リスク
3【事業等のリスク】
(1)リスク管理体制
NECグループでは、NECグループの事業に関連する社内外のリスクを的確に把握し対応するため、リスク・コンプライアンス委員会とCRCO(チーフリスク&コンプライアンスオフィサー)を中心とした全社横断的なリスク管理体制を整備しており、その概要は下図のとおりです。
リスク・コンプライアンス委員会では、リスク管理に関する活動方針、NECグループとして対策を講ずべき重点対策リスクの選定・対応方針のほか、期中のリスク変動により全社横断対応が必要となったリスクの対応、その他の全社リスク管理に関する重要な事項を審議し、事業戦略会議および取締役会に定期的に報告しています。
また、NECグループ全体のリスクを俯瞰して一元的・横断的に対応し、損失に繋がる可能性をコントロールするため、CRCOを設置しています。CRCOは、日々変化する社会・事業環境の中で多様化・複雑化するリスクを感知・分析し、インパクトを評価するとともに、対応の優先付けをした上で、各リスクを所管するチーフオフィサーと密に連携することで全社横断的なリスク管理を主導します。
(2)リスク特定における方針・プロセス・運用状況
① 方針
NECグループでは、トレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)の全社的リスクマネジメント統合フレームワークおよびリスク管理に関する国際標準規格であるISO31000を参照しています。そのうえで、適切なリスク管理によるリターン追求のため、NECグループの事業に関連するリスクをRisk Total Pictureとして類型化し、各リスクの責任部門や対応方針を決定しています。Risk Total Pictureでは、インテグリティをすべてのリスク管理活動の基礎とし、リスクをその性質によって3つに分類しています。このリスクが顕在化した場合、とりわけ会社の存続を脅かす事態(クライシス)への備えとして対応フローを整備しています。
② プロセス
CRCOは、NECグループとして認識しておくべきリスクを網羅的にとりまとめたリスク一覧をもとに、各リスクを所管するチーフオフィサーとの対話やリスクアセスメントを実施し、外部・内部環境変化や各リスク対策の状況を踏まえて5段階の影響度評価・3段階の切迫性評価を行い、優先順位を可視化したリスクマップを作成しています。
リスクマップは、四半期毎にリスク・コンプライアンス委員会での審議を経て更新しており、事業戦略会議および取締役会に定期的に報告しています。
③ 運用状況
前項のプロセスを通じて、NECグループが影響を受けるリスクについて、優先順位付けした現状のリスクマップは、以下のとおりです。
この中で、NECグループが特に重要と判断した「適正な製品・サービスの提供」を重点対策リスク、その次に重要と判断した「サイバーセキュリティ」、「人権の尊重」、「重大な不祥事の発生」および「人的資本経営」を重要なリスクとして、それぞれ以下に説明します。
(3)重点対策リスクおよび重要なリスク
① 重点対策リスク
リスク名称 |
適正な製品・サービスの提供 |
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分類 |
Business, Compliance |
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評価 |
影響度:4 |
切迫性:3 |
リスク説明 |
NECグループの事業活動は、国内外で行われており、提供する製品やシステム、サービスが多岐にわたっており、サプライチェーンもグローバルに展開しています。NECグループにおける品質・安全性の管理はもとより、調達取引先も含めた幅広いステークホルダーの信頼を獲得し続けることができない場合、法的責任の追及、社会的信用の低下などにより、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。 |
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対策 |
品質・安全性推進体制/品質・安全性リスク管理体制 NECグループでは、全社規程や基準を定めて活動体系を明確にするとともに、CSCOが品質・安全性に対する管理責任を持ち、サプライチェーン戦略部門BUと連結子会社に設置している品質推進組織、および事業部門と連結子会社でそれぞれ任命されている品質・安全性管理責任者が核となり、品質と安全性の向上に取り組んでいます。 品質・安全性に関するリスク管理についても、全社的な体制を構築し、運用を徹底しています。万が一、お客さまのシステムや社会的に影響のあるシステムでの重大なトラブルや、重大製品事故、技術法規制違反などが発生した際は、迅速なエスカレーションとともに、関係部門による協議を行い、お客さま、所轄官庁、広報などについての対応方針を決定します。 新規プロジェクトの評価体制 新規プロジェクトの開始にあたっては、プロジェクト遂行上のリスクを把握し、十分なリスク対策が取られていることを確認しています。品質に係わる技術的なリスクや安全性リスク、開発規模・期間、プロジェクト体制など多面的に受注前審査を実施しています。 サプライチェーン・マネジメントの体制 NECグループでは、CSCOがサステナブル調達の管理責任を負っています。また、サプライチェーン戦略部門の調達機能責任者を議長とする会議でサステナブル調達に関する意思決定を行い、国内外ともにその実施状況についての定期報告を受け、ガバナンス強化をはかっています。NECグループのみならず調達取引先との協働・共創を通じて、環境や社会全体に与える影響に十分配慮しながら事業を行うことで、社会から信頼される社会価値創造に貢献していきます。 |
② 重要なリスク
リスク名称 |
サイバーセキュリティ |
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分類 |
Conduct |
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評価 |
影響度:5 |
切迫性:2 |
リスク説明 |
全世界がオープンに繋がり、AI利用が拡大する現在、サイバー攻撃の高度化やビジネス化、クラウド活用による情報漏えいリスクの増大、経済安全保障における情報管理の課題など多岐にわたるリスクに晒されています。NECグループだけでなく、お客さま・取引先のサイバーセキュリティに関するリスクに適切に対処できない場合、法的責任の追及、社会的信用の低下などにより、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。 |
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対策 |
現状を踏まえ、NECグループでは、「ゼロトラストセキュリティプラットフォーム」の構築を推進しており、ゼロトラスト成熟度モデルを踏まえた堅牢性と柔軟性を備えた対策を実施しています。 経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0」や、NIST(米国標準技術研究所)の「Cyber Security Framework(2.0版)」に基づき、深刻化するサイバー攻撃に対するインテリジェンス(事前防御)やレジリエンス(攻撃からの回復能力)を強化、実行する体制を構築しています。 データドリブンサイバーセキュリティとして社内向けダッシュボードでサイバーセキュリティリスクを全従業員に示し、データを起点とした迅速な経営判断と現場の自律的なアクションに繋げ、統制を実現しています。 お客さまに提供する製品、システム、サービスをセキュアに開発・運用するため、セキュリティ実装推進体制を構築しています。この体制は、サイバーセキュリティ部門と各事業部門のセキュリティ責任者で構成され、その内容およびセキュリティ実装プロセスは、「サイバーセキュリティ管理規程」に定めています。 セキュリティを確保する「セキュリティ・バイ・デザイン(SBD)」の思想に基づき、企画・提案フェーズから運用・保守フェーズまでのセキュリティ確保など、高品質で安全なサービスを提供するために、サプライチェーンも含めた対策強化に取り組んでいます。 |
リスク名称 |
人権の尊重 |
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分類 |
Conduct, Compliance |
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評価 |
影響度:4 |
切迫性:2 |
リスク説明 |
NECグループは、バリューチェーン全体の顕在的または潜在的な負の影響を継続的に評価することで、特に影響が大きいと考える顕著な人権課題を特定しています。これらの顕著な人権課題に適切に対処できない場合、法令違反、経済制裁、社会的信用の低下などにより、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。 |
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対策 |
NECグループ人権方針 NECグループは、あらゆる企業活動の場面において、基本的人権を尊重し、いかなる理由であっても差別行為を許さず、また個人の尊厳を損なう行為も許容しません。2015年に「NECグループ人権方針」を策定し、その後2022年6月に国連「ビジネスと人権の指導原則(UNGP)」で求められている、人権の尊重への経営トップのコミットメントとガバナンス体制を明確に示す内容に改定し、さらに2023年に国際労働機関(ILO)中核的労働基準に「安全で健康的な労働環境」が追加されたことを受け、これに対応する内容に改定しています。
当連結会計年度における顕著な人権課題に関する取り組みは、以下のとおりです。 AIなどの新技術と人権 AI事業の遂行にあたり、プライバシーなどの基本的人権を適切に保護するための方針として、「NECグループAIと人権に関するポリシー」を策定するとともに、AIと人権リスク対応の体制、計画、実施、点検および見直しに関するルールを規程として制定し、その実施や運用の浸透をはかっています。 地政学的情勢や紛争影響をふまえた人権リスク 人権視点のハイリスク地域を特定し、該当地域の取引先の属性や人権・腐敗行為に関する情報、製品・サービスの用途などを取引前に確認しています。また、人権に関する各制裁リストも確認しています。さらに、取引先に人権方針がない場合、人権リスクの発生防止のため、「NECグループ人権方針」と同等の取り組みを求めています。 サプライチェーン上の労働 「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」に基づき、サプライチェーン上の人権リスクについて評価・特定を行い、当該リスクのある調達取引先に対して現地監査を実施し、必要に応じてリスク軽減に向けた是正対応をはかるなど、リスクベースアプローチによる活動を進めています。 従業員の安全と健康 「NECグループ労働安全衛生マネジメントシステム」に基づき、リスクの特定および対策を行っています。また、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどのあらゆるハラスメントを禁止し、多様性を認め合う文化の醸成を目指しています。1997年に設置した人権啓発推進会議は、差別の禁止やハラスメントの防止をはじめとした人権啓発活動を継続して推進しています。 |
リスク名称 |
重大な不祥事の発生 |
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分類 |
Compliance |
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評価 |
影響度:4-3 |
切迫性:3-2 |
リスク説明 |
NECグループでは、重大な不祥事につながりかねないコンプライアンス・リスクを特定し、これらについて適切に対処しています。これらに適切に対処できない場合、競争法等の関係法令違反、取引停止、社会的信用の低下などにより、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。 |
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対策 |
コンプライアンスの方針 NECグループでは、Principlesに「常にゆるぎないインテグリティと人権の尊重」を掲げてコンプライアンスを経営の基本に置き、役員から従業員に至るまで、全社的な取り組みを継続的に実施しています。 コンプライアンス体制 NECグループでは、NECグループコンプライアンスポリシーを策定し、CRCOがコンプライアンス課題の全体を俯瞰し、リスク・コンプライアンス委員会を通じて、具体的な課題対応について審議・対策の推進を行っています。 また、「NECグループ行動規範」(Code of Conduct)の周知をはじめとしたコンプライアンス徹底のための各種施策を企画立案のうえ、実施しています。さらに、各部門が実施するリスク・マネジメントが体系的かつ効果的に行われるように、必要な支援、調整および指示を実行しています。 個人情報保護法違反の防止 CLO(チーフリーガルオフィサー)を個人情報保護担当役員として定めるとともに、個人情報保護管理者、個人情報保護推進事務局、個人情報保護監査責任者を設置して会社として個人情報保護の推進をしています。 また、個人情報保護管理者は、個人情報保護マネジメントシステムの運用責任者を務めるとともに、マイナンバーに関する対応についても、特定個人情報保護責任者としての役割を担っています。 当社は、JIS Q 15001に適合し、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備していると評価された事業者などに付与されるプライバシーマークを2005年10月に取得して以来、JIS Q 15001に準拠した個人情報の取り扱いを行うことなどを「NEC個人情報保護方針」に定めています。 贈収賄行為の防止 「NECグループ行動規範」(Code of Conduct)では、「贈収賄と腐敗防止」「接待・贈答、寄付、政治活動への対応」などに関する行動指針を定め、あらゆる形態の贈収賄・腐敗防止の徹底に努めています。 具体的な対応については、「贈収賄防止基本規程」のもと、「贈収賄防止マニュアル」および接待・贈呈・寄付に関する各種ガイドラインを策定・運用しています。 建設業法等違反の防止 建設工事においては、お客さまに社会価値を確実に提供するための現場工事の遵法かつ安全衛生文化を構築することを理念とした「建設工事 安全衛生行動指針」を策定・運用しています。 建設工事に従事する人だけでなく、従業員および関係作業員が健康管理を含む「安全衛生がすべての仕事に優先する」という安全衛生の基本方針に基づき、関連する法令および規制などを遵守し安全施工に取り組んでいます。 |
リスク名称 |
人的資本経営 |
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分類 |
Business |
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評価 |
影響度:5 |
切迫性:2 |
リスク説明 対策 |
人的資本経営については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本経営 ③リスク管理」に記載のとおりです。 |
NECグループは、上記以外のリスクについても、回避および顕在化した場合の対策に努めています。ただし、NECグループの事業、業績および財政状態は、予見することが困難なリスクや重要性が低いと考えられるリスクにより、影響を受ける可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末においてNECグループが判断したものです。
(注)本文中の組織・役職名は、2025年4月1日時点のものを記載しています。
配当政策
3【配当政策】
当社は、資本効率を重視した事業運営を行うとともに、充実した財務基盤のもとで成長領域への積極的な投資を実行することが長期的な企業価値の創出につながると考えています。そのうえで、株主還元については、各期の利益状況や資金状況等を踏まえ、安定的増配の実施に努めてまいります。
当事業年度の配当については、本業の利益である営業利益が計画を達成したことなどから、期初の公表値どおり1株につき140円(中間配当金は1株につき70円)(注)としました。
また、当社は、機動的な剰余金の配当の実施を可能とするため、取締役会の決議により剰余金の配当を決定できる旨ならびに剰余金の配当を決定する場合の基準日を毎年3月31日および9月30日の年2回とする旨を定款に定めています。
当事業年度に係る剰余金の配当は、以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
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2024年10月29日 |
取締役会決議 |
18,684 |
70.00 |
2025年 5月12日 |
取締役会決議 |
18,683 |
70.00 |
(注)当社は、2025年4月1日を効力発生日として、普通株式1株につき5株の割合で株式分割を実施しました。当事業年度の配当については、当該株式分割前の株式数を基準とする配当金の額を記載しています。