2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)需要変動等によるリスク

 当社の輸出向け金属チタン(スポンジチタン、インゴット)の主要用途は高品質の航空機用であり、航空機メーカーの受注並びに航空機のメンテナンス需要の変動や海外の金属チタンメーカーの動向により、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 国内向け金属チタンの多くも、電力・化学等プラント物件向けや船舶用のプレート熱交換器向け等の一般産業用として、展伸材メーカーから海外向けに直接または間接的に輸出されております。

 そのため、チタン事業全体といたしましても世界経済の変動や多国間の通商問題等の国際的な環境要因により、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 また、高機能材料事業につきましてもチタン事業と同様に、世界経済の変動や多国間の通商問題等の国際的な環境要因により、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 このため、製品の新たな用途開拓、魅力ある製品の提供によりその影響を最小限にするべく努めております。

 また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化の影響は、資源・エネルギー価格の高騰や欧米の航空機メーカーによる脱ロシア依存をはじめとしたサプライチェーンの再編等多岐にわたると想定しております。

 

 

(2)為替変動によるリスク

 当社の輸出売上高の殆どが米ドル建てであり、当社全体の売上高に占める輸出の割合は、当事業年度実績で66.6%となっております。輸入原材料の米ドル建てでの仕入や、電力、LNG等の間接的な米ドルでの支払いを含めても、米ドルの受取超過になる傾向にあり、為替の変動により、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 また、当社は為替の変動に関して為替予約取引によるヘッジを行うなど、為替リスクを低減すべく努めておりますが、為替リスクを完全に排除することは困難であり、為替が大きく円高に振れた場合は、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(3)金利変動によるリスク

 当事業年度末における有利子負債残高は401億円となります。

当社は長期借入金に関して、固定金利での調達を実施しておりますが、中長期的な金融情勢の変動に起因する金利率の変動により、当社の経営成績が影響を受ける可能性があると想定しております。

 

 

(4)電力供給制限及び料金の変動によるリスク

 当社の製造工程においては、大量の電力を消費するため、設備の改良による電力エネルギーの効率化及び改善に日々努めておりますが、電力の供給に制限があった場合、また電力会社の発電構成の見直しや原油価格の変動等により電力料金の大幅改定があった場合、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化の影響は、電力供給及び料金にも影響をもたらし、結果として当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(5)原料市場の需給変動及び価格変動によるリスク

 当社が購入しているチタン原料等の原料価格及びそれらの輸送に関わる海上運賃等は国際的な市況、為替相場、法規制、自然災害、地政学的リスク等により影響を受けます。調達先の分散や調達先との関係強化などを通じてこれらの安定調達に努め、またチタン原料等の価格変動の当社製品価格への転嫁にも努めておりますが、チタン原料の需給バランスが崩れることにより調達量が制約されたり購入価格が大きく変動する場合、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(6)自然災害及び感染症等によるリスク

 当社の製品は全て自社工場で生産されており、大規模地震や台風等の自然災害、感染症等の大規模流行、戦争やテロ、暴動が発生した際の損害を最小限に抑えるため、緊急対応策の準備、連絡体制の整備、定期的な見直しや訓練の実施等を行っております。しかし、これら大規模災害等により直接的に被害を受ける、もしくは物流網や供給網の混乱、インフラの障害等により事業活動に支障が生じた場合には、売上高や受注高の減少、生産コストの上昇や復旧コストの発生等により当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 尚、新型コロナウイルス感染症の流行による経済活動の抑制に伴う、航空機需要の減少・サプライチェーンでの生産活動の減速等による当社チタン事業への影響は、前事業年度をもっておおむね終息したものと判断しております。

 当社は調達先の複数化や適正在庫の確保、並びに感染拡大を防止するための衛生管理の徹底やテレワークを行うなど、各種対応に努めておりますが、ほかにも様々なサプライチェーンの停滞による資材等の調達懸念、変異株の再流行による事業活動の制限などにより、生産活動が停滞し、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(7)重大な生産トラブルによるリスク

 当社では、全ての設備の予防保全に努めるとともに設備の安全審査、保安管理体制の強化を図り、その維持及び改善に万全を期しておりますが、万一重大な生産トラブルが発生した場合、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 また、チタン事業は、現在、欧米の航空機メーカーによる脱ロシアをはじめとしたサプライチェーンの再編による好調な需要を受け、スポンジチタンの生産設備は高稼働を続けております。そのため、予期せぬ設備の調整不足や操業条件の不具合による生産トラブルが発生し所定の生産量や製品品質が確保できない場合、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(8)品質に関するリスク

 当社は、素材メーカーであり、その社会的使命は、顧客が満足する製品及びサービスを安定的に供給することであると考えております。そのため、組織的な対応・維持及び継続的な改善のためのインフラ投資を行い、品質管理に万全を期しておりますが、万が一、品質不良、品質事故等が発生した場合は、対策コストの発生や、当社製品への評価の低下により、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(9)競合会社との競争等によるリスク

 チタン事業におきましては、国内外に存在する競合他社による競争力のある新製品(新素材)の発売、価格競争の激化、低価格品などへの需要シフト等に対応するため、当社独自の製品開発・生産技術・品質保証体制を生かし、競合他社との差別化を図っておりますが、競合他社との競争激化等により当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(10)情報の流出によるリスク

 当社は事業活動において顧客情報等を入手することがあり、また営業上・技術上の秘密情報を保有しており、システムを構築し事業活動を行っております。当社はサイバー攻撃等による不正アクセスや情報漏洩等を防ぐため、管理体制を構築し適切な安全措置を講じております。しかし、顧客情報の漏洩や滅失等の事故が発生した場合には、損害賠償や社会的信用の低下等により、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。また、営業上・技術上の秘密情報の漏洩や滅失等の事故が発生した場合や、第三者に不正使用された場合、サイバー攻撃等によるシステム障害が発生した場合には、生産や業務の停止、競争優位性の喪失、社会的信用の低下等により当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(11)財務制限条項への抵触によるリスク

 当社は借入金の一部を、当社メイン銀行を主幹事とするシンジケートローンにて調達を行っており、財務制限条項付融資契約について、財務制限条項に抵触した場合、期限の利益を喪失し当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

尚、当該契約に付された財務制限条項の内容は、第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 (貸借対照表関係)※5 財務制限条項をご参照下さい。

 

(12)固定資産の減損損失の計上によるリスク

 当社が保有している固定資産について、将来のキャッシュ・フローの見積りに変動が生じた場合、固定資産の減損が発生し減損損失の計上により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13)繰延税金資産の金額の変動によるリスク

 当社では繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して計上しております。

しかしながら、今後将来の課税所得の予測・仮定に変動が生じた場合、繰延税金資産の金額の変動により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(14)気候変動によるリスク

 カーボンプライシング導入をはじめとする気候変動に関する環境規制の強化などにより、当社の財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

また、近年、洪水・台風に関する被害が激甚化する傾向にあり、気候変動による災害の増加により、生産量低下、サプライチェーンの混乱などが想定されます。

尚、気候変動関連リスク及び機会と当社の戦略の詳細は 第2 事業の状況、2 サステナビリティに関する考え方及び取組をご参照下さい。

 

 

(15)人的資本の確保・育成によるリスク

 当社では、事業の維持・成長に必要な人材の確保のために、多様な背景を持つ社員一人ひとりが持てる能力や専門性を最大限発揮し、活き活きと働くことが出来るよう、職場環境の整備や人材育成の取組を進めています。しかし、今後、少子化や人材の流動化の加速、また労働市場の需給バランスの変化などによって人材の確保が想定どおりに進まない場合には、当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(16)知的財産に関するリスク

 当社は、他社と差別化できる技術と知的財産権を蓄積し事業競争力を強化してきましたが、知的財産の保全手続きにつきましては、各国の法制度や執行制度の相違により、第三者による当社の知的財産権への侵害に対して十分な保護が得られるとは限らず、当社の事業が脅かされ当社の経営成績が影響を受ける可能性が考えられます。また、第三者から知的財産権の侵害によるクレームや訴訟提訴等を受け、当社に不利な判断がなされ当社の経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、将来に亘り企業価値の向上を図るべく経営基盤の強化を進めていくと同時に株主に対する利益還元を経営の最重要課題と位置付けております。

利益の配分に関しましては、持続的成長のための投資と財務体質の安定・強化に必要な内部留保の充実を図ると

ともに、株主への配当につきましては、安定性に配慮しつつ25%から35%の配当性向を目安に実施する方針としてお

ります。

 このような方針のもと、当事業年度の期末配当につきましては、1株当たり50円とし、年間配当額は、先に実施しました中間配当1株当たり20円と合わせ、1株当たり70円といたします。

 内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、今まで以上にコスト競争力を高め、市場ニーズに応える生産体制及び技術・製造開発体制を強化するために有効に投資してまいりたいと考えております。

 なお、剰余金の配当につきましては、会社法第459条第1項及び第460条第1項に基づき、取締役会の決議によって定める旨を定款に定めております。

 これに基づき、定款に定める基準日である中間期末及び期末に、年2回の配当を取締役会決議により実施することを基本としております。それ以外を基準日とする配当を行う場合には、別途取締役会にて基準日を設定したうえで行います。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月7日

735

20.00

取締役会決議

2024年5月13日

1,839

50.00

取締役会決議