2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業内容、経営成績及び財政状態等に関するリスク要因について、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。

なお、以下に記載したリスクは、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく記載されたリスク以外のリスクも存在します。また、本項における将来に関する事項については、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループにおいて合理的であると判断したものであります。

 

事業活動にかかるもの

(1) エネルギー・資源価格について

当社グループの生産活動において、エネルギー・資源価格の高騰は、製造コストの上昇につながります。特に、電力料金の高騰は、当社グループのすべての製品において製造コストの上昇につながり、当該上昇を反映した販売価格設定や製造現場における生産効率化の対応が計画通りに進まない場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 銅材料価格について

当社グループの製品は、純度の高い銅材料を主原料としております。銅材料の仕入価格は、国際商品市場における銅価格に基づき決定されるため、市況変動による影響を受けます。

当社グループでは、主要顧客との営業取引において、銅の相場価格を基準として販売価格を決定する「銅価スライド制」を導入し、銅材料価格の変動リスク回避に努めておりますが、実際に銅価格が変動してから販売価格に反映されるまでに数か月程度のタイムラグがあり、必ずしも価格変動リスクが全て回避できる訳ではありません。

銅材料価格の変動に対応しきれない場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 為替リスクについて

当社グループの販売活動において、一部の在外顧客への販売は外貨建てにより行っております。当社では、外貨建ての債権債務が発生した場合や、在外子会社への投資を実行する場合には、為替予約の実行等により為替変動リスクをヘッジしております。

また決算時においては、当社及び在外子会社の外貨建て資産、負債、収益並びに費用は、為替換算ルールに基づき各々円貨換算されます。その円貨換算額は、為替換算レートに応じて増減するため、為替相場の状況によっては、当社グループの財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 特定の販売先への取引依存について

当社グループの主要販売先のうち、パナソニックグループへの販売実績における総販売実績に占める割合は、前連結会計年度及び当連結会計年度共に約5割強を占める状況にあります。最近2連結会計年度における同社への販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は下表のとおりです。

 

相手先名

前連結会計年度

2022年4月1日2023年3月31日

当連結会計年度

2023年4月1日2024年3月31日

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

パナソニックグループ

9,094

53.3

9,672

58.1

 

(注)パナソニック㈱は、2022年4月1日より事業会社制に移行しております。

 

現時点において、上記取引先との関係は良好であり、今後も友好的関係を維持し、安定的な取引関係を継続する方針ですが、今後将来の時点において、何らかの理由により受注数量の減少や、取引条件の変更等が生じた場合には、今後の事業運営や経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、今後の成長が見込まれる高付加価値領域や、海外顧客の獲得も視野に入れた販路拡大に取り組むことにより、特定の取引先への取引依存度を順次低減させる方針です。

 

 

(5) 世界的な経済情勢や地政学的リスクについて

当社グループの製品は日本及び米国で生産され、日本、米国、欧州並びにアジアで消費されます。これらの国又は地域における経済活動や景気変動の状況、政治、政策及び社会情勢に関する動向は、当社グループ製品の需要や生産・販売動向に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 法的規制について

当社グループが主要業務として手掛ける電解銅箔製造事業に対する固有の法的規制はありませんが、本社工場の設置や操業に関わる法令として、工場立地法、水質汚濁防止法、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、電気事業法、エネルギーの使用の合理化等に関する法律等があります。これらの規制については、環境保全や生体系への影響に対する世界的な意識の高まりを受け、年々厳格化される傾向にあり、今後将来の時点において、法令の改正内容によっては当社グループの事業活動が制約を受け、ないしはその対策費用の発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 品質リスクについて

当社グループは、顧客の求める品質で製品を安定的に供給することを基本方針としております。そのため、品質マネジメントシステムの認証取得に基づく品質保証体制を確立し、その維持及び継続的な改善による品質管理に万全を期しております。しかしながら万が一、品質不良、品質事故等が発生した場合には、対応コストの発生や当社グループの製品に対する評価の低下により、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。

 

(8) 研究開発に係るリスク

当社グループの製品販売先の一つである電子機器業界は、技術的な進歩が急速であり、当社グループでは常に技術革新に対応できる最先端の製品開発に努めております。しかしながら、当社グループが顧客企業又は市場のニーズにマッチした製品をタイムリーに提供できない場合、もしくは競合他社が先んじて製品を開発した場合には、当社グループの製品の競争力が鈍化し、今後の経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 知的財産について

当社グループは、製品の技術的優位を確保するため、当社グループ独自の技術やノウハウ等については特許等の出願による保護を図っております。

当社グループでは、保有する知的財産権の管理を厳正に行っており、また他者の知的財産権を侵害することがないよう充分に留意しておりますが、今後将来の時点において、当社グループの技術やノウハウ等を模倣した不正製品が流通した場合や、知的財産を巡って他社との紛争が生じた場合には、当社グループの製品の競争力低下等により、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。

 

(10) 新領域に係るリスク

当社グループでは、更なる回路基板用銅箔の需要獲得のため、5G、高周波領域の分野におけるニーズをとらえ、市場開拓や新製品開発に取り組む方針です。しかしながら当該分野は、市場ニーズや技術動向は急速に変化する可能性があり、また市場拡大スピードや成長規模によっては、当社グループが想定通りに収益等を獲得できない可能性もあります。このような場合には、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。

 

(11) 安全リスクと環境保全について

当社グループは、製造現場を擁する企業として、安全確保と環境保全については事業運営上、最も重視すべき事項のひとつと認識し、設備保全や生産技術の改善、管理体制の強化、さらに役員及び社員を対象とした教育研修の実施等を通じて、安全かつ安定的な操業の維持と環境保全に万全を期しております。しかしながら、ひとたび操業中の事故、輸送・外部保管中の事故、化学薬品の漏出等が発生した場合には、操業の停止、対策コストの発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。

 

(12) 情報取扱に関するリスク

当社グループでは、顧客情報をはじめ、事業運営にかかる多種の機密情報を有しております。その情報資産を適切に管理するため、社内システムへのセキュリティ対策を講じるとともに、情報管理に関する社内規則等を整備し、役員及び社員への教育研修を通じ情報管理の重要性を周知徹底しております。しかしながら、外部者によるハッキングあるいは、役員又は社員の過失等により不測の情報漏洩が発生した場合には、信用失墜による営業機会の喪失や損害賠償費用の発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

 

(13) 人材確保リスクについて

当社グループは、持続的成長を実現すべく、多様で優秀な人材の採用、育成に努めております。しかしながら、雇用情勢の悪化等により、必要な人材を確保できない場合には、今後の事業活動に制約が生じ、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。

 

(14) M&Aや戦略的事業提携に関するリスク

当社グループは、より高度な付加価値サービスの提供や海外の製造拠点を確保するため、同業他社に対するM&Aや戦略的事業提携を行うことも、事業戦略上の選択肢の一つと認識しております。

M&Aや事業提携の個別案件については、事前に充分な検討や資産査定を行い、各種リスク要因の低減に努める方針ですが、事前に想定されなかった事象が発生した場合、又はM&Aや事業提携に見合う効果が創出されなかった場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

(15) 減損リスクについて

当社グループでは、保有する資産を有効活用し、効用等の最大化に努めております。しかしながら、当社グループが保有する資産の一部に事業等の用途に供していないものもあり、これら遊休資産については減損会計を適用しております。今後将来の時点において、経営環境が著しく悪化し、収益性の低下や市場価格の下落等により減損処理が必要となる場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

(16) 資金調達に関するリスクについて

当社グループでは、運転資金や設備資金の一部を金融機関からの借入により調達しております。2024年3月末時点での有利子負債の額(借入金とリース債務の合計)は、13,880百万円(総資産額に占める割合は58.1%)であり、有利子負債への依存度が高い水準にあります。当社グループでは多様な資金調達手段を検討しておりますが、新たな資金調達が困難となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループの借入金の一部には財務制限条項が付されております。当該財務制限条項に抵触した場合、当社グループは期限の利益を喪失し、借入金の一部又は全額の返済を求められることにより、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、収益力の向上等により財務体質の強化を図るとともに、金融機関と財務制限条項の削除及び縮小について、経済環境や当社グループの業績状況を共有した上で、交渉を継続的に行っております。

 

(17) 設備に関するリスクについて

当社グループは、生産設備の維持更新のための計画的な修繕及び一部交換等を行なっておりますが、大型設備に、重大な故障が生じた場合において、部品の調達等が容易にできないことによる修繕の遅延により、生産活動に重大な支障が生じた場合、当社グループの財政状態や経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(18) 継続企業の前提に関する重要事象

当社グループは、前連結会計年度に続き、当連結会計年度においても重要な営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上いたしました。また、当連結会計年度末において、手元資金と比べて短期借入金及び1年内返済予定の長期借入金の残高の水準が高いことから、当該借入金の返済が困難な状況にあります。

これらの状況により、当社グループは継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

このような状況に対し、当社グループでは、当該事象又は状況の解消に向けて、今後の事業方針として(A)高付加価値分野へのシフト、(B)技術力の更なる強化及び(C)価格改定による利幅の改善・製造コスト低減を掲げ、収益性の向上に取り組んでまいります。

(A)の高付加価値分野へのシフトについては、当社の技術優位性と品質・信頼性が活かせる高性能車載電池用銅箔や高速通信分野をターゲットにした高周波基板用銅箔に注力し、収益性の高い製品の販売比率向上を目指します。

(B)の技術力の更なる強化については、プロセス技術開発の推進を通じ、製品の更なる品質向上や生産効率改善によるコスト競争力確保に努めてまいります。また、並行して、今後の市場ニーズに適合する製品の開発も推進します。車載電池用銅箔においては、先進LIBや全固体電池等の次世代LIBの要求特性に適合した機械特性や表面処理に特徴を有する製品の開発及び市場投入、回路基板用銅箔においては、高速通信や高密度実装領域をターゲットとした製品の開発及び市場投入を継続的に進めます。

(C)の価格改定による利幅の改善・製造コスト低減については、適切なマージンを確保するべく、電力価格変動を販売価格に反映する範囲の拡大に継続して取り組むとともに、費用削減に加え、生産現場におけるDX・IoT化の効果刈り取りなどにより製造コスト低減を図ります。

更に、資金面では、当連結会計年度末において財務制限条項に抵触しておりますが、取引先金融機関から期限の利益等の喪失の権利行使をしないことに合意を得ていることから、引き続き金融機関の支援を得られる見通しです。加えて、保有資産の売却や設備投資案件の厳選及び抑制等により、事業及び運転資金の安定的な確保と維持に努めるとともに、財務体質の改善及び強化を図り、運転資本の充実のため、あらゆる資本政策の可能性についても検討しており、その取り組みとして、2024年6月24日付でテックス・テクノロジー株式会社との間で資本業務提携契約を締結しております。なお、詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。

しかしながら、現時点において、当社グループの対応策は実施途上にあり、今後の事業進捗や追加的な資金調達の状況等によっては、当社グループの資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があるため、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。

 

偶発的リスクにかかるもの

(19) 自然災害リスクについて

当社グループでは、地震、落雷、大雨等による不測の生産設備等への被害を防ぐため、防災設備や防災体制の整備、防災訓練の実施等の対策に努め、リスク低減を図っております。しかしながら、これらの対策により自然災害による被害を完全に回避することは困難であり、万一、生産設備等が被災した場合には、操業の停止、対策コストの発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題と認識しております。利益還元策については、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況や今後の事業計画等を勘案しつつ決定していく方針です。しかしながら当社は成長過程にあり、当社を取り巻く市場環境を踏まえて、財務基盤を強化し、将来の事業拡大のための投資に充当することにより事業の競争力を高めることこそが、株主に対する利益還元の最大化につながるとの考え方に基づき、設立以来配当を実施しておりません。

本書提出日時点において、配当実施の可能性及びその実施時期については未定です。

内部留保資金は、今後の当社グループの成長と、財務基盤の安定化を勘案しつつ、運転資金や生産設備に係る設備資金等、事業活動の原資として活用する方針です。

なお、当社の剰余金配当は毎年9月30日を基準日とする中間配当及び毎年3月31日を基準日とする期末配当の年2回を基本としております。また、会社法第459条第1項各号の定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって定める旨を定款に定めております。