リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
また、当社グループはリスク管理のための機関として、リスクマネジメント委員会、リスク管理会議、グループ会社会議を設置し、各種リスク事項のモニタリングとそれに応じた対策の検討を行い、リスク顕在化の予防を図っております。詳細については、「第4 [提出会社の状況] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」をご参照ください。
1.市場環境に関するリスク
(1)市場環境の変化について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループの顧客は、調剤薬局、医療機関、介護施設などであり、急速な高齢化の進展により医療費削減など医療体系の一層の変革を求められる状況にある顧客のニーズにマッチしたサービスの提供に努めておりますが、当社サービスに対するニーズは顧客のIT投資意欲の影響を受ける面があります。経済環境の悪化や景気低迷等により、急激な環境変化が発生し、顧客のIT投資意欲が減退した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2)技術革新の影響について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループが事業を展開するITサービス業界では、絶えず新しい技術が開発され、それに伴う新しいサービスの提供も頻繁に行われております。当社グループにおいては、顧客に対するサービス向上のため、継続的にシステムの開発を行うなどして技術革新への対応を講じておりますが、何らかの理由で技術革新への対応が遅れた場合、あるいは想定していない新技術・新サービスが登場した場合、当社の技術や競争力が低下する事も考えられ、その結果、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(3)競合他社による影響について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは、調剤薬局、医療機関、介護施設等を対象にITサービスを提供しておりますが、各サービスにおいてそれぞれ競合する企業があります。そのため当社グループにおいては、顧客に対するサービス向上やサービスラインナップの充実に継続的に努めております。しかしながら、競合事業者のサービス向上や優れた競合事業者の登場などによって当社グループの競争力が低下する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
2.事業内容に関するリスク
(4)情報セキュリティについて
(発生可能性:低/影響度:大/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループでは、情報セキュリティにおける国際標準規格ISO/IEC27001(通称ISMS)、日本工業規格JIS Q 15001(通称プライバシーマーク)の認定を受けるなど、情報管理体制の整備強化に努めておりますが、個人情報の中でも機微な医療、健康分野における情報を取り扱っていることから、これらが漏洩するような事態が生じると当社グループの経営成績や財務状態に影響を与える可能性があります。また、当社システムにおいても、十分な検査を行うよう努めておりますが、不具合等が生じるとこちらも当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(5)システム障害について
(発生可能性:低/影響度:大/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループが提供するサービスは、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、社内管理体制を充実させ、情報技術の進歩に応じた対応ができるよう努めております。しかしながら、自然災害やシステム運用の誤り等偶発的な事由によりシステム機能が低下し、サービスの提供に支障が生じる可能性があります。また、外部からの不正な手段によってコンピュータ内に侵入され、重要なデータを不正利用、消去されたり、コンピュータウイルスの感染によってシステムが機能停止となる可能性があります。こういった状況を回避するため、ウイルス対策ソフトの導入やインターネット接続境界へのファイアーウォール設置などの対策を重ねて講じておりますが、重大なシステム障害が発生した場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(6)クレーム・訴訟について
(発生可能性:中/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは、本書提出日現在において重大な影響を及ぼす訴訟等は提起されておりませんが、今後、調剤薬局や医療機関などの顧客との間で予期せぬトラブルが発生し、クレームや訴訟に発展する可能性があります。当社はコールセンターを設置し、クレームに個別に対応して解決を図る他、何らかのトラブル発生時には再発防止策を検討し、類似のトラブル再発を回避することに努めておりますが、クレーム・訴訟等の内容や結果によっては、多大な対応費用の発生や企業イメージの悪化などにより、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(7)風評リスクについて
(発生可能性:中/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは広く一般の個人をユーザーとし、全国の調剤薬局、医療機関、介護施設を顧客としているため、SNS等に当社グループに対する評価や意見が投稿されることがあります。当社グループではそれらについてモニタリングを行い、必要に応じて事実確認を行ったり、サービスの改善に取り組むなどしております。しかし、当社グループに対して何らかの否定的な風評が広まった場合等には、その内容の真偽に関わらず、当社グループに対するユーザーや顧客からの信頼が低下し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
3.法的規制に関するリスク
(8)法令、業界規制の改正について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
a.診療報酬改定の動向
厚生労働省により、通常2年に1度診療報酬の改定が実施されますが、予期しない大幅な改定が行われるなどした場合には、当社グループのオンライン診療・服薬指導システム、医薬品価格交渉・共同購入サービス「みんなの共同仕入れサービス」の利用ニーズを低下させ、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
b.広告等に関する規制
当社グループが調剤薬局等に対してサービスを説明する際に使用する広告は、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」「保険医療機関及び保険医療養担当規則」「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」などの法令の規制対象となり、誇大表現や誤認させるような表現の禁止他、様々な遵守すべき事項が規定されております。当社グループでは、これらの規制を遵守するために、広告や説明資料について事前に法務部門の点検を実施しておりますが、法令の改正等によって広告等の記載内容が大幅に制限されるなどがあった場合は、営業戦略の変更を余儀なくされ、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
c.上記以外の医療、ヘルスケア分野における政策、規制事項等
上記の他、医療、ヘルスケア業界においては、オンライン資格確認、電子処方箋など様々な取り組みが開始されており、医療、ヘルスケア分野におけるIT化を進めてきた当社グループにとって好機と捉えられる反面、これらの内容や条件によっては、当社サービスにマイナスの影響を及ぼすことも想定されます。当社グループでは、これら政策や法規制等を把握し迅速にサービスに反映させるよう努めておりますが、その内容や条件によっては、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(9)許認可事業について
(発生可能性:低/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社が運営する医薬品売買ニーズマッチングサイト/アプリ「みんなのお薬箱」においては、当社子会社の株式会社ピークウェルが不動在庫となった医薬品を薬局から買取り、他の薬局に販売しています。同社は東京都による医薬品販売許可を取得しており、医薬品販売事業者が遵守すべき事項を全て遵守したうえで同サービスを展開しておりますが、何らかの理由により許認可が取り消された場合、同サービスを継続することが難しくなり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(10)知的財産権について
(発生可能性:低/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは、顧客ニーズに基づくサービス開発の過程において得た技術・ノウハウ等について、積極的に特許等をはじめとした知的財産権を確保するよう努めております。また、当社が他社の知的財産権を侵害しないよう十分に留意し、疑義ある場合には弁理士に調査を依頼するようにしております。第三者により当社グループの知的財産権が侵害された場合や権利侵害を当社グループが行ったとして係争を起こされた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
4.事業運営体制に関するリスク
(11)グローバル・エイチ株式会社との関係について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社は「みんなの共同仕入れサービス」においてグローバル・エイチ株式会社と業務提携を行っております。同社は当社が49%、I&H株式会社が51%を出資する当社の持分法適用会社です。同社が医薬品卸事業者との価格交渉を行い、当社が同サービスの販売を行うという関係にあり、重要な事業パートナーです。今後も同社との提携継続により同サービスを拡大していく方針ですが、何らかの理由により同社との取引や提携関係が継続できない場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(12)株式会社光通信、株式会社EPARK及びEPARKグループ会社との関係について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社は、株式会社光通信の子会社である株式会社EPARKが展開する多様な業種業態への予約サービスの薬局業種向けの調剤予約、処方箋送信サービスを会社分割により譲受して事業開始しております。また、事業開始にあたり、株式会社光通信が子会社として保有していた休眠会社を社名変更したうえで利用したのが当社の起源です。その後、当社株式は株式会社光通信から株式会社EPARKに譲渡されました。このように当社の事業開始には、株式会社光通信と株式会社EPARKが密接に関わっております。現在は、以下の関係があります。
a.オフィシャルパートナーシップ契約と共通サービスプラットフォーム利用について
当社は、EPARKサービスを提供するに際し、株式会社EPARKとオフィシャルパートナーシップ契約を締結し、株式会社EPARK及びEPARKグループ企業とEPARKサービス共通の会員、予約に関するサービスプラットフォームを共有しております。また、当該契約に基づき株式会社EPARKに対して主に下表の通りロイヤリティ及びサービスプラットフォーム利用料等を支払っております。これらの取引により、EPARKサービスの薬局分野である当社メディア事業において、EPARK会員という数千万人のユーザー基盤を活用できるという大きなメリットがある他、それら会員情報に係るセキュリティを確保しつつ事業推進していくために必要不可欠の取引であります。取引条件については、両社の協議に基づき決定されており、適宜見直しを行って適正な水準を維持することとしております。
EPARKサービスに関する事業の売上の割合は、当事業年度において35.1%となっておりますが、同社またはその親会社である光通信の意向により、同社との契約に予期しない変更や解約がなされた場合、同社グループとの共通サービスプラットフォームを利用できず、EPARKサービス事業の展開に支障を来すなど、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(単位:千円)
b.当社株式の保有について
株式会社EPARKは、当事業年度末日現在、当社株式の28.6%を保有しており、当社は同社の関連会社に該当します。また、NBSEヘルステック投資事業有限責任組合への出資を通じた間接保有を合わせると、同社の持株比率は39.8%となります。同社における今後の当社株式保有方針は未定でありますが、仮に株式売却により当社が関連会社でなくなった場合にも、オフィシャルパートナーシップ契約に基づく取引が継続されることを確認しております。
しかし、同社またはその親会社である株式会社光通信の意向により、株式市場で当社株式が売却された場合、短期的に株式の需給バランスの変動が生じる可能性があり、当社の株価に影響を与える可能性があります。
c.独立性の確保について
当社は、株式会社光通信、株式会社EPARK及びEPARKグループ企業から役員もしくは出向社員の受入れはなく、今後も行わない方針です。また、EPARKサービス共通会員に対する各種施策の実施については株式会社EPARKの承認が必要となりますが、それ以外の当社グループの経営上の決定事項について株式会社光通信、株式会社EPARK及びEPARKグループ企業に対する事前承認事項や事前協議事項はありません。このように、当社は自らの意思決定により独立した事業展開を行っており、株式会社光通信、株式会社EPARK及びEPARKグループ企業によるグループ経営の対象に含まれておりません。また、EPARKグループにおいて調剤薬局の予約サービスを行う企業はなく、競合関係もありません。しかし、株式会社EPARKについては、前述のように当社事業における重要な取引関係がある他、間接保有分と合わせると実質筆頭株主としての影響力がある資本関係を有していることから、当社グループと株式会社EPARKまたはその親会社である株式会社光通信との関係に変化が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(13)業務提携、資本提携、M&Aに関するリスクについて
(発生可能性:低/影響度:小/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループは、企業価値向上の有効な手段のひとつとして、引き続き、他社との業務提携、資本提携、M&Aを検討していく方針であります。そうした案件を進める際には、第三者による相手方の調査や事業計画の検証などを行い、可能な限りの対象会社の情報収集に努めておりますが、提携等により期待した効果が得られなかった場合、対象会社の財務状況等により提携等の維持が困難になった場合などは、保有株式やのれんの減損処理を行う可能性があり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(14)人材の確保及び育成について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社グループ事業においては、競合他社と差別化された新たなサービスを継続的に提供し続けていく必要があることから、それらの能力を持った人材を確保し育成していくことが課題と考えております。具体的には、新たなサービスを具現化するシステム開発人員とそれに対する営業人員の採用と教育が大きなポイントとなります。そこで、インセンティブ制度や教育の強化を推進しながら採用活動に取り組んでおりますが、情報通信分野は人材の流動性が高く、当社の計画通りに十分な人員の確保ができない場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
(15)特定人物への依存について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社の代表取締役社長である堤幸治は、株式会社EPARKにおける飲食業向け予約サービスや当社の調剤薬局向け予約サービスの開始に携わり、現在は、調剤薬局向けサービスにとどまらず、当社事業全体の業務執行を牽引しております。また、当社の代表取締役会長である田中伸明は、フリービット株式会社の起業をはじめとしたこれまでのアントレプレナーとしての豊富な経験に基づき、当社の将来を見据えた舵取りを行っております。このように両氏は、当社の経営方針や事業戦略の決定及びその遂行について重要な役割を果たしております。現在当社は、事業拡大に伴って権限委譲や業務分掌の明確化に取組み、両氏に過度に依存しない経営体制の構築を目指しておりますが、何らかの理由により両氏のいずれかまたは双方が当社の業務を継続することが困難となった場合には、当社の事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。
5.財務状況等に関するリスク
(16)投資事業組合の当社株式保有割合について
(発生可能性:高/影響度:小/発生可能性のある時期:1年以内)
当事業年度末日現在において、2つの投資事業組合が当社株式を5,005,400株保有しており、発行済株式数の45.6%を占めております。SBIイノベーションファンド1号は、業務執行組合員であるSBIインベストメント株式会社が当社の将来性を評価し、2016年2月に当社株式1,250株及び当社新株予約権付社債2,300株相当、同年11月に当社新株予約権付社債6,000株相当を取得しました。それら新株予約権の行使等により、当事業年度末日現在の持株比率は17.0%となっております。また、NBSEヘルステック投資事業有限責任組合は、当社株式を10,600株保有していたフリービット株式会社による全株売却の意向を受け、代表取締役会長である田中伸明によってその受け皿として設立され、2020年10月に当社株式10,600株を取得しました。その結果、当事業年度末日現在の持株比率は28.6%となっております。同投資事業組合には田中伸明が議決権の100%を保有する日本事業承継アントレプレナーズ株式会社が10.5%の出資を行っており、当社持株比率に換算すると3.0%程度となりますが、田中伸明は同投資事業組合の無限責任組合員である日本事業承継アントレプレナーズ株式会社の代表取締役として全株式に関する議決権行使を単独でできる状態にあります。
これらの投資事業組合がキャピタルゲインを目的に市場で当社株式を売却した場合、短期的に株式の需給バランスの変動が生じる可能性があり、当社の株価に影響を与える可能性があります。
(17)当社株式の流動性について
(発生可能性:低/影響度:中/発生可能性のある時期:特定時期なし)
当社は、上場時の公募増資及び売出しによって当社株式の流動性の確保に努めましたが、株式会社東京証券取引所の定める上場維持基準は25%であるところ、流通株式比率は当事業年度末日現在において25.5%程度であります。今後は、大株主への一部売出しの要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(18)配当について
(発生可能性:高/影響度:小/発生可能性のある時期:1年以内)
当社は、財務基盤強化を目的とした内部留保の充実を図っており、事業開始以来配当を実施した実績はありません。当事業年度においても、当社の成長を継続させるとともに、さらなる財務面の健全性を強化することが中長期的に株主の利益に資すると考え、無配と致しました。しかしながら、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しており、早期の配当実施を目指してまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社グループは、株主に対して効果的に経済的価値を還元すること、その経済的価値を生み出す源泉となる企業の競争力を備えることが経営における重要事項と認識しています。しかしながら、現在、当社は成長過程にあるため、成長を継続させるとともに、さらなる財務面の健全性を強化することが株主の利益に資すると考えており、最近事業年度においては無配と致しました。
今後も収益力の安定度、内部留保の充実度、事業投資への必要資金、企業を取り巻く環境を総合的に勘案したうえで、配当を早期に開始する方針であります。内部留保につきましては、企業体質の強化を図り、将来の事業拡大のために有効に活用してまいりたいと考えております。
配当の回数につきましては、中間配当及び期末配当の2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、取締役会であります。なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。