2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3【事業等のリスク】

NIDECの経営成績、株価、財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてNIDECが判断したものであります。

 

(1)経営戦略リスク

①政治・経済状況の変動に係るリスク(特に重要なリスク)

リスク内容

NIDECの製品及びNIDECの製品を搭載した製品はアジア、米州、欧州及び日本で生産、消費されており、これらの国または地域の予期せぬ景気変動、政治・政策動向や消費動向は、NIDECの製品需要や生産状況に悪影響を及ぼす可能性があります。製造部門における設備投資の水準は景気動向によって左右され、その減退がNIDECの産業用製品に係る売上に悪影響を及ぼす恐れがあります。

主要な対応策

・地営地開(現地における営業及び開発活動)、地産地消(現地における生産及び販売活動)の推進によるリスクの低減、事業機会の最大化

・事業ポートフォリオの適時確認・見直しによる既存事業のビジネスモデルに対する依存度の低下と事業及び組織の新陳代謝の促進による持続可能な企業成長

 

 

 

②技術環境・産業構造の変化に係るリスク(特に重要なリスク)

リスク内容

技術変遷を背景とした需要の変容、それに呼応する顧客動向の変化がNIDECの想定を上回るスピードで生じた場合に、同市場におけるNIDECの経営環境に影響を及ばす場合があります。例えばHDD用モータ事業はNIDECの主要事業の一つであり長期に亘り当社の収益基盤をなしてきましたが、半導体メモリーSSDやクラウドコンピューティングの定着によるストレージ市場の構造変化が顧客のビジネスモデル変化を招き、当社HDD用モータの需要低下に繋がっています。 

主要な対応策

・クラウドサーバー向けHHDD用モータ等、需要の高い製品へ注力することによるビジネスの最適化

・新規商材へのリソース集中投下等、ビジネスポートフォリオ転換の早期化

 

 

 

③競合に係るリスク(特に重要なリスク)

リスク内容

NIDECは事業を行う様々な市場で激しい競争にさらされております。特に車載、家電市場においては、新興国の地場メーカーの台頭で競争が激化する傾向があります。NIDECは次のような場合に、市場における競争力が低下したり収益力を損なう可能性があります。

・市場がNIDECの予測を超える速度で発展した結果、需要拡大等の市場変化への対応において競合他社がNIDECの能力を上回った場合

・NIDECのコスト削減活動が、市場販売価格の減少や原材料費の上昇による悪影響を吸収するには不十分となった場合

・競合他社が技術革新、製造効率の改善または研究開発能力の強化を行った結果、NIDECの製品や技術が陳腐化した場合

・NIDECの競合企業同士の合併によりNIDECの競争力が相対的に弱まった場合

・必要な投資を継続・強化するための財産的、技術的、人的な資源を調達できない場合

主要な対応策

・研究開発分野への投資の維持・増強、製造能力・販売力・マーケティング力の拡大

・新製品のタイムリーな投入

・既存製品における収益性の更なる改善

・利益性確保のためのコスト削減活動

 

 

 

 

 

④先行投資に係るリスク(特に重要なリスク)

リスク内容

NIDECは需要の拡大を予想した場合、受注に先駆けて生産設備を拡張したり、リードタイムを考慮して部品や材料を先行発注することがあります。従って、競合他社の開発・市場参入動向、製品の需要動向の変化を正しく見積もることができない場合、NIDECの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす次のようなリスクがあります。

・需要が生産能力を下回る場合、稼動損による償却負担の増加または過剰在庫による棚卸資産の評価減が収益を圧迫するリスク

・需要を過小に見積もり必要な設備投資を行わなかった場合、顧客の要求を満たせずシェアを失うリスク

主要な対応策

・設備投資の決定過程における必要性・投資回収可能性・投資金額の徹底的な検討

・毎月の計画に対する達成度の確認と適切な施策の打ち出しの検討・損失リスクの最小化

・陳腐化による経済的価値の棄損の最小化

・投資金額の最小化による金額リスクの低減

 

 

 

⑤M&Aに係るリスク(特に重要なリスク)

リスク内容

NIDECは事業の成長に必要な技術、製品、販売網、顧客基盤を所有する他社の買収や他社への資本提携を通じて大幅な成長を達成してまいりました。買収や出資活動を継続的に成功させることは、NIDECの事業戦略を達成する上で極めて重要な要素です。市場が急速に変化する中で、ビジネスモデルの転換に必要な技術を適確に選択・買収することが出来なかった場合に、市場の成長スピードに追随できなくなる可能性があります。また、適切な買収や出資の対象会社を見つけることができない場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。買収した事業の効率的な統合により得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境の悪化等により予想どおりの収益が得られないと判断された場合、NIDECはこれらの資産について減損を認識しなければならず、NIDECの経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

主要な対応策

買収対象企業は、当社事業戦略に沿った企業を選定

・事前調査を徹底し適正価格で買収

・買収後の迅速かつ徹底したPMI

・当社の経営理念や経営手法を全従業員に深く浸透させ、当社グループ入りによるシナジー効果を創出しながら、買収対象企業の企業価値を向上してのれん減損リスクを極小化

 

 

 

 

(2)事業運営リスク

①高度な専門性を有した人材の採用・保持に係るリスク(特に重要なリスク)

リスク内容

技術革新の大波が押し寄せ、その波に乗れるかどうかの瀬戸際である昨今、NIDECは新市場に対する高い知見・スキルを持つ人材を追加雇用し、NIDEC人材としての意識醸成を図りながら育成・活用する体制づくりを進めていく必要があります。NIDECがこのような追加の人材を引き付けることが出来ない場合は、技術革新の大波に乗れる機会を失う可能性があります。

主要な対応策

・3つの人事制度改革(評価制度・等級制度・報酬制度)の段階的導入

・専門性の高い人材の採用、幹部人材の確保、育成プロセスの強化

 

 

 

②研究開発に係るリスク

リスク内容

NIDECが製品を提供する市場では継続的に急速な技術革新が起きており、脱炭素化、省電力化、省人化、5Gやサーマルソリューション、デジタルデータ爆発といった5つの分野を中心にリソースを投入しています。そのような市場環境下で、NIDECの成功の成否は、顧客の要求を満たせる、より優れた技術、製品、生産工程を開発し続けることができるかどうかにかかっています。もしNIDECが、市場動向を正確に予測できなかったり、適時に効果的な研究開発活動を実施できず、他社がNIDECより優れた技術、製品、生産工程を開発すれば、NIDECの製品は陳腐化し、販売シェアが縮小すると同時に、新製品の事業及び市場の拡大が妨げられることになります。研究開発活動がうまく成果を出すことができなければ、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

主要な対応策

・市場・技術・顧客動向の予測と要求に沿った新製品・ソリューションの開発

・実効性と効率性の向上と革新的なイノベーション創出

・更なる製品開発力の強化と生産技術の先進化・高度化

 

 

 

③製品の品質に係るリスク

リスク内容

顧客の品質要求条件が都度変化しており、製品に使用する材料の環境規制や製品に対する品質要求レベルが高度化してきています。

安全で高品質な製品を提供できない場合、物損や人命に係る事故へ繋がる可能性があり、法令上のリコールが適用される他、社会的要請としても特に高い安全性が要求されます。このような問題がNIDECの製品を原因として発生すれば、顧客からの求償要求や顧客との係争、行政処分につながる恐れがあり、その結果不良品回収等の損失費用発生、ブランドイメージの悪化及び販売の落込みによりNIDECの経営成績が悪影響を受ける可能性があります。更に、訴訟に伴う人的・財務的負担が正確な経営判断の阻害要因となる可能性があります。

主要な対応策

・製品の品質・安全性を確保のための潜在的な課題の深堀と対応及び品質マネジメントシステムの整備による製品不具合の未然防止

・規定・ガイドラインの適宜見直し

 

 

④原材料・部品調達に係るリスク

リスク内容

ニデックは製品の製造に必要な原材料及び部品の多くを外部から調達していることから、それらの需給環境が極端に悪化するとニデックの生産能力は低下します。また、原材料の種類や部品の使用条件等に関わる各国政府政策の変更や、顧客による調達方針の変更もニデックの原材料・部品調達能力を制約する要因になります。

主要な対応策

・部品の調達過程における環境、人権、労働環境、資源入手可能性への配慮に基づく代替材料の確保

・原材料・部品の使用量低減を目指す継続的な設計思想の見直し

 

 

 

⑤知的財産権に係る訴訟リスク

リスク内容

NIDECは自社技術及びその他の知的財産を、特許権、商標権、著作権及びその他の知的財産権、更には機密管理や個別契約により保護しておりますが、一部の地域では、法制度が不十分な場合もあり、NIDECはこれらの知的財産権に関して次のようなリスクを負っております。

・NIDECは第三者からの知的財産権侵害の主張に対して反論をしていくためコストが必要になる場合があります。また、当該主張の結果、予め認識していない第三者の知的財産権を利用してしまったことによりNIDECに賠償責任が発生する場合や、差止命令によりNIDECの事業の継続が妨げられる場合があります。その結果、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・NIDECの知的財産権の保護対策は十分でない可能性があります。

・NIDECより大規模な資源を有する競合他社を含むその他の企業が、独自に技術を開発するか、または優越する技術を獲得した場合、NIDECはこれら企業の知的財産を使用するためのロイヤリティを支払わなければならなくなる可能性があります。

・現行または将来の特許出願に関して、特許権を取得できなかったり、NIDEC自身が保有するまたは使用を許諾されている特許が無効になったり回避されたりすることで技術戦略上困難な状況に陥る可能性があります。

・特定の特許権の下で認められている権利では、NIDECに競争上の優位をもたらさない可能性や、適切に保護されない可能性、技術力の維持に繋がらない可能性があります。

・第三者による特許、重要な営業秘密、その他の知的財産権に関する侵害や無断使用に対して提起する訴訟に伴い多大なコストが必要になる可能性があります。

・NIDECの製品を製造及び販売している諸外国の法律が、NIDECの製品や知的財産権を、日本の法律と同じ範囲で保護していない場合や、法律が存在したとしても効果的に施行されていない可能性があります。

主要な対応策

・製品開発初期からの、第三者所有の知的財産権に対する包括的かつ継続的な調査の徹底
・当社独自技術の保護による優位性強化及び競争力維持のための、積極的な知的財産権の取得と維持管理

 

 

 

⑥情報の流出に係るリスク

リスク内容

NIDECは事業活動において顧客、他企業の機密情報及び取引先関係者、従業員の個人情報を保有しております。NIDECはこれらの機密情報に関してセキュリティ対策、研究開発拠点における入退室管理、CADデータ厳格管理等を行っておりますが、同情報が人的及び技術的な過失や違法または不正なアクセス等により漏洩した場合、機密情報を保護できなかったために発生する責任や規制措置の対象となる可能性があります。そのような場合、NIDECは競争上の優位性を喪失し、顧客や市場の信頼が失われ、NIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。加えてNIDECの営業活動やシステム、ブランドイメージに対する社会的信頼を落とすことになります。

主要な対応策

・グループ横断のセキュリティ管理体制の構築

(情報セキュリティ管理室の設置、情報セキュリティ委員会による活動の監視、情報セキュリティ管理責任者 

  及び情報セキュリティ推進責任者の設置)

・社員に対する情報セキュリティ教育の実施

・M&A関連の個別案件ごとに守秘義務契約を締結し情報管理を徹底

 

 

 

⑦年金制度に係るリスク

リスク内容

NIDECの一部では、一定の要件を満たす従業員のための確定給付年金制度と確定拠出年金制度を併用している会社があります。特に、確定給付年金制度に関しては、年金資産の公正価値や年金資産の収益率が下落した場合、または、退職給付債務の計算の基礎となる想定値が変動した場合、損失が発生する可能性があります。また将来、既存の年金制度を変更し、従来は認識していない勤務費用が発生する可能性があります。そして、利率の変動、NIDECをとりまく環境の変化やその他の要因により、年金資産の積立状況等に悪影響を与える可能性があります。更に、将来の年金費用の計算に使用される想定値も変動する可能性があります。

主要な対応策

・退職金制度を確定拠出年金に一本化

・年金制度のガバナンス体制の構築と第三者機関との連携

 

 

 

⑧為替に係るリスク

リスク内容

NIDECの海外への売上の大部分は日本円以外の米国ドル、ユーロ、中国元、タイバーツ等の通貨で構成されており、各通貨に対する円の上昇は一般的に、NIDECの売上、営業利益、当期利益に悪影響を及ぼします。

加えて、日本円以外の通貨で運営している子会社の業績を連結財務諸表として統合した際、為替変動が大きく影響する可能性があります。

主要な対応策

売上と仕入の為替を相殺することで為替リスクの軽減を図る

 

 

 

⑨金利の変動に係るリスク

リスク内容

NIDECは固定利率と変動利率の長期債権や有利子負債を保有しております。これらの債権及び負債にかかる金利の変動により、支払利息や受取利息、金融資産・負債の価値に影響を及ぼす可能性があります。

主要な対応策

長期債権や有利子負債については金利スワップ等の契約を締結することにより金利変動リスクの低減を図る

 

 

 

⑩資金の流動性に係るリスク

リスク内容

NIDECは自社の資本支出やM&Aに関する資金を金融機関からの借入や金融市場からの直接調達に依存しております。金融市場の急速な変化やその他の要因により金融機関が貸付枠、信用供与枠額や条件を圧縮した場合、またはNIDECがそれまでと同等またはより良い条件で取引可能な代替的資金調達源を見つけることができない場合、そのことがNIDECの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。更に、NIDECの財政状態が悪化した結果、信用格付機関がNIDECの信用格付けを大幅に引下げた場合や経済状況の後退により投資家の意欲が減少した場合、NIDECが必要な資金を必要な時期に、希望する条件で調達できない可能性があり、資金調達がより制限されるとともに、資金繰り費用が大幅に増加する可能性があります。この場合、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

主要な対応策

信用格付けの維持・向上に努めると共に資金調達の多様化を図る。また、設備投資の抑制や運転資金の圧縮によるキャッシュ・フローの改善を進め、グローバルでCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を使うことでグループの余剰資金を集約し、資金需要に対応することで資金効率化を図る。

 

 

 

⑪繰延税金資産の不確実性に係るリスク

リスク内容

NIDECは繰延税金資産が将来の課税所得から回収される可能性を評価しなければならず、回収可能性が見込めない場合は繰延税金資産を減少させることとなります。経済状況や経営成績が悪化した場合、繰延税金資産の全てまたはその一部に関して回収可能性が見込めないと判断し、繰延税金資産を減少させることによりNIDECの利益が減少する可能性があります。

主要な対応策

繰延税金資産の回収可能性と評価性引当金の計上の要否に関する定期的なレビューの実施とタックス・プランニングの策定

 

 

(3)ガバナンスリスク

①NIDEC代表取締役グローバルグループ代表である永守重信氏への依存に係るリスク

リスク内容

NIDECの継続的な成功は主にNIDECの創業者である永守重信氏の能力と手腕に依存してきました。様々な経済的・政治的なリスクが顕在化している昨今の状況下において、NIDECの創業精神でもある「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」という成長を牽引する原動力となる新たなリーダーを輩出することができない可能性があり、そのことがNIDECの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

主要な対応策

・次の50年を見据えた新たな後継者計画の継続的な実行・運用

(1)集団経営(集団指導)体制による持続可能な経営の推進

(2)岸田新社長(最高経営責任者)のもと、強固な経営基盤の構築と、創業者依存体制の変革の推進

  ※新社長は、指名委員会にて審議のうえ、取締役会にて決議を行っている。

(3)当社グループ経営陣の組織的連携の強化(チーフオフィサー制の強化)

 

 

 

 

 

②内部統制に係るリスク

リスク内容

当社の連結子会社において、連結決算手続における当社グループの連結子会社間取引を伴う売上高等の連結調整の一部について調整対象を誤認し、売上高が過大に計上されていることが判明し、決算・財務報告プロセスの内部統制上、開示すべき重要な不備に該当すると判断致しました。当社としましては、財務報告に係る内部統制の重要性を十分に認識しており、開示すべき重要な不備を是正するために、当社グループにおいて、決算処理に対する多角的視点での検証及び承認権限者による承認手続の強化等の以下の再発防止策を速やかに策定、実行することで財務報告の信頼性を確保しましたが、今後開示すべき重要な不備が再度発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

主要な対応策

・他の関連した問題の識別や会計処理及び表示の改善を行うための、過年度に開示した書類及び訂正された連結財務諸表に含まれる連結決算仕訳に対しての詳細なレビューの実施

・連結決算手続に係る方針の更新、連結子会社間取引に関連する調整対象案件を特定する際に必要な正確かつ網羅的な情報を把握するための体制の強化、並びに連結決算処理に対する検証及び承認権限者による承認手続に重点を置いた研修の実施 

・当社及び子会社の経理財務責任者による連結決算手続に対する包括的なモニタリング機能の強化及び決算・財務報告プロセスにおける連結子会社間取引の調整に関する査閲・承認手続の強化 

 

 

 

(4)偶発的リスク

①自然災害・人的災害に係るリスク

リスク内容

NIDECやサプライヤーが事業を展開する国内外において、自然災害、火災、公衆衛生、戦争、テロ行為やその他の人的災害が発生した場合、NIDECやサプライヤー、顧客に損害が及ぶ可能性があります。交通・エネルギーインフラへ甚大な損害を及ぼす大規模な自然災害や広域感染症が発生すると、被災地におけるNIDEC及びサプライチェーンによる生産・営業活動は安全が確保されるまでの間停止することになります。NIDECの生産・開発拠点及びその顧客、サプライチェーンの多くが活動している中国等の海外地域や、NIDECの本社機能、その他重要研究開発施設が集中する日本で大規模な災害が発生した場合は特に大きな被害が想定されます。また、NIDECの事業に必要不可欠なネットワーク及び情報システムは、停電、自然災害、テロ行為、ハードウエアやソフトウエアの不具合、コンピュータウィルスによる攻撃、不正侵入により被害を受ける可能性があります。これらの事態の全てを回避することは困難です。これらの事態が発生した場合には、NIDECの生産活動及び販売活動に大きな支障をきたし、製品の納入が遅れ、サプライヤーから材料や部品を入手することが困難となり、製造工場の修復に多大な費用が必要となる可能性があります。

主要な対応策

・損害保険の付保によるリスクの転嫁

・生産拠点の分散、サプライチェーンの二重化、サイバーセキュリティ対策の強化等の事業継続対策実施

・事業継続計画(BCP)の策定とシミュレーション訓練の実施によるBCPの実効性向上

 

 

 

②気候変動に係るリスク

リスク内容

2015年12月にCOP21がパリ協定を採択して以降、気候変動問題はあらゆる国・地域、企業が取り組むべき地球規模の優先事項と位置付けられるようになりました。製品の開発・生産活動を主軸に世界各地で事業を展開するNIDECにとって、気候変動はビジネス創出の機会であると同時に、広範にわたる中長期的事業リスクの源泉でもあります。以下に挙げるリスク事象の現実化はNIDECの財務状況に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

「移行リスク」

(気候変動に関わる政策及び規制、技術開発、市場動向、市場評価等の変化に起因する間接的損失リスク)

a)炭素税その他脱炭素社会実現へ向けた各国のエネルギー転換施策への対応が遅れることによる税負担の上昇

b)既存製品・サービスに適用される規制の厳格化や新基準への不適合に伴う市場機会の損失及びコンプライアンスコストの増加

c)世界的「電化」傾向に起因する電子部品原材料(希少鉱物、鋼材、その他ハイエンドアルミや銅等の非鉄金属)の入手困難あるいは調達コストの上昇

d)新たな低炭素製品が要求する代替原材料の研究・開発の遅れ及び付帯コストの増加

e)非効果的な気候変動対策に起因する企業価値の低下とそれに伴う投資誘引力の減退及び信用格付けの低下

 

「物理的リスク」

(気候変動がもたらす災害等による直接的損失リスク)

a)台風・多雨等がもたらす広域水害の頻発による事業活動の停止

b)渇水による事業活動への制約

c)気温上昇による健康被害

d)上記事由によるサプライチェーンの混乱

主要な対応策

「移行リスク」への対応

2024年3月にCO2排出量削減に関する新たな中長期目標を設定。2050年度にサプライチェーン全体のCO2排出量のネットゼロを目指し、2030年度までにスコープ1・2での排出量を2022年度に比べて42%削減(2040年度にカーボンニュートラル化)、スコープ3での排出量も2022年度に比べて25%削減。

・SDGsコンセプトに基づく研究・開発活動の推進

・複数購買ルートの確保

・2022年4月に「環境統括部」を設立(2024年1月に「サステナビリティ推進部」を設立し、「環境統括部」を移管)

・2022年8月にサステナビリティ委員会を設置

・TCFDに沿ったシナリオ分析の実施と対応策の検討

 

「物理的リスク」への対応

・グローバル・ロケーション戦略を通じた生産リスクの分散

・気候変動リスクが高い国・地域で操業する事業所を対象とする認識度調査の実施

・生産ラインのイノベーション

・サプライチェーンの可視化ならびに柔軟性の強化

・国内外事業所におけるBCPトレーニングの継続

・TCFDに沿ったシナリオ分析の実施と対応策の検討

 

 

配当政策

 

3【配当政策】

当社の配当政策は、安定配当を維持しながら連結純利益額の状況に応じて配当額の向上に取り組むと同時に、企業体質の一層の強化と積極的な事業展開の促進に備えて内部留保を充実することとしております。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、取締役会であります。

当期の配当は、別記のとおりの業績に鑑み、株主・投資家の皆様のご支援に応えるため、中間配当35円に加え、期末配当40円の実施を決定致しました。この結果、当期の連結ベースの配当性向は34.4%となりました。

内部留保資金については、経営体質の一層の強化と事業拡大投資に活用し収益向上に取り組んでまいります。

当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨、及び会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨を定款に定めております。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は次のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年10月23日

取締役会決議

20,128

35

2024年5月24日

取締役会決議

23,003

40