趣旨にのっとり、受動喫煙リスクの徹底的な排除にも取り組んでいます。

(注)1.集計対象:ENEOSホールディングス及び主要な事業会社

2.2025年度目標:喫煙習慣者比率前年比マイナス1.0%以上

3.2025年度目標:適正体重(BMI25未満)維持者の比率70%以上

 

当社グループにおける健康関連指標の目標及び実績は以下のとおりです。

健康関連指標

2023年度

実績

2024年度

実績

2025年度

目標

喫煙率

24.1%

23.6%

21.1%以下

適正体重維持者の比率(BMI25未満)

69.7%

68.8%

70%以上

定期健康診断受診率

100.0%

100.0%

100.0%

(注)集計対象の主要事業会社

2025年度以降:ENEOSホールディングス、ENEOS、ENEOS Xplora、ENEOSマテリアル、ENEOS Power、

ENEOSリニューアブル・エナジー

2024年度時点:ENEOSホールディングス、ENEOS、ENEOS Xplora、ENEOSマテリアル、ENEOS Power、

ENEOSリニューアブル・エナジー、JX金属

2023年度時点:ENEOSホールディングス、ENEOS、JX石油開発(現在はENEOS Xplora)、JX金属

 

4.安全確保の強化

当社グループは、エネルギー・素材の安定供給を担う企業グループとして、安全操業を確保することが事業の存立及び社会的信頼の基盤、競争力の源泉であると考えています。

このような認識のもと、ENEOSグループ理念において「安全」を最優先のテーマの1つと位置付けるとともに、ENEOSグループ行動基準にグループの基本方針を定めました。

これを踏まえ、グループ各社は、それぞれの事業特性に合わせて安全に関する方針を定め、労働安全に関するリスクの評価を行い、実効性を備えた安全活動を重層的に推進しています。具体的には、協力会社従業員の方々を含めた安全諸活動及び安全教育の充実を図るとともに、あらゆる事故・トラブル・自然災害に対する予防策及び緊急時対策を講じています。

ENEOSでは、移動中の安全確保を図るため、2022年度からAI歩行診断プログラムを導入し、取組を継続しています。専用の機械を用いて個人の歩行速度・歩幅・重心移動等を計測し、歩き方の安全度合いを判定するプログラムであり、計測結果をもとに、安全な歩き方につながる体操等の改善策を提案する機能も備えています。

また、グループ各社は、労働組合とも組合員の安全衛生を図るために会社が必要な施設の整備に努めることを確認しています。(労働協約付帯協定第90条)

 

ア.指標と目標

当社グループは、労働者の安全を最優先かつ徹底する意志を表明しています。「重大な労働災害(死亡労働災害)件数ゼロ」及び「2030年度末にTRIR(注1)1.0以下及びLTIR(注2)0.3以下の達成」をグループの重点目標として定め、協力会社の方々を含めた安全諸活動の徹底及び安全教育の充実を図っています。

(注)1.総災害度数率、100万延べ時間当たりの負傷者数(不休労災+休業・死亡労災者数)

2.休業災害度数率、100万延べ時間当たりの休業・死亡労災者数

 

当社グループの定量目標及び実績は次の通りです。

<定量目標及び実績>

項目

2022年度

実績・目標

2023年度

実績・目標

2024年度

実績・目標

重大な労働災害

(死亡労働災害)件数

0件

(0件)

0件

(0件)

1件

(0件)

TRIR

(総災害度数率)

1.00

(1.0以下)

0.94

(1.0以下)

2.24

(1.0以下)

LTIR

(休業災害度数率)

従業員:0.64(0)

協力会社員:0.90(0.3以下)

(注)3.各年度におけるかっこ書きは目標値です。

4.2024年度における実績値は速報値です。確定値については、2025年11月公表予定の「ESGデータブック」をご参照ください。

5.2022年度及び2023年度のTRIRはENEOSホールディングス、ENEOS、JX石油開発(現在はENEOS Xplora)、JX金属の従業員を集計対象とし、2024年度のTRIRとLTIRはENEOSホールディングス、ENEOS、ENEOS Xplora、ENEOSマテリアル、ENEOS Power、ENEOSリニューアブル・エナジー、JX金属及び各社グループ会社の従業員と協力会社員を集計対象としています。

5.ステークホルダーとのコミュニケーション

当社グループは、株主・投資家、お客様、お取引先、従業員等、多様なステークホルダーの皆様との関わりの中で事業活動を営んでいます。ステークホルダーとの対話を積極的に進め、期待や要請に応える活動を推進していきます。

また、当社グループでは、ESGに関する具体的なテーマに関し、外部専門家・ステークホルダーの意見を聴取し対応しています。2023年度には投資家向けにカーボンニュートラル基本計画の説明会を実施したほか、機関投資家の気候変動アクション・イニシアティブ「Climate Action 100+」とも定期的なエンゲージメントを実施しています。

引き続き、外部専門家・ステークホルダーとのエンゲージメントを進め、社会課題の解決に貢献していきます。

 

ステークホルダー

活動内容

主なコミュニケーション手段

主なコミュニケーション窓口

株主・投資家

当社では、ディスクロージャーポリシーを定め、株主・投資家の皆様に対し、迅速、適正かつ公平な情報開示に努めています。

・株主総会、決算説明会、個人投資家向け説明会、ESG説明

・統合レポート、ESGデータブック、ウェブサイトでの情報開示

・当社ウェブサイトお問い合わせ窓口

https://www.hd.eneos.co.jp/contact/

・当社IR部門窓口(電話、メール、ミーティング等)

お客様

当社グループは、お客様のご要望やご期待に応え、信頼とご満足いただける商品・サービスを開発・提供しています。

・営業活動を通じたコミュニケーション

・安全・安心で価値ある商品・サービスの提供

・ウェブサイトによる情報提供

・電話やウェブサイトでのお問い合わせ窓口

・当社ウェブサイトお問い合わせ窓口

https://www.hd.eneos.co.jp/contact/

・グループ各社販売部門窓口(電話、メール、ミーティング等)

・ENEOSお客様センター(フリーダイヤル)

お取引先

当社グループでは、お取引先に対して購買情報を開示し、積極的にビジネスチャンスを提供するとともに、公正な取引機会の確保に努めています。

・購買業務を通じたコミュニケーション

・ウェブサイトの活用

・CSR調達アンケートの実施(2年で1サイクル)

・当社ウェブサイトお問い合わせ窓口

https://www.hd.eneos.co.jp/contact/

・グループ各社調達部門窓口(電話、メール、ミーティング等)

・サプライヤー向け人権相談窓口

NPO・NGO

当社グループは、NPO・NGOとの協力関係を構築し、環境保全や社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。

・生物多様性保全活動による協働

・次世代人材育成支援活動での協働

・人権デュー・ディリジェンスにおける第三者の立場からの検証(隔年)

・当社ウェブサイトお問い合わせ窓口

https://www.hd.eneos.co.jp/contact/

地域社会・

国際社会

当社グループは、操業地及び国際社会からのニーズや期待に応え、積極的にコミュニケーションを図ることで、責任ある企業活動を行うことを目指します。

・地域住民向け説明会、行事参加・協賛

・ボランティア活動

・産油、産ガス等を対象にしたさまざまな支援制度を開設

・国際イニシアティブへの参画

・当社ウェブサイトお問い合わせ窓口

https://www.hd.eneos.co.jp/contact/

・操業地域の事業所窓口(電話、メール、ミーティング等)

従業員

当社グループでは、従業員を経営における重要なステークホルダーとして位置付け、一人ひとりが安心して働き、能力を最大限発揮できるように、各種制度を整備しています。

・労働組合と経営層との定期的な対話

・グループ報、イントラネットによる情報発信

・意識調査の定期的実施

・階層別研修等の実施

・各種施策に対するアンケートの実施(随時)

・内部通報制度(ホットライン)

※請負先従業員も対象

・上司との定期的な面談

・労働組合を通じて

 

 

 

ア.指標と目標

当社は、「投資家との効果的なエンゲージメントの実施(のべ250件)」を取組目標としています。

2023年度の実績は412件、2024年度の実績は415件でした。

 

6.情報セキュリティ及びDX推進に関する事項

(1)情報セキュリティ

当社グループは、高い情報セキュリティレベルを確保することが重要な経営課題であると認識し、必要な対策に取り組んでおり、「情報セキュリティポリシー」を定め、ビジネスパートナーや委託先を含めて情報の適切な取扱い・管理・保護・維持に努めています。なお、情報セキュリティポリシーについては、当社Webサイトをご参照ください。(https://www.hd.eneos.co.jp/security/

加えて、当社グループは、「ENEOSグループ情報セキュリティ基本規程」に則り、会社の資産である会社情報の不正な使用・開示及び漏えいを防止するとともに、会社情報の正確性・信頼性を保ち、改ざんや誤処理を防止し、許可された利用者が必要な時に確実にその会社情報を利用できるようにしています。

個人情報保護については「個人情報保護要領」を制定し、個人情報保護法の遵守と、個人情報を適切に取り扱うためのルールを定め、権利保護を図っています。加えて、研修の実施や「個人情報保護要領ガイドブック」の掲示等により、従業員への法令及び社内ルールの浸透を図っています。

IT及びITに保持される会社情報への外部からの脅威に対しては、「サイバーセキュリティ」として、担当部署を設けて、機密性・完全性・可用性を維持するための必要な施策を行っています。

 

また、当社グループの「サイバーセキュリティ」に関する考え方及び取組は、以下のとおりです。

 

ア.サイバーセキュリティにおけるガバナンス

当社グループは、年々巧妙化するサイバー攻撃から会社の重要な情報やシステムを守るため、当社社長を議長とする「ENEOSグループサイバーセキュリティ会議」を設置しています。同会議においてサイバーセキュリティ対策状況を確認するとともに、経営主導でサイバーセキュリティ対策方針を決定・推進しています。

その後各事業会社にてサイバーセキュリティ対策方針を具体的な施策へ落とし込み実行しています。

 

イ.サイバーセキュリティにおけるリスク管理

当社グループは、生産・販売・会計等のプロセスに関する電子データを、さまざまな情報システムやネットワークを通じて利用しています。これらの情報システムには安全対策が施されているものの、地震等の自然災害やサイバー攻撃を含む事象等により、情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止する可能性があります。その場合、当社グループの生産・販売活動に支障を来たすとともに、取引先の事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

DXの進展や働き方の多様化等により守るべき情報資産は増加傾向にある中で、情報システムや電子データの安全性を担保していくためには継続的なサイバーセキュリティ対策の強化が必要です。

 

このような状況を踏まえ、当社グループでは次のサイバーセキュリティ強化方針を掲げ、必要な施策を講じています。

・新たな主要な事業会社体制におけるガバナンス強化

・クラウド等利用拡大に伴うアタックサーフェス管理のさらなる強化

・システム開発における“セキュリティ・バイ・デザイン”の定着化

 

 

各セキュリティ強化方針に係る具体的な取組事例は以下のとおりです。

 

ア.新たな主要な事業会社体制におけるガバナンス強化

当連結会計年度においてENEOSグループは、「石油製品ほか」、「石油・天然ガス開発」、「機能材」、「電気」、「再生可能エネルギー」を主要な事業とする経営体制へ移行しました。

この新たな経営体制においてもENEOSグループとして必要なセキュリティレベルを維持・向上させるため、十分なセキュリティガバナンスが発揮される必要があります。

ENEOSグループではこの一環として社内ルールの改訂を行い、さらに横断的な会議体の開催やセキュリティ事故対応の合同訓練等を実施することで、グループ全体でのガバナンスを確保しています。

 

イ.クラウド等利用拡大に伴うアタックサーフェス管理のさらなる強化

近年、DXの進展に伴い、クラウドサービスの利用や在宅勤務環境の整備が進むことで、インターネットに接続される情報資産は増加傾向にあります。これにより利便性は高まる一方で、インターネットからの直接の攻撃を受けやすくなるというリスクも存在します。ENEOSグループではこのリスクに対処するため、インターネット接続資産の管理や能動的な脆弱性検知を通じ、統制面・技術面での継続的な環境整備を行い、アタックサーフェスの保護に努めています。

 

ウ.システム開発における“セキュリティ・バイ・デザイン”の定着化

システム開発工程においては、各システムの特性に応じたリスクをあらかじめ想定し、その対策を設計に盛り込むことが重要です。

 

ENEOSグループではシステム開発・運用に携わる関係者へ高度なセキュリティ教育を実施しており、加えて、システム開発・運用を委託する企業向けに定期的なENEOSグループセキュリティ方針の説明会を開催しています。これにより提案や見積りの段階からセキュリティを意識したシステム開発となるよう取り組んでいます。

 

(2)DXの取組

当社グループは「確かな収益の礎の確立」と「エネルギートランジションの実現」に必要な経営基盤を強化すべく、2023年度に「ENEOSデジタル戦略」を策定しました。デジタル戦略では、基盤事業、成長事業及びカーボンニュートラルの各領域におけるデジタル技術の活用方針を定めた「DX重点テーマ」と、デジタル人材育成、データ活用、ITガバナンス、共創機会という4つの「DX推進の原動力」の強化方針を定めました。

 

 

特にデジタル人材の育成を重点要素と設定し、第3次中期経営計画における高度デジタル人材の育成目標数として、2025年度末までに全従業員の約20%に相当する2,000人の育成を掲げ、実績として2024年度末に目標を超える、延べ2,761人の高度デジタル人材を育成しました。今後の方針としてENEOSでは、管掌役員で構成するDX推進委員会(注)の中で、育成したデジタル人材の実践力の強化・活用を加速させています。

(注)全社DX方針や課題を討議し、各組織のDX推進に活用していく審議機関。