リスク
3【事業等のリスク】
成長戦略には必ず不確実性・リスクが伴うものであり、これらをいかにコントロールし対処するかは、戦略実行上の鍵となります。当社グループでは、全社的リスク管理(Enterprise Risk Management、ERM)体制として、戦略や事業目的の達成に影響を及ぼす可能性のある事象をリスクと認識し、組織全体として適切に管理する仕組み・プロセスを構築しています。当社グループの受容できるリスク量への考え方(リスク選好)を明確化したうえで、網羅的にリスクを識別し、影響度、予見可能性、発生確率等の観点からリスクの定性・定量的な評価を行い、回避、低減、移転、受容等の観点から対策を検討しています。また、当社グループの役職員に対して、リスク管理に関する教育・研修を継続的に実施しています。
当社グループの全社的リスク管理体制としては、ERM委員会においてリスクを包括的に評価のうえ、ERMに係る基本方針及び体制整備・運用に係るERM計画を策定し、各リスク主管部門と事業部門によるその実行状況をモニタリングしています。また、当社取締役会は、ERM委員会からの報告及び取締役会での審議を通じて、全社的リスク管理を監督しています。
以下、各リスクカテゴリーに応じて重要性が高いと考えるリスクを記載いたしますが、予見可能性や発生確率が低い事項も含まれます。当社株式に関する投資判断は、これらの記載事項を十分検討したうえで行われる必要があると考えています。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日時点において入手可能な情報に基づき、当社が合理的であると判断したものです。また、当社グループに発生しうるリスク及び投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限られるものではありません。
-政治/経済-
(1)顧客の属する業界の景気動向
当社グループは、2024年6月30日時点で国内に26,054人の技術者を擁しており、そのうち92.4%(24,061人)が無期雇用となっています。顧客の属する業界の景気が悪化した場合には、就業時間の短縮化、契約条件の悪化、さらには派遣契約期間中での中途解約等が生じる可能性があります。多くの無期雇用技術者を擁しているが故に、景気下降局面では無期雇用の待機技術者の人件費負担が大きくなり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、技術者の付加価値を高めるための教育研修を強化しており、稼働率の安定的な維持を図っています。また、多様な産業や顧客と取引することで、特定の産業や顧客の業況に大きく影響を受けない、リスクを分散した事業運営を行っています。なお、当社グループにおける顧客上位10社の売上高占有率は、11.6%(当連結会計年度)です。
(2)世界的な経済情勢の長期的趨勢
当社グループへの需要は、顧客の研究開発やITシステム開発への投資に強く連動しています。当社グループの主要顧客である大手日系企業は、将来にわたる国際競争力を維持するため、積極的な研究開発投資を継続的に行っており、当社グループの持続的な成長の要因となっています。
しかしながら、近年の世界的な保護主義への回帰や、自由主義経済への制約が将来にわたって継続し、あるいは世界規模での新たな感染症が定期的に蔓延することで、多くの日系企業が研究開発投資に消極的な姿勢に転換した場合には、技術人材への需要が減少し、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、財務健全性を担保し、管理業務の効率性向上を進めるとともに、日本及び進出国の景気・需要動向のモニタリングを強化し、先行KPI管理を実施することで、景気変動への対応力を確立しています。
-技術動向-
(3)技術革新への対応
現代において技術変化のスピードは加速度的に増しており、当社グループは、技術革新に適時適切に対応していく必要があります。このような技術革新に関しては、次のようなリスクがあり、これらに対応できない場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
・当社グループが技術変化の方向性を正しく予測・認識できない場合や、たとえできたとしても当社グループの技術者の有する技術スキルの向上・転換が間に合わず、技術が陳腐化するリスク
・新たな技術により研究開発やITシステム開発の工数が大幅に縮減し、技術人材への需要が減少することによって、当社グループに余剰人員が発生するリスク
・新たな技術に対応できる技術者の確保又は育成に、多額の費用が発生するリスク
当社グループでは、技術者の有する能力やスキルの高度化、新たな技術の習得等を支援するためにさまざまな教育研修の機会を整備するとともに、教育研修の投資効率の向上に努めています。また、当社グループでは、持続的な成長のために、Center of Intelligence(COI)という組織において将来の技術動向等を分析し、注力すべき要素技術・ソリューションを具体的に定め、当該領域で活躍する技術者の確保・育成及びCenter of Excellence(COE)拠点の開発を進めています。
-労働環境-
(4)技術者の確保
国内における技術者需給は逼迫するトレンドが継続し、中長期的には、当社グループの技術者人材確保が難航するおそれがあります。特に、デジタル技術領域における技術者の獲得は、需要の増大によって厳しい状況が続いており、需要に見合う供給を十分に確保できない場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
採用力は、当社グループの強みの一つであり、優秀な技術者の獲得は成長の推進力です。当社グループでは、採用チャネルを人材紹介事業者の活用や知人紹介等に多角化するとともに、外国籍技術者の獲得も推進し、ソリューション事業拡大に向けた質を重視した採用強化に努めています。
年間の国内技術者採用数については、2021年6月期は、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する事業環境の不透明性に対応して採用を抑制したため、前年度に比べ大幅な減少となりましたが、2022年6月期以降は、新卒・中途ともに採用活動の再開により採用数も回復し、総在籍技術者数は2024年6月末時点で過去最高となりました。
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2018年 6月期 |
2019年 6月期 |
2020年 6月期 |
2021年 6月期 |
2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
技術者採用数(人) |
4,151 |
4,512 |
4,398 |
1,405 |
3,830 |
4,314 |
4,575 |
総在籍技術者数(人) |
16,797 |
19,293 |
21,264 |
20,330 |
22,048 |
24,125 |
26,054 |
(注)技術者採用数(M&Aによる獲得を含む。)及び総在籍技術者数はともに国内に限り、総在籍技術者数は年度末時点
また、国内における技術者確保という観点では、退職人数が増えることで在籍技術者数が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。毎年従業員満足度調査を実施し、その結果をもとに処遇改善施策を実施する等、退職率の低減に努めています。
(5)国内の人口推移
当社グループの事業の大半は国内で行われていますが、国内の総人口や技術者数は継続的に減少すると見込まれており、当社グループが事業を展開する市場の縮小や、新卒・中途採用の競争激化が一層進んだ場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
一方で、国内での技術人材需要は継続的な高止まりが予想され、グローバル人材の採用や技術開発の効率化によって顧客の技術開発ニーズに応えることができれば、当社グループの新たな成長機会となる可能性があります。
(6)雇用慣行や働き方の変化
日本において技術開発サービスの需要が強い背景の一つとして、日本的雇用慣行では迅速な直接雇用人員の調整が困難であり、研究開発やITシステム開発のプロジェクトにおいて、適時適切な人材を確保することが難しいことがあります。しかし近年、日本では雇用慣行が徐々に変化しつつあり、HRテックやリモートワーク等の普及、フリーランスといったギグエコノミーの浸透によって、将来的に雇用の流動化や働き方の多様化が一層進展し、顧客が開発プロジェクトごとに必要な人材を直接確保することが一般化した場合には、人材のアウトソース需要が減少し、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
これら雇用慣行や働き方の変化は、当社グループにとってリスクである一方、人材の新たな供給源といった機会ともなりうるものです。従来の事業モデルに縛られることなく、フリーランスの活用、オフショアリング開発の拡大や、より一層柔軟な人事制度の導入なども含め、事業モデルを進化させることで成長を図ります。
(7)新事業領域拡大に向けた人材確保
当社グループのコア事業の進化を加速させるためには、国内技術者派遣業務の枠を超えた経営・事業人材の確保が不可欠です。当社グループは、技術者の採用には競争力があるものの、経営・事業人材の採用には、逼迫した労働市場において業種を問わない事業者との厳しい獲得競争にさらされています。人材紹介会社やM&Aを通じて人材獲得を図るものの、計画どおりに採用が進展しない場合には、コア事業の進化が鈍化し、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、国内人材採用に加えて、人材育成の一層の強化、高度外国人材の活用を進めることで、コア事業の進化を担う人材拡充を図っています。
-戦略/市場・競合・オペレーション-
(8)グローバル化の進展
近年、当社グループの主要顧客である大手日系企業は、研究開発やITシステム開発のグローバル化を進めており、この動きは今後ますます加速するものと考えられます。また、新興国の技術力向上により、欧米においては重要な開発プロジェクトであっても、コスト・技術の両面からオフショアリング開発が選択される傾向にあります。当社グループがグローバルでのソリューション提供体制を構築できない場合には、こういった日本における技術開発サービス需要の変化に対応できず、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、M&Aを成長戦略の一つの柱と位置付けています。日本企業に対するオフショアリング開発(特にデジタル領域)は、欧米に比べるとまだ浸透しておらず、M&Aによって欧米市場で培ったサービスデリバリー力・技術力・人材を取り込むことは、国内において先行者になりうる機会を創出するととらえています。
(9)顧客の需要動向の変化
近年、デジタル化やソフトウェア化の進展により、顧客が必要とする技術領域の幅は拡がっており、また、顧客需要は単なる役務提供を越えて、成果物、さらには課題発見・解決を求める傾向が強くなっています。これらの需要の変化に適切に対応できない場合には、成長機会を逸し、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社グループのサービスが役務提供にとどまらず、ソリューション提供型に進化していく必要性を十分認識し、国内技術者派遣業務とのバランスを勘案しつつ、ケイパビリティ獲得のための投資や組織・オペレーションの革新を進めています。
(10)中期経営計画の達成
当社グループは、2022年6月期を初年度とする5ヶ年の中期経営計画『Evolution 2026』を策定し、中期事業戦略を遂行しています。しかし、外部環境変化の読み違いやそのスピードに追いつけず、また、想定どおりに当社グループのケイパビリティを『進化』させられず、結果としてコア事業の成長や進化を実現できない場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業戦略ごとの細かな方針とタイムラインをまとめた5ヶ年のロードマップを作成し、また、各方針に紐づく詳細なKPIを定めて、中期事業戦略の推進・進捗管理体制を強化しています。もし、戦略遂行に遅れが生じたり、修正が必要となったりした場合には、先んじて経営資源の投下や組織体制の強化を図ることで、戦略実現と計画数値の達成の蓋然性を高めるよう努めています。
-M&A/提携・カントリーリスク・会計財務-
(11)企業買収(M&A)
当社グループは、成長戦略の一環として、国内・海外におけるM&Aを推進しています。M&Aに際しては、対象となる企業について詳細なデューデリジェンスを実施し、リスク回避に努めていますが、買収後に偶発債務等の発生が判明した場合、対象会社の当初想定した収益計画を達成できない場合、対象会社の事業運営に支障をきたすような事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、M&Aの基本原則として、中期事業戦略との整合性、買収プロセスの透明性、強固な財務規律、買収後の統合作業(PMI)やガバナンス方針を明確化しており、特に財務規律として、資本コストを上回るROIC(投下資本利益率)を価値創造のための重要な経営指標の一つとして位置付けています。
(12)減損会計の適用
当社グループは、2024年6月30日現在、連結財政状態計算書に合計488億85百万円ののれんと無形資産を計上しています。これらは総資産の32.0%を占めており、主要なのれんの内訳は、機械、電気・電子領域(146億51百万円)、Robosoftグループ(102億50百万円)、組込制御、ITインフラ領域(79億69百万円)になります。当社グループでは、国内及び海外において積極的にM&Aを推進している結果、のれんと無形資産は増加傾向にありますが、当社グループの収益性に認識可能な低下がみられる場合には、のれんや無形資産の減損が生じているか否かについての判断が必要となります。のれんや無形資産に関する減損損失が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、のれんは非償却性資産です。
また、M&Aや出資にあたり、ダウンサイドリスクの回避を意識しながら、当初の投資額や取得比率を抑えて減損の潜在額を小さくすることや、売主である創業者にインセンティブを与え、当該事業の経営リスクを軽減することを目的として、非支配株主にプット・オプションを付与している場合があります。当該事業が当初想定した収益計画から大きく乖離した場合には、オプションの公正価値に変化が生じているか否かの判断が必要になり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、M&Aを実行するに際し、投資検討におけるデューデリジェンスの過程から、事業部門やPMI担当者によるチームを組成し、投資後の計画を先行的に策定し、投資後においては各種施策を早期に開始することで、当該事業の経営改善やグループ間連携の強化による想定シナジーの早期実現に努めています。
-法律規制・情報システム-
(13)関連法制の動向
当社グループは、労働者派遣法、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)、その他の関連法令の規定に従い、労働者派遣業務を行っており、法令に抵触した場合には、労働者派遣事業の許可の取消、事業停止の処分等を受けるおそれがあります。労働者派遣法その他の関連法令に抵触する行為が当社グループで発生した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、組織・規程・役職員教育を含めて、厳格な法令遵守体制を構築・運用しています。
また、労働者派遣法をはじめとする関係諸法令は、経済環境・社会環境の変化に伴い、継続的な見直しが行われており、当社グループの業態に著しく不利な改訂が将来的に実施された場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。近年では労働者派遣法以外にも、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の時季指定、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、高年齢者雇用確保措置等の改訂が実施されており、当社グループでは当該改訂に対応するための諸施策を採っていますが、今後のさらなる改訂によっては、対応のために多額の費用が発生する可能性があります。一方で、規制の厳格化によって中小派遣事業者が淘汰され、当社グループへの需要がさらに増え、市場シェア拡大につながる可能性があります。
当社グループでは、従業員にとって魅力的な働き方や処遇等を実現する各種制度を関係法令に先駆けて整備し、海外ソリューション事業や技術者育成事業の拡大により、法改正への耐性を強化してまいります。
なお、当社グループが許認可を受けている労働者派遣事業及び有料職業紹介事業に関して、事業廃止又は許可取消、事業停止となる事由は労働者派遣法第14条及び職業安定法第32条に定められています。本書提出日時点において、当社が認識している限り、当社グループにはこれら事業廃止又は許可取消、事業停止の事由に該当する事実及びその兆候はありません。
(14)個人情報保護
当社グループは、技術者を含む従業員や、採用応募者の個人情報を大量に保有しており、個人情報の外部流出が発生した場合には、当社グループへの社会的信用の失墜等により、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、個人情報の適正な管理は極めて重要であると認識しており、役職員への継続的な教育研修等を通じて、個人情報の適正な取扱いを浸透させています。また、当社CSR推進部長を個人情報保護責任者と定め、個人情報保護規程の整備・運用及び情報システム面も含めた個人情報に関するセキュリティ対策を講じています。
(15)情報セキュリティ
当社グループの技術者は、業務上、顧客の研究開発等の機密情報を知りうる可能性があります。当社グループの技術者によって、顧客の機密情報の外部流出が発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの情報システムにおけるデータ損失や漏洩により、当社グループの業務運営に支障が生じる可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティに関する各種規程を整備・運用し、役職員への教育研修等を通じて、情報及び情報機器の適正な取扱いを浸透させています。また、当社グループでは、ネットワークセキュリティ等を強化することで、当社グループ情報システムのデータ損失や漏洩への対策を進めています。
-労務管理-
(16)労務管理
当社グループは、海外を含め約28,000人の従業員を雇用しており、また毎年多数の従業員を採用しています。このため、労働安全衛生や雇用関係等に関して従業員との間で紛争が発生した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社グループの理念体系における「価値観」として、
『私たちは、
- 一人ひとりの学びや成長を促す環境やプログラムを整備しています
- 専門性を極めるだけでなく、スキルのチェンジや新たな獲得の機会も提供します
- 技術進歩・環境変化に対応し活躍を続けられるよう、全力でサポートします』
を掲げ、採用時における人材品質の確保、コンプライアンスを重視した労務管理を含む技術者管理の充実、教育研修体制の強化、従業員満足度の向上等の取組みを実践しています。
-ハザード・ESG・気候変動-
(17)感染症への対応
人・物・金・情報のグローバル化の進展に伴い、感染症のリスクは確実に増加しています。2020年に世界的に拡大した新型コロナウイルスによって、そのリスクは顕在化いたしました。感染症においては、人と人との物理的接触が制約を受けるという特有の要素があり、当社グループの事業運営上は、技術者を含む従業員の在宅勤務の要請、技術者の地域間移動の制限、対面での営業活動や採用活動の制約といった供給面においてまず影響が現れます。さらには、国や産業により深度や期間は異なるものの、顧客企業の業績悪化につながり、結果としての技術者需要の減少や研究開発プロジェクトの縮小や遅延といった形で、当社サービスの需要面にも影響を与えます。総じて、感染症リスクは、政治・経済、技術動向、労働環境等の他のリスクにも波及する可能性があるものです。新型コロナウイルスに限らず、さまざまな感染症リスクが顕在化し、増大した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、在宅勤務を支える情報システムや人事制度等を構築・運用し、またリモートでの顧客開拓を推進する等、感染症拡大下であっても、従業員の健康・安全を最優先した事業運営体制を整備しています。また、新型コロナウイルスによる感染症リスクに対する認知の劇的な高まりは、デジタル技術の社会・企業活動への浸透を促進することが確実であり、当社グループとしては、デジタル技術に対応した技術者・ソリューションを拡充し、事業拡大を図る機会ととらえています。
(18)自然災害・事故
当社グループは、全国に200ヶ所以上の事業拠点を有しており、当社グループの技術者は国内2,500社以上の顧客先にて勤務しています。そのため、地震や洪水等の自然災害や予期せぬ事故等により、当社グループあるいは顧客の設備が損壊する等の被害が発生した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、自然災害や事故について事業継続計画及び企業危機対策規程を定め、一方、情報システム障害に関しては、データリカバリーセンターを活用する等の対策を講じています。
(19)気候変動
当社グループは、事業運営において敷地や生産設備等を保有する必要がないことから、気候変動による直接的影響は僅少である点をシナリオ分析により確認しています。しかし、炭素税導入や政府の再エネ政策、あるいは低炭素技術や次世代環境技術の進展は、顧客に必要となる技術に影響を与えます。当社の技術者やソリューションがこれら顧客需要の変化に対応できない場合、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの気候変動に対する取組みが不充分で、顧客や投資家の理解が得られない場合、顧客との円滑な取引関係の構築や長期安定株主の獲得に問題が生じる可能性があります。
当社グループでは、「テクノプロ・グループ 環境方針」において気候変動への対応を環境重点分野の一つに定めています。業界動向・技術動向等の調査分析を担当する専門部署による調査・分析機能を活用し、低炭素・脱炭素等の環境技術に関する技術者育成とソリューション提供体制を強化し、顧客の需要変化に対応いたします。また、2022年6月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに加入いたしました。今後は、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとのより一層良好なコミュニケーションが取れるよう、TCFDのフレームワーク(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に基づいた情報開示を進めるとともに、長期的な視点でリスクを分析し、気候変動に対する対策を進めてまいります。詳しい情報は、当社ホームページでご確認ください。(https://www.technoproholdings.com/sustainability/environment/tcfd.html)
-レピュテーション-
(20)コンプライアンス・業界イメージ
当社グループの主要な事業である技術者派遣業務は、多くの人材を雇用する社会的責任の大きな事業であり、当社グループ役職員により、コンプライアンスを軽視した社会的倫理に反する行為等が行われた場合、社会的信用や企業イメージを棄損する行為が行われた場合には、社会や顧客が被る損害への賠償やレピュテーションの悪化等を通じて、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、技術者派遣市場は事業者数が多く細分化されており、当社グループのみならず、類似の事業を営む他社においてコンプライアンスを軽視した社会的倫理に反する行為等が行われた場合にも、業界全体に対するイメージの悪化を通じて、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社総務・CSR管掌執行役員を委員長とし、当社各部門長等で構成されるコンプライアンス委員会において、重視すべきコンプライアンスリスクの特定とその重点管理を行っています。実務面では、グループ横断のコンプライアンス専任部門の設置、トラブル発生時のエスカレーションルールの徹底、内部監査の実施と是正活動、内部通報制度の周知等を通して、重大なコンプライアンス違反の発生を防ぐことに努めています。
配当政策
3【配当政策】
当社は、利益配分に関し、企業価値・株主価値向上を図るべく、内部留保を通じて成長のための資金需要と財務健全性確保に対応する一方で、連結配当性向を具体的な指標として、業績の一部について配当を通じて株主に直接還元することを基本方針としています。
配当水準については、中長期的に連結配当性向50%を目処とし、中間配当及び期末配当を年2回安定的に行うことを基本としています。
これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であり、当社は、「取締役会の決議によって、毎年12月31日を基準日として中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めています。
当事業年度の年間配当金につき、期末配当金として1株当たり55円の配当を実施することを決定いたしました。なお、当事業年度は、中間配当金として1株当たり25円を実施していますので、今回の期末配当金と合わせた年間配当金は1株当たり80円となり、当連結会計年度の当期利益(親会社の所有者に帰属)146億84百万円に対する連結配当性向は58.2%となります。
内部留保資金の主な使途は、運転資金、情報システムや人材開発投資、自己株式取得、及び買収等の戦略的事業投資です。
当事業年度に係る剰余金の配当は、以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
2024年2月6日 |
2,671 |
25.00 |
取締役会決議 |
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2024年9月27日 |
5,827 |
55.00 |
定時株主総会決議 |