2025年2月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 2,552 100.0 -238 - -9.3

事業内容

 

3 【事業の内容】

当社グループは、顧客企業のサービスプロフィットチェーン(以下「SPC」という。(注1))経営の実現に向け、顧客満足度(CS)・従業員満足度(ES)の向上によるサービスの高品質化・高付加価値化を目的とした経営コンサルティングを行っており、顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下「MSR」という。)を基幹サービスとして、従業員満足度調査「tenpoket チームアンケート」(以下「チームアンケート」という。)及びコンサルティング・研修(以下「コンサル」という。)などの各種サービスを提供しております。

MSRとは、マーケティングリサーチの一種で、当社グループのミステリーショッパー(以下「モニター」という。)が一般消費者として依頼主である顧客企業の運営する店舗等を訪れ、実際の購買活動を通じて商品やサービスの評価を行う顧客満足度調査のことであります。当社グループの覆面調査レポート(以下「レポート」という。)は、規定どおりのサービスが行われているかどうかのチェックを目的とした同業他社のものとは異なり、店舗スタッフの働きがいを高め、サービス品質の向上を実現することを目的としており、その後のレポートの活用促進に向けたコンサルへと繋がっている点に特徴があります。具体的には、コンサルをとおして、レポートを活用しながら、店舗運営に関する現場オペレーションにまで踏み込んだアクションレベルの改善活動を支援しております。また、従業員満足度調査としてチームアンケートを提供しておりますが、こちらも調査による現状把握に止まらず、その後のコンサルによって調査結果を従業員エンゲージメントの向上に繋げていく活動を支援しております。

当社グループでは、更なる収益拡大のため、顧客基盤の拡大を目的としたサービスのラインナップ拡充と付加価値向上を進めております。一方、継続性があるMSRで着実に収益が計上されるストック型のビジネスモデルを導入しており、安定した収益基盤の構築も図っております。

なお、当社グループはミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

(注1) SPCとは、経営における売上や利益と、従業員満足度、顧客満足度の因果関係を示したフレームワークのことであり、従業員満足度向上→顧客満足度向上→業績向上→従業員満足度向上→・・・・・の好循環サイクルを指します。

 

(1) サービスの特徴

当社グループは経営コンサルティング会社から分社・独立する形で創業しており、経営コンサルティング会社で培ったノウハウを生かした各種サービスを提供しております。

MSRでは、店舗スタッフの働きがいやモチベーションを高め、自発的な改善活動に繋がるレポートを提供することを重視しております。そのため、規定どおりのサービスが行われているかどうかを選択肢により評価するチェック主体の単純な調査票ではなく、自由記入のコメントを多用した調査票を導入しており、外食業界では料理(味・提供時間)・接客、小売業界では商品説明力や品揃え、自動車業界では自動車関連小売等におけるセールススキル、美容業界ではカウンセリングなど、業界ごとに顧客満足度との相関性の高いものを評価項目に加えております。さらに、その有効性を高めるために、調査の準備段階では担当コンサルタントが顧客企業とコミュニケーションを図り、顧客ニーズに合わせた調査企画・設計を行うほか、要望に応じて調査実施前・後のコンサルを実施いたします。また、質の高いレポートを提供するため、専門の教育を受けたレポートチェッカーが、モニターの作成したレポートに目を通し、コメント内容や評価との整合性などを確認、必要に応じてレポートを作成したモニターへのヒアリングを行うことで、コメントをより具体的かつ効果的なものにするなど、コメントの量・質ともにこだわった消費者目線のレポートを顧客企業へ提供しております。2025年2月期には、国内において、MSRの顧客企業704社に対し年間20.1万回の調査を実施しておりますが、これまで蓄積した当該データを活用し、上述のような評価項目の設計や業界平均値等の比較対象データの提供も行っております。また、近年は海外関連調査(海外企業から依頼を受けた国内調査・国内外企業から依頼を受けた海外調査・海外子会社における調査)も伸長しており、2025年2月期には、前期比45.6%増の3.0万回の調査を実施しております。

チームアンケートは、リーダーシップ、チームの遂行力、チームの風土、スタッフの主体性、スタッフの満足度の5つの観点で従業員満足度を調査するサービスであります。2011年9月のサービス開始から累積で287万人超の調査実績があり、当該蓄積データより算出された業界平均値や調査結果の高い企業・店舗等の平均値と比較することによって、顧客企業・店舗等の強み・弱みを知ることができます。

コンサルでは、MSRやチームアンケートの調査結果をもとにボトムアップ型でサービス改善を進めるノウハウ「HERBプログラム」を提供しております。同プログラムを通じてMSRを用いた改善活動を顧客店舗に定着させ、店舗スタッフのモチベーション向上、働きがいのある職場作りを促進することで、店舗スタッフの定着率向上、店舗スタッフが自発的にサービス品質の向上に取り組む環境構築に繋げております。B2Cビジネスを営むサービス業をはじめ、多岐にわたる業界が当社グループのサービス提供対象となりますが、当社グループでは、各種調査やコンサルの質を向上させるため、業界特化プロジェクトを組み、それぞれに精通することで、各業界特有の課題認識を捉えると同時に、他業種担当の社員や有識者と必要な連携を行いつつ、課題解決に向けたノウハウの充実等を図っております。

 

以上のような一連のサービスが、顧客企業の経営システムインフラとして長く利用されることを目指し、継続的なサービスのラインナップ拡充と付加価値向上に努めております。主な取り組みとして、2016年3月期より国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同研究契約を締結し、「サービス・ベンチマーキングによるサービスプロフィットチェーンの高度化」に向けた共同研究を実施しております。本研究では当社グループが保有する顧客満足度・従業員満足度に関するデータを対象として各種分析を行うことで、各種調査手法を高度化するとともに、業種別のSPCの傾向や特色を明確化、研究成果として得られた各種データはコンサルの現場で活用されております。また、2017年3月期には来店客からWEB上でタイムリーにアンケートを取得できる「カスタマーリサーチ」や顧客企業の店舗スタッフ個々の私有デバイスからレポートを閲覧し、そこから得た気付きを瞬時に発信・共有できる「MSナビ」(以下「MSナビ」という。)を、2020年2月期には顧客企業のスーパーバイザー(SV)の業務効率化とスーパーバイジング力の向上を図る「SVナビ」(以下「SVナビ」という。)をリリースいたしました。MSナビやSVナビは、チームアンケートやビジネスチャットなどの各種ソフトウェアとともにtenpoketという名称にてパッケージ化され、SaaSとして利用いただくことが可能です。また、オンライン接客を加速化させる各種業界向けに調査と送客を両立したMSRのサービス提供を開始し、コロナ禍によって傷んだ財務体質の中で事業拡大・転換を目指すクライアントに対して政府・自治体等が実施する補助金・助成金等の採択支援サービスを開始したことに加え、2024年2月期には電気料金等の高騰に対応するべくコストダウン商材の販売、人手不足への対応を強化するべくチームアンケートによる定着率向上から人材採用コンサルティング、さらには有料職業紹介事業の許可を取得して人材紹介業へのトライアル、LINEを活用した店舗の販促支援代行分野への進出も開始しております。

このような取り組みが功を奏し、当社におけるMSR以外の売上構成比はコロナ禍前の13.7%から26.6%になっております。2025年2月期はコロナ禍の収束及び顧客における原材料価格や人件費上昇の価格転嫁が進み、経営基盤が持ち直し傾向にあることを踏まえ、各種新サービスの成長と共に、MSRの回復を最重要課題として取り組んでまいりました。当社グループが国内でミステリーショッピングリサーチ事業を提供している業界別の状況は下記のとおりです。

 

業界

2025年2月

主な業種・業態等

売上収益

(百万円)

売上収益に占める

既存顧客の割合

外食業界

743

93.1%

居酒屋、ファストフード

小売業界

402

92.5%

ショッピングセンター

自動車業界

357

87.0%

カーディーラー、サービスステーション

美容業界

29

65.7%

美容院、エステ

レジャー業界

106

98.0%

カラオケ、ホテル

その他

281

78.0%

金融、宿泊、行政(公共機関)等

 

 

 

(2) ミステリーショッピングリサーチ事業における「MSR」、「チームアンケート」及び「コンサル」の詳細

① MSR

他のマーケティングリサーチ手法と比較した際、MSRの最大の特徴は、モニターが依頼を受けた後に実際にサービスを体験するという点にあります。MSRで提供するレポートは、一消費者であるモニターがサービスの利用前に抱いていた事前期待と実際のサービスを受けて感じた印象との差異を時系列で明らかにすることによって、購買意欲、再来店意思、紹介意思といった結果から、それに至った経緯までを、心理状況の変化も交え詳細に記述します。

これによって規定どおりのサービスが行われているかはもちろん、その時々の状況によって異なるサービスの実態、その時に行われたやり取りなどの具体的内容、サービスを受けた消費者の心象までを詳細に知ることができます。このためMSRは、主にサービス業の現場における課題把握調査、又は顧客満足度調査の手法として用いられます。

また、調査によって得られる「お客様の生の声」は、サービス業の現場で働く店舗スタッフの働きがいを高める重要な要素となり、顧客満足を大切にする組織風土を生みだし、サービス品質向上の土台を築くことに繋がります。この土台があるとオペレーション改善が自然に進み、顧客満足度や生産性向上のために必要な改善を続ける企業文化の醸成を促進させることができます。

MSRに取り組む顧客企業の多くは全店舗での調査実施を要望します。そのため、全国に店舗を有するナショナルチェーン等のニーズに対応するには、離島を含む調査対象店舗のある地域に数多くの登録モニターを確保しておくことが重要となります。また、年齢や性別、これまでのサービス利用の有無等、限られたモニター属性での調査を求められる場合があります。こうした様々な調査ニーズに対応するため、当社グループは、30歳・40歳代の女性を中心として、日本全国に59万人のモニターを確保しております。モニター登録は、当社モニター専用サイトの新規会員登録ページにて、利用規約や個人情報保護方針に同意の上、メールアドレスとパスワードを入力することで登録完了となります。その後、氏名・住所等の詳細な会員情報登録、なりすまし防止のための携帯番号認証、調査モラル教育を目的としたWEBテスト受講などの手続きを行うことで、調査を実施することが可能となります。

さらに、調査時にモニターが遵守しなければならない指定行動の多い調査などでは、モニターの質が強く求められる場合もあります。そのため、レポート作成ノウハウをまとめた「レポートの書き方」やMVR(注2)として表彰した優秀なレポートをモニター専用サイト上に掲載するほか、提出されたレポートを当社グループの定めるチェック基準で評価し、その結果をモニターにフィードバックする等、モニター教育にも力を入れております。このレポート評価の結果は、モニターランクの付与基準となっております。モニターランク制度はモニターをサービスマイスター、ダイヤモンド、ゴールド、シルバー、ブロンズ、レギュラーの6階層に区分するものであります。上位階層に位置する程、応募した調査へ優先的に当選するチケットがもらえる等の特典が設けられており、質の高いモニターの囲い込みに役立てております。加えて、2025年2月期にはUX向上のためのモニターサイトリニューアル、LINEとのID連携によるメッセージ配信機能の活用などの施策により、稼働率の低いモニターのアクティブ化を図っており、今後も改善・強化を進めてまいります。

(注2) MVRとは“Most Ⅴaluable Report”の略称で、質の高いレポートを提出したモニターを表彰する賞であります。

 

当社グループにおける国内の最近5年間のモニター数、モニターが年間で調査した店舗数及び総調査数は以下のとおりとなります。

 

 

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

2025年2月

モニター数(人)

525,783

542,287

560,079

573,964

594,249

年間調査店舗数(店)

50,147

54,442

53,194

50,337

54,258

年間総調査回数(回)

126,867

152,445

188,333

187,460

201,132

ミステリーショッピングリサーチ事業の売上構成比

97.8%

98.3%

98.9%

99.1%

99.3%

 

 

 

 

MSRの概要は以下のとおりとなります。

 

<MSR概要図>


 

(ⅰ)

調査設計、システム登録

顧客企業の依頼内容に基づいて、調査フローや調査票などを設計し、調査企画としてシステム登録する

 

(ⅱ)(ⅱ)'

モニター募集、応募、選定

モニター専用サイトにて調査企画を告知し、モニター募集、応募者の中から適切なモニターを選定する

 

(ⅲ)

モニター教育・サポート

調査前に、調査趣旨・間違い易いポイント・行動の注意点やレポートの書き方等についてメールや電話を用いて教育・サポートする

 

(ⅳ)

覆面調査

モニターは一般利用客として調査対象店舗を訪れ、指定の調査条件に従い、実際の購買活動をとおしてサービスを体験(調査)する

 

(ⅴ)(ⅴ)'

レポート作成、提出

モニターは、モニター専用サイト上にて、実際に体験(調査)したサービスやその結果として感じた再来店意思や紹介意思について評価し、その理由や感想等のコメントを交えてレポートを作成、当社グループに提出する

 

(ⅵ)(ⅵ)'

レポートチェック、追記・

修正依頼、ヒアリング、メンテナンス

・一次チェックとして、モニターから提出されたレポートと証票(来店証明となるレシート等)をチェックする

・二次チェックとして、評価の整合性やコメントの質・量が定められた基準を満たしていることをチェックする

・基準を満たしていない場合には、メールでの追加記載・修正依頼、電話でのヒアリング等を実施しながら、充足されるまでレポートのメンテナンスを行う

 

(ⅶ)

レポート納品

・顧客企業と合意した納期までに、MSナビにてレポートを納品する

・顧客企業の店舗スタッフは個々の私有デバイスからMSナビを介してレポートを閲覧する

・MSナビは、レポートの閲覧のみならず、簡易な集計・分析も可能となっている

 

 

 

 

② チームアンケート

チームアンケートは、従業員の働きがいやモチベーションに焦点を当て、リーダーシップ、チームの遂行力、チームの風土、スタッフの主体性、スタッフの満足度の5つの観点から組織が抱える問題点を明らかにする調査です。チームアンケートの設問は、各種理論や当社グループのコンサルをとおして成果が創出された組織・チームの特徴をもとに設計されております。顧客企業の店舗スタッフが負担なく回答できるよう設問数も必要最低限に留めており、年に複数回実施し、短いスパンでタイムリーに自店舗の従業員満足度を確認できる仕様となっております。

過去累計287万人超の調査実績があり、蓄積データより算出されたサービス業全体やこの顧客企業が属する業界、調査結果の高い企業・店舗等の平均値と比較することによって、顧客企業・店舗等の強み・弱みを知ることができます。当社グループでは、このような調査結果を活用し、組織改善のための支援設計からそれに準じたコンサルの提供までをサポートしております。

 

③ コンサル

当社グループでは、MSRやチームアンケートを活用した改善サイクルが顧客店舗においてスムーズに定着するよう、調査とその結果に基づくコンサルをワンストップで提供できるノウハウを有しており、調査実施前・後で、顧客企業の店舗スタッフがポジティブに各種調査結果を捉えられるレポートフィードバックのあり方、顧客企業の店舗スタッフに自発的な改善活動を促す方法、多くの店舗に共通して見られる課題の解決策、顧客企業内における優秀店舗の取り組み事例共有などを主なテーマとしたコンサルを実施しております。また、人手不足が深刻化し、人的資本経営の重要性が認識される中、従業員エンゲージメントの改善による働き甲斐の向上や離職防止に関連する分野は大きな成長余地があると考え、ノウハウ開発に努めてまいりました。

顧客店舗における、MSRを活用しての改善サイクル例は以下のとおりとなります。

 

 

<MSRを活用しての改善サイクル例>


 

[事業系統図]

事業の系統図は次のとおりであります。


注1 当社は登録モニターや調査外注先を活用して、顧客企業の国内店舗または海外店舗もしくはその両方に対して覆面調査を実施し、レポートを納品、要望に応じてコンサルまでを行い、顧客企業より調査費用等を受け取る。

注2 子会社は登録モニターを活用して、顧客企業の海外店舗に対して覆面調査を実施しレポートを納品、要望に応じてコンサルまでを行い、顧客企業より調査費用等を受け取る。

注3 顧客企業が経営する国内店舗に対する覆面調査は、当社が登録モニターまたは調査会社に依頼をして実施する。

注4 顧客企業が経営する海外店舗に対する覆面調査は、当社が登録モニターまたは調査会社に依頼をして実施するほか、子会社が登録モニターに依頼をして実施する。

注5 当社は覆面調査を実施した登録モニターに対して謝礼を、調査外注先に対して業務委託費用を支払う。

注6 子会社は覆面調査を実施した登録モニターに対して謝礼を支払う。

注7 当社は、提携先企業より新規顧客の紹介を受け、それに対して紹介料を支払う。

注8 当社は、顧客企業に対して納品するレポートのチェック等の一部を外部の会社に依頼し、その費用を支払う。

 

業績

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇に伴う実質賃金の低迷や節約志向の高まりによって、内需の牽引役である家計消費が伸び悩んでいることに加え、人手不足に伴う人件費の上昇、国内企業物価の上昇などが企業経営を圧迫しており、当社の主要顧客である外食・小売などの内需型サービス産業においては、先行き不透明な環境が続いております。

このような環境下、基幹サービスである顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下「MSR」という。)の売上収益は、前連結会計年度と比較し16.2%増となりました。今期の活動方針に「MSRの再構築」を掲げ取引拡大及び利益率の回復に傾注してきたことが功を奏し、年間調査数が7.3%増、国内における通常調査売上が11.6%増、海外関連調査売上は37.5%増と伸長したことが主な要因です。一方、SaaSは前連結会計年度と比較し7.5%減となりました。人手不足を背景に従業員エンゲージメント調査である「チームアンケート」は21.5%増となったものの、「tenpoket クラウド」契約からMSRやチームアンケートの個別契約への切替、「カスタマーリサーチ」の一部大手顧客の離脱による影響です。また、コンサルその他(以下「コンサル」という。)は、通常コンサルこそ増強してきた人員の戦力化により前期比3.2%増となったものの、補助金・助成金支援分野において採択率低下や審査の遅延が響き、全体で16.1%減となりました。以上の結果、売上収益で6.7%増、売上総利益で0.1%増となりました。

また、2024年4月8日に開示しました通期連結業績予想(注)に対して、売上収益は93.5%で着地しております。MSRは堅調に増加したものの、補助金・助成金コンサルが大幅減、チームアンケートや通常コンサルについても、期ズレの影響もあり予想に対して未達となりました。

受注高においては、前連結会計年度と比較し11.3%増となりました。MSRが19.7%増、SaaSも15.4%増と順調に推移した一方、補助金・助成金コンサルが56.1%減と大幅に減少、通常コンサルこそ21.0%増であったものの、人材紹介等の新規サービスの伸び悩みもあり、コンサルは17.1%減となりました。トータルの受注増によって、期首時点における受注残売上は前年同期比16.0%増の703百万円となっております。

生産面では、物価上昇に伴うモニター謝礼や労務費の増加に対応するため、顧客との価格交渉を進めることに加え、調査条件の緩和やサイトリニューアル、LINE活用等によるモニターの活性化、レポートチェックへのAI活用といった取り組みにより1レポートあたりの生産性向上に努めており、MSRの売上単価は前連結会計年度と比較し8.6%増、利益率も40.9%から43.9%へと回復基調にあります。また、成長分野である海外関連調査の増加を見据えたオペレーションの強化なども進めております。

管理面では、前連結会計年度と比較し、原価が10.1%増、販売費及び一般管理費が0.5%減となりました。原価は、納品レポート数の増加に伴うモニター謝礼の増加、人員増及び昇給に伴う労務費の増加、IT関連投資の拡大に加え、東南アジア地域の海外調査の増加によって調査外注費が1.3%の上昇といった要因により増加致しました。販売費及び一般管理費の増加は、人件費・賃借料・報酬などの上昇を広告宣伝費の抑制等で吸収した結果です。

以上のように、当社の業績についてコロナ禍前の水準に戻すための各種取り組みを実施し、取引拡大及び利益率の回復に努めておりますが、当初想定よりも収益計画に遅れが生じております。直近2期間において業績予想の未達が続いた状況を鑑み、当社ののれんについて、国際会計基準IAS第36号「資産の減損」に基づいて、将来の不確実性を考慮し保守的に回収可能価額を検討いたしました。その結果、回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、のれんの減損損失398,309千円をその他の費用に計上いたしました。

(注) 2024年4月8日「2024年2月期決算短信(IFRS)」をご参照ください。

 

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ171,711千円減少し、3,378,277千円となりました。

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ102,406千円増加し、826,397千円となりました。

当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末に比べ274,118千円減少し、2,551,880千円となりました。

 

 

b.経営成績

以上の結果、のれんの減損損失の計上を含めた当連結会計年度の業績は、売上収益2,552,146千円(前年同期比6.7%増)、営業損失237,844千円(前年は179,661千円の営業利益)、税引前損失239,502千円(前年は178,644千円の税引前利益)、親会社の所有者に帰属する当期損失276,099千円(前年は114,366千円の親会社の所有者に帰属する当期利益)となりました。

なお、当社グループはミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて249,232千円増加し、578,930千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による収入は、406,812千円(前期比393,704千円増)となりました。これは、税引前損失の計上239,502千円があったものの、減価償却費及び償却費の計上106,433千円、減損損失の計上398,309千円、営業債権及びその他の債権の減少額85,791千円、営業債務及びその他の債務の増加額17,543千円があったこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による支出は、130,134千円(前期比46,401千円減)となりました。これは、無形資産の取得による支出124,964千円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による支出は、30,382千円(前期比142,706千円減)となりました。これは、リース負債の返済による支出33,372千円等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループでは、販売実績のほとんどが生産実績であることから、記載を省略しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントで示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ミステリーショッピングリサーチ事業

2,563,296

111.3

703,367

116.0

合計

2,563,296

111.3

703,367

116.0

 

(注) 1.当社グループの事業は、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであります。

2.IFRSに基づく金額を記載しており、千円未満は四捨五入して記載しております。

3.受注残高には、翌連結会計年度に売上収益となる見込みの金額を記載しております。

4.子会社においては、受注から納品までの期間が短いため、上記金額に含めておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントで示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

ミステリーショッピングリサーチ事業

2,552,146

106.7

合計

2,552,146

106.7

 

(注) 1.当社グループの事業は、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであります。

2.IFRSに基づく金額を記載しており、千円未満は四捨五入して記載しております。

3.主要な販売先については、いずれも100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第312条の規則によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針及び 注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析

(資産合計)

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ171,711千円減少し、3,378,277千円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ135,639千円増加し、1,088,503千円となりました。これは営業債権及びその他の債権が86,148千円減少したものの、現金及び現金同等物が249,232千円増加したこと等によるものであります。

非流動資産は、前連結会計年度末に比べ307,350千円減少し、2,289,774千円となりました。これは主に使用権資産が26,876千円、その他の無形資産が58,944千円増加したものの、減損損失の計上によりのれんが398,309千円減少したこと等によるものであります。

(負債合計)

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ102,406千円増加し、826,397千円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ72,455千円増加し、778,233千円となりました。これは営業債務及びその他の債務が17,522千円、未払法人所得税等が35,089千円増加したこと等によるものであります。

非流動負債は、前連結会計年度末に比べ29,952千円増加し、48,163千円となりました。これは非流動負債のリース負債が25,274千円増加したこと等によるものであります。

(資本合計)

当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末に比べ274,118千円減少し、2,551,880千円となりました。

これは当期損失の計上275,891千円等によるものであります。

 

b.経営成績の分析

(売上収益)

前連結会計年度と比較し、MSRは年間調査数が7.3%増、国内における通常調査売上が11.6%増、海外関連調査売上は37.5%増と伸長したことにより全体で16.2%増となりました。SaaSは「チームアンケート」が21.5%増となったものの、「tenpoket クラウド」契約からMSRやチームアンケートの個別契約への切替、「カスタマーリサーチ」の一部大手顧客の離脱等が影響し全体で7.5%減となりました。コンサルは通常コンサルこそ増強してきた人員の戦力化により前期比3.2%増となったものの、補助金・助成金支援分野において採択率低下や審査の遅延が響き、全体で16.1%減となりました。

この結果、当連結会計年度の売上収益は2,552,146千円(前期比6.7%増)となりました。

(売上原価、売上総利益)

売上原価については、1,751,413千円(前期比10.1%増)となりました。納品レポート数の増加に伴うモニター謝礼の増加、人員増及び昇給に伴う労務費の増加、IT関連投資の拡大に加え、東南アジア地域の海外調査の増加によって調査外注費が1.3%の上昇といった要因により増加致しました。

この結果、売上総利益は800,733千円(前期比0.1%増)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業損失)

販売費及び一般管理費については、651,610千円(前期比0.5%減)となりました。人件費・賃借料・報酬などの上昇を広告宣伝費の抑制等で吸収した結果です。

その他の収益は12,243千円、のれんの減損損失を含むその他の費用は399,210千円発生しており、この結果、営業損失は237,844千円(前期は179,661千円の営業利益)となりました。

 

(親会社の所有者に帰属する当期損失)

金融収益は409千円、金融費用は2,068千円発生しており、法人所得税費用36,388千円等を差し引いた結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は276,099千円(前期は114,366千円の親会社の所有者に帰属する当期利益)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社グループはキャッシュ・フローを重視した財務戦略を進めており、設備投資資金についても投資効率性などを分析した上で、原則として営業活動から得た収入を充当していく方針であります。

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

親会社所有者帰属持分比率(%)

80.6

76.6

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

11.4

0.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ

21.8

305.1

 

(注) 親会社所有者帰属持分比率:(親会社の所有者に帰属する持分)÷(総資産)

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:(有利子負債)÷(キャッシュ・フロー)

インタレスト・カバレッジ・レシオ:(キャッシュ・フロー)÷(利払い)

1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

3.キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4.利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、モニターに対する謝礼原価やレポートチェックの外注委託費、労務費といった売上原価、人件費や旅費交通費、当社が提供する各種システムのデータサーバ費用等の販売費及び一般管理費であります。投資を目的とした資金需要は、什器備品や社内利用ソフトウェアの購入費用の他、当社がSaaSとして提供する商品群「tenpoket」のシステム開発費用であります。株主還元については、財務の健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施してまいります。

上記運転資金及び投資資金につきましては、内部資金及び金融機関からの借入により資金調達を行っております。

当社グループは効率的で安定した運転資金の調達を行うため、主要取引金融機関と総額500,000千円のコミットメントライン契約を締結しており、当該契約に基づく当連結会計年度末の借入実行残高は100,000千円であります。また、金融機関から短期借入金による調達を実施しており、短期借入金の当期末残高は45,840千円となりました。

加えて、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保するとともに、財務基盤の一段の強化を図ることを目的として、金融機関との間で50,000千円の当座貸越契約を締結しております。この契約に基づく当連結会計年度末の借入実行残高はなく、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高578,930千円と合わせて、資金について十分な手元流動性を確保しているものと認識しております。

 

(3) 経営成績等に重要な影響を与える要因について

当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、事業体制、同業他社等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは常に市場動向及び業界動向に注視しつつ、コンサル、生産管理、システム開発、統計解析業務に携わる人材並びに経営管理業務に携わる人材を確保・育成し、事業体制の強化はもとより管理体制の整備を進め、社会及び顧客のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

 

セグメント情報

6.セグメント情報

(1) 報告セグメントの概要

当社グループの事業内容は顧客満足度覆面調査及びこれに付随する事業を行っており、報告セグメントはミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであります。

 

(2) セグメント収益及び業績

当社グループは、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

(3) 製品及びサービスに関する情報

提供している製品及びサービス並びに収益の額については、注記「23.売上収益」に記載のとおりであります。

 

(4) 地域別に関する情報

当社グループは、外部顧客からの国内売上収益が、連結包括利益計算書の売上収益の大部分を占めるため、地域別の売上収益の記載を省略しております。

また、国内所在地に帰属する非流動資産の帳簿価額が、連結財政状態計算書の非流動資産の大部分を占めるため、地域別の非流動資産の記載を省略しております。

 

(5) 主要な顧客に関する情報

単一の外部顧客との取引による売上収益が当社グループ売上収益の10%を超える外部顧客がいないため、記載を省略しております。