事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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製鉄 | 7,874,377 | 88.6 | - | - | - |
エンジニアリング | 400,474 | 4.5 | - | - | - |
ケミカル&マテリアル | 269,128 | 3.0 | - | - | - |
システムソリューション | 339,376 | 3.8 | - | - | - |
事業内容
3 【事業の内容】
当社グループ(当社及び当社の関係会社)の事業体制は、製鉄事業、エンジニアリング事業、ケミカル&マテリアル事業及びシステムソリューション事業です。
なお、これら4事業は本報告書「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 事業セグメント」に掲げるセグメント情報の区分と同一です。
2025年3月31日現在、当社グループは、当社及び419社の連結子会社並びに110社の持分法適用関連会社等により構成されます。
各事業を構成している当社及び当社連結子会社において営まれている主な事業の内容及び位置づけは次のとおりです。なお、主要な関係会社につきましては、本報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載しています。
[製鉄事業]
条鋼(鋼片、軌条、鋼矢板、H形鋼、その他形鋼、棒鋼、バーインコイル、普通線材、特殊線材)、鋼板(厚板、中板、熱延薄板類、冷延薄板類、ブリキ、ティンフリースチール、亜鉛めっき鋼板、その他金属めっき鋼板、塗装鋼板、冷延電気鋼帯)、鋼管(継目無鋼管、鍛接鋼管、電縫鋼管、電弧溶接鋼管、冷けん鋼管、めっき鋼管、被覆鋼管)、交通産機品(鉄道車両部品、型鍛造品、鍛造アルミホイール、リターダ、環状圧延品、鍛鋼品)、特殊鋼(ステンレス鋼、機械構造用炭素鋼、構造用合金鋼、ばね鋼、軸受鋼、耐熱鋼、快削鋼、ピアノ線材、高抗張力鋼)、鋼材二次製品(スチール・合成セグメント、NS-BOX、メトロデッキ、パンザーマスト、制振鋼板、建築用薄板部材、コラム、溶接材料、ドラム缶、ボルト・ナット・ワッシャー、線材加工製品、油井管付属品、建築・土木建材製品)、銑鉄・鋼塊他(製鋼用銑、鋳物用銑、鋼塊、鉄鋼スラグ製品、セメント、鋳物用コークス)、製鉄事業に付帯する事業(機械・電気・計装関係機器の設計・整備・工事施工、海上運送、港湾運送、陸上運送、荷役、倉庫業、梱包作業、材料試験・分析、作業環境測定、技術情報の調査、施設運営管理、警備保障業、原料決済関連サービス、製鉄所建設エンジニアリング、操業指導、製鉄技術供与、ロール)、その他(チタン展伸材、食料品、繊維品、電力、不動産、サービスその他)
[エンジニアリング事業]
各種プラント・施設、エネルギー導管、水道設備、産業機械・装置、建築物、建築部材・装置、鋼構造物等の設計・製作・販売・施工・監理、プラント・施設等の運転・運営・維持管理、廃棄物等の処理・再生資源化事業、電気・ガス・熱等の供給事業
[ケミカル&マテリアル事業]
ピッチコークス、ピッチ、ナフタリン、無水フタル酸、カーボンブラック、スチレンモノマー、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、無接着剤FPC用銅張積層板、液晶ディスプレイ材料、有機EL材料、UV・熱硬化性樹脂材料、圧延金属箔、半導体用ボンディングワイヤ・マイクロボール、半導体封止材用フィラー、炭素繊維複合材、排気ガス浄化用触媒担体、多孔質炭素材料
[システムソリューション事業]
コンピュータシステムに関するエンジニアリング・コンサルティング、ITを用いたアウトソーシングサービスその他の各種サービス
[事業系統図]
以上述べた事項を事業系統図によって示すと、次のとおりです。(2025年3月31日現在)
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当期における当社グループの経営成績の状況の概要は、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。
② 当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー
当連結会計年度末における資産、負債、資本については、下記のとおりです。
連結総資産は10兆9,424億円と、前連結会計年度に比べて2,278億円増加しました。負債は5兆390億円と、前連結会計年度に比べて3,196億円減少しました。資本は5兆9,033億円と、前連結会計年度に比べて5,475億円増加しました。なお、当期末の親会社の所有者に帰属する持分は5兆3,833億円となり、有利子負債は当期末2兆5,074億円となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は0.47倍(劣後ローン・劣後債資本性調整後0.35倍)となりました。
(総資産)
現金及び現金同等物は、前期末(4,488億円)から2,236億円増加し、当期末6,725億円となりました。これは、高水準の事業利益による営業活動キャッシュ・フローの収入等によるものです。
営業債権及びその他の債権は、前期末(1兆5,879億円)から1,575億円減少し、当期末1兆4,304億円となりました。これは、売掛金の減少等によるものです。
棚卸資産は、前期末(2兆2,766億円)から775億円減少し、当期末2兆1,990億円となりました。これは、原料価格下落等によるものです。
有形固定資産は、前期末(3兆3,804億円)から2,551億円増加し、当期末3兆6,355億円となりました。これは、名古屋製鉄所への次世代熱延ライン、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)及び九州製鉄所八幡地区への電磁鋼板設備等、戦略商品の能力・品質向上対策への投資を含め競争力優位な設備への選択投資を実行したこと等によるものです。
無形資産は、前期末(1,778億円)から853億円増加し、当期末2,632億円となりました。これは、豪州Blackwater炭鉱の権益の20%を取得したこと等によるものです。
持分法で会計処理されている投資は、前期末(1兆5,379億円)から624億円増加し、当期末1兆6,003億円となりました。これは、持分法による投資利益(1,269億円)等によるものです。
非流動資産のその他の金融資産は、前期末(6,759億円)から2,145億円減少し、当期末4,613億円となりました。これは、政策保有株式の売却を主体とした資産圧縮を実行したこと等によるものです。
(負債)
有利子負債は、前期末(2兆7,116億円)から2,042億円減少し、当期末2兆5,074億円となりました。これは、劣後特約付シンジケートローンや公募劣後特約付社債の発行等による増加があった一方で、転換社債型新株予約権付社債の新株予約権の行使等による減少があったこと等によるものです。
営業債務及びその他の債務は、前期末(1兆8,907億円)から2,193億円減少し、当期末1兆6,713億円となりました。これは、買掛金の減少等によるものです。
その他の非流動債務は、前期末(3,497億円)から712億円増加し、当期末4,209億円となりました。これは、2021年3月5日に公表した中長期経営計画に基づく生産設備構造対策の推進に伴い、東日本製鉄所鹿島地区の鉄源1系列・厚板ライン・大形ライン、並びに関西製鉄所和歌山地区の第4コークス炉等の廃止決定に基づき発生する解体費用等を計上したこと等によるものです。
(資本)
資本金及び資本剰余金は、前期末(8,187億円)から3,292億円増加し、当期末1兆1,479億円となりました。これは、転換社債型新株予約権付社債の新株予約権の行使等があったことによるものです。
利益剰余金は、前期末(3兆5,255億円)から2,943億円増加し、当期末3兆8,199億円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益(3,502億円)等による増加があった一方で、配当金の支払による減少(1,620億円)があったことによるものです。
その他の資本の構成要素は、前期末(4,915億円)から179億円減少し、当期末4,736億円となりました。これは、為替相場の変動による在外営業活動体の換算差額の増加(981億円)等があった一方で、その他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産の公正価値の純変動による減少(1,236億円)があったことによるものです。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローについては、下記のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは9,785億円の収入となりました(前期は1兆101億円の収入)。
投資活動によるキャッシュ・フローは4,624億円の支出となりました(前期は7,106億円の支出)。
この結果、フリーキャッシュ・フローは5,161億円の収入となりました(前期は2,995億円の収入)。
財務活動によるキャッシュ・フローは3,133億円の支出となりました(前期は5,439億円の支出)。
以上により、当期末における現金及び現金同等物は6,725億円(前期は4,488億円)となっています。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益5,243億円に、減価償却費及び償却費(3,852億円)の加算、事業再編損(1,352億円)の加算、営業債権及びその他の債権の減少(2,046億円)等の収入がある一方で、持分法による投資損益(1,269億円)の控除の調整に加え、営業債務及びその他の債務の減少(1,045億円)、法人所得税の支払(1,808億円)等による支出がありました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資有価証券の売却による収入(2,310億円)等がある一方で、名古屋製鉄所への次世代熱延ライン、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)及び九州製鉄所八幡地区への電磁鋼板設備等、戦略商品の能力・品質向上対策への投資を含め競争力優位な設備への選択投資を実行したこと等による有形固定資産及び無形資産の取得による支出(5,979億円)等がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
劣後特約付シンジケートローンや公募劣後特約付社債の発行等による資金調達を通じた有利子負債の実質的な増加を伴う収入(717億円)等がある一方で、前期末及び当第2四半期末の配当の支払(1,620億円)、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出(645億円)等による支出がありました。
③ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は製造原価による。
2 上記の金額には、グループ向生産分を含む。
b. 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注)1 上記の金額には、グループ内受注分を含まない。
2 「製鉄」、「ケミカル&マテリアル」は、多種多様な製品毎に継続的かつ反復的に注文を受けて生産・出荷する形態を主としており、その受注動向は、生産実績や販売実績に概ね連動していく傾向にあり、また、需要動向等についても、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」において記載していることから、金額又は数量についての記載を省略している。
c. 販売実績
当連結会計年度における外部顧客に対する販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 1 前連結会計年度及び当連結会計年度における輸出販売高及び輸出割合は、次のとおりである。
(注) 輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。
2 主な輸出先及び輸出販売高に対する割合は、次のとおりである。
(注) 輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、各販売先への当該割合が100分の10未満のため、記載を省略している。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績の分析)
当期の世界経済は、インフレ及び金融引締めの長期化等の影響により、下押し圧力が継続しました。日本経済については、持ち直しが期待されたものの、内需は力強さを欠いたまま推移しました。こうした経済状況の下、世界の鉄鋼需給は、未曾有の厳しい経営環境が一段と悪化する危機的な状況が継続しました。需要の低迷に加え、中国経済の減速による需給ギャップの拡大を受けた過剰生産・輸出増加は構造的であり改善の兆しがなく、不透明感が一層増しています。
当社は、こうした厳しい経営環境を早くから想定し、2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」において、4つの柱として「国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化」、「海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進」、「カーボンニュートラルへの挑戦」及び「デジタルトランスフォーメーション戦略の推進」を掲げ、他社に先んじて収益構造改革を進め、いかなる経営環境にあっても実力ベース連結事業利益(※)6,000億円以上を確保し得る収益構造の構築に向け、諸施策に取り組んできました。2024年度以降、中長期経営計画策定時の想定を上回る規模とスピードで経営環境が悪化しているものの、他社に先駆けて取り組んできた各種の構造対策や収益改善施策が奏功し、世界の同業他社に対し相対的に高水準の収益力を維持しています。
(※)事業利益より在庫評価差等を控除し、当社グループとしての実力を表すと認識しているもの。
当期の連結業績については、極めて厳しい事業環境が継続するなかにおいても、従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組むことで、通期の売上収益は8兆6,955億円(前期は8兆8,680億円)、事業利益は6,832億円(前期は8,696億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,502億円(前期は5,493億円)となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりです。当社グループは、製鉄事業を中核として、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しており、製鉄セグメントが連結売上収益の約9割を占めています。
(当期のセグメント別の業績の概況)
<製鉄>
製鉄セグメントの売上収益は7兆8,743億円(前期は8兆763億円)、セグメント利益は6,210億円(前期は8,210億円)となりました。
製鉄セグメント利益の前期に対する増減△2,000億円の主な要因は次のとおりです。
当社は従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組んできましたが、極めて厳しい事業環境が継続するなか、生産・出荷数量(△200億円)やマージン(△300億円)、本体海外事業(△580億円)等の影響が大きく、前期比2,000億円減益のセグメント利益となりました。
<エンジニアリング>
日鉄エンジニアリング㈱においては、高い水準の受注残工事を実行しつつ、各事業における成長のための具体的な取組みを着実に進めました。組織・運営面では、セクター制の廃止を柱とする組織改正を実施し、事業遂行面では、昨年度に引き続き収益力強化に向けた取組みを進展させるとともに、ISO9001に則った品質保証体制を強化しました。当期は、廃棄物発電プラント事業や建築工事事業等で大型案件が順調に進捗・完工するとともに、環境O&M事業や電力ビジネス事業等で順調に業績が伸び、売上収益については前年度とほぼ同じレベルを維持しました。事業利益については、売上収益が高水準を維持しているなか、前年度における保有海洋作業船故障のような損失事案等がなく堅調に事業が進捗したことにより増益となりました。エンジニアリングセグメントの売上収益は4,004億円(前期は4,092億円)、セグメント利益は146億円(前期は△13億円)となりました。
事業形態別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業形態別の売上収益の概況)
EPC分野については、廃棄物発電プラント等の国内建設工事や、タイにおけるガス田開発関連施設等の大型案件を実行したことや、建築工事・建築鉄構事業の大型案件の完工により、前期(2,824億円)とほぼ同規模の2,751億円となりました。O&M・サービス分野については、廃棄物処理O&M、オンサイト、電力取引量の増加により前期(874億円)を上回る999億円を計上しました。部材等販売分野についても堅調で、前期(203億円)とほぼ同水準の187億円となりました。
<ケミカル&マテリアル>
日鉄ケミカル&マテリアル㈱においては、世界的な原燃料価格の高騰等により需要低迷が続く厳しい事業環境下、コールケミカル事業部鹿島製造所の休止等の抜本的な収益体質強化等に最大限努め、事業利益は前年比で増益となりました。ケミカル&マテリアルセグメントの売上収益は2,691億円(前期は2,608億円)、セグメント利益は189億円(前期は153億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
コールケミカル事業では、主力の黒鉛電極用ニードルコークスの需要低迷が継続し、タイヤ向けカーボンブラックは、自動車検査不正による需要減が下期に回復したものの、前年度並みの販売数量となり、610億円(前期は580億円)となりました。化学品事業では、ベンゼン市況は概ね安定的に推移しましたが、スチレンモノマーは国内誘導品需要の回復遅れによる販売減に加え、中国での新増設継続により市況は低迷し、1,080億円(前期は1,100億円)となりました。機能材料事業では、半導体市場におけるデータセンター向け投資やAI関連需要等ハイエンドゾーンでの成長、スマートフォン・TV・二輪車等の最終製品の需要回復を受け、販売は堅調に推移しました。特に、機能樹脂はAIサーバー・データセンター向け需要が伸長し、原料高騰の影響は受けたものの、円安基調の継続もあり、販売は堅調に推移しました。炭素繊維複合材料の販売は、土木・建築向け補強材料は減少し、産業材料向けは増加しました。炭素繊維については、スポーツ分野向けハイエンド品が堅調に推移し、機能材料と複合材料をあわせて1,000億円(前期は930億円)となりました。
<システムソリューション>
日鉄ソリューションズ㈱においては、旺盛なDXニーズを最大限に捕捉し、事業拡大に取り組んでいます。当社に導入した生産管理システムをアセット化した新生産管理パッケージ「PPMP」を他のお客様へ展開するなど、操業現場で得られた長年の業務知見やノウハウを活用した各種ソリューションを提供しています。また、クラウドネイティブ化を包括的に支援する「CloudHarbor」の提供も開始し、お客様のDX推進を強力に牽引しています。事業基盤強化・拡大を目的として、運用・保守に強みを有する㈱OSPソリューションズを完全子会社化するなど、資本業務提携も積極的に進めています。AI技術を有する企業への出資や業務提携を通じ、AI領域の対応力強化にも取り組んでいます。システムソリューションセグメントの売上収益は3,393億円(前期は3,115億円)、セグメント利益は388億円(前期は355億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
ビジネスソリューションは、当社及び製造分野向けが好調であったこと並びに金融分野向けのプロダクト販売の増により、2,506億円と前期(2,281億円)に対して増加しました。コンサルティング&デジタルサービスは、クラウドソリューション分野及びオラクルビジネスが好調であったことから、876億円と前期(825億円)に対して増加しました。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」に掲げた収益・財務体質目標、株主還元とそれに対する当期の状況は以下のとおりです。
2024年度の連結業績につきましては、従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組み、通期の売上収益は8兆6,955億円(うち上期4兆3,797億円、下期4兆3,157億円)、事業利益は6,832億円(うち上期3,757億円、下期3,074億円)、ROSは7.9%(うち上期8.6%、下期7.1%)となりました。
(*) 劣後ローン・劣後債資本性調整後
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析については、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー」 に記載しています。
文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(資本政策)
一定水準の財務健全性が維持されることを前提として、当社グループは投下資本の運用効率を重視し、投資先への資本の投入(資本的支出、R&D、M&A含む)によって企業価値を最大化する資本政策を推進しています。それは、資本コストを超過する収益の創出が期待され、持続的な成長を可能にすると同時に、株主への利益還元によって株主の要求を満たすものです。
当社グループは、上記資本政策の達成に必要な資金を、主として「稼ぐ力」の維持と向上によって生み出される営業キャッシュ・フローから獲得することに加え、必要に応じて銀行借入や社債の発行等、外部からの資金調達も実施しています。
また当社グループは、ROS、ROE及びD/Eレシオを中長期的な収益の成長と財務体質の健全性を達成するうえでの主要な経営管理指標としています。
剰余金の配当等につきましては、本報告書「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載しています。
また、自己株式の取得については、機動性を確保する観点から、定款第33条の規定に基づき取締役会の決議によることとします。取締役会においては、機動的な資本政策等の遂行の必要性、財務体質への影響等を考慮したうえで、総合的に判断することとしています。
(資金需要の動向に関する経営者の認識と資金調達の方法)
1)中長期経営計画の実行状況
2021年3月に公表した「日本製鉄グループ中長期経営計画」では、成長の実現に向けた経営資源投入として、5年間で2兆4,000億円規模の設備投資と6,000億円規模の事業投資に加え、カーボンニュートラル生産の実現に向けた研究開発や設備投資の実行、デジタルトランスフォーメーション戦略への資金投入を計画しています。この中長期経営計画に掲げた投資を実行する前提で、2025年度断面では、D/Eレシオ(※)0.7倍以下を実現することを目標としています。
(※)劣後ローン・劣後債資本性調整後
上記方針のもと、設備投資については、強靭な国内生産体制を再構築するための投資や戦略商品の対応力強化に資する投資等を積極的に進めてきました。具体的には、自動車業界において一層高まっていくと想定される車体の軽量化・高強度化ニーズに応えるべく、超ハイテン鋼板等の高級薄板の生産体制を抜本的に強化するため、戦略的な投資として約2,700億円を投入し、自動車鋼板製造の中核拠点である名古屋製鉄所に次世代熱延ラインを新設することを2022年5月に決定しました。また、電磁鋼板についても、カーボンニュートラルに向けた社会的ニーズを踏まえ、既決定投資に加え、新たに約900億円を投入し、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)・九州製鉄所八幡地区においてハイグレード無方向性電磁鋼板の能力対策を実施することを2023年5月に決定しました。
また、事業投資については、将来的なグローバル粗鋼1億トン体制及び外部環境に左右されない厚みを持った事業構造への進化に向けた施策を推進しています。2024年8月に、経営戦略上不可欠な製鉄用原料炭権益確保と、優良な原料権益確保による連結収益の安定化を目的に、高品質製鉄用原料炭サプライヤーである豪州Whitehaven Coal Limitedが保有する豪州クイーンズランド州Blackwater炭鉱の権益20%を約1,080億円で取得することを決定し、2025年3月に取得完了しました。2025年1月には、特殊鋼棒線事業の一体化・最適化を通じた収益機会の拡大、事業戦略の強化、並びにさらなる最適生産体制の追求のため、当社グループ連結子会社の山陽特殊製鋼㈱を705億円で完全子会社化することを決定し、2025年4月に完了しました。また、最大の高級鋼需要国であり、当社が長年培ってきた技術力・商品力を活かすことができる米国市場においては、当社米国子会社とUnited States Steel Corporation(以下「USスチール」という。)を合併すること(以下「本合併」という。)、及びUSスチールとの間で本合併に関する合併契約を締結することを決定し、2025年6月に総額約142億米ドルで本合併が成立しました。
環境面では、カーボンニュートラルの実現に向けて、2021年4月に専任プロジェクトを設置し、3つの超革新技術(高炉水素還元、100%水素直接還元プロセス、大型電炉での高級鋼製造)を他国に先駆けて開発・実機化するための取組みを推進しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に、当社を含む4社による共同提案を行い、2021年12月に採択されました。2024年3月までには、脱炭素化における鉄鋼業の役割の重要性の認識のもと、同基金の鉄鋼業への配分が大幅に拡大され、支援規模の総額は4,499億円となりました。また、2025年5月には、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換投資について、GX推進法に基づく「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業(事業Ⅰ(鉄鋼))令和7年度~令和11年度事業」に採択され、それを受けて当社は本投資の実行を決定しました(合計投資額8,687億円、政府支援額(上限額)2,514億円)。
2)資金調達
中長期経営計画に関して多額の資金所要が見込まれるなか、調達コストを抑制しながら成長投資資金を確保し財務基盤を強化することを目的として、2021年10月に転換社債型新株予約権付社債3,000億円を発行しました。2023年3月には、脱炭素社会に向けた取組みを推進していくための所要資金を調達する手段として、グリーンボンド(無担保社債)500億円を発行しました。2024年5月には、当社米国子会社とUnited States Steel Corporationの合併に必要な資金の調達等、中長期経営計画に基づく成長投資と財務健全性の両立に資する資金調達手段として、劣後特約付シンジケートローン及び公募ハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)による総額2,500億円の調達を実行しました。
また、フリーキャッシュ・フローの状況に応じて、調達環境、金利条件等を勘案して、最適なタイミングで資金調達面での対応を図ります。
2025年3月末における劣後ローン・劣後債資本性調整後のD/Eレシオは0.35倍となり、中長期経営計画の目標である0.7倍以下を維持しています。当社米国子会社とUnited States Steel Corporationの合併直後のD/Eは一時的に0.8倍程度まで悪化するものの、合併後の最適なパーマネントファイナンスにより早期に0.7倍以下を目指します。 中長期的に機動的かつ確実な成長戦略の遂行を継続するため、財務規律を重視した キャッシュ・マネジメントを引き続き実行していきます。
(流動性管理及び資金調達の方針について)
当社グループの円滑な事業活動に必要な資金を確保するため、手許資金及び外部借入を有効に活用しています。手許資金については、実需に見合った最低限の現預金を保有する方針としており、過去及び将来の資金繰りを勘案し、最適な保有残高を志向しています。外部借入については、安全性・安定性・柔軟性を担保する観点から基本的な調達の枠組みを決定しています。具体的には、不測の事態発生時における、当社の支払余力を確保すべく、適正な長期固定適合比率を維持するとともに、安全性の補完のためにコミットメントライン(当社連結:5,997億円)契約を締結しています。
また、短期資金と長期資金のバランスを踏まえた有利子負債残高の設計により自由度を確保しており、当該枠組みの範囲内で、最適な資金調達の実現を志向しています。
③会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されています。重要な会計方針については、本報告書「第一部企業情報 第5 経理の状況」に記載しています。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、引当金の計上、非金融資産の減損、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っています。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。
当社が特に重要と判断している会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下です。
a.非金融資産の減損
当社グループは、資産が減損している可能性を示す兆候のいずれかが存在する場合、資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額を回収可能価額として見積り、回収可能価額が資産又は資金生成単位の帳簿価額を下回る場合、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しており、使用価値は見積将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより算出しています。当該キャッシュ・フローは中長期経営計画及び最新の事業計画を基礎としており、これらの計画には鋼材需給の予測及び製造コスト改善等を主要な仮定として織り込んでいます。鋼材需給及び製造コスト改善の予測には高い不確実性を伴い、これらの経営者による判断が将来キャッシュ・フローに重要な影響を及ぼすと予想されます。なお、当期末における有形固定資産の残高は3兆6,355億円、無形資産の残高は2,632億円となっています。
b.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、鋼材需給の予測及び製造コスト削減等の仮定に基づいて算定された将来における課税所得の見積り等の予想等、現状入手可能な全ての将来情報を用いて、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。当社グループは、税務上の便益が実現する可能性が高いと判断した範囲内でのみ繰延税金資産を認識していますが、経営環境悪化に伴う中長期経営計画及び事業計画の目標未達等による将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更を含む税制改正等により回収可能額が変動する可能性があります。なお、当期末における繰延税金資産(繰延税金負債との相殺前)の残高は3,341億円です。
セグメント情報
6 事業セグメント
(1) 報告セグメントの概要
当社は製鉄事業を推進する事業会社であると同時に、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの各事業の運営を行う事業セグメント会社の持株会社である。各事業セグメント会社は日本製鉄グループ経営戦略を共有し、独立的・並列的に事業を推進しており、これらの4つの事業セグメントを報告セグメントとしている。
(2) 報告セグメントごとの売上収益、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法
セグメント間の内部売上収益又は振替高は、第三者間取引価格に基づいている。報告セグメント毎のセグメント利益は、事業利益に基づき測定している。
(3) 報告セグメントごとの売上収益、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報
前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(単位:百万円)
(注) 1.セグメント利益の調整額△1,046百万円には、日鉄興和不動産㈱の持分法による投資利益11,967百万円、及びセグメント間取引消去等△13,013百万円が含まれている。
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
(単位:百万円)
(注) 1.セグメント利益の調整額△10,223百万円には、日鉄興和不動産㈱の持分法による投資利益12,808百万円、及びセグメント間取引消去等△23,032百万円が含まれている。
(4) 地域ごとの情報
① 売上収益
売上収益は顧客の所在地を基礎とし、地域に分類している。
前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(単位:百万円)
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
(単位:百万円)
② 非流動資産
非流動資産は資産の所在地によっており、金融商品、繰延税金資産、退職給付に係る資産を含んでいない。
前連結会計年度(2024年3月31日)
(単位:百万円)
当連結会計年度(2025年3月31日)
(単位:百万円)
(5) 主要な顧客に対する売上収益
外部顧客からの売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める顧客が存在しないため、記載を省略している。