2024年12月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 2,572 100.0 1,136 100.0 44.2

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、「ひとを幸せにする」をMissionに掲げ、「私たちは在宅療養(注1)に新しい価値の創造を行い、すべての人が安心して暮らせる社会を実現します」をVisionとし、地域における在宅療養を支えている訪問看護(注2)ステーション向けに業務支援SaaS(注3)として、オペレーション業務を網羅したクラウド型「訪問看護専用電子カルテiBow(以下、「iBow」という)」をサブスクリプション(注4)で提供するクラウド(注5)ソフトウエア事業を営んでおります。

 当社では、サービス提供方法により「クラウドサービス」「BPOサービス」の2つに区分しておりましたが、これらのうち「BPOサービス」は、業務プロセスの効率化のみならず、生産性の向上や人材育成等、ユーザーが抱える経営課題の解決に当社のクラウドサービスを用いた総合的な業務支援を行うサービスであり、またその機能の高度化が進んでいることから、当事業年度末からその名称を「BPaaS(注6)」に変更しております。

 なお、当社のセグメントは、訪問看護ステーション向けサービス提供事業の単一セグメントであり、セグメント情報の記載を省略しております。区分別の内容は次のとおりであります。

 

(1)クラウドサービス

①サービスの概要

主として訪問看護ステーションに対して、訪問看護ステーションの業務全般にわたる課題解決に対処するための各種サービスを提供しております。

訪問看護ステーションの生産性向上に貢献するSaaS型業務支援ツール(CRM機能(注7)を有する「iBow」、保険請求を行う機能を有する訪問看護専用レセプトシステム「iBow レセプト」、訪問看護専用勤怠管理サービス「iBow KINTAI」、介護保険請求ファイル伝送機能を有する「iBow 介護請求伝送サービス」、e-ラーニングサービス「iBow e-Campus 訪問看護 法定研修編」)を提供し、自社を中心に要件定義、機能設計(開発部分は外注を活用)から販売、運用サポートまでの一連のプロセスに対応するとともに、システム開発で培ってきたノウハウを活用して徹底的に見やすさと使いやすさを重視したツールを基本料金と従量課金の組合せにて提供しております。

 

②訪問看護業界のDX(注8)推進に貢献する「iBow」

当社は、訪問看護ステーションで働く看護師等(看護師等に含まれるのは、看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士になります。)が、在宅療養中の患者宅に訪問しケアを実施する度に記録書類(カルテ)を作成する義務があることに着目し、患者宅で記録書類の作成、過去のカルテ等の確認が簡単にできることで訪問看護師等が本来提供する業務に専念することができ、訪問看護ステーションが収益を新たに生み出せるのではないかと考え、顧客である現場で働く看護師等の意見を聴取し、UI/UX(注9)にこだわってシステムを開発してまいりました。また何が必要かを徹底的に追求するため、自社でも訪問看護ステーションを立ち上げ(現在は閉鎖)対応してまいりました。

当社が創業した2012年には各種記録が手書きで行われていた訪問看護業界にICT(注10)の活用を提案し、未だ半数以上が紙カルテに手書きをしているというアナログな業界に、DXを推進すべく事業展開しております。訪問看護ステーションの業務効率の向上に貢献するとともに、記録される情報をデータ化し蓄積することを推進しております。

 

③サービスラインアップ

当社は、訪問看護市場向けに、「iBow」、「iBow レセプト」、「iBow KINTAI」、「iBow 介護請求伝送サービス」、「iBow e-Campus 訪問看護法定研修編」「けあログっと(地域包括ケアプラットフォーム)」、「e-レセ(訪問看護向けファクタリングサービス)」を提供しております。

 

 

提供サービスを取りまとめると次のとおりとなります。

提供

サービス

課金の種類

概要

iBow

(主要な料金プラン)

基本料金+従量課金

基本料金:

18,000円/月

従量課金:

訪問件数×100円

原則、2年以上の期間契約

 訪問看護ステーションは、介護サービス事業、指定医療機関として地方自治体および厚生労働省の許認可を得て行う事業であります。看護師等が患者宅へ訪問し、主治医の指示のもとで立案する看護計画に基づき看護ケア等を行うことで収益を得る事業であることから、利用者宅への訪問件数が増えることで収益が増えていきます。またターミナル期の在宅看取り、小児慢性疾患や精神疾患患者への地域での対応等、乳幼児から終末期までの幅広い在宅療養を地域の中心となって行っています。

訪問看護ステーションは当社のサービスを利用することで、看護師等の訪問看護業務を効率化(残業時間の削減や1日当たりの訪問件数の向上に寄与することを開発コンセプトとして提供しております。)し、また地域包括ケア(注11)として重要である多職種への情報提供等も迅速に行えるため、看護師等が安心・安全に在宅看護ケアに集中する時間づくりに寄与し、一人当たりの訪問件数を増加させ、労働生産性を上げることを目指しております。

 当社のサービスはSaaSでのシステム提供だけではなく、生成AIを用いてワンクリックで訪問看護計画の草案を自動作成する「AI訪問看護計画」、同じく訪問看護報告書の草案を自動作成する「AI訪問看護報告」の機能を搭載するほか、顧客に対して訪問看護制度への質問に対する回答や、法律が改正される都度の情報提供等も自社運営のカスタマーサポートが行っており、看護師等が制度理解や解釈で悩む時間を削減させることで訪問件数の増加に寄与しております。

 なお、当社の提供するシステムは、電子カルテ運用に係るガイドラインである3省2ガイドライン(注12)(厚生労働省、総務省、経済産業省)を踏まえたサービスを提供する電子カルテシステム(注13)であります。

 

 

提供

サービス

課金の種類

概要

iBow レセプト

従量課金

最低利用料金:7,000円/月

原則、単月または年間契約

本システムは、「iBow」と完全に連携されており、「iBow」で患者宅に訪問し看護を実施した記録を看護師等が作成することで、レセプトの計算が自動的に行われるよう開発しております。

レセプト請求の諸元となる訪問看護記録から請求が自動で作成されることで、不正請求や誤った請求等を抑制することができ、訪問看護ステーションのガバナンス強化に貢献するものであります。

また訪問看護ステーションは看護師等の医療従事者が管理運営しているため、事務手続きのレセプト作成に自信がない管理者も多く、そういった人でも「iBow」を適正に入力しておくことで、レセプト請求が容易にできます。

オンライン請求、資格確認等、幅広い医療保険請求や介護保険請求にも対応しており、レセプト請求事務に多くの時間を費やしていた看護師等が効率的にレセプト業務を行うことができることから、看護に集中する時間を新たに生み出すことができます。

 

 

 

提供

サービス

課金の種類

概要

iBow KINTAI

原則、無償

有償の場合は、単月または年間契約

 

※利用者数に応じた従量課金制での一部有償サービスもあります。

訪問看護ステーションで働く看護師等の就業環境は、一般的な企業と異なり、就業時間中の中抜けやシフト制の勤務、夜間や休日に患者や患家、主治医からの緊急連絡が入る体制を取るために、定めた携帯電話を保持するオンコール当番(注14)といった特殊なものがあります。また常勤換算(注15)と言われる訪問看護ステーション特有の計算、管理、定められたフォーマットでの書類の作成が必要な事業であります。

本システムは、スマートフォン、タブレット、パソコンのどのような機器でも、また、出先や自宅等、どこからでも打刻ができ、GPSで位置情報も取得することが可能なため、直行直帰やテレワークに有効なシステムとして提供しております。

当社の顧客でない方も無償で利用できるようにしており、訪問看護業界自体の発展に寄与すべく取り組んでおります。

●直行・直帰で打刻

●1日複数回の勤務も管理

●複雑なシフトに対応

●柔軟なスタッフ管理機能

●オンコール当番表の作成

●出退勤状況を一覧管理

●常勤換算表を自動作成

 ※従業員の勤務体制および

  勤務形態一覧表

※画像は、iBow KINTAIの利用画面であります。

iBow

介護請求伝送

サービス

定額課金

初期登録費用:

2,400円

月額利用料金:

980円

本サービスは、「iBow レセプト」に追加された機能であり、国保連合会への介護保険請求データの伝送をインターネットで行います。訪問看護ステーションにおいては、「電子証明書」も「国保伝送ソフト」も購入不要です。

iBow

e-Campus 訪問看護

法定研修編

1ステーションあたり180,000円の年間契約

本サービスは、訪問看護で義務化されている法定研修を、訪問数をできる限り減らさずに看護師等が各々の隙間時間で自由に受講できるe-ラーニングサービスです。

本サービスのコンテンツには、業務継続計画、高齢者虐待防止、感染症の予防と蔓延防止、ハラスメント対策等の法定研修の他、訪問看護の制度やステーション経営等の訪問看護事業運営に必要な情報を網羅的に学べるコンテンツが用意され、スマートフォン、タブレット、パソコンからオンラインで個別に受講でき、時間と場所を選ばずに何度でも受講可能です。

また、年間研修計画書のテンプレートや受講状況の管理、受講証明書の自動発行等、研修の計画から実施に係る効果、効率化に寄与しています。

 

 

提供

サービス

課金の種類

概要

けあログっと(地域包括ケアプラットフォーム)

少子高齢化の進行にともない、政府は入院患者の平均在院日数を短縮する政策を進めており、入院患者のスムーズな退院支援はますます重要となる一方で、限られた時間内に患者と家族の希望を満たす訪問看護ステーション等を探す医療従事者の業務負担が増大しています。

「けあログっと」は、全国の各地域にある訪問看護ステーションの特徴や空き状況をリアルタイムで表示し、退院支援看護師や医療ソーシャルワーカー(注18)、ケアマネージャー(注19)が、退院患者に適した訪問看護ステーションをその場で見つけて依頼できる新たな退院支援サービスです。

これにより、医療従事者は退院支援がスムーズに行え、訪問看護ステーションは営業コストなしで患者を獲得することができ、患者は退院後も途切れのない医療ケアを受けられるようになります。

 

e-レセ(訪問看護ステーション向けファクタリングサービス)

訪問看護市場全体の更なる活性化を目指し、訪問看護ステーションの事業成長を促進させるため、訪問看護事業者の債権の早期資金化を可能にするファクタリングサービス(注20)です。

訪問看護ステーションは、開業後の利用者の増加にともない、その規模を拡大するためにスタッフの増員や事業所の拡張に十分な資金が必要となります。一方で、主な収入源である診療報酬や介護報酬は、看護師等がサービスを提供してから入金されるまでに通常2か月程度の期間を要し、その間の運転資金の確保が課題となることがあります。

「e-レセ」は、訪問看護ステーションが持つレセプト(診療報酬明細書・介護給付費請求書)に係る債権を対象に、これらの債権額の95%を早期に資金化(残金の5%については報酬請求手続き完了後に送金)し、訪問看護ステーションが有する資金的な課題を解決するサービスとして提供しています。簡便な手続きで担保や保証人も不要であり、訪問看護市場全体の活性化につながる利用いただきやすいサービスです。

 

④ビジネスモデルによる安定した収益基盤

当社は、サブスクリプション型で顧客にサービスを提供しております。一般的なイニシャルコスト(初期費用)やID課金という形態はとらず、主要な料金プランでは1ステーション毎に定める月額基本料金に加え、看護師等が患者宅に訪問する訪問1件あたりの単価で計算した利用料金をいただく従量課金で収益を得ており、顧客である訪問看護ステーションの収入が増える(訪問件数が増える)ことで当社の収益も増えるwin-winの関係を築いております。

 

⑤情報セキュリティ管理への取り組み

当社のサービスを通じて顧客は個人情報および医療情報を取り扱います。当社の提供するサービスは、インターネットを利用しているため、自然災害、事故、不正アクセス等によって通信ネットワークの切断、サーバー等ネットワーク機器に作動不能等のシステム障害が発生する可能性があります。稼働状況の定期的なモニタリングや異常発生時の対応方法の明確化等、システム障害の発生防止のための対策を講じております。

当社は、外部クラウドサーバーにて提供しており、安定的な稼働が当社の事業運営上、重要な事項となっております。当社では継続的に稼働しているかを常時監視しており、障害の発生またはその予兆を検知した場合には、当社の役職員に連絡が入り、早急に復旧するための体制を整えております。国内に点在する複数の地理的リージョン(注16)で運用されております。

当社では、情報セキュリティに関する取り組みとして、情報セキュリティ管理に関する規程の制定、社内教育を実施し、情報管理への意識向上を図るとともに、情報セキュリティマネジメントシステムISMS(ISO27001)(注17)認証を取得し、情報セキュリティ体制および情報流出防止対策を構築しております。

 

⑥訪問看護ステーション向けサービス提供事業の競争優位性

当社は、設立時点において既に訪問看護業界にも定着していたレセプトシステム(勘定系システム)ではなく、紙カルテに手書きをしているというアナログな訪問看護業界のDXを推進すべく、「iBow」(CRM系システム)を提供しております。

当社は訪問看護ステーションで働く方々が日々の業務で必要なことをデジタル化し、その情報をもとにレセプトシステムへデータが流れる仕組みを提供しておりますが、一般的にはレセプトシステムがメインであり、CRM系機能が主ではなくレセプトシステムの付帯機能となっていることが多く見受けられます。

当社の提供するサービスにより、訪問看護師等が日々業務を効率的に行うことが可能となるため、看護師等が訪問する件数が増えることやステーションの管理者がレセプト以外の他の業務を遂行しやすくなります。当社は、現場第一主義を掲げ、常にUI/UXを追求しております。

また、この仕組みは訪問看護ステーションによる不正請求の防止にも効果を発揮します。日々の情報をもとにレセプト情報を作成する当社の仕組みでは記録がないと処理できませんが、レセプトありきのシステムでは記録を後から記録する仕組みもあり、不正につながる可能性もあります。訪問看護ステーションが図らずも不正請求が生じにくいシステムを提供することで、適正な業務支援を行っております。

 

[「iBow」とレセプトシステムとの違い]

 当社の主力サービス「iBow」のターゲットである日本全国の訪問看護ステーション数は、17,329ステーション(2024年4月1日現在、一般社団法人全国訪問看護事業協議会「令和6年度訪問看護ステーション数調査結果(2024年5月)」)存在し、「iBow」の契約ステーション数(稼働ステーション数およびサービス準備中のステーション数の合計)は3,028社(2024年12月末時点)となっており、訪問看護ステーション全体に占める当社の市場シェアは17.5%(2024年12月末時点)であります。2020年以降新型コロナウイルスが猛威を振るった影響もあり、訪問看護業界においても、モバイル等の活用を推進していることから、 ICTの普及率は上昇傾向にあると考えております。このような中で、早くからモバイルを活用したサービスの提供を行ってきた当社としては、未利用企業の新規開拓促進により、さらなる高い市場シェア獲得を目指しております。

 

 

 

(2)BPaaS

①サービスの概要

BPaaSとして、「iBow 事務管理代行サービス」を提供しております。事務管理代行サービスでは、正しいレセプト業務を行うために必要である医療・介護保険情報の登録や、医師からの指示書情報の登録を代行すること、また請求諸元となる電子カルテ情報の確認等を当社が行うことで、顧客における人的リソースを収益獲得に集中することに貢献できるものとしてサービスを提供しております。

主なサービスの内容は、「利用者情報の登録代行」「日々の記録、各種説明等の確認」「レセプトの作成」「審査結果の対応」「利用者請求書/領収証データ作成」等になります。

 

②サービス優位性

一般的に医療保険でのレセプト業務とは、組合健保や協会けんぽ、市区町村等の健康保険の保険者に診療報酬を請求する業務のことを指します。「レセプト」とは、保険者に請求する診療報酬明細書であります。「診療報酬」とは、診療に要した費用のことで、診療報酬点数表に基づいて点数で算出されます。「医療費」は診療報酬点数から1点=10円として金額で算出されます。日本では国民皆保険制度により、加入者が診察を受けるときは最大で医療費の3割を患者が負担し、残りの7割は保険者が負担する仕組みとなっています。

訪問看護ステーションのレセプト請求業務は、医療保険の診療報酬計算、療養費明細書請求、介護保険の介護報酬計算と請求、自費訪問(保険外でのサービスとなります。訪問看護ステーションは混合診療可能)の計算と請求でありますが、患者の主病名、状態に応じて、医療保険、介護保険の制度を利用することになり、また患者および患家からの要望があった場合には自費の訪問も行います。また医療保険、介護保険だけではなく、患者の世帯収入や患者の年齢、主病名等に応じて、国の補助である公費の利用や、社会福祉保障制度等も活用されます。

このように医療、介護保険の切り替えを確認するのはもちろんのこと、様々な制度を活用しながら、正しく保険者に医療費および介護費を請求し、自己負担分を患者へ請求する業務がレセプト業務であります。一人の患者の医療および介護保険毎に保険者への請求を計算し、請求を行いますが、その請求計算や入力に間違いが一箇所でもあった場合は、その患者の保険請求全額が返戻となって差し戻され、支払われなくなります。よって正確なレセプト請求を行うことが、指定訪問看護ステーションとしての収入を支え、また安定した経営を行う重要な業務となるため、訪問看護ステーションでは重要視されています。

当社の「iBow」を訪問看護ステーションが利用することで、複雑な医療、介護の制度が違う請求対応や、患者毎に異なる加算算定、保険者への請求漏れや不正請求等の問題が解消することになり、管理者(看護師)の業務負担の軽減を実現することができ、管理者が看護ケアに集中し訪問看護に向き合う時間を確保することができるようになるため、訪問看護ステーションの訪問件数向上につながります。また複雑で難しいレセプト業務を担当する専門的な事務員の確保が困難なステーションにとっては課題解消の選択肢になります。

 

③収益構造

 提供価格は、顧客の総売上(保険、自己負担分、自費)の一定割合(最低利用料金100,000円、利用料金:顧客の総売上の一定割合)をいただくこととしており、顧客の収入が増えることで当社の収益も増える仕組みとしております。「iBow 事務管理代行サービス」は、2021年1月より本格的にサービス提供を開始し、2024年12月末における稼働ステーション数は179ステーションであり、さらなる拡大を目指しております。

 

用語

注1

在宅療養

「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けたい」在宅医療は、そのような患者さんの想い、ご家族の想いを大切にしながら、医療・介護の多職種が連携して行う医療です。そして、その在宅療養生活を支えるのが在宅医療であります。

注2

訪問看護

病気や障害を持った方が住み慣れた地域やご家庭で、その人らしい療養生活が送れるように支援するサービスです。地域の訪問看護ステーションから、看護師や理学療法士・作業療法士等がその方が生活する場所へ訪問し、医療的ケアを提供します。

注3

SaaS

クラウドで提供されるソフトウエアのことを指します。企業側にソフトウエアをインストールするのではなく、クラウドを通じてオンライン上でソフトウエアを提供することで、常に最新版のソフトウエアを利用することができます。

注4

サブスクリプション

「料金を支払うことで、製品やサービスを一定期間利用することができる」形式のビジネスモデルのことであります。

注5

クラウド

クラウドコンピューティングの略語で、インターネット経由で必要な時に必要なだけITシステムを利用する仕組みの総称であります。ソフトウエア、ハードウエアを所有してITシステムを利用するのに比べて、ITシステムに関する開発や保守・運用の負担が軽減され、コスト削減につながる技術として普及しております。

注6

BPaaS

Business Process as a Serviceの略語であり、企業活動における特定の業務プロセスを外部の企業へアウトソーシングするクラウドサービスを指しております。

なお、これまでサービス区分として表現していた「BPOサービス」は、業務プロセスの効率化のみならず、生産性の向上や人材育成等、ユーザーが抱える経営課題の解決に当社のクラウドサービスを用いた総合的な業務支援を行うサービスであり、またその機能の高度化が進んでいることから、当事業年度末からその名称を「BPaaS」に変更しております。

注7

CRM機能

訪問看護ステーションにおいて、従来手書きで対応されていた「入院時サマリー、カンファレンス記録、看護計画、看護記録Ⅰ・Ⅱ、統計データ、対応記録、ヒヤリハット、サービス提供票、情報提供書」等の顧客管理情報を電子データで管理する機能を指しております。

注8

DX(デジタル・トランスフォーメーション)

・デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること

・既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの

注9

UI(User Interface)

Webサイト等を利用する際の情報の表示形式や操作性のことであります。

UX(User Experience)

Webサイト等を利用して得られる体験、また、その心地よさや充足感等の概念であります。

注10

ICT

インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジーの略語であり、情報処理技術や通信技術を総称する用語であります。

注11

地域包括ケア

「地域包括ケア」とは、「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」という考え方であります。

注12

3省2ガイドライン

医療情報を電子的に扱う際の安全管理の観点から、厚生労働省、総務省、経済産業省の3省が策定した2つのガイドラインを、まとめて3省2ガイドラインといいます。

・厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第5版)」

・経済産業省「医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン」

厚生労働省のガイドラインは、病院や一般診療所、薬局等の医療機関向けのガイドラインです。経済産業省のガイドラインは、医療情報を取り扱うクラウドサービス事業者・情報処理事業者を対象としています。

 

注13

電子カルテシステム

電子カルテとは病院で医師が記録する診療記録(カルテ)を電子化し、保存・管理するシステムのことです。電子カルテは、「真正性」「見読性」「保存性」の電子保存の3原則を満たさなければいけません。

真正性:正当な人が記録し確認された情報に関し第三者から見て作成の責任の所在が明確であること故意または過失による、虚偽入力、書き換え、消去、および混同が防止されていること

見読性:電子媒体に保存された内容を、権限保有者からの要求に基づき必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできること

保存性:記録された情報が法令等で定められた期間に渡って真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されること

注14

オンコール当番

訪問看護ステーションの多くは、利用者の急変等に備えて24時間体制を採っています。オンコールとは、こうした緊急の呼び出しや訪問に備えて待機することです。オンコールの対応は、担当の訪問看護師が専用の携帯電話を持ち、利用者やご家族からかかってきた電話に応じるという形が一般的です。

注15

常勤換算

医療や介護の質を保つため、国は事業所規模やサービス内容に応じた、人員配置基準を定めています。しかし、正社員やパート等、労働時間が異なる人を同じ1人と考えると、実際の現場では基準を下回っていたということになりかねません。基本的には、すべての従業員の労働時間を足し、フルタイムの労働時間で割ることで、「通常何人で働いているか」を示します。その事業所の労働者の平均を表すのが「常勤換算」であります。

注16

リージョン

リージョンとは、地理的に近い「ゾーン」をグループ化したもので所在地を特定することができ、またリージョン毎に完全に独立しています。

注17

ISMS(ISO27001)

ISMSとは、Information Security Management Systemの頭文字をとった略称で、情報セキュリティマネジメントシステムのことを意味しております。

ISO27001とは、組織内の情報を守り有効活用するための情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関するISOの規格であります。

注18

医療ソーシャルワーカー

医療ソーシャルワーカーは、医療機関における福祉の専門職です。主に病院で、患者やその家族が抱えるさまざまな課題についての相談援助を行い、解決のために調整や援助を行う役割を担っております。

注19

ケアマネージャー

ケアマネージャーは、要介護者や要支援者の相談や心身の状況に応じるとともに、サービス(訪問介護、デイサービスなど)を受けられるようにケアプラン(介護サービス等の提供についての計画)の作成や市町村・サービス事業者・施設等との連絡調整を行う役割を担っております。

注20

ファクタリングサービス

事業者が保有している売上債権等を決済期日より前に買取るサービスであり、事業者にとっては有効な資金調達手段の一つです。

 

 

[事業系統図]

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、社会・経済活動が活性化し雇用・所得環境が改善する中、個人消費および設備投資に持ち直しの動きがみられ、緩やかな回復基調が続きました。しかしながら、継続的な国内の物価上昇により個人消費に一部足踏みがみられるなど、未だ先行き不透明な状況が続いております。

当社の顧客が事業を展開する在宅医療業界におきましては、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、地域包括ケアシステムの構築を実現させることが国策として進められている中、2024年6月からの「訪問看護レセプト(医療保険請求分)のオンライン請求」および「訪問看護のオンライン資格確認」等、効果的かつ効率的で質の高い医療サービスの実現に向けた医療DXが推進されると共に、2024年度の診療報酬・介護報酬改定においても「訪問看護」の報酬はプラス改定になる等、国策により追い風が吹く環境となりました。

このような状況の中、当社は、2024年度の診療報酬・介護報酬改定への対応、およびAIを活用した新サービス「AI訪問看護計画」、「AI訪問看護報告」の提供を開始しました。

 この結果、当事業年度の経営成績は、主力サービス「iBow」の新規顧客獲得が順調に推移し、売上高は2,571,852千円(前期比24.3%増)、営業利益は1,135,932千円(前期比25.0%増)、経常利益は1,138,949千円(前期比25.1%増)、当期純利益は808,261千円(前期比31.9%増)となりました。

 当社は、訪問看護ステーション向けサービス提供事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 売上高をサービス別に示すと、次のとおりであります。

 なお、当社が提供するサービスについて、その提供方法により、従来は「クラウドサービス」と「BPOサービス」の2つのカテゴリーに区分して売上高の開示を行っておりましたが、このうち「BPOサービス」は、業務プロセスの効率化のみならず、生産性の向上や人材育成等、ユーザーが抱える経営課題の解決に当社のクラウドサービスを用いた総合的な業務支援を行うサービスであり、またその機能の高度化が進んでいることから、当事業年度末からその名称を「BPaaS」に変更しております。

                                          (単位:千円)

 

第13期(2024年12月期)

1Q

1-3月

2Q

4-6月

3Q

7-9月

4Q

10-12月

合計

1-12月

<クラウドサービス>

511,982

563,145

575,496

624,050

2,274,674

 iBow

457,306

488,333

510,487

535,397

1,991,524

 iBow レセプト

46,038

51,176

55,298

59,732

212,244

 その他

8,637

23,636

9,711

28,920

70,906

<BPaaS>

54,435

61,244

71,886

82,476

270,042

 iBow事務管理代行サービス

54,195

60,944

71,806

82,376

269,322

 その他

240

300

80

100

720

<その他>

8,542

6,355

7,145

5,091

27,134

 

②財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は2,526,732千円となり、前事業年度末に比べ669,964千円増加となりました。これは主に、当期純利益の増加による現金及び預金が553,021千円増加、売上高の増加に伴い売掛金が90,734千円増加したこと等によるものであります。

 固定資産は543,854千円となり、前事業年度末に比べ19,893千円増加となりました。これは主に、減価償却等により有形固定資産が33,240千円減少した一方で、ソフトウエア投資により無形固定資産が27,929千円増加、譲渡制限付株式報酬として新株式の発行等により長期前払費用が8,089千円増加、繰延税金資産が17,115千円増加したことによるものであります。

 この結果、総資産は3,070,587千円となり、前事業年度末に比べ689,858千円増加となりました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は559,095千円となり、前事業年度末に比べ29,541千円減少となりました。これは主に、未払消費税等が38,432千円増加、契約負債が32,004千円増加した一方で、1年内返済予定の長期借入金が91,500千円減少、未払法人税等が15,695千円減少したこと等によるものであります。

 固定負債は102,389千円となり、前事業年度末に比べ337千円増加しました。

 この結果、負債合計は661,485千円となり、前事業年度末に比べ29,204千円減少いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産は2,409,102千円となり、前事業年度末に比べ719,062千円増加となりました。これは主に、譲渡制限付株式報酬の払込および新株予約権の行使により資本金が30,295千円増加、資本準備金が30,168千円増加し、また繰越利益剰余金が当期純利益の計上により808,261千円増加、配当金の支払いにより149,616千円減少したこと等によるものであります。

 この結果、自己資本比率は前事業年度末の71.0%から78.5%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は1,965,928千円となり、営業活動により856,787千円増加、投資活動により77,890千円減少、財務活動により225,875千円減少したこと等により、前事業年度末と比較して553,021千円増加となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は、856,787千円(前事業年度は626,907千円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の増加90,734千円、法人税等の支払額365,052千円があったものの、業績が好調に推移したことによる税引前当期純利益の計上1,138,370千円、減価償却費の計上80,859千円があったこと等によります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、77,890千円(前事業年度は217,845千円の使用)となりました。これは有形固定資産の取得による支出17,700千円、無形固定資産の取得による支出60,190千円があったことによります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、225,875千円(前事業年度は71,365千円の使用)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入14,878千円があったものの、配当金の支払額149,207千円、長期借入金の返済による支出91,500千円があったこと等によります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

当事業年度(2024年12月期)の販売実績は2,571,852千円(前期比24.3%増)となりました。

前期比で増加した要因は、既存サービスのシェア拡大と追加機能のリリースなどサービスの拡充に努めた結果によるものであります。

なお、当社は訪問看護ステーション向けサービス提供事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。サービス別の売上高については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」を参照ください。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①財政状態の分析

前述の「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

②経営成績の分析

a.売上高

当事業年度における売上高は、2,571,852千円(前期比24.3%増)となりました。これは「iBow」の契約ステーション数の増加、顧客平均単価の上昇に加え、2021年1月にリリースした「iBow 事務管理代行サービス」、および2021年4月にリリースした「iBow レセプト」の利用者数が、当事業年度において順調に増加したことによるものです。

 

b.売上原価、売上総利益

当事業年度における売上原価は、574,424千円(前期比32.7%増)となりました。これは主に、戦略的な開発人材、BPaaS人材の採用に伴う労務費とサーバーコストの増加によるものです。

この結果、売上総利益は1,997,428千円(前期比22.0%増)となりました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ133,403千円増加し、861,495千円(前期比18.3%増)となりました。これは主に、本社移転による地代家賃の増加、展示会への積極参加やWEB広告の強化による広告宣伝費の増加等によるものです。

この結果、営業利益は、1,135,932千円(前期比25.0%増)となりました。

 

d.営業外損益、経常利益

当事業年度における営業外収益は、前事業年度に比べ209千円減少し、5,358千円(前期比3.8%減)となりました。また、営業外費用は、前事業年度に比べ1,438千円減少し2,342千円(前期比38.0%減)となりました。これは主に、借入金返済による支払利息の減少があったことによるものです。

この結果、経常利益は、1,138,949千円(前期比25.1%増)となりました。

 

e.特別損益、当期純利益

当事業年度における特別損失は、前事業年度に比べ1,770千円減少し、578千円となりました。

この結果、当期純利益は、808,261千円(前期比31.9%増)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析

 当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④資本の財源及び資金の流動性

 当社の資金需要は、運転資金に加え、ソフトウエア開発費用や研究開発投資等があります。これらの資金需要に対して、主に自己資金を充当し、必要に応じて金融機関からの借入等により資金調達する方針としております。

 

⑤経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑥経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について

 当社は、経営上の目標の達成状況を「稼働ステーション数」「市場シェア」「四半期平均解約率」「月間平均単価」の指標で判断しております。

 当社は、サブスクリプションでサービスを提供しており、既存収入の安定、新規顧客の獲得、低解約率の継続により今後の業績は順調に推移すると認識しております。当事業年度末までの各指標の状況は次のとおりであります。

 

・稼働ステーション数

(単位:件)

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

1,697

1,824

1,921

1,996

2,077

2,214

2,298

2,391

2,470

2,577

2,690

2,790

(注)稼働ステーション数は、「iBow」のサービス利用中の四半期ごとの稼働ステーション数の月末平均であり、サービス提供準備中のステーション数は含んでおりません。

 

・市場シェア

(単位:%、件)

 

2022年12月

2023年12月

2024年12月

市場シェア

15.1

16.4

17.5

契約ステーション数

2,161

2,575

3,028

市場ステーション数

14,304

15,697

17,329

(注)市場シェアは、毎年12月末における当社契約ステーション数を、毎年6月に一般社団法人全国訪問看護協会が公表する4月1日時点における稼働ステーション数で除して算出しております。

契約ステーション数は、稼働ステーションおよびサービス準備中のステーション数の合計であります。

 

・四半期平均解約率

(単位:%)

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

0.05

0.06

0.07

0.11

0.11

0.14

0.09

0.11

0.15

0.27

0.20

0.13

(注)1.四半期平均解約率は、各月の売上に対する前月解約による売上の減少割合である月次解約率を算出し、当該月次解約率を四半期ごとに単純平均しております。

2.月次平均解約率を重要な経営指標としているのは、解約率が低位で安定していることが、顧客の満足度を図る一つの指標であると考えているためであります。

 

・月間平均単価

                                  (単位:千円)

 

2022年12月期

4Q

2023年12月期

4Q

2024年12月期

4Q

月間平均単価

73.6

76.3

81.3

(注)月間平均単価は、各年度の4Qにおける平均月間売上高(リカーリングレベニューの)を「iBow」の同期間における月末平均稼働ステーション数で除して算出しております。