2024年6月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)事業環境について

①業界や市場動向について(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループはIT業界においてプラント・建設業界の課題解決DX、ソフトウエア開発及びサービス提供を主たる業務としております。

建設業界のIT投資額については、日本国内の建設投資見通し額約74兆円(国土交通省総合政策局情報政策課建設経済統計調査室「2024年度建設投資見通し」より)に対し、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書(2024)」を基に当社が見積もった建設・土木業界における売上高に占めるIT予算比率を乗じることで、約1挑円程度と当社では試算しております。建設業界は2023年度よりBIMの原則適用、2024年より時間外労働の上限規制が始まり、生産性を向上させるため、IT投資は継続的な成長が見込まれております。

当社グループは、高い数学力や深い業界知識を必要とするプラント・建設業界の課題解決DX、ソフトウエア開発及びサービス提供を行うことによって、建設業界のIT投資動向に左右されにくい事業の構築に努めておりますが、国内外の経済情勢や景気動向が変化し、企業がIT投資額を大幅に縮小した場合、当社グループの主たる顧客であるプラント・建設業界の市況が悪化した場合、あるいは予期せぬ事態等により市場成長率の鈍化又は市場規模が縮小する事態となった場合には、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②競合他社について(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:中)

当社グループはプラント・建設業界の課題解決DX、ソフトウエア開発及びサービス提供を中心に事業展開をしてきており、数多くの競合企業が存在しております。

当社グループは、プラント・建設業界の深い知識を有するプログラマーの高い技術力を背景に競合他社との差別化を図っており、コンサルティング力や技術力の強化に努め競争優位性の確保に努めておりますが、当社グループの競争力が低下した場合には、受注が減少し、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③技術革新への対応について(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:中)

IT業界は、技術革新や顧客ニーズの変化のスピードが非常に速く、それに伴い、常に新しい技術やサービスが生み出されております。当社グループの事業においては技術力が競争力の源泉であるため、技術革新への対応が遅れることは当社にとって重大なリスクになると考えております。従いまして、技術革新に迅速に対応できるよう、常に市場動向を注視し技術革新への対応を講じることにより、今後も競争力のあるサービスを提供できるように取り組んでおります。また優秀なITエンジニアの確保や社内勉強会の開催等による社員のスキルアップにも注力しております。

しかしながら、例えば、AI技術が発達し、当社の採用するアルゴリズムより高速に計算が可能となる技術が実用化された場合等、予想以上の急速な技術革新や代替技術・汎用的な競合商品の出現等により、当社グループのサービスが十分な競争力や付加価値を確保できない場合には、新規受注の減少や既存顧客の離反を招来し、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④システムリスクについて(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループは事業及び社内管理の基盤をインターネット通信網に依存しており、通信ネットワーク機器の故障及び自然災害や火災・事故等によるシステム障害を回避すべく、稼働状況の監視、定期的なバックアップの取得等の未然防止・回避策を実施しております。

しかしながら、大地震等の自然災害が発生した場合の、電力供給やインターネットアクセスの制限等、コンピューターウイルスやハッキングなどの外的攻撃やソフトウエアの不具合、その他予測できない重大な事象が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業内容について

①千代田化工建設株式会社との関係性について(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:中)

当社の関連会社である株式会社PlantStreamは、千代田化工建設株式会社と設立したジョイントベンチャーであります。現在、千代田化工建設株式会社と当社の関係は良好でありますが、何らかの要因による合弁関係の悪化等の理由により、株式会社PlantStreamの運営及び当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②特定の販売先への依存について(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:中)

当社グループにおける株式会社PlantStream及び高砂熱学工業株式会社に対する売上高は高い水準にあります。

 

(販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合)

相手先

前連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社PlantStream

559,723

27.7

711,603

24.2

高砂熱学工業株式会社

911,850

45.1

1,552,850

52.8

(注)株式会社PlantStreamに対する販売実績は、持分法適用による未実現損益の消去後の金額であります。

 

株式会社PlantStreamは当社の関連会社であり、複数年にわたり安定的な取引を行っております。また高砂熱学工業株式会社とはプロダクト共創開発が順調に進んだことで、取引が拡大しております。

当社グループでは当該2社とのソフトウエア開発取引を継続する一方で、他の既存顧客との取引拡大や新規顧客の獲得をすることにより、当該2社への依存度は徐々に低下していくものと考えております。しかしながら、当該2社への依存度が想定どおり低下せず、当該2社との取引が縮小した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③先行投資から得られる効果が期待どおりに実現しないリスクについて(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:大)

当社は、千代田化工建設株式会社と株式会社PlantStreamを、日清紡ホールディングス株式会社と株式会社Arent AIを設立しており、株式会社PlantStreamと株式会社Arent AIに対する当社出資額は株式会社PlantStreamに対し1,699,765千円、株式会社Arent AIに対し1,800千円であります。また株式会社PlantStream及び株式会社Arent AIは設立後間もないため、既に赤字を計上中で、数年先までは赤字の計画を見込んでおります。

当社は、その事業投資において多額の資本拠出を行う場合や、投資先に対する貸付・保証等の信用供与を行う場合があります。当社は、社内基準やルールに基づく事業計画の事前検討や精査やモニタリングを行い損失の回避や軽減に努めておりますが、事業環境の変化等により、投資先の収益が当初計画どおりに上がらない、業績の停滞等に伴い投資にかかわる損失が発生する、又は投融資の追加が必要となる事態に直面する、などのリスクがあるため、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、重要な関連会社である株式会社PlantStreamの会社概要及び要約財務情報は以下のとおりであります。

株式会社PlantStreamの会社概要(2024年6月30日現在)

事業目的

ソフトウエアの開発、アップデート及び販売事業及び前号に附帯する一切の事業

株主構成

千代田化工建設株式会社50% 当社50%

役員構成

取締役4名 監査役2名

(千代田化工建設株式会社と当社からそれぞれ代表取締役1名、取締役1名、監査役1名を派遣しております

従業員の状況

16名(兼務出向により、8.8人月)

千代田化工建設株式会社から4名(3.1人月)、当社から8名(5.7人月)を出向派遣しております。

 

 

株式会社PlantStreamの要約財務情報

 

前連結会計年度

当連結会計年度

 

2023年6月期

2024年6月期

流動資産合計

固定資産合計

 

流動負債合計

固定負債合計

 

純資産合計

 

売上高

税引前当期純損失(△)

当期純損失(△)

861,085

1,625,808

 

278,412

 

2,208,481

 

220,947

△553,765

△554,715

362,111

1,696,747

 

387,707

 

1,671,150

 

464,626

△536,380

△537,330

当社は、株式会社PlantStreamの黒字化に向けて、営業人員の増強や空間自動設計システム「PlantStream®」のマーケティング強化、更なる市場開拓のための追加開発を行っていますが、黒字化に向けた対策が計画どおりに進捗しない場合、株式会社PlantStreamにおけるソフトウエアの減損損失の計上により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④株式会社PlantStreamに権利が帰属する知的財産権の利用について(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、当社が株式会社PlantStream向けに開発し、同社に権利が帰属するプロセスプラント、医薬品プラント、食品プラント、洋上プラント、船舶プラント、発電プラント等の各種プラントの配管、ダクト、ケーブル等自動ルーティングプログラムを含む産業プラントの空間自動設計システムに関連する特許権、意匠権、商標権、実用新案権、又はそれらを受ける権利、著作権及びノウハウ(以下「本知的財産権」という。)を利用し、第三者に対するソフトウエア開発を行う場合があります。その際、当社は、当該第三者に対して、本知的財産権の利用上の制約をあらかじめ説明し、同社に対しても事前に本知的財産権の第三者への利用可能性について説明し、利用可否についての協議を行った上で、あらためて利用許諾を得ることとしております。しかしながら、当該第三者のために開発するソフトウエアが同社のソフトウエアと競合するものと最終的に判断された場合は、利用許諾が得られず、当社の事業が制限されるため、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤情報セキュリティについて(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループでは、クライアント企業のシステム開発を手掛けているため、顧客側で保有している機密情報に触れる場合があります。機密情報の取り扱いについては、情報システム管理規程、個人情報取扱規程等を整備し、定期的に社内研修を実施することにより周知徹底を図り、適切な運用を義務づけております。

しかしながら、このような対策にも関わらず当社グループの人的オペレーションのミス、その他予期せぬ要因等により情報漏洩が発生した場合には、当社グループが損害賠償責任等を負う可能性や顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制について

①知的財産について(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

ソフトウエア業界においては、多くの特許出願がなされており、当社グループにおいても新技術に対して積極的に特許出願を行っております。今後も数多くの特許出願が予測され、あわせて特許権侵害等の問題が生じることが考えられます。

当社グループでは、製品開発において特許権の侵害等がないかチェックを行っております。また、リスク管理委員会・コンプライアンス委員会の活動を通して課題と対応策の検討を行っております。しかしながら、このような対策にも関わらず、第三者と知的財産権に関する問題が発生した場合、顧問弁護士及び弁理士と対応を協議していく方針ですが、案件によっては解決に時間と費用を要し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②訴訟について(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、事業を展開するなかで、当社グループが提供するサービスの不備等により、何かしらの問題が生じた場合等、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟の提起がなされる可能性があります。その場合、当該訴訟に対する防御の為に費用と時間を要する可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損され、また損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)社内組織について

①内部管理体制について(発生可能性:小、発生する時期:特定時期なし、影響度:小)

当社グループは、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、更に法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②人材の採用・育成について(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループは、今後急速な成長が見込まれる事業の展開や企業規模の拡大に伴い、継続的に幅広く優秀な人材を採用し続けることが必須であると認識しております。質の高いサービスの提供や競争力の向上に当たっては、開発部門を中心に極めて高度な技術力・企画力を有する人材が要求されていることから、一定以上の水準を満たす優秀な人材を継続的に採用すると共に、成長ポテンシャルの高い人材の採用及び既存の人材の更なる育成・維持に積極的に努めていく必要性を強く認識しております。そのため、当社では採用体制の強化、人材育成計画・人事評価制度の向上を図る方針であります。

しかしながら、特にエンジニア等の一定の人材の確保に関する競争は激しく、当社グループの採用基準を満たす優秀な人材の確保や人材育成が計画どおりに進まなかった場合、コアメンバー、熟練エンジニアの退職又は人材確保のためにより高額の報酬を支払うこととなった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③特定の人物への依存に係るリスクについて(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

当社の代表取締役社長である鴨林広軌は、当社の経営方針や事業戦略の立案・決定及び遂行において、重要な役割を果たしております。当社グループでは、取締役会やその他会議体において役員及び従業員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。

しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の経営執行を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)その他

①株式の希薄化について(発生可能性:大、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:小)

当社は、2019年12月に、役職員等に対して会社業績の向上への意識を強くさせるため、新株予約権信託を用いたインセンティブプランを導入する等、新株予約権の発行を行っております。この新株予約権が行使された場合は、新株式が発行され、当社の1株当たりの株式価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

なお、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は702,600株であり、発行済株式総数6,205,380株の11.3%に相当しております。

 

②資金使途について(発生可能性:小、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:中)

株式上場時における公募増資による調達資金の使途については、当社グループの事業のさらなる拡大のため、広告宣伝費及び事業成長のための採用費用、人員増による人件費、自社プロダクトの開発費などに充当する予定であります。しかしながら、上述に記載したように様々なリスク・不確実性のなかで事業運営を行っており、事業環境が変化することも考えられるため、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定どおりの投資効果を得られない可能性があります。

また、市場環境の変化により、計画の変更を迫られ調達資金を上記以外の目的で使用する可能性が発生した場合には、速やかに資金使途の変更について開示を行う予定であります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主還元を適切に行っていくことが重要であり、剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切に実施していくことが今後の経営課題であると認識しております。しかしながら、現時点では事業が成長段階にあることから、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、なお一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えており、配当を行っておりません。

 将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 なお、当社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項について、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議により定めることができる旨定款に定めているほか、会社法第454条第5項に規定する中間配当制度を採用しており、取締役会決議により、毎年12月31日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款で定めております。