2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

当社企業グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。なお、当社はこれらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当連結会計年度末現在において、当社企業グループが判断したものであります。

 

(1) 工業用ミシン事業について

当社企業グループの工業用ミシン事業における製品は、工業用ミシンのなかでも環縫いミシンと呼ばれるミシンに特化しており、ユーザーであるアパレル産業の景況ならびに消費者動向による影響によっては、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

アパレル製品の生産はグローバル化が進んでおり、海外生産品の品質、価格、納期などの変化ならびにアパレル産業の生産方針の変更により、当社製品もしくは技術がそのニーズを満たさない、あるいは市場から認められない場合には、当社企業グループの販売戦略及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

(2) オートモーティヴ事業について

当社企業グループのオートモーティヴ事業における製品は、その安全性ならびに世界のサプライチェーンで確固たる地位を築いておりますが、その取引先の経営状況に変化が生じた場合は、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 海外での事業活動について

当社企業グループの販売及び製造は、大半が海外に依存しております。また、工業用ミシン事業の製品を使用する縫製産業は労働集約型産業の典型であることから、賃金水準の低い国・地域がその主要な生産地となっており、各国の縫製産業に対する政策の違い及び物流面の条件などにより、生産拠点が特定の国・地域に集中する傾向も見られます。

当社企業グループの取引先であるこのような国々のなかには、政治的、地政学的、経済的に不安定な国もあり、労働争議、テロ、戦争、内戦、通貨危機などによる為替取引の凍結、債務不履行、投資資産の接収、もしくは地震などの自然災害によっては海外拠点経営が困難になる可能性があります。

さらに、工業用ミシン事業における各国繊維製品の輸出入に関する規制の急激な強化もしくは緩和が実施されることにより、市場の需給関係が崩れ、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、移転価格税制を始めとする規制・税制などの変更による予測できない事態の発生により、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 生産拠点の集中について

工業用ミシン事業において製造拠点の中国集中によるリスク回避を目的として、ベトナムに製造子会社を設立したことにより、工業用ミシン事業の製造拠点が、日本、中国及びベトナムの3カ国に分散され、製造拠点の集中リスクは緩和されております。同様にオートモーティヴ事業におきましても、中国以外の拠点としてベトナムに製造子会社を設立しており、さらには世界的な自動車部品サプライチェーンを担う生産体制の継続・強化も視野に入れ、メキシコにも拠点を設立しております。

しかしながら、両事業とも、主力となる製造拠点が中国及びベトナムに存在しているため、両国におけるカントリーリスクをカバーすべく、独立行政法人日本貿易保険の海外投資保険に加入しておりますが、政治的要因による法的規則及び商習慣の違いもしくは地震などの天変地異、電力事情の悪化及びその他の予測不可能な事態が発生した場合、工場の操業を同時に停止せざるを得ない事態が懸念されます。併せて、従業員の確保ならびに教育が十分に行き届かなかった場合などは、当社企業グループの財政状態及び経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります

 

(5) 為替の影響等について

当社企業グループは、グローバルな事業展開をしており、取引通貨の多くは円以外の通貨となっております。各地域における売上高、費用、資産などの現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のため円換算しており、換算時の為替レートの変動が当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は外貨建て取引について、為替変動に対処するためにインパクトローンによってリスクを軽減させる措置を講じておりますが、為替水準の予測を超えた変動が発生した場合、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 知的財産権について

当社企業グループは、他社製品と差別化できる技術の開発及び知識の蓄積に努めており、保有する独自技術については、商標権などを含めたほかの知的財産権と併せ、権利取得による保護を積極的に図っております。

しかしながら、出願が特許と認められないあるいは権利保護のために講じる手段が成功しなかった場合、第三者の類似品との競合状態が発生し、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

一方、当社企業グループでは、第三者の知的財産権を侵害しないように努めておりますが、当社企業グループの認識していない知的財産権に関し訴訟などを提起される可能性があります。このような訴訟等が発生した場合、損害賠償及びロイヤリティ支出の発生あるいは事業活動に制約が生じるなど、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 製品の欠陥について

当社企業グループは、独自の品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。過去においても製品の欠陥による重大な事故は発生しておりませんが、今後全ての製品について欠陥がなく、将来リコールが発生しないという保証はなく、当社企業グループの製品もしくはサービスに関連した欠陥及び問題に対して責任を負う可能性があります。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を充分にカバーできるという保証はありません。

さらに、経済合理性のある条件で当社企業グループがこのような保険を契約期間満了後も更新できるとは限らず、大規模なリコールや製造物責任賠償に繋がるような製品の欠陥が生じた場合は、当社企業グループの財政状態及び経営成績のほか、ブランドイメージに影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 工業用ミシン製品の構成比の変化による収益力低下について

工業用ミシン事業における製品は、アパレルの生産地域の動向及びファッションの動向により、使用されるミシンの種類に変化が生じる場合があり、環縫いミシンへの需要に変化を及ぼす場合には、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社企業グループが製造している環縫いミシンにも多くの種類があり、製品ごとの単価ならびに収益率が異なるため、製品の販売構成比が変化した場合にも、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 競合等の影響について

工業用ミシン事業におきましては、当社企業グループが製造及び販売する各製品の多くは、同業他社の類似製品と競合状態にあり、当社企業グループの製品の優位性が低下すれば、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、新興国メーカーの普及価格帯製品の価格下落が進み、価格競争に巻き込まれた場合、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

オートモーティヴ事業におきましては、自動車部品業界の材料価格の高騰及び調達先の変更、価格変動動向ならびに地理的・政治的影響を強く受けることがあるため、特定取引先への依存度低減、取引先分散ならびに原価低減などに取り組んでおりますが、企業努力を上回る価格抑制圧力を受けた場合もしくは取引先の経営状況によっては、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)金融市場の変動について

当社企業グループは、緩和的な金融環境を踏まえ主に変動金利調達を行っているため、市場金利の上昇が、有利子負債のうち変動金利部分の支払利息を増加させ、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

さらには、事業の拡大や技術革新を目指し、新たな投資などによる資金が必要となった場合、金融市場の大幅な変化などによっては、資金調達条件が悪化する可能性があり、また当社企業グループの年金資産に関しては、市場性のある証券の公正価値や利子率など、金融市場における変動が年金制度の積立不足金額や債務を増加させ、当社企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)人材の確保について

当社企業グループは、売上及び製造ともに海外比率が高く、激しい競争のなかで事業を継続的に発展させるためには、高い専門性をもった世界で活躍できる技術者ならびにグローバルな経営戦略や組織運営に優れた人材を確保し、育成していく必要がありますが、近年は少子高齢化等による労働人口の減少によって、人材の確保及び育成が難航した場合、長期的には当社企業グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元の充実を経営の最重要政策と位置付け、継続的かつ安定的な配当を維持し、経営環境や業績を総合的に勘案した適正な利益配分を基本方針としており、配当性向30%以上を目標としております。

当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としており、配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。なお、当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

当事業年度の剰余金の配当につきましては、中間配当金は1株当たり5円といたしましたが、経営成績及び財務状況等を総合的に勘案し、期末配当は誠に遺憾ながら無配とさせていただきました。

内部留保金につきましては、強固な事業構造構築のための設備の増強及び研究開発の充実ならびに財務体質の強化を目的として、資金の需要のバランスを考慮しつつ、柔軟に活用してまいります。

 

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、次のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たりの配当額(円)

2023年10月26日

取締役会決議

124,053

5.00