リスク
3【事業等のリスク】
当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を与える可能性のある事項を以下に記載しております。
また、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社は、これらのリスクに対し発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避および発生した場合の迅速な対応に努める方針であります。
なお、本記載事項の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境および事業内容に関するリスクについて
①医療保険制度・介護保険制度の改正対応について(影響度:大、発生可能性:低)
当社がサービス提供を行っている「iBow」については、医療保険制度・介護保険制度の影響を強く受けます。定期的に法律全般に関する検討が加えられ、2年に1度診療報酬の見直し、3年に1度介護報酬の見直しが行われることになっており、これらの改正に対応するための適時なシステム開発が必要となります。
こうした状況は、同業他社も同様の条件であるため、開発において他社に先んじることや差別化を図ることでシェアの拡大に直結することになりますが、逆に遅れをとった場合には当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
また、新たな市場動向の変化や医療保険・介護保険法の改正動向次第で当社や顧客である訪問看護の事業環境が大きく変わる場合があります。これらの事業環境の変化が顕在化し、また、当社が適時適切に対応できず、サービスの導入延期やサービス利用数の削減、他社サービスへの乗り換え等に繋がった場合は、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
これに対する取組として、関連法令の動向等を捉え、それらを経営・事業の戦略に適時適切に反映しております。
②特定業界への依存について(影響度:大、発生可能性:低)
当社は、全売上が訪問看護ステーションを中心とする訪問看護業界向けという特定の業界に集中しております。過度に依存することがないよう訪問看護業界以外の分野への展開も視野に入れ、2021年12月期より在宅治験支援の取組を開始し、また、現在は医療データビジネスを中心としたPHRの展開を進めるなど、事業基盤の盤石化を図っておりますが、現在の訪問看護業界からの需要が大幅に縮小した場合や看護師等の不足に伴い、訪問看護ステーションが常勤換算等の要件を満たせず訪問看護ステーション数が大幅に減少した場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
③クラウド関連市場について(影響度:大、発生可能性:低)
当社が行っている訪問看護ステーション向けサービス提供事業は、売上高の大部分をクラウドサービスで提供しております。クラウドサービスに関連して、今後新たな法的規制の導入、技術革新の停滞等の要因により、クラウドサービスの導入が想定通りに進捗せず、クラウド関連市場の成長が阻害される場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
これに対し、クラウド関連市場における新たな法的規制や技術革新等の動向について、常に情報収集に努め、クラウドサービスの提供に支障が生じないよう対策を検討できる体制を構築して参ります。
④特定のサービスへの依存について(影響度:大、発生可能性:低)
当社は、「iBow」、「iBow レセプト」、「iBow 事務管理代行サービス」等を提供しておりますが、現在、全体の売上高に占める「iBow」の割合が多く(2023年12月期の売上高に対して81.0%を占めております。)、同サービスに依存しております。当社は、収益源の多様性を持つことにより、より安定した体制の構築を目指すべく、コンテンツサービスの拡大や、新たに当社の柱となる新規サービス、事業の開発に向け積極的に取り組んでおります。
しかしながら、現在時点において主要サービスである「iBow」が顧客のニーズと乖離した場合や競合他社に対する優位性を喪失する等の事態に陥った場合、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
これに対して、第2の柱である「iBow 事務管理代行サービス」の強化、第3の柱としてPHRを中心とした医療データの利活用を進めていきます。
⑤他社との競合について(影響度:中、発生可能性:低)
現在、国内で介護・医療分野におけるクラウドサービス事業を展開する競合企業が複数存在しており、今後の市場規模拡大に伴い新規参入を検討する企業が増加する可能性があります。
その中で当社は訪問看護ステーション向けに特化し、利用者である看護師等の視点を重視し提供することで市場における優位性を構築し、競争力を向上させてまいりました。
今後も、利用者目線を重視し、UI/UXを追求しシステム構築を推進してまいりますが、新規参入等により競争が激化した場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
これに対する取組として、徹底した利用者目線をもち、訪問看護という特定の分野に深化し続けることで、競合他社に対して十分な競争優位性を実現していきます。
⑥技術革新について(影響度:中、発生可能性:低)
当社のサービスは、インターネット関連技術に基づいて事業を展開しておりますが、インターネット関連分野は新技術の開発およびそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われ、非常に変化の激しい業界となっております。このため、当社は技術者の採用・育成に関する技術やノウハウの取得に注力しております。
しかしながら、このような技術やノウハウの獲得に困難が生じた場合、また技術革新に対する当社の対応が遅れた場合には、当社の競争力が低下する可能性があります。さらに、新技術への対応のために追加的なシステム、人件費等の支出が拡大する可能性があり、その結果、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
これに対する取組として、常に複数の外注先と情報交換を進め、企画・要件定義は自社内で進めるが開発等については積極的に外部を活用することで技術の陳腐化を回避しております。
⑦システム障害について(影響度:中、発生可能性:低)
当社のサービスは、サービスの信頼性および取引の安全性の観点からも、当社の事業用ITインフラは障害に強い設計としております。また、管理を強化するため、情報システム開発および運用経験の豊富な人材の採用を積極的に実施しております。
しかしながら、このような体制による管理にもかかわらず、未知のコンピュータウイルスやテロ攻撃、通常使用時だけでなくシステム改修やシステムトラブル等により想定を超える事故が発生した場合、当社が保有する設備の損壊や電力供給、インターネットアクセスの制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生し、その結果、当社はサービス提供および営業取引に深刻な影響を受け、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
これに対する取組として、十分なセキュリティ対策を施した上で、クラウド化を実施する等、有事の際にもサービスを提供できるよう対処しております。さらに、システム開発およびシステム運用経験の豊富な人材を採用すると共に、システムに関する従業員向け教育を積極的に実施する等、体制面での強化も継続して取り組んでおります。
⑧既存ユーザー企業の継続について(影響度:小、発生可能性:低)
当社のサービスは、サブスクリプション型のビジネスモデルであることから、当社の継続的な成長には、新規契約ステーションの獲得のみならず、既存契約ステーションの維持が重要と考えております。
しかしながら、当社サービスの魅力の低下、競合他社に対する競争力の低下、顧客ニーズに合致しない等により、当社の想定を大幅に下回る継続状態となった場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
現状においては、2023年12月期における月次平均解約率(注)が0.11%であり、過去のこれまでの実績から当該リスクが顕在化する蓋然性は高くないと、当社では認識しておりますが、既存契約ステーションの維持については、機能の追加開発やサポートの充実により、契約の継続維持・向上を図っております。
(注)月次平均解約率は、各月の売上に対する前月解約による売上の減少割合である月次解約率を算出し、当該月次解約率を単純平均しております。
⑨新規事業展開に伴うリスクについて(影響度:小、発生可能性:低)
当社は、既存システムを活用した新規事業の開発を進めております。新規事業の展開にあたっては、当初見込み通りの展開ができず投資を回収できなくなる可能性があり、当社の業績に重要な影響を与える可能性があります。当社は新規事業の実現可能性を慎重に見極め、開発計画を立て進捗管理を適切に行っておりますが、開発が想定通りに立ち上がらなかった場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
⑩外注先への依存について(影響度:小、発生可能性:低)
当社は、提供するサービスや機能を開発する場合、企画・要件定義を自社で行い、コーディング等の開発は外注を利用しております。外注先を十分に確保できない場合、または外注先の経営不振および納期遅延が発生する場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
当社では、このようなリスクに対して、新たな外注先の確保をすすめるとともに、コンポーネント化した開発(注)を行うことで不測の事態に備えております。外注先の選定にあたっては、その経営状態、技術力、評判および反社会的勢力との関係の有無等を調査し安全・品質管理の徹底等に十分に留意しております。
(注)コンポーネント化した開発とは、機能を部品化して開発することであります。プログラムをコンポーネント単位に分けることで、機能の追加・修正・削除等が発生した場合に、コンポーネント単位で対応することができます。当社ではコンポーネント単位で必要に応じて外注し、特定の外注先への依存を回避することができる仕組みとしております。
(2)事業運営体制に関するリスクについて
①内部管理体制の整備に係るリスクについて(影響度:小、発生可能性:低)
当社は、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。業務の適正性および財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、さらに法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追い付かない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
②人材育成・確保について(影響度:小、発生可能性:低)
当社は、今後想定される事業拡大や新規事業の展開に伴い成長を続けていくために不可欠な要素の一つが、優秀な人材の確保であると考えております。
今後の事業展開を見据えて、主に顧客リレーションおよびシステム分野のスキルを有する人材の確保を目指すとともに、教育研修制度の充実等、人材の育成に努めておりますが、当社が求める人材が十分に確保出来なかった場合や人材育成が円滑に進まない場合、または各部門において中心的役割を担う特定の従業員が万が一社外に流出した場合、内部管理体制や業務執行体制が有効に機能せず、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
これに対して、社内研修の充実や各職務職位別の業務・目標の明確化を図り経営陣と従業員のミスマッチを防ぐ活動を行っております。
③特定人物への依存について(影響度:小、発生可能性:低)
当社の代表取締役社長中野剛人は、当社の創業者であり、設立以来、経営方針や事業戦略の立案・決定およびその遂行において取締役としての役割を果たしております。
当社では、経営会議を設け重要事項の審議を行うほか、各事業部門を統括する業務執行取締役に権限を委譲するなど同氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めておりますが、何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難となった場合、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
④個人情報の管理について(影響度:大、発生可能性:低)
当社は、展開する各サービスの運営過程において、ユーザーよりユーザー自体の個人情報を取得することがあるほか、ユーザーの顧客である患者情報を当社にて取り扱うことがあります。当該個人情報の管理については、権限を有する者以外の閲覧をシステム上で制限しております。なお、患者情報に関しましては、当社はユーザーの承諾を得て閲覧することがあるものの、その情報は外部のサーバーにのみ保管され、当社システムには残らないようになっており、流出することがないよう厳格に管理・運用しております。
しかしながら、外部からの不正なアクセス、その他想定外の事態の発生により個人情報が流出した場合には、当社の社会的信用を失墜させ、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
これに対する取組として、3省2ガイドライン(厚生労働省・総務省・経済産業省による医療機関向けクラウドサービス利用検討ガイドライン)を踏まえた仕組みとすることで、情報セキュリティ対応を行っております。
⑤知的財産権の保護について(影響度:小、発生可能性:低)
当社は、特許権、商標権等の知的財産権の保護に努めており、当保護に当たっては当社の管理部門および弁理士等による事前調査を行っております。
しかしながら、第三者による当社の権利に対する侵害等により、企業・ブランドイメージの低下、サービス運営への悪影響等を招く等、その対応のために多額の費用が発生する可能性があります。
また、万が一当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求や差止請求等を受ける可能性があります。こうした場合、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
(3)その他
①自然災害について(影響度:小、発生可能性:低)
事業を展開する地域において、大規模な自然災害やパンデミック等が発生した場合、事業を継続することが困難な状況に陥ることが予想されます。当社では大阪本社のほか東京に拠点を置き営業活動を行っておりますが、リモートワーク環境を構築してこれら営業拠点に依存しない業務遂行体制を整備しております。
しかしながら、当該エリアにおいて地震、火災、津波、大型台風等の自然災害やパンデミック等が発生して営業活動や情報収集活動等が制約を受ける場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
②訴訟について(影響度:小、発生可能性:低)
当社は、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。
しかしながら、事業を展開するなかで、当社が提供するサービスの不備、当社が保有する個人情報および情報漏洩等により、何かしらの問題が生じた場合等、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟の提起がなされる可能性があります。これらの訴訟により、当社の社会的信用が毀損され、また損害賠償の金額、訴訟内容および結果によっては、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。
③新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(影響度:小、発生可能性:低)
当社は、当社の役員および従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値および議決権割合が希薄化する可能性があります。
また、当社は取締役および執行役員に対し譲渡制限付株式報酬制度を導入しております。優秀な人材確保のために同様のインセンティブプランを実施する可能性もあり、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
④減損損失について(影響度:小、発生可能性:低)
当社は、有形固定資産やソフトウエア等の固定資産を保有しています。これらの資産については、減損会計を適用し、減損の兆候がある場合には当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。
しかしながら、将来の環境変化により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、現在成長段階にあると認識しており、事業拡大や組織体制整備への投資のため、内部留保の充実が重要であると考えております。また、株主還元を適切に行っていくことも経営上重要であると認識しており、事業基盤の整備状況や投資計画、業績や財政状態等を総合的に勘案しながら、安定的な配当を行う方針であります。
この方針のもと、当事業年度の配当につきましては、期末配当金を1株当たり20円(配当性向は23.2%)といたしました。
内部留保資金につきましては、今後の事業展開を図るため、有効に活用していく方針であります。なお、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本としており、配当の決定機関は株主総会であります。また、当社は、取締役会の決議により、毎年6月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
なお、当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (千円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年3月28日 |
149,616 |
20 |
定時株主総会決議 |
(注)当社は、2024年1月1日付で普通株式1株を2株に株式分割しております。1株当たり配当額については、当該株式分割前の配当の額を記載しております。