2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    25,892名(単体) 282,743名(連結)
  • 平均年齢
    42.6歳(単体)
  • 平均勤続年数
    18.7年(単体)
  • 平均年収
    9,613,890円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

(2025年3月31日現在)

セグメントの名称

従業員数(人)

デジタルシステム&サービス

107,548

(14,328)

グリーンエナジー&モビリティ

78,871

(3,126)

コネクティブインダストリーズ

81,817

(2,676)

その他

11,288

(2,543)

全社(本社他)

3,219

(3,219)

 合  計

282,743

(25,892)

 

 

(注)「従業員数」欄の下段( )内数字は、提出会社の従業員数で内数です。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

 

(2025年3月31日現在)

従業員数

平均年齢

平均勤続年数

平均年間給与

25,892

42.6

18.7

9,613,890

(注)平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

 

(3)労働組合の状況

 当社の労働組合は、日立製作所労働組合と称し、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会に属しています。

 当社及び連結子会社における労使関係は安定しており、円滑に推移しています。

 

(4)多様性に関する指標

①連結会社に関する指標の開示

 

管理職に占める女性

従業員の割合(%)

(注)1~4

男女の賃金の差異(%)

(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)

(注)1~3、5~8

全従業員

無期雇用・フルタイム従業員

パート・

有期雇用従業員

 

うち、管理職

うち、非管理職

当社及び当グループ

15.8

82.6

83.5

92.8

86.7

73.7

うち、当グループ

(日本国内連結)

6.3

71.1

72.3

95.0

80.1

62.4

うち、当グループ

(日本以外連結)

21.9

92.2

92.3

90.5

91.3

91.4

(注)1. 当連結会計年度における実績を記載しています(但し、2024年度における統合会社等、一部海外グループ会社を除きます。)。

2.「当グループ(日本国内連結)」の対象会社及び算出の前提は、「②女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)に基づく指標の開示」のとおりです。

3. 自社から他社への出向者及び休職者を含め、他社から自社への出向者を除いた在籍人員数(2025年3月末現在)に基づきます。

4. 「当グループ(日本以外連結)」については、人財データベースに未登録の一部直接員(製造ワーカー)、一部新規連結対象会社従業員及び人財データベースにグレード(役職)未登録の従業員は含みません。

5. 「全従業員」は「無期雇用・フルタイム従業員」と「パート・有期雇用従業員」の合計です。また、「無期雇用・フルタイム従業員」は無期雇用かつフルタイムの従業員であり、「パート・有期雇用従業員」はパートタイム又は有期雇用の従業員です。

6. 「当グループ(日本以外連結)」については、原則従業員250名以上の会社が対象です。

7. 年間基本賞与、手当、変動賞与を含めた想定される現金報酬を基本として、各会社の属する国の法令等に基づき算出しています。

8. 適用する人事処遇制度において性別による差異はありません。管理職を含む上位の等級における男性の割合が高いこと、短時間勤務を行う従業員の割合が男性に比べ女性の方が高いこと等により、男女一人あたりの賃金に差が生じています。引き続き、女性従業員の管理職登用促進を含む、「多様な視点の活用」の推進に取り組んでまいります。

 

②女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)に基づく指標の開示

(ⅰ)提出会社

会社名

管理職に占める

女性従業員の割合(%)

(注)1

男性の育児休業

取得率(%)

(注)1~5

男女の賃金の差異(%)

(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)

(注)1、2、6、7

全従業員

無期雇用・

フルタイム従業員

パート・

有期雇用従業員

㈱日立製作所

8.5

71.9

(*)

69.8

71.1

56.0

 

(ii)連結子会社

会社名

管理職に占める

女性従業員の割合(%)

(注)1

男性の育児休業

取得率(%)

(注)1~5

男女の賃金の差異(%)

(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)

(注)1、2、6、7

全従業員

無期雇用・

フルタイム従業員

パート・

有期雇用従業員

㈱日立アイイーシステム

1.6

100.0

(*)

69.2

72.4

57.8

㈱日立ICTビジネスサービス

10.8

100.0

(*)

73.9

67.6

81.6

㈱日立アカデミー

23.9

75.0

 

94.3

90.6

109.1

㈱日立アドバンストシステムズ

1.5

66.7

(*)

64.2

63.4

78.1

日立アプライアンステクノサービス㈱

0.0

33.3

(*)

64.7

69.5

66.1

㈱日立医薬情報ソリューションズ

6.4

50.0

 

70.6

69.8

82.5

㈱日立インダストリアルプロダクツ

1.5

75.6

(*)

66.8

68.0

55.3

日立ヴァンタラ㈱

4.6

71.4

(*)

65.6

67.0

63.2

沖縄日立ネットワークシステムズ㈱

2.9

100.0

(*)

80.4

82.1

54.9

関西日立㈱

0.0

90.0

(**)

67.4

65.5

64.5

㈱関東日立

1.0

16.7

 

65.9

64.8

60.8

㈱九州日立

2.0

0.0

(*)

64.9

81.4

48.3

㈱九州日立システムズ

6.6

41.7

(*)

79.3

77.6

65.9

日立空調ソリューションズ㈱

0.0

66.7

(*)

68.8

67.7

105.7

日立グローバルライフソリューションズ㈱

2.5

39.4

(*)

68.1

68.5

63.8

㈱日立ケーイーシステムズ

3.5

75.0

(*)

81.0

87.3

59.2

日立交通テクノロジー㈱

1.4

70.0

(*)

73.4

74.4

53.8

㈱日立コンサルティング

15.0

65.2

(*)

74.7

74.3

94.9

㈱日立産機システム

3.0

82.6

(*)

72.0

71.6

60.9

㈱日立産機テクノサービス

0.0

57.0

 

52.3

60.6

32.3

㈱日立産機ドライブ・ソリューションズ

0.0

100.0

(*)

75.4

78.4

69.7

㈱日立産業制御ソリューションズ

2.1

72.7

(*)

72.1

70.8

63.2

㈱静岡日立

2.6

0.0

 

77.2

79.6

70.3

㈱日立システムズ

7.2

97.3

(*)

73.4

72.0

55.6

㈱日立システムズエンジニアリングサービス

6.5

84.6

(*)

75.1

75.5

63.7

㈱日立システムズパワーサービス

14.3

33.3

 

79.0

77.4

41.5

 

会社名

管理職に占める

女性従業員の割合(%)

(注)1

男性の育児休業

取得率(%)

(注)1~5

男女の賃金の差異(%)

(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)

(注)1、2、6、7

全従業員

無期雇用・

フルタイム従業員

パート・

有期雇用従業員

㈱日立システムズフィールドサービス

3.3

90.5

(*)

67.9

67.9

59.4

㈱日立社会情報サービス

6.9

91.0

(*)

73.4

73.7

117.5

㈱日立情報通信エンジニアリング

3.3

76.5

(*)

76.6

75.2

71.0

㈱日立ソリューションズ

8.9

98.0

(*)

74.0

73.5

74.1

㈱日立ソリューションズ・クリエイト

7.0

74.4

(*)

73.2

72.8

61.9

㈱日立ソリューションズ・テクノロジー

2.6

100.0

(*)

73.7

72.5

84.3

㈱日立ソリューションズ西日本

5.2

95.2

(*)

72.5

72.2

54.9

㈱日立ソリューションズ東日本

5.9

78.6

(*)

74.6

75.5

34.9

日立ターミナルメカトロニクス㈱

0.0

 

60.5

58.4

64.3

日立チャネルソリューションズ㈱

5.4

80.0

(*)

72.2

73.1

55.0

㈱日立テクノロジ-アンドサービス

0.0

83.3

(*)

81.6

72.3

83.5

㈱日立ドキュメントソリューションズ

4.5

62.5

(*)

64.9

66.4

50.2

㈱日立ニコトランスミッション

3.2

60.0

 

71.0

75.0

53.0

日和サービス㈱

7.8

42.9

(*)

88.2

90.6

72.1

㈱日立ハイシステム21

6.8

100.0

(*)

75.2

75.5

66.3

㈱日立ハイテク

5.7

82.8

(*)

73.8

73.2

71.0

㈱日立ハイテク九州

50.0

100.0

 

74.4

72.0

98.3

㈱日立ハイテクサイエンス

4.3

69.2

(*)

71.5

73.9

39.4

㈱日立ハイテクサポート

10.0

100.0

(*)

92.3

92.3

77.2

㈱日立ハイテクソリューションズ

2.3

83.3

(*)

75.3

69.4

75.3

㈱日立ハイテクネクサス

7.4

100.0

(*)

68.1

68.4

59.4

㈱日立ハイテクフィールディング

2.5

85.7

(*)

61.7

59.1

72.3

㈱日立ハイテクマニファクチャ&サービス

1.5

60.0

(*)

91.6

92.7

82.3

㈱日立パワーソリューションズ

1.8

56.5

(*)

76.3

94.0

54.1

㈱日立ビルシステム

2.4

53.7

(*)

65.1

66.7

53.5

㈱日立ビルシステムエンジニアリング

1.9

57.1

(*)

68.7

74.0

62.6

㈱日立プラントコンストラクション

2.0

54.2

(*)

73.5

76.9

64.9

㈱日立プラントサービス

1.2

38.9

(*)

66.0

67.4

49.8

㈱日立プラントメカニクス

2.4

12.5

(*)

80.0

84.5

55.3

㈱日立保険サービス

9.9

0.0

(*)

58.9

56.5

59.7

㈱北海道日立システムズ

6.5

50.0

 

78.3

76.6

61.6

㈱日立マネジメントパートナー

11.9

100.0

 

67.0

64.2

㈱日立ゆうあんどあい

14.8

 

102.5

108.1

95.4

㈱日立リアルエステートパートナーズ

4.1

100.0

(*)

68.2

64.5

67.2

(注)1.当連結会計年度における実績を記載しています。

   2.算定に必要な従業員が在籍していない場合、「-」と記載しています。

   3.当連結会計年度に育児休業等を取得した男性従業員÷当連結会計年度に子が生まれた男性従業員により算出しています。

   4.「(*)」については、育児目的休暇の取得者を分子に含みます。

 

   5.「(**)」について、女性活躍推進法に基づく雇用管理区分別の育児休業取得率は以下のとおりです。育児目的休暇の取得者は分子に含みません

会社名

男性の育児休業取得率(%)

関西日立㈱

総合職:88.9、基幹職:100.0

   6.「全従業員」は「無期雇用・フルタイム従業員」と「パート・有期雇用従業員」の合計です。また、「無期雇用・フルタイム従業員」は無期雇用かつフルタイムの従業員であり、「パート・有期雇用従業員」はパートタイム又は有期雇用の従業員です。

   7.適用する人事処遇制度において性別による差異はありません。管理職を含む上位の等級における男性従業員の割合が高いこと、短時間勤務を行う従業員の割合が男性に比べ女性の方が高いこと等により、男女一人あたりの賃金に差が生じています。引き続き、女性従業員の管理職登用促進を含む、多様な視点の推進に取り組んでまいります。

 

 当社及び連結子会社の多様な視点の推進に関する取組の詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」及び、後日公開予定の日立サステナビリティレポート2025をご参照ください。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当グループは、地球を守ることと、一人ひとりが快適で活躍できる社会が両立する未来を実現するために、サステナビリティを事業戦略の中核に据えた「サステナブル経営」を実践しています。具体的には、社会課題の解決をめざした社会イノベーション事業を通じて、グローバルな社会・環境課題の解決に貢献し、サステナブルな社会の実現に向けた取組を推進しています。また、社会・環境の変化による事業へのリスク・機会を把握することで、事業継続の強靭性の向上や企業価値の向上に努めています。

 当グループのサステナビリティに関する考え方及び具体的な取組は以下のとおりです。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

① 重要事項の機関決定

 当社又は当グループに影響を及ぼす重要事項について、多面的な検討を経て慎重に決定するため、執行役社長の諮問機関として、「経営会議」を設置しています。経営会議では、以下の各戦略を含む重要な事項について審議・決定を行っています。

・成長戦略・グローバル(地域)戦略:当グループの成長に必要な各事業・地域の経営戦略に係る事項

・リスクマネジメント戦略:グループ・グローバルな各種リスクを一元的・横断的に把握し、成長戦略と連携して経営基盤を強化するために必要な事項

・人財戦略:当グループの成長の観点から、組織・文化の醸成及び人財の確保・育成等のために必要な事項

・その他、サステナビリティ戦略を含むグループ・グローバルに係る各種戦略

 

 サステナビリティに関する重要事項については、経営会議に附議して議論・決定しており、必要に応じて取締役会にも附議しています。各種戦略をOne Hitachiで一体的に立案・実行することで、企業価値のさらなる向上と持続的な成長の実現を図っています。

 

② サステナブル経営のグループ全体への浸透

 当グループは、Chief Sustainability Officerの指揮のもと、サステナビリティへの取り組みをグループ全体で推進しています。Chief Sustainability Officerが議長を務め、各ビジネスユニット(BU)及び主要グループ会社の事業推進部門長クラスや地域統括会社のサステナビリティ責任者をメンバーとするサステナビリティ推進会議を年に1~2回開催し、サステナビリティに関する重要施策の議論と情報共有を図っています。

 また、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー、人権デュー・ディリジェンス(HRDD)、インクルージョン、労働安全衛生、サプライチェーン、品質保証などの個別のサステナビリティテーマについては、各BU及び主要グループ会社等の責任者をメンバーとする会議体を設け、グループ横断での施策の検討や情報共有などを通じて当グループ全体のサステナビリティを推進しています。

 

③ サステナビリティ目標を役員報酬評価に反映

 サステナビリティに関する定量的な目標を、役員報酬を決定する評価指標として設定しています。

 中長期インセンティブ報酬及び短期インセンティブ報酬において、サステナビリティ戦略に沿った具体的指標・目標を設定し、それを評価に組み込むことでその実行を促しています。

 当社の役員報酬制度については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」に、その概要を記載しています。

 

 

(2)重要課題に対する取組

日立は創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」ことを企業理念としており、社会インフラを支える技術・製品の開発によって社会が直面する課題を解決してきました。

2025年4月に公表した新経営計画「Inspire 2027」において日立がめざすのは、「環境、幸福、経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献し、持続的に成長」することです。その実現に向けて、地球環境を守りながらグリーントランスフォーメーション(GX)を推進し、人的資本への積極投資により持続的成長をけん引する人財の強化を図ります。

 

①脱炭素・気候変動に関する取組(TCFDに基づく開示)

 当社は、2018年6月に金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、同年に公開した日立サステナビリティレポート2018より、TCFD提言に基づく情報開示をしています。本有価証券報告書では、その抜粋を掲載します。

 

(イ)ガバナンス

 当グループは、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、気候変動に関するガバナンスについても、前項の「(1)ガバナンス及びリスク管理」に準じた体制で取り組んでいます。

 

(ロ)戦略

日立は、世界で深刻化する環境課題をふまえ、環境分野でめざす方向性「環境ビジョン」とその実現に向けた環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を2016年に策定しました。策定以降、3年ごとに短期的なアクションプランを定め、事業所やバリューチェーン全体のカーボンニュートラル達成に向けた活動や、水・資源の利用効率の改善、生態系保全活動など、日立グループ全体で目標達成に向けて取り組んできました。今回、近年顕在化している環境課題に加え、その課題解決に向けた人々の意識変化やビジネスモデルの深化を踏まえ、「脱炭素」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」の3つの柱を新たに環境ビジョンとして掲げ、その実現に向けた目標に更新しました。日立は、社会イノベーション事業を通じて、すべての人が地球環境を守りながら豊かな社会を実現できるように、グリーントランスフォーメーション(GX)のグローバルリーダーをめざします。

「脱炭素」については、これまでは2050年度までにバリューチェーン全体の「カーボンニュートラル」の実現を目標としていました。今回の改定ではCO2のみならず、温室効果ガス全体の削減をめざし、2050年度までにバリューチェーン全体の「ネットゼロ」の実現を目標に設定します。高効率な製品や革新的なサービス、将来の技術により、温室効果ガス排出量の削減やバリューチェーンの脱炭素化に貢献します。

 

気候変動関連のリスク

気候変動に関するリスクについては、「脱炭素への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)」及び、「気候変動の物理的影響に関連したリスク(主に4℃シナリオに至るリスク)」に分類して分析・管理しています。

 

・脱炭素への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)

 脱炭素への移行リスクとして一般的に大きなものとしては、「脱炭素化が実現した世界では、現状のままで存続できない事業」において存在するリスクです。これは、化石燃料が使えなくなるリスクに該当しますが、現在の当グループの事業では、電気をエネルギー源とするものが多いため、重大なリスクはほとんど見つかりませんでした。

 その他、当グループが想定する脱炭素への移行リスクとしては、炭素税、燃料・エネルギー費への課税、排出権取引などの導入に伴う事業コスト負担増や、脱炭素向け製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失などがあります。このなかで、製品開発の遅れのリスクについては、機会と表裏一体であり、脱炭素化に貢献する事業を進めることで、リスク回避が可能と判断しています。

 

・気候変動の物理的影響に関連したリスク(主に4℃シナリオに至るリスク)

 気候変動に関する物理的リスクに関しては、気候変動の影響と考えられる気象災害、例えば台風や洪水、渇水などの激化(急性リスク)や、海面上昇、長期的な熱波など(慢性リスク)による事業継続のリスクが考えられます。

 こうしたリスクの回避としては、工場新設時には洪水被害を念頭に置いて立地条件や設備の配置などを考慮する対策を行っています。

 

気候変動関連の機会

当グループでは、気候変動に関連する多くの機会が考えられます。

環境長期目標「環境イノベーション2050」に掲げたCO2排出量の削減目標を達成するには、事業所の脱炭素化はもちろん、バリューチェーン全体の排出の多くを占める、販売された製品・サービスの使用に伴うCO2排出の削減が重要です。省エネルギー化等による、CO2削減に貢献する製品・サービスの開発・提供は、顧客ニーズへの対応であり、社会の脱炭素化への貢献になります。また、顧客との協創によるカーボンフリーソリューションやサービスの普及のような脱炭素化に貢献するビジネスの拡大にも機会があります。GXへの取組は、当グループの経営戦略として推し進めている「社会イノベーション事業」の大きな柱であり、短・中・長期にわたる大きな事業機会になります。

 

当グループの気候変動関連のリスクと機会について

気候変動関連のリスクと機会の検討の結果から、当グループでは気候変動関連の重大で対応が困難なリスクは現段階では見つからず、気候変動対策への貢献は機会として捉えることができることが分かりました。1.5℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し柔軟かつ戦略的に事業を展開することで、当グループは、中・長期観点から、脱炭素への移行において高いレジリエンスを有していると考えています。

 

(ハ)リスク管理

気候変動関連のリスク管理については、BU及びグループ会社ごとに環境負荷などを把握し、評価・査定しています。評価結果は、当社グループ環境本部が集約し、グループ全体として特に重要なリスクと機会を認識した場合には、経営会議で審議・決定し、必要に応じて取締役会でも審議します。

 

(ニ)指標と目標

当グループは、2025年5月に改定した環境長期目標「日立環境イノベーション2050」において、脱炭素の分野で以下の目標を掲げています。

「2050年度 バリューチェーンにおけるネットゼロ」

「2030年度 ファクトリー・オフィスにおけるカーボンニュートラル」

「2030年度 バリューチェーンにおける温室効果ガス排出52%削減」

 

環境長期目標の達成に向けて、3年ごとに「環境行動計画」を策定しています。そのなかで指標と目標を設定し、進捗を管理しています。

脱炭素に関する指標のうち、ファクトリー・オフィスにおけるCO2排出量総量削減率に関する目標と実績は以下のとおりです。

 

指 標

目 標

2024年度

実績

2030年度

2024年度

ファクトリー・オフィスにおけるCO2排出量総量削減率(2010年度比)

カーボンニュートラル

50%削減

81%削減

(注). 本指標及び目標は、「2024環境行動計画」からの抜粋です。上述のとおり、2025年5月に、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を改定しており、これに併せて環境行動計画も2025年からの「2027環境行動計画」になっています。「2027環境行動計画」の詳細については、後日公開予定の「日立サステナビリティレポート2025」をご覧ください。

 

当グループの温室効果ガス排出量(2024年度)

指 標

実 績

Scope1(注)1、2

278kt-CO2e

Scope2(注)1、3

126kt-CO2e

(注)1. 当社は、当社の定める「環境管理区分判定基準」に基づき、当グループ全事業所をA・B・Cの3区分に分類して管理しています。また、当連結会計年度末時点(2025年3月末)において在籍している会社を集計対象としています。上記のScope1及びScope2は、当グループの中で環境負荷が大きいA区分事業所及び発電事業を対象としています。

2. 当グループ内での燃料の使用や工業プロセスによる直接排出

3. 当グループが購入した電気・熱の使用に伴う間接排出

 

②人的資本・多様性に関する取組

(イ)戦略

日立は、人的資本、すなわち人こそが価値の源泉であると考えており、「人財」を重要な経営資本の1つとして強化しています。世界中の従業員の力を結集することで顧客と社会に価値を提供し、サステナブルな社会の実現に貢献することをめざしています。

急速に変化する事業環境において、社会イノベーション事業のグローバルな展開を進めるために、多様な人財が国・地域・事業体を超えてOne Teamで業務遂行する組織体制を構築し、変化に速やかに適応しうるプロアクティブな人財の強化と組織文化の醸成を求めています。

 

2024中期経営計画に関する取組

日立は、2024中期経営計画において、以下の方針のもと人財の確保・育成と社内環境の整備に取り組んできました。

 

 

i) 多様な視点を取り入れた事業活動推進

日立は、多様な視点を持ちあわせた人財からなる組織を作ることで、グローバルな顧客に最適なサービスを提供し、世界が直面する社会課題に対応するための革新的なソリューションを継続的に提供し続けられると考えています。このような組織の基盤となるのは、相互に協力し支え合うカルチャーであり、これは、日立がめざす社会イノベーション事業を通じた中長期的な企業価値向上や、サステナブルな社会の実現に不可欠なものです。そのため、日立は、従業員一人ひとりの持つ価値が認められ、尊重され、能力が最大限に発揮できるインクルーシブな職場環境の醸成にコミットしてきました。日立では、執行役社長によるトップコミットメントのもと、多様な視点に沿った取組をグローバルに推進しています。

 

 

 

ii)グローバル人財マネジメント

サステナブルな社会の実現に貢献するためには、「人財」の視点からサステナビリティ目標 を実現しうる経営の実行が重要となります。このため、日立では、2024中期経営計画がめざすサステナブル経営における人財・組織の位置づけに基づき、グローバル人財マネジメントの戦略を掲げてきました。具体的には、基盤としての「多様な視点の活用」の推進に加え、心身の健康と安全の確保や人財施策を担うオペレーションの見直しや業務効率 を「Foundation」とした上で、「People(Talent)」「Mindset(Culture)」「Organization」の3つを人財戦略の柱に定め、以下のとおり、それぞれの施策を推進してきました。

 

<2024中期経営計画における人財戦略と施策の実行状況>

 

3つの人財戦略の柱に係る主な施策は、以下のとおりです。

「People(Talent)」施策①:経営リーダーの選抜、育成

事業戦略の変化により経営リーダーに求められる能力も変化する中で、日立における経営リーダーとなる人財として、グローバル化や DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応できることはもちろん、自身の知識・経験だけでなく、社内外の知見も得ながら最終的に自身の責任で判断・決断し、変革・実行する能力とパーソナリティが求められます。このため、タレントレビューや外部アプレイザル(HLPO (注)1)をグローバルに実施し、実績(“Performance”)だけでなく資質(“Potential”)も踏まえ、国籍・性別等を問わず多様な人財を経営リーダー候補のタレントプールである「GT+(注)2」に選抜しています。また、経営リーダーへの早期登用をめざす優秀層向けのプログラム「Future 50」等を通じて、経営リーダー候補の育成に努めています。

この取組は、経営トップと指名委員会が協働しながら、Global Leadership Development(GLD)プログラムを通じて行います。次期・次々期のCEO、事業部門長など経営リーダー候補の育成にあたり、経営者ポジションを含むタフアサインメント等のOJT(On-the-job Training)及びOff-JT(社外トレーニング・コーチング)、 社外取締役と直接議論する機会の設定等を通じて、集中的な人財育成を行っています。

(注)1. Hitachi Leadership Profile Online

2. Global Talent Plus

 

<経営リーダーの選抜・育成状況>

 

 

「People(Talent)」施策②:デジタル人財の確保・育成

デジタル技術を活用した社会イノベーション事業を加速し、日立の成長のドライバーであるLumada事業の成長を実現するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引する人財(デジタル人財)の確保と育成に力を入れています。

Lumada事業の成長に伴い、採用・事業買収を通じたグローバルでのデジタル人財の獲得を進めるとともに、当グループのコーポレートユニバーシティ(企業内大学)である日立アカデミー社を中心に、100コース以上にわたる独自のDX研修体系や実務経験を通じた育成プログラムの拡充、GlobalLogic社のメソドロジーを活用した内部の人財育成の強化に取り組んでいます。2024年度までに2024中期経営計画の目標である97,000人を超える107,000人のデジタル人財の確保を実現しており、今後もLumada事業をけん引する人財の確保・育成を継続して推進していきます。

 

 

 

「Mindset(Culture)」施策: 従業員エンゲージメントの向上・グローバルでの日立カルチャーの醸成

 

 毎年、グローバルに従業員サーベイ「Hitachi Insights」を実施し、人財マネジメント施策を企画・推進しています。経営層及び各職場のマネージャーは、自組織のサーベイ結果をメンバーと共有し、組織としての課題を把握した上で、対策となるアクションを立案・実行してPDCAサイクルを継続的に回しています。

 

従業員エンゲージメント向上に向けたアクション立案・実行を推進する上での課題特定手段の一つとして、エンゲージメント・ドライバー(従業員エンゲージメントを高める上で相関性の高い項目)に着目し、グローバルでの人財の流動化促進を含めた適所適財の推進(ジョブ型人財マネジメントを含みます。)、日立グループコア・コンピテンシーの浸透を通じた心理的安全性の高い職場環境の醸成と日立カルチャーの醸成、タウンホールミーティングや座談会、社内SNS等を活用した経営トップとの双方向コミュニケーション強化等を進めてきました。

 その結果、2024中期経営計画において「従業員エンゲージメントスコア(注)」を2024年度までに71.0%とするストレッチ目標に対し、2024年度は71.5%となり、目標を達成しました。

 

(注)従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率。(「自社で働くことへの誇り」「働き甲斐のある職場であるか」「仕事へのやりがい・達成感」「当面自社で勤務する勤続意欲」の4点から測定)

 

<従業員エンゲージメントの向上・グローバルでの日立カルチャーの醸成のための取組事例>

 

 

「Organization」施策: 適所適財の人財配置及び日本におけるジョブ型マネジメントへの転換

グローバルに最適な人財の確保・配置・育成を行うため、グローバル共通の人財マネジメント統合プラットフォームの構築とグローバルでのタレントモビリティを促進しています。人財マネジメント統合プラットフォームの構築においては、その運用範囲をグローバルに拡大すると共に、従業員のスキルやキャリア志向などをクラウドシステムで共有することで、グローバルでの人財検索やチームマネジメント等に活用しています。さらに、今後は自律的に学べる環境の整備に向けてグローバルでの教育プラットフォームを展開していく予定です。

 

<グループ共通の人財施策を通じて、成長に向けた行動定着を推進>

 

<日本での取組>

ジョブ型マネジメントへの転換を推進し、従業員一人ひとりの能力や意欲に応じた適所適財の人財配置を実践することで、個人と組織のパフォーマンスの最大化と従業員エンゲージメントの向上につなげ、組織と人財双方の成長の実現をめざしています。これまで「ジョブディスクリプション(職務記述書)」導入等による職務・人財の見える化や、「学習体験プラットフォーム(LXP)」等の基盤構築を推進し、「社内外副業の導入」「上司-部下のキャリア対話強化」等の取組を進めてきた結果、従業員の意識・行動の変容は大きく進展しました。個人・組織双方の成長に向けて、今後も引き続き上司-部下コミュニケーション等の継続的な取組を実施していきます。

 

「Foundation」施策: 心身の健康と安全の確保

日立は、「安全と健康を守ることは全てに優先する」を基本理念とする「日立グループ安全衛生ポリシー」を世界の全グループ会社と共有しています。そして、コントラクターや調達パートナーを含む関係する全企業と連携しながら、グループ一丸となって、事業活動に関わる全ての人にとって安全・安心・快適で健康な職場づくりに努めています。

当グループは、事故のない安全な職場の構築をめざし、事業に適した労働安全衛生マネジメントシステムの構築・導入、定期的なリスクアセスメントや監査の実施、労働安全衛生に関する教育の展開等にグローバルで取り組んでいます。

 

新経営計画「Inspire 2027」における人財戦略の策定

今後も「人財」は重要な経営資本の1つとして位置づけられる中で、日立は従業員への提供価値を高めるとともに、組織と人財の一層の強化と活性化により、事業及びその先の社会への貢献をめざします。

新経営計画「Inspire 2027」の方針と連動し、また 外部要因を踏まえつつ、生成AIをはじめとするテクノロジーの活用を基盤に据えた新たな人財戦略を策定しました。今後は、注力すべき5つの柱を重点領域として定め、それらの強化に取り組んでまいります。

 

● 従業員のウェルビーイングを実現した「Global Employer of Choice」へ変革

 

(ロ)指標及び目標

2024中期経営計画期間における具体的な人財施策の実行にあたっては、各施策が経営目標や主な経営戦略にどのように繋がっているかを整理し、それぞれの人財戦略・施策に対してKPIを設け、進捗をモニタリングしてきました。

そのうち、特に重要性が高い人財戦略・施策である「デジタル人財の確保・育成」「従業員エンゲージメント強化(注)1」「多様な視点の推進(注)2、3」についての指標は以下のとおりであり、2022年度に設定・公表した3つのKPI全てにおいて2024中期経営計画目標を達成しました。

 

 

上記を含む、重要性が高いKPIの数値は以下のとおりです。

指 標

目 標

実 績

デジタル人財数

2024年度までに97,000人

107,000人

(2025年3月末)

従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率

2024年度までに71%

(注)1

71.5%

(2024年度)

役員層における女性比率

2024年度までに女性比率15%

女性比率:15.9%

及び役員層における外国人比率

(グローバル目標)(注)2

2024年度までに外国人比率15%以上

(注)3

外国人比率:26.1%

(2025年4月現在)

死亡災害件数

年間0件

2件(2024年度)

TRIFR(総災害発生率)(注)4

2024年度までに2021年度比半減(注)5

0.13(2024年度)

(注)1.従来、「2024年度までに68%」の目標を設定していましたが、2022年度に前倒しで目標を達成したことから、新たな目標を設定しています。

2.「2030年までに東証プライム市場に上場する企業の女性役員の割合を30%以上にする」という政府の要請に沿ったものです。当社単体の目標及び実績で、役員層は、当社執行役及び理事をいいます。

3.2025年4月1日付人事異動分を含みます。

4.Total Recordable Injury Frequency Rate(20万労働時間当たりの死傷者数)

5.2021年度実績:0.27

 

 上表の「役員層における外国人比率」及び「従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率」については、当初目標を2022年度に前倒しで達成することができました。一方で、「死亡災害件数」については、死亡災害が発生していることを重く受け止め、重大災害防止に向けた事故予防活動の向上を更に図るべく、グループグローバルでのリスクアセスメント活動の強化を推進しております。また、現地工事における協力会社の安全管理については、ワーキンググループを立ち上げ、協力会社の評価方法の見直しを反映した現地工事ガイドラインを改定すると共に、評価チェックシートの運用を開始し、協力会社の理解のもと一体となって災害防止に努めております。全ての災害は防ぐことができるという強いリーダーシップのもと、災害のない職場作りをめざして、今後も取組を継続します。