2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント体制と運用

 当社グループにおけるリスクマネジメント体制を構築し、リスクをあらかじめ回避・軽減・移転等するとともに、万一発生した場合にもその被害を最小限に抑制することを目的に、危機管理規程を制定しております。また、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」傘下の専門委員会として「リスクマネジメント委員会」を設置し、グループ全体での平常時のリスクマネジメントとリスク発生時の対応を行う体制としております。

 「リスクマネジメント委員会」には委員会内に「リスクモニタリング部会」と「BCP部会」、「人権部会」、「情報セキュリティ部会」を設け、当社グループ全体でのリスクの選定、評価、リスク低減に向けた取り組みのモニタリングや、BCPの策定、人権課題への対応、情報セキュリティ対策の推進を実施しております。また、同委員会内に「Hotline担当」を設け、内部通報窓口の整備や通報事象への対応を行っております。

 「リスクマネジメント委員会」はこれらの取り組み内容を年2回開催される「サステナビリティ委員会」にて報告し、「サステナビリティ委員会」から取締役会に報告を行うとともに、通報案件など重要事象については「リスクマネジメント委員会」から直接取締役会に報告することで、経営層へ適切にリスク情報を報告できる体制を整えております。

 

リスクモニタリング活動

 当社グループの持続的な事業の拡大、企業価値向上にマイナスの影響を与える、又はそのおそれがあると想定される事象を「リスク事象」として想定し、定期的なリスクの特定、評価を実施しております。また、環境戦略委員会において重要と評価した気候変動リスクも「リスク事象」として統合し評価しております。そして、その中で発生確率又は影響度が高いと評価された事象を「高リスク事象」とし、管轄する部門ごとに年間でのリスク低減目標を設定し、上期・下期の半年ごとにその進捗を確認しております。

 

BCP策定

 当社グループにとっての高リスク事象の一つである地震等の自然災害に備えるため、リスクマネジメント委員会の中にBCP(事業継続計画)策定を推進するための部会を立ち上げ、生産部門や対象事業所の関係者と連携しながら、災害発生時対応の基本的方針や初動対応フロー、事業継続計画の策定、訓練を推進しております。

 災害時に、対策本部の各担当が初動対応としてどのような動きをとるか想定し、また、そのために必要なマニュアルやチェックリストを作成し、平常時から必要な防災対策などの見直しを進めております。併せて、イントラネットを使って社員一人ひとりの防災意識を高めるための情報発信なども行っております。

 

(2)高リスク事象の特定プロセス

 当社グループの持続的な事業の拡大、企業価値向上にマイナスの影響を与える、又はそのおそれがあると想定される事象を「リスク事象」として想定し、各リスク事象について「発生確率」「被害の大きさ」「影響度」を指標とした評価アンケートを実施し、その結果からリスクマップにプロットして相対的に評価しております。

 

想定するリスク事象とリスクマップ

※気候変動リスクは環境戦略委員会で高リスクと評価された事象を反映しております。

※リスクは短期~中期で評価し、気候変動リスクで長期と評価されたものは短期~中期で再評価して統合しております。

※赤枠内にプロットされるリスクを高リスク事象と判定しております。

 

リスク

カテゴリ-

No

リスク事象

2024年度のリスク評価

昨年比

外部要因

リスク

1

拠点地域における震度6弱以上相当の地震による事業拠点の被災

南海トラフ地震を踏まえ、昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。

-

1b

拠点地域における豪雨・洪水・台風・ハリケーン・火災による事業拠点の被災

地震以外にも各種自然災害が想定され、1の派生リスクとして追加。

新規

2

拠点地域内での紛争やテロの発生

昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。

-

2b

国家間情勢や治安悪化による駐在者、拠点操業への影響

昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。

-

3

拠点内での感染症クラスターの発生

感染症対策や、ウイルスへの認識変化などを踏まえ影響度は引き続き低下。

4

外部要因(部品廃番、調達困難)による製品仕様変更

昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。

-

内部要因

事業

戦略

リスク

5

納期長期遅延につながる部材調達難

昨年度同様、引き続き高リスクと評価。

-

6

物流網の寸断

物流体制を考慮して項目を追加。現時点では低リスクと評価。

新規

7

特定販売先への過度な依存

当社ビジネスモデルを考慮して項目を追加。現時点では低リスクと評価。

新規

8

生命身体に影響する可能性のある重大な製品事故の発生

影響度の大きさより、昨年同様、引き続き高リスク事象と評価。

-

9

製品の性能・データ改ざんによる品質偽装

昨年度と同程度に評価。

-

10

使用禁止物質が含まれた製品の流通

昨年度と同程度に評価。

-

11

戦略投資リスク(M&Aや企業提携など戦略的な投資による財務状況への影響)

昨年度と同程度に評価。

-

リソース・

インフラ

リスク

12

老朽化・トラブルによる主要生産設備の故障・停止

生産設備の重要性を考慮して項目を追加。現時点では低リスクと評価。

新規

13

重症以上の労働災害の発生

職場環境を踏まえ、昨年度より発生確率は若干低下すると評価。

-

14

サボタージュ、ストライキによる業務機能停止

昨年度と同程度に評価。

-

15

職員の大量退職による人材不足

人材の流動性を考慮して項目を追加。高リスク事象と評価。

新規

16

主要役職員(キーパーソン)の退職、後任者不在

人材の流動性を考慮して項目を追加。中程度にリスク評価。

新規

17

システムダウン、ネットワークダウンなどのインフラの半日以上の停止

情報セキュリティ対策が一定程度進行したことで、昨年度より発生確率は低下すると評価。

17b

サイバーアタックによるネットワークの長期停止

情報セキュリティ対策が一定程度進行したことで、昨年度より発生確率は低下すると評価。

コンプライアンス

リスク

18

他社の知的財産権侵害による販売差止め、損害賠償請求

昨年度と同程度に評価。

-

19

人権課題(児童労働・強制労働など)への不対応

昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。

-

19b

ハラスメント発生による職場士気の低下

昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。

-

20

会計、税務の不適切処理による追徴課税

昨年度と同程度に評価。

-

21

社員による高額の横領、背任、贈収賄

昨年度と同程度に評価。

-

 

 

リスク

カテゴリ-

No

リスク事象

2024年度のリスク評価

昨年比

内部要因

コンプライアンス

リスク

22

上位役職者によるインサイダー取引

昨年度と同程度に評価。

-

23

独禁法、下請法違反事象の発生

昨年度と同程度に評価。

-

24

自社の重要情報、他社の秘密情報、個人情報の漏洩

情報セキュリティ対策が一定程度進行したことで、昨年度より発生確率は若干低下すると評価。

25

許認可不備による業務差し止め

昨年度と同程度に評価。

-

会計・財務

リスク

26

売上債権の回収困難、貸倒

昨年度と同程度に評価。

-

27

資産の毀損リスク

昨年度と同程度に評価。

-

気候変動リスク

移行

リスク

原材料のコスト増加

製造・調達コストへの直接的な影響と部品調達難によりコスト増加が誘引されることから高リスクと評価。

-

顧客や投資家の環境志向の高まり

長期での影響度は大きいと想定するが、短期~中期におけるリスクは昨年度と同程度に評価。

-

競合他社に対する既存/新製品の低排出/低炭素技術への移行の遅れ

環境配慮技術への遅れは将来的な事業リスクにつながると評価。

-

カーボンプライシングの動向

CO2削減への世界的気運の高まり、規制や法令、制度による影響は大きいと評価。

-

物理

リスク

自然災害と気温上昇

気温変動が自然災害など様々なリスクを誘引するが、短期~中期での確率は低いと評価

-

 

(3)事業等のリスク

 上記のとおり想定・評価した「高リスク事象」を含め、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与え、事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下で記載しております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における当社グループの判断に基づいております。

①外部要因リスク

項目

リスクの内容

主な取り組み

拠点地域における震度6弱以上相当の地震による事業拠点の被災

(上記表・マップ中のリスクNo.1)

 

 

大阪府と兵庫県に本社・主要事業所を有する当社グループにとって関西地区での巨大地震発生による事業所被災は大きなリスクであると認識しております。被災により一部又は全部の操業が中断した場合、適切なBCPを備えていなければ生産及び出荷が遅延する可能性や、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生する可能性があり、財政状況や事業展開に与える影響が大きいと考えております。

リスクマネジメント委員会内にBCP策定を推進するための部会を立ち上げ、災害発生時対応の対策本部体制、基本的方針や初動対応フロー、事業継続計画の策定、訓練を推進しております。災害時に、対策本部の各担当が初動対応としてどのような動きをとるか想定し、主要な拠点ごとに必要なマニュアルやチェックリストを作成しております。また、定期的な安否確認の訓練も実施しております。

拠点地域内での紛争やテロの発生(上記表・マップ中のリスクNo.2)

 

国家間情勢や治安悪化による駐在者、拠点操業への影響(上記表・マップ中のリスクNo.2b)

グローバルに事業を展開する当社グループにおいて、国家間情勢の大幅な変動、拠点地域内での紛争やテロ、またそれに準じるデモや抗争により、社会や市場が混乱した場合には財政状況や事業展開に与える影響が大きいと考えております。

適時に情報を収集するとともに、地域分散などによりリスク回避を図っておりますが、リスクにつながる状況が発生した場合には、例えば紛争地域回避による輸送の遅延や輸送費の高騰などの課題テーマごとのタスクフォースを立ち上げ情報収集と対策を進めております。

外部要因(部品廃番、調達困難)による製品仕様変更(上記表・マップ中のリスクNo.4)

法規制の影響など様々な要因から部材の調達困難が発生した場合、メーカーとして大きな影響を受ける事象と考えております。

タスクフォースを組んで部品の調達状況を把握するとともに、部品変更や仕様変更を進め、リスクの軽減に努めております。

 

②内部要因リスク

項目

リスクの内容

主な取り組み

納期長期遅延につながるような部材調達困難(上記表・マップ中のリスクNo.5)

部材調達困難により納期の長期化が生じた場合、売上高の減少や在庫の積み上げなど財政状況経営成績に与える影響が大きいと考えております。

タスクフォースを組んで部材の調達状況を把握・管理するとともに、全体での納期調整を行うなど、影響を最小化するための取り組みを推進しております。

生命身体に影響する可能性のある重大製品事故の発生(上記表・マップ中のリスクNo.8)

人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現することをパーパスとして標榜する当社グループにとって、生命身体に影響する可能性のある重大製品事故の発生は財政状況や事業活動はもちろん、レピュテーションにも大きな影響を与える可能性があります。

QMS(Quality Management System)での帳票や手順書の整備を実施するとともに、市場クレームの故障情報を監視し、アラート機能や重大クレーム管理リストなどを整備して異常の早期察知と早期対応を推進しております。

職員の大量退職による人材不足(上記表・マップ中のリスクNo.15)

当社グループの持続的な成長と企業価値向上を実現するためには、企業の活性化や人的資本の強化が必要不可欠と認識しており、人材が過度に流動的である場合には、当社グループに与える影響が大きいと考えております。

性別・年齢・国籍・文化・ライフスタイルなどの多様性を尊重した、働きやすい職場環境づくりを行うことで、さまざまな個性や価値観を持つ社員一人ひとりが能力を十分に発揮できる、組織風土の醸成に取り組んでおります。

構造改革の推進等により業務の効率化を図り、グローバルでの組織体系設計、人事異動などによる適正な人員配置に取り組んでおります。

人権課題(児童労働・強制労働など)への不対応(上記表・マップ中のリスクNo.19)

 

ハラスメント発生による職場士気の低下(上記表・マップ中のリスクNo.19b)

グローバルビジネスでの人権課題の認識の高まりから、人権課題への不対応は不買運動やレピュテーションリスクにつながり影響度が大きいと考えております。

人権課題に対する社内研修体系を整備し、従業員の意識醸成を図るほか、人権リスクの評価や人権デューデリジェンスの企画・準備などの取り組みを推進しております。

資産の毀損リスク

(上記表・マップ中のリスクNo.27)

棚卸資産について、実際の将来需要又は市場状況が当社グループの見積りより悪化した場合、評価減が必要となる可能性があります。

供給計画・生産計画の策定において、急激な需要変動等機動的に反映し、在庫の長期滞留化リスク軽減に努めております。

固定資産の減損に係る会計基準の適用により、時価の下落や当該資産から得られる将来のキャッシュ・フローの状況によっては減損処理が発生する可能性があります。

固定資産の稼働状況、キャッシュ・フローの創出状況等を定期的にモニタリングし、効率的運用を実施しております。

APEM社を連結子会社化したことに伴い、のれん及び無形資産である商標権と顧客関連資産を計上しており、景気変動等の影響により収益性が低下した場合、シナジー効果が発揮されず、減損損失が発生する可能性があります。

月次・四半期単位等定期的に業績動向・経営状態を確認するとともに、超過収益力の向上を目的としたシナジー効果の最大化に向けた取り組みを強化しております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社におきましては、財務体質と経営基盤の強化を図るとともに、株主さまに対する安定的な配当の維持並びに適正な利益の還元を実施することを経営の最重要施策の一つと認識し、中長期的な観点でROE(自己資本利益率)及び株主資本配当率の向上に努めてまいりました。一方で、内部留保につきましても、事業展開を勘案し、中長期的展望に立った研究開発投資、生産合理化投資、情報化投資等に有効活用し、企業体質と企業競争力の更なる強化にも取り組んでおります。さらに、利益還元の機動性を確保するために、取締役会決議による剰余金の配当が実施できる旨を、当社定款第36条に規定しております。

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

 これらの剰余金の配当の決定機関は、取締役会であります。

 以上の方針を踏まえ、当期の期末配当金につきましては1株当たり65円とすることに決定いたしました。これにより、中間配当金の65円と合わせ、1株当たりの年間配当金は130円となります。今後の配当方針につきましては、引き続き中間・期末配当を着実に実施することを基本に、株主の皆さまへの利益還元を重視したうえで、業績、外部環境などの変化に対応した機動的な配当政策を展開してまいります。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年11月1日

1,916

65

取締役会決議

2025年5月15日

1,916

65

取締役会決議