2026年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

1.通商・地政学リスク

当社グループはグローバルに事業活動を展開しており、中国・アジアを中心とした生産拠点や、世界各地に販売会社を有しております。このため、米中関係をはじめ、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢などの国際情勢の変化は、当社グループの事業運営、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

特に、米中関係を背景とした通商政策や関税制度、輸出入規制等については、今後も見直しや変更が行われる可能性があり、その内容や適用範囲によっては、原材料・部品等の調達コストの上昇や、サプライチェーンの混乱が生じるおそれがあります。また、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や、中東情勢の不安定化に伴い、各国による経済制裁や取引規制、エネルギー政策の変更等が行われた場合には、当社グループの生産活動や販売活動に制約が生じる可能性があります。

さらに、中東情勢等を背景とした国際物流環境の変化により、主要航路における輸送の停滞や輸送コストの上昇が発生する可能性があり、これらは製品供給や収益性に影響を及ぼすおそれがあります。

これらのリスクは、発生時期や影響の程度を完全に予測することは困難であり、状況によっては当社グループの事業運営や業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

当社グループでは、米中関係やロシア・ウクライナ情勢、中東情勢を含む国際情勢の変化が事業活動に影響を及ぼす可能性があることを踏まえ、グローバルでの情報収集と分析を継続しております。各地域の現地法人・拠点と連携し、通商政策、関税制度、輸出入規制等の動向を把握するとともに、関係部門が連携したリスク管理を行っております。

米国を中心とした関税制度や通商政策の変更に伴うコスト増加リスクに対しては、関税動向や関連する規制変更を継続的に注視し、追加関税や新たな規制が導入された場合には、速やかに事業への影響を分析いたします。関税等により増加するコストについては、製品価格への適切な反映やコスト削減の取り組みを進めることで、収益への影響の低減に努めてまいります。また、中長期的な事業環境の変化を踏まえ、生産・調達拠点の最適化についても継続的に検討しております。

ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢に関連して各国による経済制裁や取引規制等が継続・強化される可能性があることから、関連法令及び規制の遵守を徹底するとともに、事業活動や取引の可否について慎重な判断を行ってまいります。

さらに、中東情勢等に起因する国際物流環境の変化に伴う輸送リスクに対しては、各生産拠点において利用航路や港湾の分散を進めるとともに、物流体制の見直しを行うことで、サプライチェーンの安定性向上に努めてまいります。

これらの取り組みにより、国際情勢や通商環境の変化が当社グループの事業運営に与える影響を最小限に抑えるよう努めてまいります。

 

 

2.事業環境の変化に関するリスク

・プリンティング市場の構造変化
オフィス・ホーム向けのプリンティング市場は、デジタル化の進展や働き方の多様化を背景に、印刷ボリュームの減少傾向が継続しており、今後も市場全体として緩やかな縮小が見込まれております。プリンティング・アンド・ソリューションズ事業は、当社グループの売上及び収益において重要な位置を占めていることから、市場環境の変化への対応が十分に進まない場合、当社グループの業績や収益基盤に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・企業間競争の激化
当社グループは、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業をはじめ、各事業分野において、グローバルに事業を展開する企業や新興メーカー等との競争に直面しております。競合他社による価格競争の激化や新製品・新技術の投入、業界再編の進行等により、市場環境が大きく変化した場合には、販売価格の低下や市場シェアの変動を通じて、当社グループの業績及び収益性に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

・プリンティング市場の構造変化
既存事業の収益力強化に加え、成長分野への注力を通じて、事業全体の構成を段階的に見直しております。
オフィス・ホーム向け市場においては、機器販売に加え、契約型サービスやサブスクリプションモデルを含む「つながるビジネス」の拡充を進め、顧客との継続的な関係構築を強化するとともに、顧客生涯価値(LTV)の向上を図ってまいります。業務用途を含むラベリング分野では、用途に応じた最適なソリューション提供を強化し、事業拡大に注力しております。

また、ドミノと産業用プリンターを含むインダストリアル・プリンティング事業では、アナログからデジタルへの移行や自動化ニーズの高まりを背景に成長が続いており、これまでの技術を活かして、産業用印刷市場でのさらなる成長と収益性向上、持続可能な事業構造の強化を目指しております。

 

・企業間競争の激化
既存事業における競争力の維持・強化を図りつつ、成長が見込まれる分野への展開を進めることで、事業全体としての競争力向上に取り組んでおります。
各市場において顧客価値を重視した製品・サービスの提供を行うとともに、当社グループのグローバルな販売・サービスネットワークを活用した提案力の強化を進めております。あわせて、業務効率化の推進、開発・製造コストの低減、品質及び信頼性の向上を通じて、競争環境の変化に柔軟に対応できる事業基盤の構築を進めております。

 

 

2.事業環境の変化に関するリスク

・世界経済状況の変動
当社グループはグローバルに事業を展開しているため、世界経済の変動が各地域市場の需要動向に影響を与える場合があります。景気後退等により、顧客の設備投資や消費が抑制される場合には、当社製品及びサービスへの需要が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらの経済環境の変動は、その発生時期や影響の程度を予測することが困難であり、状況によっては中長期的に当社グループの事業運営や収益に影響を与える可能性があります。

 

・世界経済状況の変動
当社グループでは、短期的な経済変動に左右されにくい安定した収益基盤の確立を目指し、高付加価値の製品・サービスの提供に加え、開発からアフターサービスまでを含めた一貫した機能強化に取り組んでおります。
プリンティング・アンド・ソリューションズ事業においては、A4機を主力としたオフィス・ホーム市場向け製品や、成長分野である業務用ラベリング分野に注力しております。ストレスフリーな印刷体験や消耗品の自動配送等を提供する契約型サービスやサブスクリプションモデル等を含む「つながるビジネス」の拡大を通じて、継続的な収益の確保と収益力の強化を図ってまいります。
インダストリアル・プリンティング事業では、新製品の投入に加え、サービス・ソリューション事業の強化や事業基盤の最適化を進めております。自動化やデータ分析等の高付加価値サービスを通じて、顧客の生産性向上と市場競争力の強化に貢献してまいります。

マシナリー事業においては、高生産性・省エネルギー製品の展開やグローバルな販売・サービス体制の強化を進めることで、顧客の競争力向上及びCO₂排出削減に貢献するとともに、固定費や原材料費の削減を通じて、経済環境の変化に対応可能な収益構造の構築に取り組んでおります。

また、当社グループは、日本、アジア、米州、欧州においてバランスの取れた売上構成を有しており、特定地域における景気変動の影響が相対的に抑制されております。今後もグローバルネットワークを活用し、各地域での事業展開を推進してまいります。

 

3.サプライチェーンリスク

・サプライチェーンの断絶

当社グループは、生産・販売拠点をグローバルに展開しております。主要な生産拠点はベトナム・フィリピン・中国等であり、販売拠点は世界各国に広がっております。東アジア地域や中東地域を含む世界各地において、地政学的な対立や緊張の高まり、政治・経済情勢の不安定化が生じた場合や大規模火災、台風、巨大地震等の災害が生じた場合、また取引先の事業ポートフォリオの見直し(事業採算悪化、設備の老朽化等)による部材の継続調達が困難になった場合には、部材調達・生産面でコスト高騰、供給不足といった支障が発生するリスクがあります。

さらに、国際物流が混乱し船のスペース不足やコンテナの滞留、航路制限が発生すると、部品輸入遅延や出荷遅延及び運賃コスト高騰リスクがあります。

結果として、市場への商品供給不足による販売機会の損失や顧客流出により経営成績に影響を与える可能性があります。

 

・サプライチェーンの断絶

サプライチェーンの断絶に対してグローバルに情報収集しタイムリーに経営判断できる体制を構築しております。

生産体制については、主要な消耗品を複数拠点において生産するほか、予備の生産設備を保有するなどのリスク対応策を実施しております。

部品に関しては、調達先の複線化や重要部材の戦略的な在庫保有を進め、特定の国やサプライヤーへの依存度を下げる活動を推進しております。

販売拠点においては、欠品を防ぐための在庫水準の適正化を継続的に行ってまいります。

物流面においては、生産拠点所在地域において自社倉庫や外部倉庫による製品や部材の在庫保管スペースの確保及び利用航路・港の複線化を進めております。

また諸拠点においては、防火対策や地震・台風等の自然災害に対する一定の防災・減災施策を講じております。

本社機能が位置する日本においても、南海トラフ地震を想定した防災危機管理体制を確立しております。

 

4.製品・サービスの品質リスク

当社グループは、製品・サービスの品質リスクが製品ライフサイクルの全段階に内在していることを認識しております。すべての製品・サービスにおいて欠陥が発生せず、将来的に製品安全上又は品質上の問題が生じないことを保証するものではありません。万が一、重大な品質問題等が発生した場合には、多額の費用負担が生じるほか、ブランドイメージや社会的評価の低下による顧客の購買意欲の減退等を通じて、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、高品質かつ魅力的な製品・サービスの提供を目指し、厳格な品質管理プロセスを確立した上で、市場への供給を行っております。また、製造委託先から供給を受ける製品についても、適正な品質レベルであることを確認・検証しております。さらに、万が一製品・サービスに起因する事故が発生した場合には、被害者への対応を最優先に実施するとともに、情報の公開や官公庁への報告等を通じて、被害の拡大防止に努めてまいります。

5.人的資源リスク

近年、働き方や雇用環境の変化、生成AIの急速な進化等により有能な人財の採用競争は激化しており、事業ポートフォリオの変革を加速させる人財が確保できないリスクがあります。特に、産業用領域の事業成長に必要なスキルセットや経験を有する人財、ビジネスを伸長させる人財や経営変革を推し進めるリーダー、チャレンジし続ける人財の確保、育成ができない場合、当社グループの経営戦略を左右する可能性があります。

また、同質性が高く多様な価値観や経験が生かされない職場環境や差別やハラスメントが発生した場合、人財の採用や定着が困難となり、組織力や従業員の心理的安全性が低下するだけでなく、社会的信用への著しい影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループの経営戦略の実現に向けて、重点分野の人財ポートフォリオ強化のため、社外からの経験者採用・管理職採用を増加させるほか、人財育成への積極投資を進め、次世代リーダー育成を目的とした教育プログラムを刷新・強化に取り組んでおります。キー人財については、サクセッションプランの策定を行っております。

また、グローバル憲章に定める行動規範に基づき、最高度の倫理観の徹底を図るとともに、従業員一人ひとりが個性と能力を最大限に発揮し、活躍できるよう、環境の整備及び従業員の意識啓発に取り組んでおります。加えて、多様性の尊重を成長と革新の原動力と捉えて、ブラザーグループ人財マネジメントポリシーを策定し、グループ各社の人財マネジメントを一層進化させる活動も推進しております。

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

6.環境・社会

リスク

・環境に関する社会的要請

グローバルに事業活動を展開する当社グループにとって、次のリスクは現在から将来にわたって極めて重要な課題であり、事業経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

気候変動は、災害等による人的被害、操業の停止、サプライチェーンの断絶など、生産・販売活動に大きな影響を与える物理的リスクに加え、脱炭素社会への急速な移行に伴う法規制強化や対応コスト増、対応遅れによる販売機会喪失などの移行リスクがあります。

サーキュラーエコノミーの進展は、欧州各国を中心に資源消費を抑えつつ経済発展を目指す政策が推進されており、法規制強化や対応コスト増、対応遅れによる販売機会喪失などの移行リスクがあります。

・環境に関する社会的要請

気候変動に対しては、その原因となっている温室効果ガス排出を削減するため、「1.5℃目標」のSBT(Science Based Targets)認定を受けた2030年中期目標を設定しております。この目標の達成に向けて、スコープ1・2については事業所の省エネ及び再生可能エネルギーの積極的な利用等、スコープ3については温室効果ガス排出量の80%以上を占める製品の部材調達、使用、廃棄段階での排出を削減するため、調達する部材の省資源化・再生利用、製品の省エネルギー性能の向上・リサイクル性向上などに注力して取り組んでおります。さらに2023年度からレーザープリンター製品及びインクジェットプリンター製品において、部品サプライヤーと協働し、部品製造時に使用される電力に再生可能エネルギーを導入することにより、部品製造時のCO2排出削減を進めております。また、マシナリー事業では内燃機関部品に代わって需要が増加しているEV向け部品で求められる大型のアルミ部品や、さまざまな加工ニーズに応えることができる製品“SPEEDIO”シリーズを開発することで、EV部品加工ソリューションを提供し、自動車産業におけるEVへの移行リスクに対応しております。

サーキュラーエコノミーの進展に対しては、当社グループの資源効率を向上させるため、2030年中期目標(特に資源使用量の多いプリンティング&ソリューション事業を対象にして、製品に投入する新規資源量を25%削減)を設定しております。その達成に向けて「プリンターの消耗品カートリッジの回収・リサイクルの拡大」、「製品のリユース促進」、「サブスクリプションサービス等のお客様とつながり続けるビジネスの拡大」を主要な取り組みと位置付け、資源の有効利用、資源循環を推進し、CO2排出削減にも貢献しております。

また、当社は2020年2月に金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」、2025年3月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD:Task Force on Nature-related Financial Disclosures)の提言に賛同いたしました。TCFDへの対応として、当社グループのすべての事業に対して気候変動が与える財務的な影響の分析を実施し、Web等にて開示しました。TNFDへの対応として、TNFD提言に沿った一部開示を実施しました。今後も情報開示の充足に努めてまいります。

 

6.環境・社会リスク

・環境規制、環境汚染

グローバルに事業を展開する当社グループは、世界各国・地域において各種環境関連法規制の適用を受けております。中でも、EU RoHS指令をはじめとする製品に含有される化学物質に関する法規制については、世界各国・地域において新設又は改正が継続的に行われております。これらの法規制に違反した場合には、製品のリコール、生産・販売の中止、課徴金の負担、刑事罰の適用、社会的信用の低下等が生じ、当社グループの事業や業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・バリューチェーンにおける人権侵害

当社グループは、その生産拠点の多くを海外に置いており、日本国内における製造・調達を含め、主要な生産拠点はベトナム・フィリピン・中国等となっております。これら諸拠点では部品調達先との取引関係がありますが、その調達先を含むサプライチェーンで発生する人権問題、例えば強制労働や児童労働、労働安全衛生に関する問題などがあった場合、そこで働く人たちに直接の重大な影響が生じるおそれがあるだけでなく、お客様からの信頼を失うことで、当社とお客様のお取引に影響が出る可能性があります。また、これらに関連して輸出入や通関に支障が生じた場合には、製品の市場への提供ができなくなる可能性があります。

第三者機関によって、人権侵害の事実はもとよりそのリスク低減や救済手段の提供に不足があると判断された場合、当社グループが取得している第三者認証を失効することによってお取引関係の継続や新規構築等が困難になることや、投資インデックス指標等からの除外による株価への影響等が想定されます。

また、調達先のさらにその先をたどっていくと、原材料に行き着きます。その原材料となる鉱物の取引において、アフリカなどの紛争地域及び高リスク地域産出の一部の鉱物の取引が当地の武装勢力の資金源となり、紛争や人権侵害に関与していることが判明した場合にも、同様にお客様からの信頼を失う可能性があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・環境規制、環境汚染

当社グループは、禁止・制限及び管理対象とすべき化学物質を「ブラザーグループグリーン調達基準書」に明示し、これをサプライヤーに周知することで、当該基準の遵守を求めるとともに、部材の適合保証、成分情報の提出、監査の実施及び納入品の抜き取り検査等を実施することにより、環境関連法規制の遵守に努めております。

 

 

 

 

・バリューチェーンにおける人権侵害

人権リスクの低減に向けて当社グループの姿勢を明確に示し取り組みを推進するために「ブラザーグループ人権グローバルポリシー」を制定し、当社の役職員及び製品・サービスに関わるすべての関係者の皆様に同ポリシーの理解及び当社の取り組みへのご協力を要請しております。

RBA(Responsible Business Alliance)に加盟し、RBA行動規範に基づくセルフアセスメントをグループ生産拠点において年に1度実施することで、優先して対応が必要な人権リスクはないことを確認しております。同時に、第三者機関による実地監査を主要な生産拠点4拠点において継続的に受審することで人権リスクの把握と改善に取り組んでおります。

調達先に対しては、「CSR調達方針」及び「CSR調達基準」を制定し、ホームページでの開示の他、取引先説明会、書面などを通じて方針の説明をおこなうとともに、一次サプライヤーに対して人権・労働安全衛生や倫理に関する取り組みを要請することを通じて、バリューチェーンにおけるリスク評価(人権デューデリジェンス)を実施しております。その実施方法は定期的に見直しを行っており、直近では生産品や所在地等の情報を踏まえて相対的に高いリスクが想定される調達先に対してそのリスクに応じた評価を実施することで、人権デューデリジェンスの実効性を高めております。上流の調達先に対しても一次サプライヤーを通じて人権に関する取り組みを要請することを通じて、バリューチェーン全体における人権侵害リスクの低減を目指しております。

また、責任ある鉱物調達については、「責任ある鉱物調達方針」を制定し、ホームページに開示するとともに、鉱物の使用状況について調査を実施し、調達先の皆様と連携を図りながらサプライチェーンにおける鉱物調達の透明性確保及び紛争鉱物の使用回避に向けた調達活動に取り組んでおります。

 

6.環境・社会リスク

・労働災害、人的被害

当社グループは、グローバルに事業拠点を展開しており、国・地域ごとに労働環境や安全・環境に対する考え方、適用される法規制が異なります。このため、労働環境においては、軽微な労働災害から、死亡や後遺症が残る重篤な災害に至るまで、多様なリスクが存在しております。また、近年発生している大規模な自然災害や、機械・設備等を起因とする火災・爆発事故の発生により製造拠点の操業が停止した場合、サプライチェーンへの影響を含め、社会的責任を十分に果たせなくなるとともに、当社グループの経営成績及び事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

・労働争議、労使関係の悪化

当社グループは、グローバルに販売・開発・製造拠点を展開しており、各国・地域の労働慣行や法規制の違いに起因する労使関係の不安定化が労働争議や労使関係の悪化を引き起こすリスクがあります。これらのリスクが発生した場合、事業活動の停止や遅延、業務効率の低下、当社グループの社会的信用の失墜等につながる可能性があります。

 

 

 

 

 

・労働災害、人的被害

当社グループでは、労働安全衛生マネジメントシステムに準拠した活動を行うことで、安全で健康的な職場環境の確保と従業員の安全意識の向上に取り組んでおります。また、各拠点で発生した事故・災害に関する情報を毎月グループ内で共有し、同種災害の再発防止に努めております。火災・爆発リスクについては、各国の消防関連法令の枠を超えた「ブラザーグループ防災体制・管理規程」を2017年に制定し、アジアの製造工場等に適用しております。これらの取り組み及び現場の実施状況は、グループ共通の定期的な安全衛生・防災監査等により確認しております。

 

・労働争議、労使関係の悪化

当社グループでは、各国・地域の労働慣行や労働関連法令を遵守するとともに、労使間での定期的な協議や従業員エンゲージメント調査の実施、改善活動、法令遵守の徹底等を通じて、良好な労使関係の維持に努めております。また、グローバルで共通の人権グローバルポリシーを定め、事業活動を通じて人権侵害を助長することがないよう、労働争議や労使関係悪化の未然防止及び影響の最小化を図っております。

 

7.情報リスク

近年、サイバー攻撃の手法は高度化・巧妙化しており、不正アクセスやマルウェア感染、ランサムウェア攻撃等により当社グループが保有する個人情報や機密情報が外部へ漏えいする可能性や情報システムの停止等が発生し、事業継続が困難になるリスクが存在します。

顧客やステークホルダー向けに提供しているWebサイトや関連するシステムにつきましては、安全な情報セキュリティーレベルを維持することに努めておりますが、標的型攻撃などのサイバー攻撃により、データの破壊や改ざん、サービスの停止などの被害が発生する可能性があります。

また、従業員や委託先等による内部不正行為に起因する情報漏洩リスクも存在します。これらの情報セキュリティー事故が発生した場合、お客様からの信頼を失うとともに、ブランドイメージの低下を招くなど、当社グループの事業活動や経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

さらに、重要な業務データの毀損や情報システム障害等によって会計情報を含む各種業務データの正確性が損なわれたり、内部統制の運用に支障が生じたりした場合には、財務報告の信頼性にも影響を及ぼす可能性があります。

加えて、IoT製品をターゲットとしたサイバー攻撃の脅威が増大しており、当社製品からお客様の個人情報や機密情報が漏洩した場合、ブランド価値の毀損や市場競争力の低下につながる可能性があります。また、各国・地域における情報保護関連法規の強化に適切に対応できない場合、事業活動に制約が生じる可能性があります。

当社グループは、「情報セキュリティー基本方針」を定めるとともに、情報管理委員会を設置し、情報セキュリティー運用ルールを策定しております。これらの運用ルールや規程に基づくセキュリティー対策や社内教育を実施することで、個人情報及び機密情報の漏洩防止、さらにサイバー攻撃へのグローバルで統一した多層防御対策の強化に努めております。

外部からの侵入やサイバー攻撃対策としては、24時間365日のセキュリティー監視を実施し、PC、及びサーバ上の不正なふるまいをいち早く検知し、脅威を除去することで高度化するサイバー攻撃にも対応しております。また、サプライチェーンに影響を及ぼす重要システムについては、外部データセンターやクラウドサービスを活用、サーバの冗長化も進めることで、システム障害発生時にも早期復旧を可能とするシステム構成にしております。

さらに、個人情報や機密情報に対するアクセス制御やアクセスログ管理、従業員のPC操作ログの監視などを実施し、不正な取り扱いを防止しております。

上記のように、対応し得る最善の仕組みで対策を行うと同時に、日々進化するITテクノロジーに対応するため、システムを運営、利用する人材を継続的に教育することでレベルアップを図っております。万が一事故が発生した場合に備え、平時から社内の対応組織の訓練を行い、迅速に対応・復旧することで被害を最小限に抑えるよう努めております。

また、内部統制への対応として、IT全般統制の視点から情報システムの開発・保守・運用業務の品質向上活動を継続し、適切なIT業務運用に努めております。

加えて、お客様に安心して製品をお使いいただくために、「製品情報セキュリティー基本方針」を定め、グループ全体で製品セキュリティーの向上を図っております。製品に関する脆弱性リスクが発生した場合の報告ルートや製品情報セキュリティー事故の対応体制に関する社内規程を定め、体制を構築することでリスクを最小化する対策を実施しております。

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

8.知的財産リスク

・知的財産権

第三者による模倣品の販売など、第三者による当社グループ所有の知的財産権の侵害が発生する可能性があります。この結果、当社グループの経営成績等が悪化したり、信用が低下したりする可能性があります。

また、第三者所有の知的財産権について、第三者より当社グループに対し、侵害の訴えが提起される可能性があります。第三者の主張が認められると、製品の販売の差止めや、損害賠償の支払などが求められる可能性があります。

 

・ライセンス契約

当社グループは、必要に応じて、知的財産権に関するライセンス契約を他社と締結しつつ、事業活動を行っております。しかしながら、ライセンス契約の条件によっては事業活動が影響を受ける可能性があります。

 

・職務発明

発明者より、発明の報奨に関する訴えが提起される可能性があります。

・知的財産権

当社グループは、第三者による侵害行為に対しては、経営成績等や信用への影響度を考慮しつつ、知的財産権を行使しております。

また、第三者所有の知的財産権を尊重して事業活動を行っておりますが、第三者から侵害の訴えが提起された場合には、内容を精査した上で、防御や和解などの対策を講じております。

 

 

 

 

・ライセンス契約

当社グループでは、研究開発の成果として多数の知的財産権を取得しております。保有する一部の知的財産権について相手方へライセンスを供与するなどの対策を講じつつ、事業活動への影響が最小限になるように契約を締結しております。

 

・職務発明

当社グループは、発明報奨規程を設けており、発明者に対する報奨を適切に行っております。

9.財務・会計

リスク

・M&A(減損)

当社グループは産業用領域のさらなる拡大・新規事業の創出・育成等に向けて、M&Aも含めた成長投資を加速する方針を掲げております。

M&Aなどの実施においては、事業の統合に当初想定以上の負荷がかかることや投資時点において想定した通りに投資先が事業を展開できないこと等により、予想された通りの投資効果が得られないリスクがあります。

当社グループは、2026年3月31日現在の連結財務諸表上、のれんを60,578百万円(総資産の5.9%)計上しており、そのうち、2015年に買収したドミノに関連するのれんが57,950百万円を占めております。上記のリスクが顕在化し将来キャッシュ・フローの見積りが変動した場合、また、将来の金利水準や長期的な市場成長率などの変動が生じた場合、これらののれんや有形固定資産、無形資産等の減損損失が生じ、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・M&A(減損)

当社グループは中期戦略「CS B2027」において、M&Aを推進する組織能力・体制を大幅に強化する方針を掲げ、機動的な投資実行とガバナンスの強化を両立しながら、PMIにおける本社の積極的な関与と支援を実施してまいります。

また、中期戦略「CS B2027」において、ドミノを含むインダストリアル・プリンティング事業を、当社グループの成長エンジンを担う成長事業と位置付け、「製品及びビジネス領域の拡大」、「サービス・ソリューション事業の強化」、「事業基盤の強化」を重要施策として取り組んでおります。

また、のれんにつきましては少なくとも年に1回、減損の兆候の有無にかかわらず、将来得られるキャッシュ・フロー見積りと、帳簿価額を比較して、のれんの資産価値を確認しており、適正な評価額で計上しております。

 

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

9.財務・会計

リスク

・為替変動

当社グループは、海外での製造・販売比率が高く、外貨建取引に係る為替変動リスクが定常的に発生しております。2026年3月期の実績ベースで試算した場合、対ユーロで円高になると、1円当たり、年間約8億円の利益の減少要因となります。また、対米ドルで円安になると、1円当たり、年間約3億円の利益の減少要因となります。

また、中国・東南アジアなど、主要な製造拠点の所在地域の通貨が上昇した場合、製造・調達コストを押し上げる要因になるなど、中長期的な為替レートの変動が、経営成績等に一定の影響を及ぼすことが想定されます。

海外子会社の保有する現地通貨建ての資産(負債を控除した純額)は、各現地通貨に対して円高になると、円換算後の金額が目減りします。これは直ちに連結損益には影響しませんが、その他の包括利益が減少し、純資産を押し下げる要因となります。

 

・税制

当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、事業拠点を有する各国・地域における税制の適用を受けております。各国・地域における税制や税率が変更された場合、当社グループの経営成績等にマイナスの影響を与える可能性があります。

また、BEPS問題(税源浸食と利益移転)に対処するため各国・地域の税務当局による取り組みが強化されており、今後、法規制が変更された場合や税務執行が厳格化された場合、追加課税や国際的な二重課税が発生し、税負担が上昇するリスクがあります。

 

・不正会計

不正会計については、各国・地域の法令や当社グループの会計ルールなどに反する会計処理によって、決算の修正やステークホルダーからの信頼失墜につながるリスクがあります。

 

・為替変動

リスク低減のため、外貨建取引における受取と支払のリンク率向上を図る一方で、短期的には為替予約取引を行うなど、リスクを効率的に管理し、回避するよう努めております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・税制

重要な税務上の事項については、各地域の統括会社を通して、当社税務部門に適宜共有され、税理士法人などの外部専門家のサポートを受けるだけでなく、必要に応じて税務当局ともコミュニケーションを取って対処しております。また、当社グループ間の取引については、独立企業間価格となるように、各国・地域との移転価格を適切に管理しており、移転価格課税リスクの高い取引については、APA(事前確認制度)を活用することで税務リスクを低減しております。

 

 

 

・不正会計

当社グループ会社の決算を分析し、不正の兆候の有無を把握するとともに、必要に応じ個別に調査を実施しております。

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

10.ビジネスコンダクトリスク

当社グループは、事業活動を行っている各国・地域において、さまざまな法令や規制の適用を受けております。これらの法令・規制の新設や変更によって、事業活動が制限されることや、対応のために多額の費用負担が発生する可能性があります。また、意図せぬ法令違反や従業員による不正行為が発生した場合には、当社グループの業績や事業活動に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

このような認識のもと、主要なビジネスコンダクトリスクとして「安全保障貿易」「横領や不正キックバック、利益相反や不正便宜」「不公正な取引(競争法違反)」「贈収賄(反腐敗法違反)」の4つを特定しております。

 

・安全保障貿易

当社グループは、事業をグローバルに展開しておりますが、米中貿易摩擦やロシア・ウクライナ情勢、中東情勢などの地政学的リスクが高まる中、各国で輸出規制や安全保障関連法令の強化が進行しております。特に、当社の工作機械の一部はこれらの法令の対象となっており、今後さらに規制が強化された場合、事業活動の制約や対応のための費用負担が増大します。また、万一法令違反が発生した場合、法的制裁や一定期間の全製品輸出停止、社会的信用の失墜など、当社グループの事業経営に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

 

・横領や不正キックバック、利益相反や不正便宜

役職員の横領や不正キックバック等によって会社の財産が棄損され、かつ、これらが当社グループの会計ルールなどに反する会計処理につながり、決算の修正、さらにはステークホルダーからの信頼失墜につながるリスクがあります。

 

 

・不公正な取引(競争法違反)、贈収賄(反腐敗法違反)

各国・地域の競争法・反腐敗法に違反する事業活動によって、競争法当局からの罰金や当社グループの事業活動への制限が課されるなどのリスクがあるほか、法令や規制対応のために多額の費用負担が発生する可能性があります。

 

当社グループでは、法令順守は、さまざまなリスクを回避する上で経営上不可欠なものであると考えております。グループ全体で法令順守を徹底するために「ブラザーグループ グローバル憲章」の行動規範のひとつである「順法精神・倫理観」と、企業としての責任を明確に定義し行動していくための「ブラザーグループ社会的責任に関する基本原則」に基づいて、従業員の行動基準を定めております。

 

主要なビジネスコンダクトリスクに関する対応状況は以下の通りです。

 

・安全保障貿易

各国・地域の規制動向を把握・分析し、必要に応じて、社内ルール及び管理体制を迅速に更新しております。また、役職員への教育と定期的な監査を通じ、輸出管理体制の継続的な改善に努め、業務の適正性の確保と法令違反の未然防止を図っております。

 

・横領や不正キックバック、利益相反や不正便宜

業務プロセスにおいて複数人によるチェックを行うなど、自己決裁の防止及び業務の適正性の確保に努めております。また、内部通報窓口を設置するなど、不正の兆候を早期に発見できる体制を整備するとともに、役職員に対するコンプライアンス研修を定期的に行っております。

 

・不公正な取引(競争法違反)

日本国内においては、サプライチェーンのお取引先や価値創造を図る事業者の皆様との連携・共存共栄を進めることを明示した「パートナーシップ構築宣言」を公表するとともに、中小受託取引適正化法の順守体制を構築しております。特に、中小受託事業者からの労務費上昇に基づく価格交渉については、中小受託事業者から協議の申入れがあった場合には、労務費上昇分の影響を考慮するなど中小受託事業者の適正な利益を含むよう、十分に協議することとしております。また、グループ会社(欧米、アジア)の役職員に対して競争法リスクに対する意識向上のための定期的な教育を実施しております。

 

・贈収賄(反腐敗法違反)

腐敗リスクが高い国や地域(主にアジア)のグループ会社において、反腐敗に関するポリシーを定めることや、お取引先による腐敗行為の防止に関するスクリーニングなどの活動を行っております。また、役職員の反腐敗意識を高めるために反腐敗に関する教育を行っております。

 

 

配当政策

3【配当政策】

剰余金の配当等の決定に関する方針につきましては、将来の成長のために必要な内部留保の確保やキャッシュ・フローの状況などを総合的に勘案しつつ、安定的かつ継続的な株主還元を行うことを基本方針としております。

当社は、中間期末と期末の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、「取締役会の決議によって、 会社法第459条第1項各号に掲げる事項を定めることができる」旨定款に定めております。

当連結会計年度を初年度とする中期戦略「CS B2027」においては、成長投資を行う一方で、1株当たり年間100円の配当を下限とし、配当性向40%を目安として還元すること、また、資本効率の向上及び機動的な資本政策を遂行するため、「CS B2027」の期間中に合計600億円の自己株式の取得を行う予定です。加えて、業績等の状況に応じて追加的な株主還元を検討することとしております。

当連結会計年度の配当金につきましては、期末配当を1株当たり50円とし、すでに実施済みの中間期末の配当(1株当たり50円)と合わせ、前連結会計年度と同額の1株当たり年間100円の配当といたしました。併せて、2025年5月12日~2026年4月30日の期間で、総額約200億円の自己株式を取得いたしました。加えて、200億円を上限として自己株式を取得(期間:2026年5月11日~2027年4月30日)することを、2026年5月8日の取締役会で決議いたしました。

 

なお、当連結会計年度に係る剰余金の配当は以下の通りであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2025年11月10日

12,655

50.0

取締役会決議

2026年5月21日

12,481

50.0

取締役会決議