2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    3,509名(単体) 13,071名(連結)
  • 平均年齢
    41.3歳(単体)
  • 平均勤続年数
    15.3年(単体)
  • 平均年収
    7,757,563円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1)  連結会社の状況

  2024年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

株式会社ダイフク

3,509

コンテックグループ

487

Daifuku North America, Inc.グループ

4,723

Clean Factomation, Inc.

931

大福自動搬送設備(蘇州)有限公司

254

その他

3,167

合計

13,071

 

(注) 1 従業員数は就業人員数です。

2 Daifuku North America, Inc.は2024年1月1日付けでDaifuku North America Holding Companyより社名変更しています。

     

(2)  提出会社の状況

  2024年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

3,509

(335)

41.3

15.3

7,757,563

 

(注) 1  従業員数は就業人員数です。

2  平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

3  従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の当事業年度の年間平均雇用人員です。

4  臨時従業員には、有期雇用契約の従業員を含み、派遣社員を除いています。

5 海外支店において生年月日等の情報が把握できない従業員については、平均年齢の算出の母数から除外しています。

 

(3)  労働組合の状況

当社グループには、1948年2月に結成されたダイフク労働組合があり、2024年3月31日現在組合員数は2,877名です。

組合結成以来、労使関係は極めて円満に推移し、労使協調して社業の発展に努力しています。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 

 

2024年

4月1日現在

2024年3月期

 

 

 

管理職に占める女性労働者の割合

(注1)

男性の育児

休業等取得率

男女の賃金の格差(注1)

 

 

 

(注2)

全労働者

うち正規

雇用労働者

うち非正規

雇用労働者

① 提出会社

㈱ダイフク

5.3

65

69.1

76.3

53.1

② 連結子会社

㈱コンテック

5.1

75

65.0

73.9

54.4

 

(注)1  「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。男女の賃金の格差について、賃金制度は男女ともに共通であり、同等の職務・地位において性別による賃金差異は発生しません。差異の主な理由は、男女の管理職比率の差によるものです。女性管理職比率の向上に関する取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標」に記載しています。今後女性管理職の登用を進めることで、男女間の賃金差異についても縮小に向かうものと考えています。

   2  「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、2024年3月31日現在において当社グループが判断したもので、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

(1) サステナビリティ全般に関する開示

社是「日新(ひにあらた)」、経営理念「モノを動かし、心を動かす。」のもと、グループ行動規範に従い、持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指しています。サステナビリティ経営の実践に際しては、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則からなる「国連グローバル・コンパクト」に賛同・署名するとともに、「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けて取り組んでいます。また、2030年のありたい姿である長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」と、その中間点となる2027年中期経営計画(以下、新中計)において、経済価値と社会価値双方の視点を踏まえた統合目標を設定し、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。2024年4月には、当社グループがサステナビリティを推進するにあたり、すべての役員・社員の理解及び共感を促進するため「ダイフクグループサステナビリティ基本方針」を策定しました。

 

① ガバナンス

1) サステナビリティ関連のリスク及び機会に対する監督・執行体制

取締役会は、サステナビリティ関連のリスクや機会に対応するための経営戦略をはじめ、中長期的な企業価値の向上に向けた取り組みを監督します。取締役会においては、代表取締役社長(CEO)がサステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に対して責任を負っています。取締役会のメンバーは、研修や有識者との意見交換、お客さまとの対話等を通じて、サステナビリティ課題への見識を高めることで、当社グループの取り組みを監督するためのスキル及びコンピテンシーの向上を図っています。

当社は、2024年12月期よりサステナビリティに関する委員会の体制を見直し、「サステナビリティ経営委員会」を新設しました。従来のサステナビリティ委員会の役割は、サステナビリティ経営委員会の傘下で「サステナビリティ推進委員会」が担います。サステナビリティ経営委員会は、サステナビリティ課題についての重要事項を取締役会へ報告、上程するほか、中長期的な企業価値の向上に重きを置いた経営戦略上の重要な議論、計画の進捗・成果の確認などを行います。その傘下にあるサステナビリティ推進委員会及び「環境経営分科会」「人権・サプライチェーン分科会」「人的資本経営分科会」は、サステナビリティ経営委員会と連携し、経営戦略に基づいた実務レベルのより具体的な施策を検討・実行する役割を担っています。

 

〔図〕サステナビリティに関する委員会の体制(2024年12月期)


 

 

 

〔表〕各組織の役割

 

メンバー

役割

取締役会

議長:代表取締役社長

取締役(社内5名、社外5名)

経営方針・経営計画やコーポレートガバナンス体制の決定等、経営上の重要事項の決定と監督機能を担う

サステナビリティ経営委員会

委員長:代表取締役社長

コーポレート部門長、事業部門長、グループチーフオフィサーほか

・中長期にわたる企業の価値創造に重きを置いた経営戦略上の重要な議論、計画の進捗・成果の確認などを行い、経営の高度化促進を図る

サステナビリティ推進委員会

委員長:代表取締役社長

コーポレート部門長、事業部門長、グループチーフオフィサーほか

・サステナビリティ経営委員会の下部組織として、経営戦略に基づき、実務レベルで環境・社会・ガバナンスに関するグループ横断の取り組みを推進する

Global Sustainability Meeting

リーダー:コーポレート部門長

海外子会社、サステナビリティ経営委員会メンバーほか

・サステナビリティ経営をグループ一体で推進するにあたり、ESG課題に関する海外子会社への情報共有と議論を行う

リスクマネジメント委員会

委員長:代表取締役社長

コーポレート部門長、事業部門長、グループチーフオフィサーほか

・企業活動に大きく影響を与える重要なリスクに対して、全社的なリスクマネジメントを行う

・定期的にリスクアセスメントを行い、重要なリスクを特定・評価し、対応策の立案や方針・規程・体制等の整備及び充実を図る

 

 

2) サステナビリティ関連目標のモニタリングとインセンティブ

サステナビリティ課題に対する計画・目標は、2024年3月期までサステナビリティアクションプランにて設定し、旧サステナビリティ委員会で進捗管理をしていましたが、2024年12月期以降は新中計の枠組みの中でサステナビリティ経営委員会が進捗管理を行い、取締役会が監督しています。

また、2024年12月期より社内取締役を対象とした役員報酬制度を改定しており、業績連動報酬の支給基準において、サステナビリティ関連の評価指標も考慮して評点を算出することとしています。賞与については安全及びCO2排出量削減目標の進捗状況、株式給付信託(BBT)については外部のESG評価機関(MSCI、FTSE、CDP)における評価とCO2排出量削減目標の達成度が評点の算出基準に含まれています。詳細は、「4 コーポレートガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」をご参照ください。

 

〔表〕2024年3月期におけるサステナビリティ関連の取締役会等での議題

取締役会

・「ダイフク環境ビジョン2050」の改定(4月)

・リスクアセスメント実施報告・今後の対応(10月)

・長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」及び「2027年中期経営計画」(10月、3月)

サステナビリティ委員会(4回開催)

・サステナビリティアクションプラン進捗報告

・サステナビリティ基本方針の策定

・社外からのESG評価

・「ダイフク環境ビジョン2050」の改定

・カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み

・人権デュー・ディリジェンスの取り組み

サステナブル調達ガイドラインの策定 など

 

 

戦略

サステナビリティに対する取り組みは、2022年3月期から2024年3月期にかけてサステナビリティアクションプランのもとで推進してきましたが、2024年12月期以降は長期ビジョン、及び新中計における枠組みに統合し、推進していきます。長期ビジョン、及び新中計の策定にあたっては、未来の社会像からバックキャスティングを行い、当社グループがお客さまに対して提供する製品・サービス(アウトプット)と、それらを通じて社会に提供される価値(アウトカム)を整理しました。その上で、長期ビジョン及び新中計の達成に向けてグループで対応する重要課題をマテリアリティと定義し、それらを軸に戦略・施策・行動計画を具体化しました。新中計の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針」をご参照ください。

 

リスク管理

当社グループは、国内外のグループ会社を対象としたリスクアセスメントを定期的に行っており、企業活動に大きく影響を与える重要なリスクを特定・評価しています。重要なリスクに対して、リスクマネジメント委員会が全社的なリスクマネジメントを行い、対応策の立案や方針・規程・体制等の整備及び充実を図っています。リスクアセスメントで認識されたリスク情報は、必要に応じて取締役会をはじめとする他の会議体へ報告・共有され、経営戦略に反映されます。詳細は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

新中計の策定では、重要課題(マテリアリティ)の特定プロセスにおいて、2024年3月期に実施したリスクアセスメントの結果をインプット情報の一つとして活用しました。機会とリスクの検討結果、他社の動向、ESG評価機関からの要請事項などもインプット情報として合わせて考慮し、課題の候補を「ステークホルダーへの影響度」と「長期ビジョン達成への影響度」の2軸で評価し、マテリアリティを特定しました。

優先して対応すべきサステナビリティ関連のリスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会のほか、リスクマネジメント委員会も連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。

 

④ 指標と目標

サステナビリティアクションプラン

当社グループは、重要課題(マテリアリティ)に対するKPI(実績評価指標)及び目標を設定し、毎年進捗状況を開示しています。新中計におけるKPI及び目標の詳細は、以下のURLをご参照ください。

2027年中期経営計画におけるマテリアリティ及びKPI

https://www.daifuku.com/jp/sustainability/assets/pdf/management/materiality/materiality_2027.pdf

サステナビリティアクションプランの最終年度である2024年3月期の実績は2024年8月に当社ウェブサイトで開示予定です。詳細は、以下のURLをご参照ください。

サステナビリティアクションプラン

https://www.daifuku.com/jp/sustainability/management/plan/

サステナビリティアクションプラン 2022年3月期~2023年3月期実績

https://www.daifuku.com/jp/sustainability/assets/pdf/management/plan/actionplan_results_2021.pdf

 

 

(2) 気候変動に関する開示

① ガバナンス

気候関連のリスク及び機会は、前述のサステナビリティ全般のガバナンスのプロセスにおいてモニタリング、管理、監督されています。

 

② 戦略

1) 気候関連のリスク及び機会の特定

<気候関連のリスク及び機会の洗い出し>

事業運営に影響を与える気候変動要因は、脱炭素社会に向けた規制強化や低炭素化に向けた技術の進展、気候変動対応による市場の変化、気候変動による災害等の頻発等が挙げられます。当社グループの事業内容を踏まえ、各要因によって引き起こされる気候関連の移行リスク・物理的リスク・機会を洗い出しました。

 

〔図〕当社グループの事業に影響する主な要因


 

<気候関連のリスク及び機会の評価>

洗い出した移行リスク・物理的リスク・機会の項目に対して、当社グループの事業への影響度の大きさを定性・定量で評価し、これらの結果を、「リスク発現・機会実現までの期間」「リスク発現・機会実現の可能性」「財務影響度」を軸に、以下のとおり整理しました。それぞれのリスク及び機会について、適切な対応策を実行していきます。下記表の「期間」「可能性」「影響度」の定義は以下のとおりです。また、「リスク・機会への主な対応」の詳細については当社ウェブサイトをご参照ください。

 

期間

短期:3年未満、中期:3~10年、長期:10年以上

可能性

小:やや不確実、中:中間、高:やや確実

影響度

売上高

小:60億円未満、中:60~600億円、大:600億円以上

利益・コスト

小:6億円未満、中:6~60億円、大:60億円以上

 

 

気候変動

https://www.daifuku.com/jp/sustainability/environment/climate-change/

 

〔表〕当社グループにおける重大リスク・機会

分類

気候変動

ドライバー

主なリスク・機会

期間

可能性

影響度

リスク・機会への
主な対応

移行リスク
(1.5℃シナリオ)

政策規制

炭素価格等のGHG排出規制強化、カーボンプライシング導入

工場、事業所で排出するGHGへの炭素税導入による操業コスト増加

長期

グループ一体でのスコープ1・スコープ2の削減

材料調達、輸送への炭素税導入またはGHG削減対応による調達コストの増加

長期

サプライチェーンでの環境負荷低減

市場

脱炭素技術開発の進展

金属材料・レアメタルの需要増による部品調達コストの増加

中期~長期

評判

気候変動問題に対する取り組み評価の厳格化、情報開示要請の高まり

自社イメージ悪化による株価の下落、投資対象除外による資金調達コストの増加

長期

中~大

気候変動に関する開示情報の充実化

物理的リスク
(4℃シナリオ)

急性

洪水、台風、高潮等の気象災害の増加・激甚化

拠点損傷や操業停止、サプライチェーン寸断による操業停止、代替品調達

短期~長期

リスクアセスメントとリスク低減策の実施

慢性

海面の慢性的な上昇

海面上昇による拠点の移転

長期

熱波および慢性的な気温上昇

気温上昇による空調コスト、メンテナンスの増加、ヒートストレスによる生産性の低下

短期~長期

労働環境の維持・改善

干ばつ等による水リスクの増加

干ばつによる稼働率の低下

短期~長期

水使用量の削減

機会
(1.5℃シナリオ)

製品

サービス

環境規制強化による電子機器への省電力要請の高まり

半導体需要増による半導体ライン向け製品売上の増加

中期

半導体需要への戦略的対応

EVシフト(EV、FCVの普及)

EV化に伴う自動車製造ライン増設による自社製品の売上の増加

中期~長期

自動車のEV化への対応

IoTを活用した低炭素化の進展

AI、IoT関連製品の需要増による売上の増加、および活用によるコスト削減

中期~長期

事業へのIoT、ICT、AI等先端技術の活用

フードロスをはじめとした廃棄物削減要請の高まり

コールドチェーンに関連する物流・倉庫施設向け製品の売上の増加

中期~長期

コールドチェーン・eコマース需要への対応

低炭素化のための作業の効率化・省人化・省エネ要望の高まり

生産・物流の効率化・オートメーション化に寄与する製品・サービスの売上増加

中期~長期

マテハンシステムの環境価値と社会価値の両立

 

2) 重大リスクのシナリオ分析

気候関連のリスク及び機会を特定した項目のうち、今後顕在化する可能性が高く、重大な事業影響を与えるリスクについてシナリオ分析を実施しました。シナリオは、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)によって示されているものを参照しました。

 

移行リスク

移行リスク・機会は、炭素税(カーボンプライシング)導入による操業コストの影響について、関連するエネルギーコストと併せて、以下のシナリオを設定して分析を行いました。炭素税は、将来想定されるGHG排出量(スコープ1及びスコープ2)を、当社グループ2030年売上予測、排出量削減目標を基に、排出量削減を進めた場合(脱炭素シナリオ)とそうでない場合(成り行きシナリオ)とで算出し、IEAにおいてシナリオ別に予測される炭素価格をかけあわせて事業影響額を評価しました。エネルギーコストは、当社グループが削減目標どおりに取り組みを進めた場合(脱炭素シナリオ)と取り組みを進めずに事業規模が拡大した場合(成り行きシナリオ)とでエネルギー使用量を設定し、IEA等で示されるエネルギー価格の推移を参考に、今後のエネルギーコストについて評価しました。

 

〔表〕当社グループで想定した気候変動シナリオ(移行リスク)

脱炭素シナリオ(1.5℃シナリオ)

IEA WEO2023 NZE:Net Zero Emissions by 2050 Scenario

(2050年ネットゼロ排出シナリオ)

脱炭素シナリオ(1.7℃シナリオ)

IEA WEO2023 APS:Announced Pledges Scenario

(発表済み誓約シナリオ)

成り行きシナリオ(4℃シナリオ)

IEA WEO2023 STEPS:Stated Policies Scenario

(公表政策シナリオ)

 

 

<炭素税>

成り行きシナリオ(4℃シナリオ)の経路をたどった場合は、2030年で約6億円のコスト増が見込まれます。一方、脱炭素の取り組みを積極的に推進した脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)においては、2030年時点では、約3億円のコスト増が見込まれます。

 

<エネルギーコスト>

成り行きシナリオ(4℃シナリオ)の経路をたどった場合、2023年3月期時点と比較して、2030年では約37%のコスト増が見込まれます。一方、脱炭素の取り組みを積極的に推進した脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)においては、 2023年3月期時点と比べて、2030年では、約12~16%のコスト増が見込まれます。

 

炭素税の負担、エネルギーコストの双方において、脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)に比べ、成り行きシナリオ(4℃シナリオ)での負担が大きく、当社グループとして脱炭素化、省エネ化の取り組みを積極的に進める理由・メリットがあることが再認識されました。

取り組みを進めるためには、大規模な投資が必要となるものの、取り組みを進めない場合には取り組みを進める場合に比べ、数億円規模で追加負担が想定されます。事業に影響を与えるリスクを軽減するため、2030年の削減目標の達成を目指して脱炭素化の取り組みを強化していきます。

 

物理的リスク

物理的リスクは、温暖化進行による気象災害の増加が重大なリスクとなります。そこで、当社グループ主要24拠点(国内1拠点、海外23拠点)について、気象災害がもたらす影響を定性的に評価しました。評価では、2℃シナリオ(SSP1‐2.6)、4℃シナリオ(SSP5‐8.5)下における洪水、高潮、干ばつ、熱波の各拠点のハザードを調査し、ハザードの多寡に応じてA(高リスク)~E(低リスク)の5段階のグレードを付与しました。本評価でA~Bの高リスクとなった拠点数の推移を以下に示します。

評価の結果、洪水、高潮、干ばつは、2℃シナリオ、4℃シナリオのいずれにおいても高リスク拠点数はほぼ増加せず、気候変動による影響は限定的であることがわかりました。熱波は、4℃シナリオの2050年、2090年にかけて高リスク拠点数が増加することがわかりました。熱波による影響は、空調コストや機器メンテナンスの増加、ヒートストレスによる生産性低下等が挙げられます。当社グループでは、工事現場・工場での従業員の熱中症対策を進めるなど、リスクを軽減する取り組みを積極的に進めていきます。

 

 

〔表〕当社グループで想定した気候変動シナリオ(物理的リスク)

2℃シナリオ

IPCC第6次評価報告書 (SSP1‐2.6)

4℃シナリオ

IPCC第6次評価報告書 (SSP5‐8.5)

 

 

〔表〕気候変動による高リスク拠点数

災害

現在

2℃シナリオ(SSP1‐2.6)

4℃シナリオ(SSP5‐8.5)

2050年

2090年

2050年

2090年

洪水

高潮

干ばつ

熱波

16

 

 

③ リスク管理

気候関連のリスク及び機会の識別については、外部専門家のアドバイスのもと見直しを実施し、2024年12月期に開示しました。移行リスク、物理的リスク、機会の各項目に対し、発現時期、発生可能性、当社グループへの影響度を、定性・定量の両面から評価し、重大なリスクと機会を特定しています。加えて、移行リスクと物理的リスクについて、複数の気温上昇を想定したシナリオ分析も行いました。詳細は、「(2) 気候変動に関する開示 ②戦略」をご参照ください。優先して対応すべき気候関連のリスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会のほか、リスクマネジメント委員会とも連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。

 

④ 指標と目標

当社グループは、「ダイフク環境ビジョン2050」及び新中計において「気候変動への対応」を重要課題と捉え、以下の目標を設定しています。2030年12月期目標は、2023年にSBT(Science Based Targets)イニシアティブの認定を受けており、スコープ1・スコープ2については、1.5℃水準の目標、スコープ3(カテゴリ1及び11)についてはWB(Well-below)2℃水準の目標となっています。2024年5月、2030年12月期のスコープ1・スコープ2の削減目標(2019年3月期比)を50.4%から60%へとさらに上方修正するとともに、再生可能エネルギー由来の電力比率の目標を新設しました。

 

KPI(実績評価指標)

2030年12月期(目標)

2023年3月期(実績)

自社CO2排出量(スコープ1+2)

60%削減(2019年3月期比)

34%削減(2019年3月期比)

再生可能エネルギー由来の電力比率

80%(日本は2027年12月期に100%を達成見込み)

29.1%

購入した製品・サービスに伴うCO2排出量

(スコープ3 カテゴリ1)

30%削減(2019年3月期比)

販売した製品の使用に伴うCO2排出量

(スコープ3 カテゴリ11)

 

※スコープ3のカテゴリ1及びカテゴリ11合わせての目標

 

 

参考:カーボンニュートラルへのロードマップ


 

(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

① 戦略

当社は、経営理念に基づいた多様な人材の雇用と、従業員の一人ひとりが「働きがい」と「働きやすさ」を感じ、いきいきと仕事ができる環境の整備を推進しています。具体的には、「従業員エンゲージメントの向上」「グループ人材マネジメント基盤の構築」「女性管理職の登用推進」に取り組んでいます。

 

〔表〕重点施策

重点施策

内容

従業員エンゲージメントの向上

当社グループでは従業員エンゲージメントを、従業員の「働きがい」「働きやすさ」「従業員と会社が相互に成長できるキャリアの実現」と定義し、各要素の向上を目指している。

2024年3月期からは従業員の長期的なキャリア実現を目的として「社内出向制度」・「社内公募制度」を開始。

グループ人材マネジメント基盤の構築

グループ全体でキーポジションを明確化し、一定層以上の人材をグループ人材と位置付け、その「評価」と「育成」をグループ横断的に促進する仕組みを構築し、2024年3月期から運用を開始。

女性管理職の登用推進

管理職登用の特別枠の設定に加え、女性管理職候補の裾野拡大のため、2024年3月期からは係長職昇進においても特別枠を設定。

 

 

 

② 指標と目標

人的資本に関する戦略に基づき、体系的かつ重点的に施策を展開しています。指標及び目標については、2024年12月期から開始する新中計をもとに、エンゲージメントの向上、人材の確保・育成、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から以下のとおり設定しています。

 

〔表〕指標及び目標

指標

2022年

3月期実績

2023年

3月期実績

2024年

3月期実績

2024年
12月期目標

備考

従業員エンゲージメントサーベイ

国内グループ

働きがい:

56%
 働きやすさ:51%(肯定的回答率)

海外グループ

働きがい:

70%

働きやすさ:

76%(肯定的回答率)

各国別の平均スコア以上

2022年3月期:

国内グループ会社対象に実施

2024年3月期:

海外グループ会社で実施

2024年12月期:

国内+海外グループ会社

(一部)で実施予定

後継候補充足率

68%

76%

2024年12月期より新たに目標

設定

女性管理職数

20名

26名

32名

41名

障がい者雇用率

2.54%

2.48%

2.42%

2.5%以上

2022~2024年3月期目標:

2.3%(法定雇用率)

2024年12月期目標:

2.5%(法定雇用率)

 

 

③ 目標に対する取り組み

1) 従業員エンゲージメントの向上

2021年11月に国内グループ会社を対象に「ダイフクグループ エンゲージメントサーベイ」を実施し、お客さま志向や経営層への信頼といった強みの部分が見られた一方、組織間の連携や従業員個人のキャリア形成支援などが課題として認識されました。サーベイ結果を参考にしながら、2023年4月に役割・成果をベースとした貢献による処遇を基軸とする新人事処遇制度(資格制度、報酬制度、評価制度)を導入しました。同時に、従業員の長期的なキャリア形成を支援するため、2024年3月期より社内出向制度・社内公募制度を開始しています。

また、2023年6月には海外グループ会社向けにエンゲージメントサーベイを実施。個社毎にサーベイ結果を踏まえてアクションプランを策定し、日本本社から適宜サポートを行いながら、ダイフクグループ全体で従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。

なお、2024年12月期には国内グループ会社及び海外グループ会社の一部でエンゲージメントサーベイの実施を予定しており、国内グループ会社においては2回目の実施となりますので、「働きがい」・「働きやすさ」の日本平均スコアとの比較に加えて、前回調査結果との経年比較及び課題の改善状況の確認を行います。

2) グループ人材マネジメント基盤の構築

一定層以上の人材をグループ人材と位置付け、その「評価」と「育成」を事業部門ならびにグループ横断的に促進する体制を2024年3月期より運用開始しています。具体的には、①ダイフクグループで経営に重要なインパクトを及ぼすポジションをキーポジションとして選定、②キーポジションに求められる「役割・責任」「行動特性(コンピテンシー)」「経験、能力、資格」をポジション毎に文書化、③キーポジションの後継候補者をリスト化、④後継候補者の育成計画の策定・実施、の流れで進めています。キーポジションに対する後継候補者の育成や登用は「人材委員会」にて一元的に管理し、後継候補者の充足度及び育成施策のモニタリング、キーポジションへの登用の承認、事業部門間の異動に関する調整、決定を行います。

 

 

〔図〕後継者育成計画のステップ


 

3) 女性管理職の登用推進

管理職登用時の特別枠の設定に加え、女性管理職候補の裾野を拡大するため、管理職昇格の要件となる係長昇進においても特別枠を新たに設定しました。また、将来の女性管理職の育成を目的とした女性リーダー育成プログラムを新設し、女性リーダー候補のリーダーシップスキルの獲得及びキャリアビジョンの明確化を図るとともに、受講者の上司向けには女性従業員のキャリア形成支援に関する研修を実施しています。

4) 障がいのある従業員の活躍

滋賀事業所に所属の「業務サービスグループ」では、公共職業安定所、就労アドバイザーならびに学校関係者等と連携しながら障がい者の定期採用を継続的に行っており、一人ひとりが能力を発揮し、やりがいを持って働き続けられるよう、独自の教育プログラムを組んで人材を育成しています。入社後5年程度を目安に実習を重ねながら適性を見極め、職務能力を段階的に高めることで、各事業部の製造部門をはじめとする現場で活躍できる人材を輩出しています。

当社における人材の多様性の確保を含む社内環境整備に関する方針、人材の育成に関する方針等は以下のURLをご参照ください。

コーポレートガバナンス・コードの各原則に係る当社の取り組み状況

https://www.daifuku.com/jp/ir/assets/governance_initiative.pdf