リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。ただし、以下に記載された項目以外のリスクが生じた場合においても、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらのリスク発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努めることで、発生後の損失を最小化することを基本方針としております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) デバイスメーカの設備投資動向等によるリスク
当社グループが製造販売する真空技術応用装置は、水晶デバイス、光学デバイス及び電子部品等を加工するための生産設備であるため、当社グループの業績はこれらデバイスメーカの設備投資動向に影響を受ける傾向にあります。また、デバイスメーカの設備投資は、スマートフォンなどの情報通信機器、デジタル家電等の需要に影響を受ける形となります。当社の想定よりも急激な変動が起きた場合、急激な需要増に対応できず受注機会を逸したり、急激な需要減により受注が困難になったり、受注キャンセルが生じる可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしては、電子部品市場の動向を注視し、デバイスメーカとの良好な関係から得られた情報等に基づき、人員の手配や稼働日数等の調整により需要の変動に合わせた生産能力となるよう機動的な対策を講じております。
(2) 顧客ニーズの高度化、製品の開発に関わるリスク
当社グループの主要な取引先であるデバイスメーカでは、革新的な新製品の開発を適切なタイミングで実施することが重要となっており、技術革新のスピードが加速し、製品のライフサイクルが短期化しています。そのため、デバイスメーカの当社グループ開発装置に対するニーズが高機能化・高精度化・多様化しており、受注案件によっては技術的に相当程度困難を伴う場合があります。市場・製品動向の変化や当社グループの技術を代替し得る技術革新が想定を超えて発生した場合、予期せぬ新技術への対応や開発期間の長期化、開発費用の増大を招き、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、継続して新製品を開発するために、必要な研究開発投資を継続して行っております。顧客の開発活動を強力に支援するため、2019年度には相模原工場内に新たに研究開発棟を建設しました。受注に際しては、技術的な対応可能性及び収益性を勘案し、開発テーマについては、将来の市場、製品及び技術動向や顧客からの要望などに基づき選定し、その実効性と効率性の向上に努めております。
(3) 販売価格の低下によるリスク
電子部品の価格は、厳しい値下げ要請や同業者間の熾烈な競争により、恒常的に低下する傾向にあります。最近ではアジア地域の電子部品メーカの台頭により価格競争はさらに激しさを増しております。そのため、電子部品の開発や生産設備である当社グループの装置に対しても、取引先であるデバイスメーカから装置販売価格の引下げ要求が恒常化しているうえ、競合する他社メーカとの販売競争が激しさを増しています。価格競争の一層の激化により、販売価格の下落を補うコストダウンや売上の拡大が必ずしも実現できず、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して当社グループは、継続的かつ積極的なコストダウンを推進し、売上の拡大や収益性の向上に努めております。
(4) 資材の調達に関わるリスク
当社グループは、生産財を全て社外から調達しているため、原材料の価格上昇に伴う仕入価格の上昇や需給逼迫、自然災害等に起因する生産財の調達難による生産への影響があります。また、装置の品質への影響としては、加工業者の加工能力が挙げられます。想定を超える急激な原材料価格の高騰や生産財の供給悪化が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して当社グループは、仕入先との情報共有、重要資材について政策的な在庫確保、仕入先の分散化などを実施することで安定的な供給確保に努めております。また、品質の維持向上のために必要と判断した場合には、仕入先に対する指導を実施しております。
(5) 個別受注・個別仕様によるリスク
不安定な世界情勢が続く中、スマートフォンをはじめとする情報通信機器やデジタル家電等のセットメーカは、最終消費財の需要見通しを慎重に見極め、在庫を圧縮する傾向にあります。そのため、当社グループの主要取引先であるデバイスメーカは、セットメーカからの納入リードタイムの短縮要請が強まっており、当社グループに対しても、以前より厳しい納期での引合いとなる傾向が強まってきております。したがって当社グループは、受注金額、製品仕様等の調整・折衝を行っている段階で、受注確度が高いと判断した場合には、材料等の先行手配や見込生産をすることもありますが、最終的には受注に至らない場合もあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して当社グループは、見込生産の判断については、経営会議で慎重な審議をするとともに可能な限りデバイスメーカの意思表示を確認するよう努めております。また、相対的に他の装置へ転用可能性が高い部材から先行手配をするなどリスク軽減に努めております。
(6) 海外事業展開によるリスク
海外での事業展開においては、当該国・地域の政情、為替、税制等の法制度、金融・輸出入に関する諸規制、社会資本の整備状況、その他地域的特殊性及びこれら諸要因の急激な変化の影響を受ける傾向にあります。当社グループは、中国(上海)に子会社が2社あり、主に中国・台湾を中心としたアジアで事業を展開するデバイスメーカに対して装置納入及びアフターサービスを展開しております。近年の中国を中心とした新興国市場が拡大しており、新興国における政治・経済・紛争など急激な変化が起きた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して当社グループは、毎月の経営会議で海外子会社の経営状況を把握するとともに、コンサルティング会社からの継続的な情報収集等により、中国の法規制等の動向を注視し必要な対策を講じております。現時点で新たな海外展開の具体的な計画はありませんが、海外展開にあたり、拠点はインフラの整備状況やサプライチェーンをはじめ生産コストや採算性等を総合的に判断して配置することとしております。特に新興国への進出ではそのリスクを慎重に検討した上で判断することとしております。
(7) 知的財産権によるリスク
当社グループは、真空技術を応用した薄膜形成装置の製造に関する特許を保有し、積極的に新規権利獲得に努めています。特に技術革新の著しい電子部品業界向けの生産設備であるため知的財産権は重要な経営資源の一つであり、知的財産権の保護、知的財産権にからむ紛争の回避は重要な経営課題であります。しかし、当社グループの知的財産権が第三者により無効とされる可能性、特定の地域で十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性もあります。このような場合、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、結果として第三者の特許を侵害するに至った場合やその他知的財産権に係る紛争が発生した場合には、当社グループの製品の生産・販売が制約を受けたり、損害賠償等の支払が発生することで当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して当社グループは、製品等の開発、製造、販売その他事業活動によって、第三者の知的財産権を侵害しないよう予め調査を行うとともに、継続的に他社特許出願・許諾状況をモニタリングし、リスクの回避に努めております。
(8) 外国為替変動によるリスク
当社グループの海外売上比率は約45%であり、海外にも子会社を有していることから、生産・販売活動が為替変動の影響を受けます。為替変動は、当社グループの外貨建取引から発生する収益・費用及び資産・負債の円換算額を変動させ、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、為替変動リスクを軽減させるため、原則として円建取引をしております。例外的に外貨建取引を行う場合には、為替変動を販売価格に反映させるよう努めております。
(9)災害・感染症等によるリスク
当社グループは、事業所所在地における災害の発生や感染症の流行等により、操業を停止する可能性があります。製造業の基本である安全と工場災害防止に注力していますが、想定を超える事態が発生した場合には、建物や設備の倒壊・破損による損害や感染症等による生産の中断等が発生した場合、顧客への納品が遅延すること等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、災害対策規程を整備して事態発生に備えるとともに、従業員の安全確保を第一にしつつ、災害や感染症の未然防止、早期復旧、取引先との良好な関係の構築に努め、リスク分散に取り組んでおります。
なお、2020年年初より顕在化した新型コロナウイルスの感染拡大における当社グループへの具体的な影響としては、海外渡航制限や日本を含む各国の入国制限などが実施されたことで、物流の停滞による資材調達の遅延発生や顧客の海外工場へ出張ができないことで装置の立ち上げ作業ができないことなどにより、生産計画の遅れという形で表れましたが、衛生管理の徹底や、時差出勤・在宅勤務等の実施による感染防止、中国子会社社員による日本からのリモート支援による装置立ち上げなどの取り組みにより、影響軽減に努めております。
(10)情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業活動を通じて、生産技術、研究開発、調達、販売等に関する個人情報を含む機密情報を入手・保有しており、これらを情報システム上で管理しております。災害やサイバー攻撃等外的要因や人為的要因等により、障害等が生じると、重要な業務やサービスの停止、機密情報・データや個人情報の盗取や漏洩等のインシデントを引き起こし、事業活動の継続に支障をきたす等、当社グループ業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して当社グループは、情報システムのハード面・ソフト面を含めた適切なセキュリティ対策を講じるとともに、社員の情報リテラシー向上のための教育・啓発を継続的に行っております。
(11)環境規制・気候変動に関するリスク
地球環境保全や気候変動対策は世界的な社会課題の一つであり、環境関連法令・規則や規制が将来さらに厳しくなる可能性や適用の範囲が拡大される可能性があります。これに対応するため当社グループに追加的な義務やコストが発生する可能性があります。また、対応不足や遅れにより、想定外の急速な脱炭素社会への移行に対応できないことで企業ブランドの低下を招くなど、当社グループ業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して当社グループは、ISO14001の国際規格に基づいた環境マネジメントシステムの運用等を通じて法令・規則や規制等を遵守するとともに、環境負荷の少ない製品開発、製造工程における省エネルギー・省資源に取り組んでおります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識しております。業績の伸張度に応じた安定的な経営基盤の確保及び財務体質の健全性維持を勘案しつつ、配当性向30~40%を目安としながら、株主資本配当率(DOE)の観点も取り入れて、配当水準の向上と安定化を目指していくこと、剰余金の配当は年1回(期末配当)とすることを基本方針としております。
内部留保につきましては、経営環境の変化に対応すべく、コスト競争力を高め、生産設備並びに技術開発体制の強化に備えるとともに、今後の事業展開に向け有効に活用していく所存です。
当社は、取締役会の決議によって、会社法第459条第1項各号に掲げる事項を定めることができる旨を定款に定めておりますが、剰余金の配当の決定機関につきましては、期末配当については株主総会、中間配当をする場合については取締役会とする予定です。
上記方針に基づき、当事業年度の配当につきましては、1株当たり70円とすることといたしました。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。なお、配当金の総額には株式給付信託(J-ESOP)に対する配当金4,641千円が含まれております。