リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 市場環境に関するリスクについて
① 経済・市場環境による顧客の投資意欲等の影響について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社では、公共系及び金融系のシステム保守・開発を主要な事業として展開しているため、政府及び自治体の関係機関及び国内外の金融関連のプレーヤーによるIT投資動向に一定の影響を受けます。当社は、市場の動向について専門的な機関を通じて的確に情報を把握し、「直接的な対応策」と「予備的対応策」、事態が生じた場合の影響を「最小限に留めるための対応策」といった「三位一体」でのリスク対応を講じるよう努めておりますが、経済情勢の急激な変化及び国内外の著しい景気低迷等により、顧客企業のIT投資意欲が減退した場合は、新規顧客開拓の低迷や既存顧客からの受注減少等により、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合他社による影響について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社では、ユーザー及びシステムインテグレーターの技術要望を捉え、高品質なソフトウェアやサービスの提供に努めておりますが、経済産業省「情報通信業基本調査」では、当社が属する受託開発ソフトウェア業の企業数は、情報サービス業に属する企業の約5割を占めております。大小多数の事業者が存在しており、また、システム開発の下流工程においては、労働集約的になりやすく、参入障壁も相対的に低くなることで市場において当該事業者との競合が生じております。国内企業のIT化推進等に伴い、業界全体における開発需要は堅調であるものの、オフショア開発等による価格競争、また、開発需要の減少や新規参入増加等による競争が激化した場合、あるいは競合他社の技術力やサービス力の向上により当社のサービス力が相対的に低下した場合には、受注減少、保守・運用契約の解約等により、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 技術革新による影響について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社が属する情報サービス産業は、技術革新のスピードが速くかつその変化は著しい状況にあります。デジタルトランスフォーメーション(DX)の到来に合わせ、公共・金融インフラ市場においても新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社においては、最新の技術動向や環境変化を常に把握し、経営レベルで新規技術の導入を迅速に実行に移せる意思決定が行えるよう体制構築に努めておりますが、当社の想定を超える技術革新や新サービスの急速な普及等による著しい環境変化等が生じた場合、当該変化に当社が対応することができず、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業に関するリスクについて
① 人材の確保について
発生可能性:大、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社は高度な専門性と技術力によるサービスの提供を行う管理者及びエンジニアを安定的に確保し、常に実務能力の向上を目的として人材育成を行うことは非常に重要であります。これに対して人事担当者を増強し、精力的な採用活動を展開しております。人材不足を生じさせないよう魅力的な職場環境と雇用待遇の整備、新卒及び即戦力であるキャリア採用を促進するための対応策を講じ、教育機関と連携し社内研修制度、社外研修制度、資格奨励金制度等を設け、戦力の維持・向上を図っておりますが、労働生産人口減少に対する対策の不備や著しい人材の流動化に伴う人員流出、技術・知識の属人化によるノウハウの流出により当社が必要とする十分な人材を確保することができない場合、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 協力会社の確保について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社におけるシステム開発業務等については、開発業務の効率化、顧客要請への迅速な対応、外部企業の持つ専門性の高いノウハウ活用等を目的として、業務の一部について当社社員の管理統括のもと、パートナーと位置づける協力会社への外部委託を活用しております。現時点では優秀な協力会社との良好な連携体制を維持しており、今後も協力会社の確保及びその連携体制の強化を積極的に推進していく方針ではありますが、協力会社から十分な人材を確保できない場合には、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 協力会社との取引について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、外部の技術力やノウハウ等を活用するため、システム開発業務の一部を当社外の企業に委託するなど外部発注を行っております。しかしながら、IT需要の高まりによる発注コストの増大、外部発注先に起因する納期遅延や品質低下に加え、ヒューマンエラー等による情報漏えい事故の発生、同業他社との競合により優秀な外部発注先が確保できない場合、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
それに対し、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」の法令遵守はもちろんのこと、外部発注先の技術力やコスト、財務状況等の信頼性などを総合的に勘案した選定等協力会社との取引に関するリスクの低減に努めております。
④ 品質管理に関するリスク
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社が開発し、納品したシステムに予期せぬ欠陥が発生した場合には、社会的信用の低下やその後の受注減少等に繋がり、更に訴訟が提起される事態に発展することも想定されます。このような場合には、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 納期遅延によるリスク
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社のシステム開発に関しては、納期内にシステムを完成する責任を負っており、開発工程管理や品質管理を徹底しております。しかしながら想定外の仕様取り込み、問題発生により納期遅延等の損害賠償や想定を超える原価発生により、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。一方、顧客の計画変更により、当初予定していた契約が翌期以降に延期されることによる期ずれにより、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 不採算プロジェクトの発生について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社ではプロジェクトが不採算に陥る可能性について、リスクを事前に評価し、軽減する仕組みが機能しております。当社のナレッジベースに蓄積された豊富なデータをもとに単なるエンジニアのキャリアと経験だけに依存するだけではなく、どのようなチーム体制、役割、作業品質、許容される事項などが整理され、マネジメントリスクをコントロールしながら開発作業に着手することになります。このようなプロセスを更に強固なものとするために専門の品質保証担当を創設し、同業他社に対するコスト競争力を高め、継続的に不採算案件ゼロを維持して参りますが、予測できない要因により開発工程での品質問題や工期問題の発生及び納品後のシステム運用段階での不具合等が発見される場合があります。このような状況により不採算プロジェクトが発生した場合は、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 大口顧客への依存度について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社の当事業年度の売上高は、85.9%が株式会社NTTデータ・アイを中心とするNTTデータグループであり、公共系事業の売上のほとんどがNTTデータグループからの受注によるものであります。この傾向は当社の創業時から変わっておらず、日本電信電話公社が民営化されました1985年に、株式会社NTTデータの前身であります日本電信電話株式会社データ通信事業本部の業務委託を受けた日本電気株式会社からの再委託により、旧大蔵省(現財務省)の輸出入・港湾関連情報処理システムの開発業務を受注して以降、現在に至るまで、官公庁、政府機関のほか、一般法人等のシステム開発業務の委託を継続して受注して参りました。
こうした特定業種、取引先との強い関係は当社の強みである反面、経済情勢の変化によりNTTデータグループの事業運営が影響を受け、方針、開発計画等が変更を余儀なくされた場合、当該取引先への売上依存は、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社としては、現在の公共系事業のシステム開発の基盤をより一層強化していく方針です。具体的には、各省庁や地方自治体の入札情報を細かく収集して可能な限り応札することで、受託実績のない官公庁、政府機関、地方自治体のシステム開発を開拓していき、公共系事業のすそ野を広げて参ります。
また、金融・法人系事業においても、NTTデータグループ以外の取引先との取引拡大、強化を図って参ります。
⑧ 顧客情報等漏洩のリスクについて
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社では、業務に関連して顧客や取引先等の個人情報及び機密情報を取り扱う場合があります。当社では、情報管理に関する全社的な取り組みを講じております。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)やプライバシーマークの認定取得を行い、各部門担当者と管理者で構成される情報セキュリティ委員会を設置し、従業員教育、各種ソフトウェアの監視、情報資産へのアクセス証跡の記録等各種の情報セキュリティ対策を講じ、個人情報を含む重要な情報資産の管理を実施し、情報漏洩のリスクの回避を図っております。しかしながら、当社又は協力会社より情報の漏洩が発生した場合は、顧客からの損害賠償請求や当社の信用失墜等により、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 情報システムのトラブルについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社では、事業の特性上、多数のコンピュータ機器を利用しており、専門業者であるデータセンターの利用等により、データの保全、電源確保、対不正アクセス等の対策を講じております。しかしながら、大規模な災害・停電、システムやネットワーク障害、不正アクセスやコンピュータ・ウイルス等による被害が発生した場合、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 長時間労働の発生について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
システム開発プロジェクトにおいては、当初計画にない想定外の事象が発生し、品質や納期を厳守するために長時間労働が発生することがあります。特に、当社が推進している一括請負の案件は、品質確保や納期の責任を負担することから、こうした事象が発生するリスクが高まります。当社では、日頃より適切な労務管理に努めるとともに、このような事象の発生を撲滅すべくプロジェクト監視をしております。しかしながら、やむを得ない要因によりこのような事象が発生した場合は、従業員の健康問題や労務問題に発展し、システム開発での労働生産性が低下する等により当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) その他のリスクについて
① 内部管理体制について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社では、企業価値の持続的な増大を図るためにコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると認識しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の業績及び事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しており、組織規模や環境に応じた管理部門の人数増員を図り、業務の自動化、効率化、各種研修などの教育により、管理体制の充実に努めております。
② 経営者依存リスクについて
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社の代表取締役である奥山宏昭は、当社の創業メンバーであり、設立以来当社の経営方針、経営戦略、資金調達等、事業活動の推進にあたり重要な役割を担ってまいりました。
当社は、2022年12月21日付で東京証券取引所TOKYO PRO Marketに上場するにあたり、監査役会の設置、社外取締役1名、社外監査役2名の配置等ガバナンス体制を強化、役員の職務執行責任の強化や職務権限の明確化、権限移譲を進め、創業者に過度に依存しない経営体制の整備に努めて参りましたが、体制の整備の過程において、同氏が職務を遂行できなくなるような不測の事態が生じた場合、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社では「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)」を遵守し、労働者派遣事業者として監督官庁への必要な届出を行っております。法令順守を徹底し、当該法的規制等に抵触する事実はないものと認識しておりますが、今後何らかの理由により派遣元事業主としての欠格事由及び当該許可の取消事由に該当し、業務の全部もしくは一部の停止処分を受けた場合、若しくは新たな許可を取得することができなくなった場合、又は法的な規制が変更になった場合等には、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 知的財産権について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社が行うシステム開発等において、他社の所有する著作権及び特許権を侵害しないように十分に啓蒙活動を行い、常に注意を払って事業展開しておりますが、当社の認識の範囲外で他社の所有する著作権及び特許権を侵害する可能性があります。このように、第三者の知的財産権を侵害してしまった場合、当社への損害賠償請求、信用の低下により、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 自然災害等による影響について
発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中~大
地震、台風、津波等の自然災害、火災、停電、各種感染症の拡大等が発生した場合、当社の事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、当社の主要な事業拠点である首都圏において大規模な自然災害等が発生した場合には、正常な事業運営が行えなくなる可能性があり、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社では、自然災害等が発生した場合に備え、体制を整備しておりますが、自然災害等による人的、物的損害が甚大である場合は、事業の継続そのものが不可能になる可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要政策として認識し、業績の状況、取り巻く環境及び中長期を展望した財務体質を勘案し、継続的かつ安定的に配当を実施することを基本方針としております。
当社は中間配当と期末配当の年2回、剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
なお、当事業年度の配当につきましては、当期の業績、中長期的な見通し、投資計画及び資金状況並びに株主の皆様への利益還元等を総合的に考慮した結果、2025年3月27日開催の定時株主総会において1株につき18円、配当総額14,472千円とさせていただきました。
今後の配当につきましては、財政状態、経営成績及び今後の事業計画を勘案し、内部留保とのバランスを図りながらその実施を継続する所存であります。