2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社における事業等のリスクとして、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)景気、個人消費及び顧客の動向によるリスク

 当社は、日本国内を中心とする化学品や医薬品を製造する会社から生産や研究開発を受託しております。顧客に供給している製品はエレクトロニクス用有機材料から、日用品、医薬品の原薬やその他材料まで多種多様であり、顧客において当該材料を利用した最終製品は多岐にわたっているものと推測されます。従って、国内外の景気動向や個人消費動向、顧客動向の影響を大きく受けます。たとえば景気の後退や個人消費の低迷が起こった場合、当該外部環境の影響や各顧客固有の事情によって顧客が外部に委託する生産もしくは研究開発を減らした場合、委託する製品の生産又は研究開発から撤退した場合、さらには顧客の倒産や廃業が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)顧客、当社の研究開発及び生産計画の進捗に関するリスク

 当社のビジネスは、顧客の自社商品の研究開発や生産を支援する事業を中心に行っているため、業績はそれら顧客の開発品の開発スケジュールや生産計画に大きく依存します。顧客の研究計画が途中で中止や中断等になるリスクは常にあり、またそれは当社がコントロールできないものです。これらの顧客動向は、営業活動において注視しており、このようなリスクは最小限となるよう努めております。

 一方、当社は、将来の製造支援ビジネスのための技術開発や独創的な自社商品の開発も行っていますが、これらが全て実用化され、当社の業績に寄与する保証はありません。

 顧客あるいは当社の研究開発計画の進捗が大幅に遅れたり、変更や中断、さらには中止となった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)研究開発・製造支援事業特有のリスク

 顧客の商品に係る研究・開発、あるいは商業生産初期のステージにおける支援業務では、収益率低下や技術上のトラブル等が発生するリスクを伴います。当社は、顧客とのコミュニケーションを重視し、そのようなリスクを最小限にするよう努力していますが、残念ながら顧客の期待に応えられず、想定していた収益が上がらない等のリスクがあります。

 また、原材料の支給や資材、機器の貸与、中間体や製品の一時預かりの機会も多いため、その保管・使用中の劣化、滅失、破損等により、顧客から賠償を求められるリスクがあります。

 このような、研究開発・製造支援事業特有の事象が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)競合他社との関係に関するリスク

 当社の競争相手は、医薬品原薬製造企業、化学品製造・開発企業、化学分野の研究受託・人材派遣企業等多岐にわたり存在し、研究開発から生産までの各々のステージで競合します。当社の強みは全てのステージで一貫して支援できる体制を持つことと、技術的な幅の広さですが、各ステージにおいては、技術力、生産能力等について当社と比較して優位にある企業もあります。従って、これら競合相手との競争次第では、当社の計画する経営成績に影響をきたす可能性があります。また今後、市場の拡大に伴い、更に新規参入企業が増えて競争環境が激しくなる可能性があります。

 このような、競合他社との関係において、当社の優位性を示すことが難しくなる状況に陥るような場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)製品の品質に関するリスク

 当社は、厳格な品質管理基準に従って各種製品を製造しておりますが、全ての製品について欠陥が無く、将来にわたってリコールが発生しないという保証はありません。大規模な製品事故は、多額のコストや当社の評価に重大な影響を与え、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)資材調達に関するリスク

 当社は、様々な化学薬品を使用しますが、なかには特殊な原材料もあります。重要なものは複数購買等の対策を講じて安定製造、安定供給に努めていますが、代替が利かない材料も存在します。その供給元からの調達に問題が発生した場合には、生産計画に支障をきたし、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)原料、資材価格の変動によるリスク

 当社は、原油価格に連動する試薬、溶剤等の様々な化合物を原料や資材として国内外から直接又は間接的に調達しています。当社では、これらの市場価格を注視して不利益を被らないよう努力をしておりますが、購入原材料や資材の価格が変動した場合、またそうした購入原料価格の変動を販売価格に転嫁できない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)外部委託に関わるリスク

 当社は、事業活動を行う上で、生産、試験、物流、産業廃棄物搬出・処分等の業務を外部に委託しています。委託に当たっては、購買先として審査を行い、必要に応じて監査を行う等その業務を適切に管理していますが、委託先で生じた何らかの問題が、当社の委託業務に支障をきたし、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)大口取引先への依存によるリスク

 取引上位10社の占める売上高の割合は、68%となっております(2024年3月期)。これらの企業との取引条件の変更、契約解除あるいは取引先の製品の需要減退が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを低減するため、新規大口顧客の開拓などに注力しております。

 

(10)事故・災害のリスク

 当社は、安全操業のために製造設備の保守・点検を実施しています。事業活動継続には、この保守・点検は必要不可欠です。しかしながら、製造設備で発生する事故、自然災害等による影響を完全に防止できる保証はありません。当社で発生した火災、爆発、漏洩、悪臭、騒音等により、物的・人的被害を及ぼした場合には、当社の事業活動に支障をきたし、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)主要な事業の前提となる許認可、届出に関わるリスク

 当社の主な事業は医薬品原薬製造を含む有機化学品の研究・開発・生産ソリューション事業であり、この事業を遂行するために以下に代表される様々な許可等を取得しております。これらの許可等については、各法令で定める手続きを適切に実施しなければ効力を失います。また、各法令に違反した場合、許可等の取消し、又は期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止等を命ぜられることがある旨が定められております。当社は、現時点において、許可等の取消し等の事由となる事実はないものと認識しておりますが、将来、当該許可等の取消し等を命ぜられた場合には、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・危険物製造所許可、屋内貯蔵所許可、危険物屋外タンク貯蔵所許可、危険物一般取扱所許可

・毒物劇物製造業登録、毒物劇物一般販売業登録、毒物劇物輸入業登録

・医薬品製造業認可

・向精神薬製造製剤業免許、向精神薬試験研究施設設置者登録

・覚せい剤原料取扱者指定

・農薬登録

 また、当社の事業遂行上必要な申請等として、以下に代表されるものがありますが、許可等と同様、万一遺漏があり、管轄当局からの指導、処分を受けた場合には、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)に基づく、新規化学物質に係る申出、申請

・労働安全衛生法に基づく、新規化学物質に係る届出、申請

・遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)に基づく申請

 

(12)医薬品の外部委託に係る規制動向に関するリスク

 当社の事業上、深く関係する法令のひとつに「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」)があります。この薬機法の2005年4月改正(当時は薬事法)において、製造のアウトソーシング化という国際情勢、社会情勢に対応して全面外部委託が認められました。この改正は当社の事業にとって歓迎するものではありますが、薬機法の本質は安全対策であり、規制動向が将来にわたって必ずしも当社の事業にとってプラス方向となる保証はありません。医薬品の外部委託に係る規制動向によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)法的規制に関するリスク

 当社は、化学品、医薬品、農薬、遺伝子組換え等に関する多くの規制に従い業務を遂行しており、法令遵守には最大限の注意を払っていますが、過失あるいは政策、実務慣行、解釈変更によって発生する事態が、当社の業務遂行や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来的に環境及び化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性があります。

 当社では、法令の改正情報などの能動的な収集に努め、適宜対応しておりますが、法的規制に関連した事象が当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)知的財産管理に関するリスク

 当社は、知的財産権が事業活動・製品競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、知的財産権の取得による自社権利の保護に努める一方で、他社の知的財産権を調査し、問題の発生防止を図っております。しかしながら、他社との間で知的財産権を巡る紛争が生じた場合や、他社から知的財産権を侵害された場合には、事業活動に支障をきたし、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)情報漏洩リスク

 当社の事業の特徴として、秘密保持契約を締結した上で顧客の商品開発に関わる技術情報や営業情報を預かり、取り扱う業務が日常的に発生します。役職員には、これらの情報が、企業活動における根幹であることを十分に理解させるため、啓発、教育を適宜実施し、また秘密保持誓約を提出させる等、情報漏洩の防止には万全を期しています。しかしながら、万一情報の漏洩が発生した場合には、当社が賠償責任を負う可能性があり、また情報漏洩が発生したことで、社会的信用の低下、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)コンピューター・システムに起因する運営のリスク

 当社は、会社運営の全般にわたってコンピューターによる業務処理を実施しております。外部からのコンピューターウイルス攻撃によるシステムトラブルやデータ破壊、更には情報の盗難、漏洩等への対策として、コンピューターセキュリティーの強化等を適宜実施しております。しかしながら、予期せぬ地震・火災等の災害によるハードウェアやネットワークの損傷や、現状のコンピューターセキュリティーで防ぐことのできない外部からの攻撃の発生等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)訴訟等に関するリスク

 当社の事業又は活動に関連して、知的財産権、製造物責任、環境、労務等、様々な訴訟、紛争、その他の法的手段が提起される可能性があります。現在、当社の業績と財政状態に重大な影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来において、重要な訴訟等が提起された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお当社では、顧問弁護士を選任し、常に相談できる体制をとっております。

 

(18)固定資産投資に関わるリスク

 有機化学品の研究・開発・生産ソリューション事業においては、顧客の要求に対応できる製造設備を予め揃えておくことは非常に重要であり、商談状況を踏まえて大きな設備投資を行うことがあります。しかしながら、既述のとおり、生産を実施する当社のビジネスは、それら顧客の開発品の開発スケジュールや生産計画に大きく依存します。このリスクは当社の設備投資においても重要な問題です。設備投資は常に慎重に十分な検討を経て決断しますが、想定していた収益が上がらない、あるいは顧客の開発計画が変更、中止になったために、回収計画に狂いが生じるリスクは存在します。このような場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)固定資産の減損に関するリスク

 当社が保有する固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。同会計基準では、減損の兆候が認められる資産又は資産グループについては、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を回収可能価額(当該資産又は資産グループから得られる割引後将来キャッシュ・フローの総額もしくは当該資産又は資産グループの正味売却価額のいずれか高い方の金額)まで減額し、その減額した当該金額を減損損失として計上することとなります。

 また当社は、キャッシュ・フローを生み出す資産又は資産グループの最小単位として、事業部単位(機能材料事業部、医薬事業部、バイオ事業部)を基本とした資産のグルーピングを行っております。

 このため、当該資産又は資産グループが属する事業部の経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)金利変動リスク及び資金調達リスク

 当社は、設備投資資金や運転資金を金融機関からの借入により賄っておりますが、有利子負債には変動金利条件となっているものがあります。変動金利による調達については、今後の金利動向によって、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(21)人材確保に関するリスク

 当社は、有機合成化学や生化学等の分野の技術者の新卒・中途採用を継続的に行い、技術者の育成に努めています。しかしながら、必要な人材を継続的に獲得するための競争は厳しく、あるいは当社の人材が社外に流出する可能性は否定できません。より一層、優秀な人材の確保に注力してまいりますが、人材の確保及び育成が計画どおりに進まなかった場合には、当社の事業展開に支障をきたし、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)自然災害、戦争、テロ等によるリスク

 予期せぬ地震や風水害、戦争やテロ行為あるいは感染症等の発生により、当社や取引先等が深刻な被害を受けたり、さらにはこれらの要因から社会的混乱が発生した場合には、一定の事業活動が困難になり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(23)気候変動に関するリスク

 気候変動については、世界共通の解決すべき社会課題と認識され、早急な対応が求められています。当社の事業である有機化学品の研究、開発、生産ソリューションにおいては、サプライチェーンを通じて気候変動の原因とされるGHGを排出します。その為、気候変動による自然災害の発生に伴う事業活動への悪影響及び炭素税をはじめとするカーボンプライシング等の導入により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

配当政策

3【配当政策】

 当社は、利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としております。

 当社は、年1回、期末に剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

 これらの剰余金の配当の決定機関は、株主総会であります。

 また、当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を、取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。

 第40期事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき1株当たり30円の配当(うち中間配当15円)を実施しております。この結果、当事業年度の配当性向は15.5%となりました。

 内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、今まで以上にコスト競争力を高め、市場ニーズに応える技術開発・生産体制を強化するために有効投資してまいりたいと考えております。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月10日

115,791

15

取締役会決議

2024年6月25日

115,788

15

定時株主総会決議