2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント体制

 当社グループでは、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④内部統制システムの整備の状況(ⅲ)当社グループの損失の危険の管理に関する規程その他の体制(リスク管理体制)」に記載する「統合リスクマネジメント」の取組みを通じて、当社グループのリスク管理を行うとともに、危機対応の体制を整備しています。

 

 当社グループでは、リスクの性質に応じた管理をする目的で、重要リスクの分類の全面的な見直しを2023年に実施し、以下の7つに分類しました。

 

分類

リスク事例

戦略

地政学・カントリーリスク、市場環境の変化、競争優位性、新事業探索・投資など、各事業運営上の個別のリスク

オペレーション

サプライチェーン上の問題による調達リスク

環境安全関連法違反・労働災害による業務停止・賠償リスク

製品の品質に関する法令・規制・お客様要求事項違反により生じるリスク

コンプライアンス

競争法・贈賄・安全保障貿易管理による行政罰・業務停止リスク

品質・環境データの意図的な改ざんによる信頼失墜リスク

不正経理・粉飾決算による信頼失墜リスク

サステナビリティ

気候変動や人権尊重等に関する要請に対応できないことによる信用低下・取引停止のリスク

自然災害/感染症

大規模地震・風水害などの自然災害、未知のウィルスの発生、パンデミックによる事業中断リスク

サイバーセキュリティ/情報セキュリティ

サイバー攻撃による情報漏洩及び事業中断リスク

サイバー攻撃以外による情報漏洩リスク

財務

財務報告の信頼性、財務・資金調達に関するリスク

 

 リスク管理にあたっては、影響度と発生可能性を考慮し、リスク発現時に当社グループ経営に大きな影響を与えることが想定されるものを「重要リスク」に選定し、重点的にモニタリングを行っています。

 

 「戦略」については、社内カンパニー、SBU(戦略事業単位)、コーポレート部門が、事業・案件ごとにリスクの分析や対策を検討し、必要に応じ経営会議、取締役会で審議します。市場環境やリスクに影響を与える要因の変化に迅速に対応するため、重要リスクは毎年見直しを行います。

 

 「戦略」以外のリスクについては、各リスクを所管するコーポレート部門が、ガイドライン等の制定・周知、研修、監査等を実施します。また、毎年当社グループ全体で自己点検を実施し、その結果を経営会議、取締役会で監視しています。重要リスクは、必要があれば都度追加をするとともに、中期経営計画策定年に、リスクの影響度と発生可能性を考慮した見直しを行います。

 

<発現したリスクへの対応>

社内規程に基づき、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性のある不測の事態の発生に備え、「Bad News First」の考え方の下、社長執行役員に迅速かつ確実に情報を報告し、共有するための危機管理レポートラインを設定しています。加えて、社長執行役員の判断により、直ちにグループ対策本部を設置し、迅速かつ適切な初期対応が取れる体制を整備しています。

 

(2)事業等のリスク

 当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。但し、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2024年3月28日現在において判断したものです。

 

<戦略リスク>

①地政学リスク/カントリーリスク

 当社グループでは、日本における事業活動に加え、製品の輸出入及び海外における現地生産等、海外においても事業活動を展開しています。これらグローバルな事業展開に関するリスクとして、事業を展開している国及び地域における政治経済情勢の悪化、輸出入・外資の規制、予期せぬ法令の改変、治安の悪化、国家間の経済制裁、テロ・戦争・感染症の発生その他の要因による社会的混乱等の地政学リスク/カントリーリスクが考えられ、当社グループとしては、当該政治経済情勢や各国・地域の規制の動向等について注視し、状況に応じた対応がとれるよう努めています。

 しかしながら、これらの事象の発生により、海外における当社グループの事業活動に支障をきたし、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

②市場環境の変化

 当社グループの製品に対する需要は、建築・建材業界、自動車業界、電子・ディスプレイ業界、化学品及び医薬・農薬業界等の市場動向の影響を受けます。また、当社グループの製品販売地域は、日本、アジア、アメリカ、ヨーロッパをはじめ、多岐にわたっており、各国・地域の経済状況は当社グループの製品の販売に影響を与えます。当社グループは、生産性の向上を図るとともに、固定費・変動費の削減を推進し、事業環境の変化に影響されにくい収益体質づくりを目指していますが、これらの関連業界の需要減少や販売地域での景気減退が、販売数量の減少や価格の下落を通じて当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

セグメントごとの状況は、以下のとおりです。

 

(ⅰ)建築ガラス

 建築ガラスセグメントでは、日本・アジア、欧州のそれぞれに開発・生産拠点を構築し、グローバルに製品を提供しています。製品の需要は、地域ごと、国ごとの景気により変動する建設投資に連動しており、同事業の収益も当該需要変動の影響を受ける可能性があります。

(ⅱ)オートモーティブ

 オートモーティブセグメントでは、日本・アジア、欧州、米州のそれぞれに開発・生産拠点を構築し、グローバルに製品を提供しています。自動車用ガラスの需要は、地域ごと、国ごとの景気変動等に連動する自動車生産台数の影響を受け、同事業の収益も当該需要変動の影響を受ける可能性があります。

(ⅲ)電子

 ディスプレイ事業の製品は液晶TV、スマートフォン、タブレット端末等に使用されています。同ビジネスについては、市場動向の変化、顧客のマーケットシェアの変動等が起きることが想定されます。当社グループは顧客ポートフォリオも考慮し拡販に努めていますが、市場や顧客の動向が同事業の収益に影響を与える可能性があります。電子部材事業については、半導体業界、オプトエレクトロニクス業界等に関連する企業が主な顧客です。これらの顧客の業績は、半導体、スマートフォン、通信インフラ、産業機器等の市場動向に依存するため、同事業の収益もこれらの市場動向の影響を受ける可能性があります。

(ⅳ)化学品

 エッセンシャルケミカルズ事業については、日本及びインフラ整備が進展する東南アジアを中心に生産拠点を構築し、事業を展開しています。製品の需要は、主に地域ごと、国ごとの経済成長率や基幹産業の稼働状況に連動しており、同事業の収益も当該需要変動の影響を受ける可能性があります。パフォーマンスケミカルズ事業においては、輸送用機器業界や半導体業界、建設業界に関連する企業が主な顧客であり、同事業の収益もこれら業界の市場動向の影響を受ける可能性があります。

(ⅴ)ライフサイエンス

 ライフサイエンスセグメントにおいては、医薬・農薬業界の経済状況及び新薬等の開発状況の影響を強く受け、同セグメントの収益もこれらの動向の影響を受ける可能性があります。

 

③競争優位性に係るリスク

 当社グループが展開する各事業においては、当社グループと同種の製品を供給する競合会社が存在します。当社グループでは、市場や顧客ニーズを把握し、競合会社に対する競争優位性を維持できるよう、品質、価格、デリバリーなど、要求への対応や新技術の開発・知的財産権の取得に努めています。

 しかしながら、それら顧客ニーズの変化に対し適切に対応できなかった場合や、新技術開発の長期化・知的財産上の訴訟が発生した場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 なお、現在、当社グループが当事者となっている知的財産権関連の訴訟等もあり、これらの訴訟等において不利な結果が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

④新事業探索・投資に係るリスク

 当社グループでは、短期~中期での成長性の確保、収益性の向上を目指した新事業の探索に努めており、そのために投資を伴う技術や事業買収を展開しています。新事業探索・投資にあたっては、種々のリスクを考慮した採算性分析やデューデリジェンスにより、リスクの把握に努めています。

 しかしながら、事業化期間中の環境変化や、想定しなかったリスク要因が顕在化した場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

<オペレーションリスク>

①サプライチェーン

 当社グループでは、外部に製造を委託した場合には、事業継続の観点から複数の委託先の確保に努めています。

 しかしながら、当社グループ又は当社グループの製造委託先において重大な生産トラブル等が発生し、一時的又は長期にわたる生産の中断等があった場合、製品によっては代替生産できないものもあり、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの生産活動では、一部調達先が限られる特殊な原料、資材等も使用しており、代替原材料の検討並びに当該原料・資材等の複数購買の推進に努めています。

 しかしながら、これらについての供給の逼迫や遅延、価格変動等が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

②環境安全品質

 当社グループは、製品の特性に応じて最適な品質を確保できるよう、全力を挙げて取り組んでいます。

 しかしながら、予期せぬ事情により大規模なリコール等に発展する品質問題が発生する可能性が皆無とはいえず、製造物責任を追及された場合は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループでは、環境に関するあらゆる適用法規制を遵守するとともに、法規制値より厳しい自社管理基準を設けて運用するなど、事業活動に伴う環境負荷を抑制し地球環境保全に努めています。

 しかしながら、環境規制リスクとして、当社グループの製造工程で排出、又は製品に含有した化学物質等により非意図的な環境汚染等が発生した場合に、社会的信用の低下、事業活動の制限や費用の発生などにより当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。また、各国又は地域での各種法規制の改正や強化により追加的費用や設備投資が必要になった場合、あるいは製品開発、生産、販売・サービス活動等に支障をきたした場合、当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループの化学品セグメントでは、様々なフッ素関連製品を製造・販売しています。炭素とフッ素の原子を持つ化学物質(ペルフルオロアルキル化合物又はポリフルオロアルキル化合物)は、広い括りでPFASと総称されており、PFAS全体で約12,000種類あるとされています。現在、そのうち環境や人体への影響の懸念からごく一部のPFASのみが国際条約により規制の対象とされています。当社グループは、条約で規制対象となっているPFASのうち、PFOSやPFHxSについては製造を行っておらず、PFOAの製造・販売は、条約による規制に先立ち、2015年に終了しています。PFASは物質ごとに異なる特性・性質を有するにもかかわらず、昨今、欧州や米国の一部の州で、全てのPFASを一括で規制しようとする動きがあります。当社グループでは、フッ素関連製品が産業上の重要な役割を担っていることを踏まえ、欧州当局へのパブリックコメントの提出などによりPFASに関する規制が十分な科学的知見に基づき個々の物質の性質を踏まえた適切な範囲となるよう努めております。PFASに関する規制の最終的な対象や内容は現時点では見通せませんが、規制の内容次第では、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 さらに、当社グループは、組織的な環境・保安防災・労働安全衛生管理体制の構築と運用及び設備の安全化や点検・保守管理により、労働災害及び生産設備等の事故防止に取り組んでいます。

 しかしながら、重篤な労働災害や重大な火災・爆発・漏洩事故等の不測の事態が発生した場合、当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。

 

<コンプライアンスリスク>

①公的規制

 当社グループが事業活動を行っている国及び地域では、投資に関する許認可や輸出入規制のほか、商取引、労働、特許、租税、為替等の各種関係法令の適用を受けています。当社グループでは、関係法令の改変動向を注視し、情報収集に努めていますが、関係法令の改変は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

②訴訟・法的手続

 当社グループは、国内及び海外事業に関連して、訴訟等の対象となるリスクがあり、現在、当事者となっている訴訟等もあります。これらの訴訟等において、当社グループにとって不利な結果が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 なお、米国において、フッ素系消火剤メーカーや当社グループを含むフッ素化学メーカー等に対し、PFASを使用した消火剤などの製品による環境や健康への影響を請求原因とする複数の訴訟が個人、地方政府等により提起されております。これらの訴訟の結果が当社グループにとって望ましくないものとなった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がありますが、現時点でこれら訴訟の結果を予測することはできません。当社グループでは、弁護士の協力を得ながらこれら訴訟への対応を適切に進めています。

 

<サステナビリティリスク>

 当社グループでは、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、長期的社会的課題認識(マテリアリティ)において、重要機会と重要リスクを特定し、管理しています。

 しかしながら、以下の5つの重要リスクにおいて顧客等から求められる水準を満たすことができない場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

①気候変動問題への対応について

 2015年のパリ協定合意以降、脱炭素化の流れが加速しており、エネルギー関連政策・法規制の厳格化が想定されるとともに、企業に対する温室効果ガス排出の実質ゼロ実現への社会的要請が強まっています。当社グループとしても、当該リスクを見据え、2050年目標として「自社の事業活動に伴う排出量ネットゼロ(Scope1,2)を目指すとともに、製品・技術を活かして世界のカーボンネットゼロ実現に貢献」することを定めています。当社グループは、2050年目標の達成に向け、温室効果ガス排出量の少ない製造技術・設備の開発など、温室効果ガスの排出源に応じた削減策の実施に努めるとともに、本項目を重要機会とも捉え、製品ライフサイクルにおける省エネ・創エネ効果を有する製品の拡販、再生可能エネルギー普及に寄与する事業モデルの構築などに努めていきます。

 しかしながら、一部地域で導入され始めている炭素税等のカーボンプライシングが本格的に導入された場合、これらの規制等に対応するために必要な費用負担が当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。また、温室効果ガス排出規制等の気候変動対応に係る各国・地域における規制の強化に対応できない場合、パリ協定に整合する温室効果ガス排出削減目標が達成できない場合、ステークホルダーからの脱炭素化への事業による貢献への要請の高まりに対応ができない場合に、レピュテーション及び社会的信用の低下による機会損失が発生する可能性があります。

 

②資源の有効利用について

 レアアース等の枯渇性資源に関する利用規制の厳格化や都市化の進展に伴う水資源需要の増加による生産活動への影響が想定されるとともに、循環型経済の加速に伴う廃棄物削減・リサイクルの社会的要請が強まっています。当社グループでは、再生原材料や再生資材の活用、埋立て処分の削減に努めるとともに、本項目を重要機会とも捉え、水不足地域における地下水・雨水浄化に寄与する製品の拡販、枯渇性資源使用量の少ない製品・生産プロセスの開発、リサイクル・リユース性に優れた製品の拡販などに努めていきます。

 しかしながら、循環経済システムの標準化・法制化の動きが想定以上に進み、廃棄物削減・リサイクルの要請に十分に対応できない場合、市場での機会損失に繋がる可能性があります。

 

③社会・環境に配慮したサプライチェーンについて

 サプライチェーンのグローバル化・複雑化に伴い、サプライヤーや外部委託先における強制労働・児童労働等の違法雇用問題の発生や、環境規制強化等による操業停止、規制違反等の発生が想定されます。当社グループとしても、当該リスクを見据え、AGCグループ人権方針や、環境負荷低減などの取組みを推進するなどサステナブルな調達等を定めた「AGCグループ購買取引基本方針」の制定に加え、サプライチェーン全体での付加価値向上に取り組み、既存の取引関係や企業規模等を超えた連携により取引先との共存共栄の構築を目指す「パートナーシップ宣言」を表明し、人権尊重・環境保護を重視したサプライヤー管理に努めていきます。

 

④公正・平等な雇用と職場の安全確保について

 雇用におけるコンプライアンスや労働者の人権尊重の動きや、未熟練者や高齢者の増加に伴う製造拠点の安全対策の必要性が高まっています。当社グループとしても、当該リスクを見据え、従業員エンゲージメントの向上、重篤災害・休業災害の発生防止に努めていきます。

 

⑤地域社会との関係・環境配慮について

 世界各地での都市化進展による生活圏拡大や周辺の生物多様性維持への関心、新興国での生活水準向上に伴うQOL(生活の質)向上への意識が高まっています。当社グループとしても、当該リスクを見据え、水使用量の削減や生物多様性の保全、環境事故の撲滅に努めるとともに、拠点設置地域との良好な関係構築を進めていきます。

 

<自然災害/感染症リスク>

 当社グループは、自然災害・感染症等が発生した場合に備えて、グループ内の主要拠点においては、地震・強風・洪水・感染症等に関するリスクを評価し、ハザードの高い拠点では事業継続計画を策定しています。

 しかしながら、事業継続計画の想定を超えた大規模な地震・台風・洪水等の自然災害や未知の感染症により、事業活動の中断、生産設備への被害、交通遮断による製品輸送停止など、不測の事態が発生するリスクが考えられ、当社グループ又は当社グループの構築するサプライチェーンにおいてこれらの不測の事態が発生し、一時的又は長期にわたる生産の中断があった場合には、製品によっては代替生産できないものもあり、お客様への供給に支障が生じる可能性や、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

<サイバーセキュリティ/情報セキュリティリスク>

 サイバー攻撃によるオペレーションの一時的な停止や情報資産の流出、災害、不正アクセスその他不測の事態の発生による情報セキュリティ上の脅威はますます高まっており、当社グループでは、ITシステム及び生産システムやデータ等の情報資産の保護に努め、またセキュリティインシデント予防対策及び発生時には影響を最小限に抑える対策を講じています。

 しかしながら、サイバー攻撃、災害、不正アクセスその他不測の事態により、重要な業務の中断や機密データの漏洩等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

<財務リスク>

①原燃材料の価格上昇

 当社グループの生産活動で使用している電力、燃料ガス、重油並びに原材料の価格変動等が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、一部原燃材料については商品デリバティブ取引等により価格変動リスクをヘッジしていますが、原燃材料価格の上昇による影響を完全に排除できない可能性があります。

 

②為替レートの変動

 当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

 また、当社グループは、日本をはじめとする世界各国の生産拠点で生産活動を行っており、その製品を複数の国に輸出しています。各国における生産及び販売では、外貨建で購入する原材料や販売する製品があります。したがって、為替レートの変動は、購入する原材料の価格や販売価格の設定に影響します。当社グループでは、短期的な為替レートの変動に対応するためヘッジ取引等の対策を講じるとともに、グローバルに生産拠点を配置して生産を行うなどリスクの軽減に努めていますが、大幅な為替レートの変動の結果、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

③退職給付債務

 当社グループの退職給付費用及び債務は、年金資産の運用収益率や割引率等の数理計算上の前提に基づいて計算されています。

 しかしながら、年金資産の運用環境の悪化により前提と実績に乖離が生じた場合等は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

④非金融資産の減損

 当社グループの連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産、のれん及び無形資産等の非金融資産の減損について、今後、収益性の低下及び公正価値の変動等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損損失が発生する可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 特に、電子セグメントに含まれているディスプレイ事業においては、主に液晶ガラス基板の需要の回復遅れや、円安・原燃材料高騰によるコスト増の影響により営業損益が悪化しており、非金融資産が属する資金生成単位に減損の兆候が認められています。また、ライフサイエンスセグメントに含まれているバイオ医薬品原薬及び遺伝子・細胞治療医薬品の開発製造の受託を営むAGC Biologics, Inc.については、主にバイオベンチャーへの資金流入減による市場全体の一時的な需要の低迷及び新規ラインの立ち上げ遅延等により営業損益が悪化しており、非金融資産が属する資金生成単位に減損の兆候が認められています。いずれの資金生成単位についても、減損テストを実施した結果、使用価値を基礎とした回収可能価額が、資金生成単位の帳簿価額を上回ったことから、減損損失は認識していませんが、今後の市場の経済状況等の影響を受ける可能性があります。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社グループは、財務健全性を維持しながら、コア事業から創出されたキャッシュを今後の成長に必要な戦略事業等への設備投資、M&A、研究開発等に優先的に活用致します。

 株主の皆様への還元につきましては、当期連結業績や将来の資金需要等を総合的に勘案しながら、連結配当性向
40%を目安とした安定的な配当を継続致します。また、資本効率の向上に資する株主還元策として機動的に自己株式の取得を行う方針としております。

 当期の期末配当金は、当期の業績、経営環境、今後の事業展開等を勘案し、1株当たり105円としました。

 中間配当金を含めた当期の年間配当金は、1株当たり210円となりました。

 なお、次期(2024年12月期)より株主の皆様への還元方針を変更し、株主還元の指標として株主資本配当率(DOE)を採用のうえ、DOE3%程度を目安とした安定的な配当を継続することと致しました。また、自己株式の取得につきましては、他の投資案件との比較、資本効率や財務状況を勘案しながら総合的に判断する方針と致します。

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
 なお、定款に「当会社は、取締役会の決議によって、毎年6月30日現在において株主名簿に記載又は記録された最終の株主又は登録株式質権者に対して、会社法第454条第5項に定める剰余金の配当(以下「中間配当金」という。)を行うことができる。」旨を定めております。


 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年8月2日

22,666

105

取締役会決議

2024年3月28日

22,278

105

定時株主総会決議