2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生を未然に防ぎ、万が一発生した場合でも適切に対処するよう努める方針であります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、当社グループの投資に関連するリスクを全て網羅するものではありません。

(1)当社グループの再編等について

 当社グループは、2010年7月にベトナム最大のコンクリートパイル製造・施工会社であるPhan Vu Investment Corporationと資本提携及び業務提携を締結、持分法適用関連会社化を経て2013年12月には子会社化、2015年6月にはミャンマーにおいてVJP Co., Ltd.を共同出資で設立するなど、当社グループの競争力を強化するため、同業他社との提携や同業他社への資本参加等を積極的に推進しております。また、2015年10月には国内外での更なる積極的な事業展開を見据えて各国に事業子会社を配置する持株会社体制に移行しております。当社は、今後も引き続き、成長著しいアセアン地域における基礎建設関連事業を推進するため、こうしたグループ拡大策を検討し取り組んでいく方針ですが、当社が期待する効果が実現する保証はありません。

(2)製品・工法開発について

 当社グループは、他社との差別化を図り付加価値を高めるため、永年にわたり技術やノウハウを蓄積してまいりました。また、総合基礎建設業として地域・環境面への社会に貢献するという企業行動基準から、優秀な技術者の育成や杭材及び杭施工法の開発に力を注いでまいりました。これらの製品や施工法の開発及び公的な評定取得や国土交通省の認定取得には多くの時間とコストが必要とされますが、これらの投資が常に迅速に回収される保証はありません。

 また、当社グループは製品・工法開発にあたり知的財産(商標権、特許権、意匠権等)の調査を行い、他者の権利に抵触する製品・工法開発を避ける努力をしております。しかしながら他者が知的財産の申請を行ってから公表されるまでに一定の時間を要することや、権利が確定するまでに時間がかかることがあり、当社グループが開発し製造・販売した製品や工法が他者の知的財産に抵触する可能性を排除することができません。その場合、他者から営業権や知的財産権の侵害と損害賠償請求されることも想定され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)業界の寡占状況について

 当社グループが属するコンクリートパイル業界において、他社との差別化を図るためには、上記で述べたように優秀な技術者の育成のみならず、製品及び施工法の開発や認定工法を取得することが重要性を増しているものと認識しております。このため、これら多額の開発費負担を抑えるため、認定工法の供与やコンクリート杭の相互供給などが行われるものと考えられると同時に、これらの費用負担が可能な大手企業による再編と寡占化が進みつつあります。当社グループは、業界大手企業として、業界再編と寡占化の状況に対して必要な施策をとり主導的な役割を果たしていく方針でありますが、当該方針が実現する保証はありません。また、寡占化の進展に伴い、当社グループが想定する以上の価格競争が激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4)原材料等の市況変動の影響について

 当社グループは、プレストレスト高強度コンクリートパイルの製造・施工を主力業務としております。その原材料にはセメント、PC鋼棒等を使用しており、仕入先からの価格引き上げ要請により変動し、コストが上昇することもあります。当社グループといたしましては、随時市況価格を注視しながら価格交渉を行い仕入価格を抑制しつつ、原価上昇分を販売先へ転嫁する努力を行っておりますが、価格動向によっては製造原価及び工事原価高により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)市場環境について

 当社グループが扱うコンクリートパイルの製造・施工業務は、建築物の基礎工事に関連する事業であり、当然ながら建設投資の多寡が受注に影響します。当社グループは、同業他社と比較して相対的に公共投資関連事業への依存度は低いものと認識しておりますが、民間投資も含めた住宅投資や設備投資等の動向によっては受注が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)法的規制について

 当社グループの主たる事業は建設業に属しており、建設業法第3条第1項及び第2項により法的規制を受け、「建築基準法」に準拠するように求められております。主要な子会社であるジャパンパイル㈱は建設基礎杭の販売・施工にあたり、以下のとおり許認可及び登録をしております。

 当社グループは、これらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現状において当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかし、法令違反等によりその許認可等が取り消された場合には、当社グループの運営に支障をきたし、財政状態及び経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また、2007年6月に実施された建築確認制度の変更のように、これらの規制の改廃や新たな法的制度が設けられる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

許認可等の名称

有効期限

取消事由等

建設業許可

(特定建設業許可)

土木工事業

(大臣許可第21607号)

2025年5月

建設業法第29条・第29条の2・第29条の4、第28条第3項及び第5項

 

とび・土工工事業

(大臣許可第21607号)

2025年5月

 また、当社グループは、国内及びアセアン地域において基礎工事関連事業を行っており、国内においては上記の建設業関連の法令に加えて、会社法、金融商品取引法、環境関連法令、各種法令のほか、海外においては各国の法令・規制の適用を受けております。これらの法令遵守及び社会規範の遵守をグループの全役職員に浸透させるべく、企業行動基準を作成して徹底を図っておりますが、万が一、コンプライアンス違反が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの棄損により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)施工物件の瑕疵について

 当社グループは、日本全国及びアセアン地域において基礎工事を行っており、工事の際には十分な地盤調査、基礎設計、施工方法等の事前検討を行っておりますが、地盤は様々な土質で構成され、また予期せぬ障害物が現われることもあり、予見できない瑕疵によって施工品質の悪化や施工期間の延長が生じる可能性があります。瑕疵に伴う損害賠償請求等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)労災事故災害について

 当社グループは、各地で年間数千件もの基礎工事を行っており、その作業現場は重機に囲まれた屋外作業が中心となっているため、他の産業に比べ重大な労災事故が発生する危険性が高いものと認識しております。当社グループとしては、現場の安全教育の徹底や定期的なパトロールの実施等により事故の発生防止に全力を挙げております。また、事故が発生した場合の金銭的な損失に備え、各種損害保険に加入しておりますが、仮に死亡事故等の重大災害が発生した場合は、人的損失はもちろんのこと、それに伴う社会的信用の失墜、補償等を含む災害対策費用、工期の遅れによる収益の悪化等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(9)海外事業について

 当社グループは、アセアン地域において関係会社を通じて基礎工事関連事業を展開しておりますが、関係会社が所在している国における政治・経済状況の変化、法律・税制の改正、外国通貨レートの変動の影響などによって、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(10)自然災害等について

 当社グループは、国内及びアセアン地域において事務所、工場並びに施工現場を展開しており、風水害、地震、津波等の大規模自然災害の発生により、建物・設備や従業員への直接的な被害のほか、通信システム、原材料等の供給網の遮断等による間接的な被害を受ける可能性があります。また、新型コロナウイルス等感染症の蔓延により事業の中断や延期が発生する可能性もあります。このような自然災害や新型コロナウイルス等感染症の被害が発生した場合、被害復旧にかかる費用や中断・延期による損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

配当政策

3【配当政策】

 当社の利益配分につきましては、持続的な企業価値向上・事業展開とともに、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題のひとつと位置付け、安定した配当実施を基本方針としています。なお、当社は、2024年5月10日開催の取締役会において、株主還元方針の変更を決議いたしました。

変更前

安定的な配当を前提とします。(連結ベースの配当性向30%程度を目処)

変更後

安定的な配当方針を前提に、連結ベースの総還元性向50%を目処とします。還元は主として普通配当によるものとしますが、当社の利益状況や自己資本状況を総合的に勘案し、特別配当や自己株式取得などの手法も活用いたします。

 内部留保資金につきましては、将来にわたる株主の利益確保のため、当社グループの今後の事業展開に有効に活用していく所存であります。

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、取締役会であります。

 当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき、1株当たり40円の配当(うち中間配当15円)を実施することを決定しました。この結果、当事業年度の配当性向は97.3%となりました。

 当社は、「会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年10月27日

571

15.0

取締役会

2024年5月24日

952

25.0

取締役会