2024年7月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

また、当社グループの事業等のリスクについては、「事業運営上のリスク」、「外部環境に関するリスク」、「財務上のリスク」にそれぞれ分別し、判断しております。

 

1.事業運営上のリスク

1) 価格競争等について

公共事業における入札参加については、価格により決定する競争入札(一般・指名)の他、一定の業務実績、経営成績、財政状態、技術力、入札価格等の提示による総合評価方式等があります。このような状況において、入札制度に予期せぬ変更が生じた場合や、競争の激化により入札価格が著しく低下した場合、あるいは資格保有者の退職等により安定的な人材の確保が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このリスクに対応するため、入札競争力の向上、実務支援を行う専門部署を設けており、入札情報(入札公告・結果)等の集約管理を行い、特定された業務に対する情報の分析と総合評価提案書の推敲、改善を助言する等のサポート体制を構築し、安定した受注確保に向けた対策を行っております。

 

2) 法的規制等について

総合建設コンサルタント事業においては、公共事業への参加を希望する場合の入札行為等で、独占禁止法違反や官製談合等の不正な入札行為を行った場合は、公正取引委員会から排除勧告が行われます。排除勧告を受けた場合は、営業禁止や営業停止の行政処分の他、国および地方自治体から指名停止の処分が科せられます。

当社グループでは、コンプライアンス委員会を設置、各社にコンプライアンスリーダーを選任し、コンプライアンス体制の整備ならびに法令遵守に関する従業員教育を徹底しておりますが、法令違反等が発生した場合、業績および企業の社会的信用に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

3) サービス品質に係るリスク

当社グループにおいては、独自の品質マネジメントシステムにより一貫した品質管理を体系的に行っておりますが、設計等に起因する瑕疵などの原因で生じる損害賠償請求等が発生する可能性があります。

このリスクに対応するため、業務過誤賠償責任保険に加入をしておりますが、当該保険により填補出来ない場合や、指名停止等の行政処分、技術力およびサービスに対する信用の失墜等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。総合建設コンサルタント事業においては、技術審査室による業務監督・照査や、各生産課単位での個別業務の照査を実施するなど、品質不良の発生防止に努めております。しかしながら、サービス品質のトラブルが発生した場合には、調査委員会等により発生原因の精査や再発防止策等を策定し、関係部署へ水平展開することで品質管理の強化に努めております。

 

4) 総合建設コンサルタント事業における実行予算の見積りに関するリスク

総合建設コンサルタント事業においては、測量・調査・設計等の請負業務に関する収益の計上に際して、一定の期間にわたり履行義務が充足される契約については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり収益を認識しております。当該収益認識に係る進捗度の見積り方法は、実行予算に対する実際原価の割合(インプット法)で算出しております。実行予算の見積りは、対象となる請負業務ごとに内容や工期が異なるため個別性が強く、また、進行途上において当初想定していなかった事象の発生により業務内容の変更が行われる等の特徴があるため、今後、想定していなかった状況の変化等により実行予算の見積りの見直しが改めて必要となった場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、業務の進行途上において業務内容の変更等が行われる場合には、当該状況の変化に関する情報を適時に適切な部署・権限者に伝達し、当該情報をもとに適宜実行予算を見直すことにより、適切な収益認識となるように対応しております。

 

5) 人材の確保・育成、労務関連リスク

わが国の労働人口は、少子高齢化の進展に伴い減少傾向にあり、企業間の人材獲得競争は激化していることから、当社グループにおいても優秀な人材の確保が課題となっております。また、当社グループの従業員の平均年齢が46歳となっている中、持続的な発展のためには、継続的な一定数の人材確保と技術・知見の継承が不可欠となっております。このため、安定的な人材の確保・育成が困難な場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらに加えて、労働時間の適正化や法令に基づく適正な労務管理、ハラスメント等の労務関連リスクも社会問題となっております。

これらのリスクに対応するため、人材の確保では企業認知度の向上に資する施策やインターンシップ制度の拡大を行っております。また、人材育成では多様な研修企画を実施し、社員のコンプライアンスモラルの醸成と働きやすい職場環境の整備に努めてまいります。

 

6) 情報システムとセキュリティ

当社グループは、事業活動における顧客等の個人情報や技術情報等の各種情報について情報システム上で管理・運営を行っております。しかしながら、ソフトウェア・ハードウェアの不具合や、サイバー攻撃等でコンピュータウイルス等による情報システムの停止等の重大な事故が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、個人情報や法人の機密情報等が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用に影響を与え、損害賠償等を行う必要が生じることにより、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対応するため、情報セキュリティに関する社内規程(「特定個人情報等取扱規定」、「情報セキュリティ規則」等)を制定し、加えて標的型攻撃メール訓練を役職員等に対して実施するなど教育・研修の徹底を図っております。またファイアウォール等のいわゆる入口対策・出口対策だけではなく、端末の挙動を監視するエンドポイントセキュリティシステムを導入し、予防ファーストのセキュリティ強化を行うとともに、万が一情報漏洩等が発生した場合は、PCの操作ログ監視システムにより流出したデータの追跡確認ができる体制を構築しております。

 

7) 水族館施設設備の賃借について

水族館運営事業においては、2021年10月に兵庫県に劇場型アクアリウムを基本コンセプトとした水族館のアトアを開業いたしました。アトアの事業運営については、当該水族館施設および付帯設備を保有するアセットオーナーと定期賃貸借契約を締結しており、当社グループは水族館施設および付帯設備を賃借して水族館の運営を行います。

当該事業が安定的な施設運営を確保するため、長期契約を締結しておりますが、中途解約は困難であり、また短期間の水族館施設の閉鎖や売上高が減少する局面での賃料減免の改定も困難な状況であることから、収益に応じた変動賃料契約とすることでリスクコントロールが実施できる体制にしております。

月額賃料は、各月において入館料等収入から水族館の運営費用および当社グループ運営報酬(入館料等収入の5.0%相当額)を控除して算出しており、保証賃料は年額3億円となっております。

しかしながら、事業環境の変化や災害、衛生上の問題あるいは新型コロナウイルス等の感染症の再拡大等による影響等により、顧客の安全にかかわる予期せぬ事態が発生した場合、臨時休業等の規模によっては、著しく採算性が悪化することに加え、水族館の収益が保証賃料を下回る場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、賃貸契約期間中に当社グループの意向に基づき中途解約を行う場合、残存期間の未経過賃料の一部について、賃料の支払いもしくは補填の義務が生じる可能性があります。

このリスクに対応するため、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症になりましたが、引続き衛生上の諸対策による感染防止対策・事業継続体制を整え、お客様と従業員の安心と安全の確保や、繁閑に応じた人員の適正配置や経費削減に努めるとともに、集客に向けたイベントの開催や広告宣伝の強化を行うなどウィズコロナに対応しながら事業活動を維持してまいります。

 

8) 訴訟等に関するリスク

当社グループが事業活動を行うにあたっては、偶発的に発生する訴訟や訴訟に至らない請求等を受ける可能性があります。これらの発生は予測困難であり、またこのような訴訟等が発生した場合において、多くはその解決に相当の時間を要することから、結果を予想することには不確実性が伴います。このような訴訟等が発生し、予期せぬ結果となった場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

9) 季節変動について

当社グループの主体である総合建設コンサルタント事業の売上高は、大部分が官公庁からの受注であり、業務の納期が官公庁の事業年度末である3月に集中する傾向があるため、第8期までは売上高・利益も同様に第3四半期以降に偏る季節変動がありました。「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第9期の期首から適用したことに伴い、業務の進捗度に応じ一定の期間にわたり収益を認識する方法に変更しております。よって売上の計上が平準化されたことにより、第9期以降における売上高については季節変動の傾向が弱まっているものの、依然として事業年度末の影響がみられるため、今後の傾向につきましては注視してまいります。

水族館運営事業においては、春季・秋季の行楽シーズンおよび夏休み期間に来館者数が多いことから、第1四半期および第4四半期に売上高が多くなる季節的変動要因があるため、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 

10) 持株会社のリスク

当社は、当社の連結子会社である各事業会社が当社に対して支払う経営指導料、不動産賃貸料および事業会社が業績に応じて支払う配当金を主な収入源としております。

このため、各事業会社の業績、財政状態が悪化し、当社に対してこれらの支払いが出来ない状況が生じた場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.外部環境に関するリスク

1) 公共事業の縮減

当社グループの主要事業である総合建設コンサルタント事業は、受注総額の9割程度を国および地方自治体が占めております。当事業における受注環境は、政府による「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」等の影響により、公共投資予算は堅調に推移しております。2025年度以降も継続的・安定的な国土強靭化の取り組みを進めるための「国土強靱化実施中期計画」策定に向けた改正国土強靭化基本法が成立しましたが、今後公共投資政策が急激に変更となった場合は、受注が大きく減少するなど当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、総合建設コンサルタント事業における新型コロナウイルス感染症の影響においては、感染症法上の位置付けも5類へ移行し今後収束に向かうことが見込まれますが、地方自治体を中心に新型コロナウイルス感染症対策のために実施した財政支出や、税収の減少等の影響によっては、公共事業関係予算が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このリスクを軽減する対応としては、受注に占める公共事業への依存を軽減するため、高速道路の調査・点検業務など民間受注の獲得に向けた営業の強化や、PPP・PFI事業・コンセッション事業、指定管理者事業等の事業領域の拡大に努めてまいります。

 

2) 自然災害等によるリスク

当社グループは、東北地方から九州地方までの広域で事業展開を行っておりますが、地震・津波・洪水等の自然災害や予測不能な事故等の事由による被害を受けた場合は、事業活動が制限されるなど、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このリスクに対応するため、定期的に設備点検等を実施するとともに、地域や事業に応じたBCP(事業継続計画)を作成し、被災時でも重要な事業を継続し、早期に事業展開が可能となる体制を構築しております。

 

3) 感染症の発生等によるリスク

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の5類への移行に伴い、経済活動への影響は低減したものの、今後当社グループの従業員において感染による重症化および感染長期化をもたらす変異種が発生した場合や、新たな重大な感染症が発生・蔓延した場合は、一時的な業務の停止や事業所・施設の閉鎖等を行う可能性があります。これにより、総合建設コンサルタント事業では、営業・生産活動の停止による新規受注の減少や納期の遅延等の可能性があります。また、スポーツ施設運営事業および水族館運営事業においては、顧客の安全にかかわる予期せぬ事態が発生した場合、施設の閉鎖や営業の自粛等を行う可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このリスクに対応するため、社員の在宅勤務体制やオンライン会議などのリモート環境の整備は見直しを行いながら継続し、スポーツ施設運営事業および水族館運営事業においては、衛生上の諸対策による感染防止対策・事業継続体制を整え、お客様と従業員の安心と安全の確保に努めることで、その影響を抑えるように努めております。

 

4) 他社との競争によるリスク

スポーツ施設運営事業および水族館運営事業においては、価格設定、サービスの品質等において、他社との競争にさらされております。

スポーツ施設運営事業では、他社の24時間フィットネス事業への出店が多く、会員数に影響を与えております。また、水族館運営事業では、水族館施設のオープン等、他社との競合が激化した場合、売上高や利益が減少する可能性があります。

このリスクに対応するため、他社との差別化を図るための会員サービス充実、魅力的な企画展示や個人利用客・団体利用客の獲得に向けた取り組み等ブランディング戦略を実施し、競争力の維持および強化に努めております。しかしながら、これらの競争に優位性を確保出来なかった場合、当社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

 

3.財務上のリスク

1) 金融商品の価格変動リスク

当社グループが保有する金融商品等については、金融商品に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の時価を算定しモニタリングを行っておりますが、時価が著しく下落した場合には、当該金融商品等の減損損失等を計上する可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

2) 債務保証に係るリスク

当社グループは、連結会社以外の関係取引先である四国水族館を運営する株式会社四国水族館開発の金銭債務に対して、10億円の債務保証を行う契約を金融機関との間で締結しております。当社グループでは、債務保証等の履行を要求される可能性は僅少であると判断しておりますが、将来、債務保証等の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3) 流動性リスク

当社グループにおいて、予期せぬ事象により財務内容が悪化等した場合、必要な資金が確保できなくなり、資金繰りが困難になる場合や、資金確保に通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4) 繰延税金資産に係るリスク

当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を慎重に検討したうえで計上しておりますが、将来の業績動向等により、計上額の見直しが必要となった場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

5) 保有不動産の価格変動によるリスク

当社は、中国地方および関西地方を中心に自社ビルを保有しております。今後、地価等の資産の市場価格の変動により、保有不動産の資産価値が下落した場合は、減損損失等を計上する可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このリスクに対応するため、保有不動産に関する市場動向を定期的にモニタリングし、遊休不動産となる場合や機能的減価が認められる不動産等については、事業所の売却・移転等を含めた検討を行います。

 

6) 新規事業への取り組み

当社グループでは、事業領域の拡大のために、今後も新規事業への取り組みを進めていく方針ですが、新規事業が安定した収益基盤を構築・維持するためには継続的な設備投資等が必要となります。事業環境の変化や収益性の悪化等により、当初事業計画と異なり投資に対する十分な回収を行うことが出来なかった場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の課題と認識しており、配当政策を最重要事項として位置付けております。

配当方針については、フリーキャッシュフロー(営業活動によるキャッシュフローおよび投資活動によるキャッシュフローの合計額)を基本的な財源として、一過性の要因で業績が悪化した場合においてもDOE(株主資本配当率)に留意した安定的な配当の維持を図ります。

また、配当水準は、経営環境および今後の事業展開等を総合的に勘案し、配当性向40%を目安といたします。

上記の方針に鑑み、2024年7月期の期末配当金は、期初の配当予想に1株当たり2円増額し、1株当たり22円とさせていただきます。この結果、2024年7月期の年間配当金は22円となります。

 

内部留保金につきましては、新規事業ならびに新技術の開発への投資など、グループ全体の企業価値向上を図るために活用してまいります。

当社は、中間配当と期末の年2回の剰余金配当を行うことを可能としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であると定款に定めております。

なお、当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本的な方針としております。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2024年10月29日

定時株主総会決議

314,241

22.00