2024年12月期有価証券報告書より
  • 社員数
    3,691名(単体) 11,042名(連結)
  • 平均年齢
    41.6歳(単体)
  • 平均勤続年数
    14.7年(単体)
  • 平均年収
    8,228,038円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1)  連結会社の状況

  2024年12月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

株式会社ダイフク

3,691

コンテックグループ

477

Daifuku North America, Inc.グループ

2,848

Clean Factomation, Inc.

904

大福自動搬送設備(蘇州)有限公司

266

その他

2,856

合計

11,042

 

(注) 1 従業員数は就業人員数です。

2 当連結会計年度において、主に米国における事業縮小などの要因により、当社グループの従業員数は前連結会計年度末から2,029名減少し11,042名となりました。

 

(2)  提出会社の状況

  2024年12月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

3,691

(263)

41.6

14.7

8,228,038

 

(注) 1  従業員数は就業人員数です。

2  平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

3  従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の当事業年度の年間平均雇用人員です。

4  臨時従業員には、有期雇用契約の従業員を含み、派遣社員を除いています。

5 海外支店において生年月日等の情報が把握できない従業員については、平均年齢の算出の母数から除外しています。

6  当事業年度は、決算期変更により9カ月決算となっておりますが、平均年間給与については、1年間(2024年1月1日から2024年12月31日までの12カ月間)で計算した金額を記載しています。

 

(3)  労働組合の状況

当社グループには、1948年2月に結成されたダイフク労働組合があり、2024年12月31日現在組合員数は2,952名です。

組合結成以来、労使関係は極めて円満に推移し、労使協調して社業の発展に努力しています。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 

 

2024年12月期

 

 

 

管理職に占める女性労働者の割合

(注1)

男性の育児

休業等取得率

男女の賃金の格差(注1)

 

 

 

(注2)

全労働者

うち正規

雇用労働者

うち非正規

雇用労働者

① 提出会社

㈱ダイフク

5.4

65

73.1

77.6

56.9

② 連結子会社

㈱コンテック

5.4

100

67.4

77.4

57.0

 

(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。男女の賃金格差について、賃金制度は男女ともに共通であり、同等の職務・職位において性別による賃金差異は発生しません。差異の主な理由は、男女の管理職比率の差によるものです。女性管理職比率の向上に関する取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標」に記載しています。今後女性管理職の登用を進めることで、男女間の賃金差異についても縮小に向かうものと考えています。なお、2024年12月期の管理職における男女の賃金差異は91.4%となっています。

 2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、本文中における将来に関する事項の記述については、2024年12月31日現在において当社グループが判断したものです。

(1) サステナビリティ全般に関する開示

サステナビリティ経営の実践に際しては、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則からなる「国連グローバル・コンパクト」に賛同・署名するとともに、「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けて取り組んでいます。また、2030年のありたい姿である長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」(以下、2030長期ビジョン)と、その中間点となる「2027年中期経営計画」(以下、2027中計)において、経済価値と社会価値双方の視点を踏まえた統合目標を設定し、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。2024年4月には、すべての役員・従業員の理解及び共感を促進するために「ダイフクグループサステナビリティ基本方針」を策定し、この方針に基づきグループ一体でサステナビリティ推進に取り組んでいます。サステナビリティに関する様々な活動の詳細は、以下URLをご参照ください。

サステナビリティ

https://www.daifuku.com/jp/sustainability/

 

① ガバナンス

1) サステナビリティ関連のリスク及び機会に対する監督・執行体制

取締役会は、サステナビリティ関連のリスクや機会に対応するための経営戦略をはじめ、中長期的な企業価値の向上に向けた取り組みを監督します。取締役会においては、代表取締役社長(CEO)がサステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に対して責任を負っています。取締役会のメンバーは、研修や有識者との意見交換、お客さまとの対話等を通じて、サステナビリティ課題への見識を高めることで、当社グループの取り組みを監督するためのスキル及びコンピテンシーの向上を図っています。

当社は、2024年12月期よりサステナビリティに関する委員会の体制を見直し、「サステナビリティ経営委員会」を設置しました。サステナビリティ経営委員会は、サステナビリティ課題についての重要事項を取締役会へ報告、上程するほか、中長期的な企業価値の向上に重きを置いた経営戦略上の重要な議論、計画の進捗・成果の確認などを行います。その傘下にある「サステナビリティ推進委員会」及び「環境経営分科会」「人権・サプライチェーン分科会」「人的資本経営分科会」は、サステナビリティ経営委員会と連携し、経営戦略に基づいた実務レベルのより具体的な施策を検討・実行する役割を担っています。

 

サステナビリティに関する委員会の体制(2025年12月期)


 

各組織の役割

 

メンバー

役割

取締役会

議長:代表取締役社長

取締役

経営方針・経営計画やコーポレートガバナンス体制の決定等、経営上の重要事項の決定と監督機能を担う

サステナビリティ経営委員会

委員長:代表取締役社長

代表取締役副社長、コーポレート部門長、事業部門長、グループチーフオフィサーほか

・中長期にわたる企業の価値創造に重きを置いた経営戦略上の重要な議論、計画の進捗・成果の確認などを行い、経営の高度化促進を図る

リスクマネジメント委員会

委員長:代表取締役副社長

コーポレート部門長、事業部門長、グループチーフオフィサーほか

・企業活動に大きく影響を与える重要なリスクに対して、全社的なリスクマネジメントを行う

・定期的にリスクアセスメントを行い、重要なリスクを特定・評価し、対応策の立案や方針・規程・体制等の整備及び充実を図る

グループ人材委員会

委員長:代表取締役社長

代表取締役副社長、コーポレート部門長、事業部門長ほか

当社グループの人材の経験・スキルの見える化を進め、キーポジション(主要幹部職)の後継候補者計画の策定や計画的な後継候補者の育成・登用を実施する

サステナビリティ推進委員会

委員長:代表取締役副社長

コーポレート部門長、事業部門長、グループチーフオフィサーほか

・サステナビリティ経営委員会の下部組織として、経営戦略に基づき、実務レベルで環境・社会・ガバナンスに関するグループ横断の取り組みを推進する

Global Sustainability Meeting

リーダー:コーポレート部門長

海外子会社責任者、サステナビリティ経営委員会メンバーほか

・サステナビリティ経営をグループ一体で推進するにあたり、ESG課題に関する海外子会社への情報共有と議論を行う

 

 

2) サステナビリティ関連目標のモニタリングとインセンティブ

サステナビリティ課題に対する計画・目標は、2027中計の枠組みの中でサステナビリティ経営委員会が進捗管理を行い、取締役会が監督しています。

また、2024年12月期より社内取締役を対象とした役員報酬制度を改定しており、業績連動報酬の支給基準において、サステナビリティ関連の評価指標も考慮して評点を算出することとしています。賞与については安全及びCO2排出量削減目標の進捗状況、株式給付信託(BBT)については外部のESG評価機関(MSCI、FTSE、CDP)における評価とCO2排出量削減目標の達成度が評点の算出基準に含まれています。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレートガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」をご参照ください。

 

2024年12月期におけるサステナビリティ関連の取締役会等での議題

取締役会

 

・2030長期ビジョン及び2027中計の開示(4月、5月)

・「ダイフク環境ビジョン2050」における目標の見直し(4月、8月)

・株主・投資家との対話状況(4月、10月)

・TCFD提言に基づく開示の見直し(5月)

・ダイフクグループ コーポレートガバナンスに対する基本方針の改定(6月)

 

 

サステナビリティ経営委員会(1回開催)

 

・2030長期ビジョンの達成に向けた成長戦略

・海外子会社における課題の共有(ESG関連課題含む)

サステナビリティ推進委員会(2回開催)

 

・サステナビリティアクションプラン実績報告

・社外からのESG評価

・「ダイフク環境ビジョン2050」の改定

・カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み進捗報告

・人権デュー・ディリジェンスの取り組み報告

リスクマネジメント委員会(3回開催)

 

・シビアリスクへの対応計画及び実績の報告

・人材関連リスク、サイバーセキュリティリスクへの対応方針の決定

・事業継続マネジメント強化に向けた議論

グループ人材委員会(2回開催)

 

・キーポジション(主要幹部職)に対する後継候補者の充足状況の確認

・未充足のキーポジションに対する後継候補者の検討

・後継候補者育成プログラムの確認

 

 

戦略

サステナビリティに対する取り組みは、2030長期ビジョン及び2027中計における枠組みに統合し、推進しています。2030長期ビジョン及び2027中計の策定にあたっては、未来の社会像からバックキャスティングを行い、当社グループがお客さまに対して提供する製品・サービス(アウトプット)と、それらを通じて社会に提供される価値(アウトカム)を整理しました。その上で、2030長期ビジョン及び2027中計の達成に向けてグループで対応する重要課題をマテリアリティと定義し、それらを軸に戦略・施策・行動計画を具体化しました。2027中計の詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針」をご参照ください。

 

リスク管理

当社グループは、国内外のグループ会社を対象としたリスクアセスメントを定期的に行っており、企業活動に大きく影響を与える重要なリスクを特定・評価しています。重要なリスクに対して、リスクマネジメント委員会が全社的なリスクマネジメントを行い、対応策の立案や方針・規程・体制等の整備及び充実を図っています。リスクアセスメントで認識されたリスク情報は、必要に応じて取締役会をはじめとする他の会議体へ報告・共有され、経営戦略に反映されます。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

2027中計の策定では、マテリアリティの特定プロセスにおいて、2024年3月期に実施したリスクアセスメントの結果をインプット情報の一つとして活用しました。機会とリスクの検討結果、他社の動向、ESG評価機関からの要請事項などもインプット情報として合わせて考慮し、課題の候補を「ステークホルダーへの影響度」と「長期ビジョン達成への影響度」の2軸で評価し、マテリアリティを特定しました。

優先して対応すべきサステナビリティ関連のリスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会、リスクマネジメント委員会、グループ人材委員会が連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。

 

 

④ 指標と目標

2027中計では、重要課題ごとにKPIと目標を設定しています。1年目の2024年12月期の実績は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針」をご参照ください。

 

(2) 気候変動に関する開示

① ガバナンス

気候関連のリスク及び機会は、前述のサステナビリティ全般のガバナンスのプロセスにおいてモニタリング、管理、監督されています。

 

② 戦略

1) 気候関連のリスク及び機会の特定

<気候関連のリスク及び機会の洗い出し>

事業運営に影響を与える気候変動要因は、脱炭素社会に向けた規制強化や低炭素化に向けた技術の進展、気候変動対応による市場の変化、気候変動による災害等の頻発等が挙げられます。当社グループの事業内容を踏まえ、各要因によって引き起こされる気候関連の移行リスク・物理的リスク・機会を洗い出しました。移行リスクについては、全事業範囲を分析対象とし、物理リスクについては、主要拠点及び生産拠点を対象としました。

 

当社グループの事業に影響する主な要因


 

<気候関連のリスク及び機会の評価>

洗い出した移行リスク・物理的リスク・機会の項目に対して、当社グループの事業への影響度の大きさを定性・定量で評価し、これらの結果を、「リスク発現・機会実現までの期間」「リスク発現・機会実現の可能性」「財務影響度」を軸に、以下のとおり整理しました。それぞれのリスク及び機会について、適切な対応策を実行していきます。

 

下記表の「期間」「可能性」「影響度」の定義は以下のとおりです。

期間

短期:3年未満、中期:3~10年、長期:10年以上

可能性

小:やや不確実、中:中間、高:やや確実

影響度

 

売上高

60億円未満

60~600億円

600億円以上

利益・コスト

6億円未満

6~60億円

60億円以上

 

 

「リスク・機会への主な対応」の詳細については当社ウェブサイトをご参照ください。

気候変動

https://www.daifuku.com/jp/sustainability/environment/climate-change/

 

当社グループにおける重大リスク・機会

分類

気候変動

ドライバー

主なリスク・機会

期間

可能性

影響度

リスク・機会への主な対応

移行

リスク
(1.5℃シナリオ)

政策規制

炭素価格等のGHG排出規制強化、カーボンプライシング導入

工場、事業所で排出するGHGへの炭素税導入による操業コスト増加

長期

グループ一体でのスコープ1・スコープ2の削減

材料調達、輸送への炭素税導入又はGHG削減対応による調達コストの増加

長期

サプライチェーンでの環境負荷低減

市場

脱炭素技術開発の進展

金属材料・レアメタルの需要増による部品調達コストの増加

中期~長期

評判

気候変動問題に対する取り組み評価の厳格化、情報開示要請の高まり

自社イメージ悪化による株価の下落、投資対象除外による資金調達コストの増加

長期

中~大

気候変動に関する開示情報の充実化

物理的

リスク
(4℃シナリオ)

急性

洪水、台風、高潮等の気象災害の増加・激甚化

拠点損傷や操業停止、サプライチェーン寸断による操業停止、代替品調達

短期~長期

中~大※

リスクアセスメントとリスク低減策の実施

慢性

海面の慢性的な上昇

海面上昇による拠点の移転

長期

熱波及び慢性的な気温上昇

気温上昇による空調コスト、メンテナンスの増加、ヒートストレスによる生産性の低下

短期~長期

労働環境の維持・改善

干ばつ等による水リスクの増加

干ばつによる稼働率の低下

短期~長期

水使用量の削減

 

 

 

分類

気候変動

ドライバー

主なリスク・機会

期間

可能性

影響度

リスク・機会への主な対応

機会
(1.5℃シナリオ)

製品

サービス

環境規制強化による電子機器への省電力要請の高まり

半導体需要増による半導体ライン向け製品売上の増加

中期

半導体需要への戦略的対応

EVシフト(EV、FCVの普及)

EV化に伴う自動車製造ライン増設による自社製品の売上の増加

中期~長期

自動車のEV化への対応

IoTを活用した低炭素化の進展

AI、IoT関連製品の需要増による売上の増加、及び活用によるコスト削減

中期~長期

事業へのIoT、ICT、AI等先端技術の活用

フードロスをはじめとした廃棄物削減要請の高まり

コールドチェーンに関連する物流・倉庫施設向け製品の売上の増加

中期~長期

コールドチェーン・eコマース需要への対応

低炭素化のための作業の効率化・省人化・省エネ要望の高まり

生産・物流の効率化・オートメーション化に寄与する製品・サービスの売上増加

中期~長期

マテハンシステムの環境価値と社会価値の両立

 

※2024年3月期の有価証券報告書にて「小」としていましたが、近年の気候変動に伴う世界的な気象災害の発生頻度の増加や被害の激甚化を鑑み、影響度に関する評価を見直しました。

 

2) 重大リスクのシナリオ分析

気候関連のリスク及び機会を特定した項目のうち、今後顕在化する可能性が高く、重大な事業影響を与えるリスクについてシナリオ分析を実施しました。シナリオは、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)によって示されているものを参照しました。

 

移行リスク

移行リスク・機会は、炭素税(カーボンプライシング)導入による操業コストの影響について、関連するエネルギーコストと併せて、以下のシナリオを設定して分析を行いました。炭素税は、将来想定されるGHG排出量(スコープ1・スコープ2)を、当社グループ2030年売上予測、排出量削減目標を基に、排出量削減を進めた場合(脱炭素シナリオ)とそうでない場合(成り行きシナリオ)とで算出し、IEAにおいてシナリオ別に予測される炭素価格を掛け合わせて事業影響額を評価しました。エネルギーコストは、当社グループが削減目標どおりに取り組みを進めた場合(脱炭素シナリオ)と取り組みを進めずに事業規模が拡大した場合(成り行きシナリオ)とでエネルギー使用量を設定し、IEA等で示されるエネルギー価格の推移を参考に、今後のエネルギーコストについて評価しました。

 

当社グループで想定した気候変動シナリオ(移行リスク)

脱炭素シナリオ

(1.5℃シナリオ)

IEA WEO2023 NZE:Net Zero Emissions by 2050 Scenario

(2050年ネットゼロ排出シナリオ)

脱炭素シナリオ

(1.7℃シナリオ)

IEA WEO2023 APS:Announced Pledges Scenario

(発表済み誓約シナリオ)

成り行きシナリオ

(4℃シナリオ)

IEA WEO2023 STEPS:Stated Policies Scenario

(公表政策シナリオ)

 

 

 

<炭素税>

成り行きシナリオ(4℃シナリオ)の経路をたどった場合は、2030年で約6億円のコスト増が見込まれます。一方、脱炭素の取り組みを積極的に推進した脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)においては、2030年時点では、約3億円のコスト増が見込まれます。

 

<エネルギーコスト>

成り行きシナリオ(4℃シナリオ)の経路をたどった場合、2023年3月期時点と比較して、2030年では約37%のコスト増が見込まれます。一方、脱炭素の取り組みを積極的に推進した脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)においては、 2023年3月期時点と比べて、2030年では、約12~16%のコスト増が見込まれます。

炭素税の負担、エネルギーコストの双方において、脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)に比べ、成り行きシナリオ(4℃シナリオ)での負担が大きく、当社グループとして脱炭素化、省エネ化の取り組みを積極的に進める理由・メリットがあることが再認識されました。

取り組みを進めるためには、大規模な投資が必要となるものの、取り組みを進めない場合には取り組みを進める場合に比べ、数億円規模で炭素税及びエネルギーコストの追加負担が想定されます。事業に影響を与えるリスクを軽減するため、2030年の削減目標の達成を目指して脱炭素化の取り組みを強化していきます。

 

物理的リスク

物理的リスクは、温暖化進行による気象災害の増加が重大なリスクとなります。そこで、当社グループ主要24拠点(国内1拠点、海外23拠点)について、気象災害がもたらす影響を定性的に評価しました。評価では、2℃シナリオ(SSP1‐2.6)、4℃シナリオ(SSP5‐8.5)下における洪水、高潮、干ばつ、熱波の各拠点のハザードを調査し、ハザードの多寡に応じてA(高リスク)~E(低リスク)の5段階のグレードを付与しました。本評価でA~Bの高リスクとなった拠点数の推移を以下に示します。

評価の結果、洪水、高潮、干ばつは、2℃シナリオ、4℃シナリオのいずれにおいても高リスク拠点数はほぼ増加せず、気候変動による影響は限定的であることがわかりました。熱波は、4℃シナリオの2050年、2090年にかけて高リスク拠点数が増加することがわかりました。熱波による影響は、空調コストや機器メンテナンスの増加、ヒートストレスによる生産性低下等が挙げられます。当社グループでは、工事現場・工場での従業員の熱中症対策を進めるなど、リスクを軽減する取り組みを積極的に進めていきます。

 

 当社グループで想定した気候変動シナリオ(物理的リスク)

2℃シナリオ

IPCC第6次評価報告書 (SSP1‐2.6)

4℃シナリオ

IPCC第6次評価報告書 (SSP5‐8.5)

 

 

 気候変動による高リスク拠点数

災害

現在

2℃シナリオ(SSP1‐2.6)

4℃シナリオ(SSP5‐8.5)

2050年

2090年

2050年

2090年

洪水

高潮

干ばつ

熱波

16

 

 

③ リスク管理

気候関連のリスク及び機会の識別については、外部専門家のアドバイスのもと見直しを実施し、2024年12月期に開示しました。移行リスク・物理的リスク・機会の各項目に対し、発現時期、発生可能性、当社グループへの影響度を、定性・定量の両面から評価し、重大なリスクと機会を特定しています。加えて、移行リスクと物理的リスクについて、複数の気温上昇を想定したシナリオ分析も行いました。詳細は、「(2) 気候変動に関する開示 ②戦略」をご参照ください。優先して対応すべき気候関連のリスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会のほか、リスクマネジメント委員会とも連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。

 

④ 指標と目標

当社グループは、「ダイフク環境ビジョン2050」及び2027中計において「気候変動への対応」を重要課題と捉え、以下の目標を設定しています。2030年12月期目標は、2023年にSBT(Science Based Targets)イニシアティブの認定を受けており、スコープ1・スコープ2については、1.5℃水準の目標、スコープ3(カテゴリ1及び11)についてはWB(Well-below)2℃水準の目標となっています。2024年5月、2030年12月期のスコープ1・スコープ2の削減目標(2019年3月期比)を50.4%から60%へとさらに上方修正するとともに、再生可能エネルギー由来の電力比率の目標を新設しました。これらの目標についてはサステナビリティ推進委員会が進捗状況及び妥当性についてレビューし、目標を見直す場合は取締役会へ上申し、決議されます。

現在、国内及び海外での再生可能エネルギー由来の電力導入により、スコープ1・スコープ2の目標に対する実績は順調に進捗しています。スコープ3については、間接的な排出となるため外部環境を鑑み、現実的な取り組みから着実に取り組んでいます。

 

KPI

(実績評価指標)

2030年12月期

(目標)

2024年12月期

(実績)

自社CO2排出量

(スコープ1+2)

60%削減

(2019年3月期比)

56.4%削減

(2019年3月期比)

データの信頼性向上のために第三者機関による検証を受ける前の速報値です。検証後の確定数値は、2025年5月に当社ウェブサイトで開示予定です。

再生可能エネルギー由来の

電力比率

80%

(日本は2027年12月期に

100%を達成見込み)

66.6%

データの信頼性向上のために第三者機関による検証を受ける前の速報値です。検証後の確定数値は、2025年5月に当社ウェブサイトで開示予定です。

購入した製品・サービスに伴う

CO2排出量

(スコープ3 カテゴリ1)

30%削減

(2019年3月期比)

・国内主要サプライヤー150社を対象にCO2削減に向けたオンライン説明会を実施し、サプライヤーのCO2排出量データの収集を開始

販売した製品の使用に伴うCO2排出量

(スコープ3 カテゴリ11)

・全ての新規製品・システム開発におけるLCA(ライフサイクルアセスメント)の実施

・顧客の再生可能エネルギー導入状況の調査手法検討

 

※ スコープ3のカテゴリ1及びカテゴリ11合わせての目標

 

 

参考:カーボンニュートラルへのロードマップ


(注)CO2排出量はGHGプロトコルに則り、年度ごとに算定。スコープ1・スコープ2の算定対象範囲については、支配力基準の経営支配力基準とし、すべての連結子会社の排出量を算入

 

(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

① 戦略

当社グループにとって、人材は価値創造の源泉であり、人的資本経営を実行する原動力は、自由闊達な企業風土のもと、長年培ってきた豊富な経験とノウハウ、そしてお客さまのニーズに真摯に応え、先端技術を追求し続けるDNAです。従業員一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出し、活躍できる環境を整備し、仕事にやりがいを感じるとともに、ノウハウを持続的に継承していける取り組みを推進します。

また、2030長期ビジョンでのありたい姿を実現するために、「人材の確保・育成」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「エンゲージメントの向上」の3つを軸とした諸施策を通じて、人的資本の拡充・強化を図ります。

 

② 指標と目標

1) 人材の確保・育成:グループ人材マネジメント基盤の構築

当社グループはこれまで事業部門制のもと、それぞれの事業特性を考慮した部門最適の仕組みや人事の運用を行って成長を続けてきました。今後は、変化の速い事業環境を捉えイノベーションを創出していくために、部門間の人材の流動性を高め、社内にあるノウハウを効率的に共有・展開できる仕組みが必要です。より全社的な視点でグループ全体の人材を管理できる基盤の構築を目指しています。

まず、将来的に当社を支えていくキーポジション(主要幹部職)を特定し、そのポジションに求められる人材要件を明確化するとともに、適材後継者の計画的な登用を進めます。CEO等役員の計画的な後継者育成は重要ですが、役員の後継者だけではなく、部長などの幹部レベルからキーポジションをグループレベルで特定し、将来を見据えた後継者を計画的に育成していきます。2024年12月期には「グループ人材委員会」を発足させ、グループ及び事業部門の各人材委員会においてCEOや事業部門トップなどと議論を重ねつつ、キーポジションにあたる人材の把握と育成を行い、グループ全体で後継者候補を確保していきます。

2027中計におけるマテリアリティのKPIとして、キーポジションにおける後継候補充足率を2027年12月期までに100%を目標(2024年12月期は73%)としていますが、その先を見据えて計画を実施し、グループ内の人材の経験・スキルの見える化を図りながら、全社として適所適材な人員配置を推進します。

 

 

2) ダイバーシティ&インクルージョン

2027中計では引き続き、多様な人材が活躍できる環境づくりを推進しています。女性管理職数(比率)については、管理職候補者である係長職も含め、将来の女性管理職の育成を目的としたプログラムを充実させ、キャリア形成を支援するなどして、現在の40名(5.4%)から、2027中計最終年度までに60名(7.6%)を目指します。

多様な価値観や経験・発想を持つ人材が組織内にいることで、イノベーションの創出が期待でき、当社グループの持続的成長につながります。ダイバーシティの状況は国・地域によって異なりますが、例えば日本では、女性の活躍推進や国籍、障がいの有無にとらわれない人材の活躍が求められており、そういった人材が働きやすい環境の整備に取り組んでいます。中長期的には、より多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材を活用していきます。

また、外国籍人材を積極的に採用しています。海外の技術系大学の有力校から直接採用しており、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムなどから採用してきました。今後も性別・国籍にかかわらず優秀な技術職をさらに採用していけるよう、職場環境の整備を行っていきます。

 

3) 従業員エンゲージメントの向上

2030長期ビジョン及び2027中計より、「エンゲージメントの向上」を新たにマテリアリティと特定し、KPIとして国内グループ会社の肯定的回答率を60%超(2026年12月期)、海外グループ会社は国別平均スコア以上(2026年12月期)としました。2027中計期間ではさらに調査対象の会社を拡大し、より本格的にグローバルで展開していきます。

エンゲージメントサーベイの目的は、組織としての現状を見える化し、課題を抽出するとともに、その改善策を実施していくことです。国・地域による違いを理解し、今後の持続的成長につなげるための課題を見出すことが重要です。引き続き、事業部門と連携しながらグループ全体でエンゲージメントの向上に取り組んでいきます。

 

指標及び目標

マテリアリティ

指標

2027年12月期

目標

2024年12月期

実績

人材の確保・育成

キーポジションにおける後継者充足率

・人材プールの整備

(経験・スキルの見える化)

・後継候補充足率:100%

・経験、スキルの収集項目と方法の検討

(2025年12月期より収集開始)

・グループ人材委員会:2回開催、事業部門人材委員会:11回開催

・後継候補充足率 73%

専門人材確保に対応した人事制度の複線化

・新たな制度・施策(高度専門人材向けの処遇・勤務制度・勤務場所・採用施策)の検討及び導入

・導入した制度の改善

・技術系人材確保に向けた新拠点設置PJを組成

・一部職種において地域限定型社員制度の検討開始

ダイバーシティ&インクルージョン

女性管理職数(比率)

60名(7.6%)

・女性管理職数(率)

40名(5.4%)

多様な人材が活躍できる環境整備

・ダイバーシティに関する社内啓発の推進

・マイノリティに配慮した職場環境整備

・女性活躍推進企業として厚生労働省が認定する「えるぼし」(☆☆2段階目)を取得

・D&I分科会及び労使専門委員会で育児関連の改善ニーズを確認し、育児介護休業法改正(2025年4月)に合わせて制度見直しを実施予定

 

 

 

マテリアリティ

指標

2027年12月期

目標

2024年12月期

実績

エンゲージメントの向上

エンゲージメントサーベイスコア

・国内:肯定的回答率60%超

・海外:国別平均スコア以上

(隔年実施のため2026年12月期の目標)

・国内

働きがい56%(日本平均58%)

働きやすさ51%(日本平均58%)

エンゲージメントサーベイ実施と課題対応

・結果からの課題抽出と対策実施

・前年度サーベイを実施した海外子会社を訪問し施策フォローを実施(13社)