2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)リスクマネジメント体制

 当社グループは、全執行役員等で構成されるリスクマネジメント委員会を定期的に開催し、グループのリスクについて慎重かつ適正に審議を行っております。当委員会では、組織に関係する様々なリスクを一元的に洗い出し、その中でも当社グループとして事業に与える影響が大きなリスクを特定し対応策を講じるとともに、そのリスクの継続的なモニタリングを実施しております。また、リスクの発生可能性と影響度合いは、様々な社会環境の変化に応じて常に変動しているため、グループとして認識するリスクは定期的かつ必要に応じ随時見直しを行っております。

(2)経営環境関連リスク

 ① 中国におけるカントリーリスクについて

 当社グループは1990年より中国事業を行っており、商慣習や雇用面で日本と異なる環境の中にあって、これまで事業の撤退や大規模な雇用調整もなく現在に至っており、連結営業利益の重要な基盤となっております。今後とも、新たな加工技術の開発や成長が期待できる分野への販売強化により、事業の拡大を見込んでおりますが、政情不安、通商上の摩擦、反日感情の高まり、都市開発政策による立退き命令、人件費の高騰等、事業環境に大きな変化があった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対し、政治・経済情勢、事業活動を規制する法律や政策、都市開発政策等について注視する一方で、何らかの変化・変更があった場合には迅速に対応する体制としております。現状の中国情勢を勘案するとこれらリスクの発生可能性はあるものの、影響の程度については、限定的と認識しております。

 ② 東南アジア及びその他の地域におけるカントリーリスクについて

当社グループは、2013年のマレーシアパンチ完全子会社化を契機に、その後ベトナムに工場を設置するなど東南アジアでの事業を拡大しているほか、インドや欧米での事業展開にも取組んでおりますが、現地の政情不安、規制強化、経済状況の変化、通貨不安等により事業環境に大きな変化があった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対し政治・経済情勢、事業活動を規制する法律や政策等について注視し、何らかの変化・変更があった場合には迅速に対応する体制としておりますが、顕在化するリスクやその影響は様々であると認識しており、海外グループ会社の所在国の現状を考慮すると、いずれのリスクも顕在化する可能性は低いと考えております。

 ③ 為替相場の変動について

連結決算においては、海外グループ会社決算を現地通貨から邦貨換算いたしますので、制度的に人民元、米ドル、インドルピー、マレーシアリンギット等による為替変動リスクがあります。

また、グローバル展開にともない、外貨建取引が増加し、また当社においては借入金等の外貨建債権債務を有しており、為替が大きく変動した場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対しては取引通貨毎の債権債務のマリーや、先物為替予約等によるリスク対策を進めるとともに、為替変動に左右されない強い体質づくりに取組んでおります。為替変動による影響額の予測は困難でありますが、連結決算における人民元の変動による換算額への影響額は、当年度においては人民元の為替レートが1円変動した場合、売上については約12億円、営業利益については約5千万円程度となります。

 ④ 有利子負債について

当社グループでは、事業拡大にともなう生産設備等への投資の実施により、相応の有利子負債残高を有しており、金融情勢や金融機関等の融資姿勢の変化により資金調達が困難となる場合や、市場金利の上昇等により資金調達コストが増大した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は、主要取引金融機関とのコミットメントライン契約に「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載のとおりの財務制限条項が付されております。これに抵触した場合には最大で24億円の借入金について期限の利益を喪失することとなり、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し当社グループでは、利益の確保や運転資金の圧縮による自己資金の創出により有利子負債依存度の軽減を図るほか、金融政策動向のモニタリングの実施や資金調達先の多様化の推進、取引金融機関との良好な関係を維持することで、資金調達リスクの低減を図っております。これらの影響については、顕在化するリスクの内容により、その影響額は様々であると認識しておりますが、昨今の金融情勢や金融機関等の融資姿勢を考慮すると、いずれのリスクも顕在化する可能性は低いと考えております。また、財務制限条項については、その遵守条件を充足するよう適切な事業運営を行っており、抵触する可能性は低いものと考えております。

 

(3)業界及び事業関連リスク

 ① 顧客の属する業界の動向について

当社グループは、国内外で1万社を超える顧客と取引をしており、特定の顧客グループへ依存することのない、バランスのとれた顧客構造であると考えております。一方、これらの顧客の属する業界は、自動車関連、電子部品・半導体関連、家電・精密機器関連が多く、従って、これらの業界の市況や価格動向、競争激化等が、生産動向や設備投資動向を左右し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状、顧客及び顧客の属する業界の動向については、日常の営業活動による情報収集を基に分析等を行い、大きな変動が予見される場合は、営業政策や生産体制の変更を含む適切な対応策を講じております。なお、リスクの具現化の内容や規模により影響額は様々であり、また、経済情勢や顧客の属する業界の状況により発生可能性も異なるため、リスクの程度を予測することは困難であると考えております。

 ② 競合について

当社グループの事業である金型部品事業につきましては、技術面、価格面、納期面等において同業他社との競合がありますが、策定した事業戦略が計画通り進捗しない場合や、想定を超えた同業他社の動き等があった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。競合リスクについては日常的に顕在化する可能性があり、その影響については顕在化する内容により変動するため合理的に見積ることは困難であると考えておりますが、現状の対応として、標準製品については、顧客ニーズに応じた製品開発やWeb受注などの顧客利便性の向上を図るほか、製造原価低減に積極的に取組み競争力の強化に努める一方、特注品については、高い技術力に裏打ちされた一気通貫の生産体制と顧客密着型の営業体制をより強化することで差別化を図っております。

 ③ 主要原材料の仕入れについて

当社グループは、主要原材料である鋼や超硬材等の仕入れの多くを特定の専門商社やメーカーに依存しております。当社グループは、これらの仕入先から、安定的に供給を受ける体制を構築しておりますが、仕入先の経営戦略の変更や取引条件の大幅な変更、業績変動などが、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これら仕入リスクについては主要仕入先との関係の維持・強化を図っており、現状、仕入先との友好的な取引関係に変化はなく安定的な原材料供給体制を維持・継続しております。従いまして当該リスクの顕在化の可能性は低いと考えております。

 ④ 製品の品質について

当社グループは、国際的な品質管理基準に基づき、製品の品質確保に万全を期しておりますが、製品の不具合による重大な事故、クレーム等の発生により損害賠償請求訴訟等が生じた場合、多額の補償費用等が発生する可能性があります。また、当該問題により、対象製品のみならず、当社グループの製品全体の評価にも重大な影響を与え、ブランドイメージの低下、顧客の流出などを招き、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状においては、当社グループは品質管理基準の適切な運用を実施しており、品質に関するリスクの顕在化の可能性は低いと考えております。

 ⑤ 未開拓・新分野事業について

当社グループは、既存のプラスチック金型部品やプレス金型部品に加え、今後の成長戦略として未開拓事業や新分野への事業参入を計画する場合がありますが、経済状況の変化、関連する技術革新の動向、競合他社等の動きによって計画が想定通り進捗しない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。未開拓や新分野事業に進出する場合は、ある程度リスクを受容することも必要と認識しておりますが、進出の際には当社の強みを活かせる分野に的を絞るほか、市場規模の算定や戦略体系の構築、競合先の状況把握等、事業シミュレーションを十分に行いリスクに備えております。これらのリスクが具現化した場合、その影響額は新規事業の規模や投資額等により異なるため予測は困難であると認識しております。

 ⑥ 債権回収について

当社グループは、国内外で1万社を超える顧客と取引をしており、それぞれの顧客に対して与信管理を徹底しておりますが、顧客の経営状態の悪化などにより債権回収が困難になった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。債権回収リスクに関しては、顧客の経営状態の把握や、売掛金年齢管理による回収促進の徹底、取引信用保険の契約等の債権保全策の導入など対策を講じておりますが、そのリスクを完全に回避できるものではなく、経済情勢等によっても変化するものと認識しております。しかしながら当社グループの取引先は数も多く分散していることから、リスクが顕在化した場合、その影響額は限定的であると認識しております。

 ⑦ 国内物流体制について

当社グループは、国内物流について、外部物流会社への業務委託により東京ロジスティクスセンター(以下、TLC)にて一括集中管理体制で運営することを基本とし、一部地域を除き翌日配送体制となっております。しかしながら、TLCでの何等かのトラブルや自然災害等による物流業務上での支障が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状、TLCにおける物流業務については、当社社員が常駐し委託先である外部物流会社と定期的な打合せを実施する一方で、トラブル発生時や自然災害発生時の物流対応についてルールを策定するなど業務上のリスク回避に向けた取組みを行っており、当該リスクの発生の可能性は低いと考えております。

 ⑧ 情報システムについて

当社グループの事業は、販売管理システム及び生産管理システムをベースにオペレーションが行われているほか、様々な業務管理システムとコミュニケーションツール等を利用して日常業務が行われており、これらのシステムの運用上の安全性は十分に確保されていると考えております。しかしながら、自然災害、ハードウエア・ソフトウエアの不具合等を原因とするシステム障害や、ネットワークへの不正アクセス、コンピューターウイルスの感染等による情報漏洩など、予測不可能な事象が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状、当社グループでは、各管理システムの安定稼働を維持するためデータセンターの活用を進めるとともに、情報システムの安全性や情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、グループが保有する情報を適切に管理しております。また、昨今、在宅勤務等の拡大もあり、通信ネットワークの監視を通じた外部からの攻撃への対応等を強化するとともに、従業員の情報セキュリティ意識の向上を図るため教育・訓練を実施し、リスクの低減を図っております。これらの対応策により当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。

 ⑨ 固定資産について

当社グループは、顧客の幅広いニーズに対応すべく多くの生産設備等の固定資産を保有しております。これらについては「固定資産の減損に係る会計基準」を適用し、現時点で必要な減損処理は実施しておりますが、今後当社事業所及びグループ会社における損益やキャッシュ・フローの状況等によっては、さらに減損処理が必要となり当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、現時点で当該リスクの顕在化の可能性は低いと認識しておりますが、今後、経営環境の変化を注視しながら、さらなる受注獲得やコスト低減に取組んでまいります。

(4)その他のリスク

 ① 人材について

当社グループは、優秀な人材の確保と育成を重要課題としております。グループの人事制度に基づいた人事諸施策を実施し、必要に応じ社外からの有能な人材を確保するとともに、グループにおいて定めた人材育成方針に基づき、多様な施策や取組みから人材の育成を行っております。しかしながら、これらの諸施策が有効に機能しなかった場合や、人材市場の状況により必要人材のタイムリーな確保ができない場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状においては、社員の働き方を改革し、ワークライフバランスの最適化やダイバーシティ経営の実現に向けた取組み等を推進しております。また採用計画に基づく適切な採用活動を通じて安定した人材確保に努めており、これらのリスクが顕在化する可能性は低いと考えております。

 ② 重要な訴訟等について

当社グループが、国内外で事業を行っていくうえで、各国の法制度の違いなどにより、知的財産権に関する訴訟の当事者となる可能性があります。このほか、事業を行っていくうえで重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいては、保有する知的財産権の維持・保護には最善の努力を尽くしており、また事業に係る法律関連事項については専門家と十分協議して推進しており、現状、第三者との間で訴訟に発展するような案件が発生する可能性は低いと考えております。

 ③ 税制度について

当社グループは、各国の税法を遵守し事業活動を行っておりますが、事業のグローバル化の進展にともない、特に海外において、税制の改正や税務行政の変更、また、税務申告や移転価格税制における各国の税務当局との見解の相違等により、予期せぬ税負担が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらの対策として、各国の税制の理解や新たな税制改正の内容を正確に把握するなどグループ内の情報共有を緊密に行い、また、移転価格税制については、適宜専門家とも協議しながら移転価格ポリシーの整備等を進めており、これらのリスクが顕在化する可能性は低いと考えております。

 ④ 環境対策について

当社グループは、企業の社会的責任として、環境問題への取組みを非常に重要な課題と位置付けておりますが、予期せぬ環境問題が発生した場合や、関連法規などの改正等により、生産設備の変更や廃棄物処理方法の変更が必要となった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状、当社グループにおいては、「環境理念」や「環境行動指針」を定めるなど、環境問題に積極的に取組んでおり、当該リスクの顕在化の可能性は低いと考えております。

 ⑤ 災害・感染症等について

当社グループは、日本国内の他、中国・東南アジア・インド・米国に製造・販売拠点等をもって事業を運営しておりますが、これらの事業拠点において、地震、台風等の自然災害や火災等の事故災害が発生した場合、あるいはそれらの災害により電力供給や通信インフラ等に深刻な支障が生じた場合、また、戦争・テロ等の勃発や感染症が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらの災害等のリスクに対しては、被害の最小化と早期復旧を目的に、災害対応規程やBCP対応ガイドラインを定め、危機管理の徹底と速やかな対応体制の整備を図っております。また、感染症が発生した場合の対応策として、従業員の健康維持と感染拡大の防止を目的に、在宅勤務やWeb会議等の積極的な活用や従業員の体調管理の徹底を行うこととしております。これら災害や感染症等のリスクについては全てを回避することはできず、また、リスクの影響額を予測することは極めて困難であると考えております。

配当政策

3【配当政策】

当社は、財務戦略において、稼ぐ力の強化によりROIC及びROE10%以上を安定的に確保し、自己資本の充実を図るとともに、健全な財務基盤を維持しつつ、創出されたキャッシュを成長戦略投資と安定配当に最適なバランスで分配することで、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しております。

配当につきましては、配当額決定のための指標として「連結配当性向30%以上、かつ株主資本配当率(DOE)3%以上」を設定しております。

その結果、2024年3月期につきましては、1株あたりの配当額を19円40銭とさせていただきました。

当社は株主の皆様への利益還元機会の充実を図るため、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

なお、当連結会計年度に係る剰余金の配当は、以下の通りであります。

 

決議年月日

配当金額の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月10日

244

10.00

取締役会決議

2024年6月25日

229

9.40

定時株主総会決議