2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    1,732名(単体) 4,083名(連結)
  • 平均年齢
    45.1歳(単体)
  • 平均勤続年数
    20.3年(単体)
  • 平均年収
    7,442,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2024年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

通信計測

2,691

(258)

PQA

782

(109)

環境計測

316

(46)

その他

248

(137)

全社

46

(-)

合計

4,083

(550)

(注1)従業員数は就業人員(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

(注2)全社として記載されている従業員数は、各事業セグメントに帰属しない基礎研究に係る部門に所属している者及び一般管理部門のうち各事業セグメントに帰属しない本社管理部門に所属している者の人数です。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

2024年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

1,732

45.1

20.3

7,442

 

セグメントの名称

従業員数(人)

通信計測

996

PQA

505

環境計測

109

その他

76

全社

46

合計

1,732

(注1)従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)です。

(注2)平均年間給与は税込額で、基準外賃金等諸手当及び賞与を含んでおります。

(注3)全社として記載されている従業員数は、各事業セグメントに帰属しない基礎研究に係る部門に所属している者及び一般管理部門のうち各事業セグメントに帰属しない本社管理部門に所属している者です。

 

 

(3) 労働組合の状況

提出会社の労働組合は、アンリツ労働組合と称し上部団体の全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会(電機連合)に加盟しております。

2024年3月31日現在の組合員数は1,501人(出向者を含む。)であり、労使関係は安定しております。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

①提出会社

当事業年度

管理職に占める

女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の

育児休業取得率(%)

(注2)

※()内は対象者数

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注3)

全労働者

(注4)

正規雇用労働者

(注5)

パート・有期労働者

(注6)

3.4

90.3 (31人)

76.9

77.2

71.5

 

②連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)(注2)

※()内は対象者数

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注3)

全労働者

(注4)

正規雇用労働者

(注5)

パート・有期労働者(注6)

東北アンリツ㈱

0.0

100.0 (3人)

59.0

82.5

74.1

(注1)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。出向者を出向先の従業員として集計しております。

(注2)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。出向者は出向元の従業員として集計しております。

(注3)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。出向者は、出向先の従業員として集計しております。賃金は、基本給及び賞与等のインセンティブを含んでおります。なお、同一労働の賃金に差はなく、職位や職能等級別の人数構成の差によるものです。

(注4)全労働者は、正規雇用労働者とパート・有期労働者を含んでおります。

(注5)正規雇用労働者は、正社員およびフルタイム勤務の雇用延長者(65歳未満)を含んでおります。

(注6)パート・有期労働者は、雇用延長者を除く嘱託社員、パートタイマー、契約社員を含み、派遣社員を除いております。

 

③連結会社

当事業年度

 

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注2)

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注4)

当社及び連結子会社(注1)

11.2

*

73.2

当社及び国内連結子会社

3.8

90.2

69.9

(注1)「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第2条第5号に規定されている連結会社を対象としております。

(注2)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。出向者を出向先の従業員として集計しております。

(注3)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。出向者は出向元の従業員として集計しております。「*」は海外子会社の男性従業員育児休職取得率の集計を実施していないため、記載を省略していることを示しております。

(注4)正規雇用労働者とパート・有期労働者を含む、全労働者の男女の賃金格差を集計しています。出向者は、出向先の従業員として集計しております。賃金は、基本給及び賞与等のインセンティブを含んでおります。なお、同一労働の賃金に差はなく、職位や職能等級別の人数構成の差によるものです。国内連結子会社については「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しています。海外子会社の計算方法は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定と異なり、月平均による算出ではなく年度末平均による算出としています。

 

詳細については「第2 事業等の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (6)人的資本」を参照ください。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティに関する方針

当社は2030年に向けて、2021年4月に経営ビジョンと経営方針を改定し、これに合わせてサステナビリティ方針を改定しました。本方針は、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会課題の解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されるという考え方に立つものであり、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられた5つのP、すなわち「People」、「Planet」、「Prosperity」、「Peace」、「Partnership」の要素を包含しています。

 

サステナビリティ方針

私たちは「誠と和と意欲」をもってグローバル社会の持続可能な未来づくりに貢献することを通じて、企業価値の向上を目指します。

1. 長期ビジョンのもと事業活動を通じて、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献します。

2. 気候変動などの環境問題へ積極的に取り組み、人と地球にやさしい未来づくりに貢献します。

3. すべての人の人権を尊重し、多様な人財とともに個々人が成長し、健康で働きがいのある職場づくりに努めます。

4. 高い倫理観と強い責任感をもって公正で誠実な活動を行い、経営の透明性を維持して社会の信頼と期待に応える企業となります。

5. ステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、協力関係を育み、社会課題の解決に果敢に挑んでいきます。

 

(2) マテリアリティ(重要課題)

当社は、『「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。』という経営ビジョンのもと、「安全・安心なインフラを整備し、持続可能な社会の建設につながる産業の創造とイノベーションの促進に貢献する」を、社会課題解決におけるグループ全体の取組としています。この実現に向けて、「事業を通じて解決する社会課題」と「社会の要請に応える課題(ESG)」への対応を両輪とするサステナビリティ経営を通じて「グローバル社会の持続可能な未来づくりに貢献すること」を目指し、事業分野別とESG分野別のマテリアリティを設定しています。

マテリアリティは、社会課題の重要度と当社の企業価値向上の2つの視点で適宜見直しています。2021年4月の経営ビジョン、経営方針およびサステナビリティ方針の改定と組織体制の変更、さらに2022年1月に㈱高砂製作所をグループに加えたことから、2022年度にマテリアリティを見直しました。2024年度から始まる新たな3ヶ年の中期経営計画「GLP2026」の編成において、マテリアリティの更新が必要となるような社会や市場、顧客動向の変化は見られないと判断し、これまでのマテリアリティを継続することとしました。

 

<事業セグメント別マテリアリティ>

通信計測事業、PQA事業、環境計測事業および「その他」セグメントに含まれるセンシング&デバイス事業において、事業を通じた社会課題解決への貢献に向けて、各事業の特長や強みを踏まえたマテリアリティを設定しています。

通信計測事業:DX技術革新への対応、強靭なITインフラ整備

デジタル革新で新たな社会の変革を目指すお客さまをサポートし、安全・安心な通信インフラの構築に通信テストソリューションで貢献する

PQA事業     :食品ロスの低減、品質保証ソリューションの提供

安全で安心できる食品や医薬品の安定供給を目指すお客さまをサポートし、高信頼・高感度の検出機と品質管理制御システムで生産ラインの品質検査工程自動化や食品ロス低減に貢献する

環境計測事業(㈱高砂製作所含む):自然災害に対する防災・減災、脱炭素社会へ貢献する製品の提供

デジタル革新で新たな社会の変革を目指すお客さまをサポートし、情報通信ソリューションで新たなデジタル社会の変革、EV(電気自動車)や電池の評価ソリューションで脱炭素社会の実現に貢献する

センシング&デバイス事業:強靭なITインフラ整備、健康的な生活の確保

デジタル革新で新たな社会の変革を目指すお客さまをサポートし、光デバイス事業、超高速電子デバイスで安全・安心で快適な社会の実現に貢献する

 

<ESG分野別マテリアリティ>

サステナビリティ方針に基づいて設定した社会の要請(ESG)に応えるマテリアリティは以下のとおりです。

環境(E):気候変動への対応

世界的な気候変動は、洪水や干ばつなどの自然災害を引き起こし、人々の生活や経済活動に多大な影響を及ぼすことから、当社は気候変動への対応を最も重要なマテリアリティとしています。

当社の製造拠点である福島県郡山市の東北アンリツ㈱第一工場は、過去2回にわたり河川氾濫による浸水被害に遭いました。取引先さまも被災し、当社の調達・製造・物流のバリューチェーン全体に影響をもたらしました。

気候変動に大きく影響する温室効果ガスの排出量削減のため、当社は再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)の自家発電・自家消費に優先的に取り組んでいきます。

社会(S):人権の尊重、多様性の推進(ダイバーシティ&インクルージョン)

複雑で変化が多く予測困難な現代において企業が成長を続けていくためには、多様な価値観を持つ人材の力が必要となることから、当社は人権の尊重と多様性の推進をマテリアリティとしています。また、個々人の能力向上が会社の成長に欠かせないことから人材の育成にも取り組んでいきます。

ガバナンス(G):経営の透明性維持

当社は社会の信頼と期待に応える企業になるために、経営の透明性維持をマテリアリティとしています。

コーポレート・ガバナンス強化のために取締役会の実効性向上に取り組むほか、リスクマネジメント推進や社会的責務である情報セキュリティの強化を進めていきます。

 

区分

マテリアリティ

事業セグメント別

通信計測

DX技術革新への対応

強靭なITインフラ整備

PQA

食品ロスの低減

品質保証ソリューションの提供

環境計測

自然災害に対する防災・減災

脱炭素社会へ貢献する製品の提供

センシング&デバイス

強靭なITインフラ整備

健康的な生活の確保

ESG分野別

環境(E)

気候変動への対応

社会(S)

人権の尊重

多様性の推進(ダイバーシティ&インクルージョン)

ガバナンス(G)

経営の透明性維持

 

(3)サステナビリティ共通の開示

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、さまざまな要因により実際の結果と大きく異なる可能性があります。

 

①ガバナンス

当社は、取締役会がサステナビリティ経営を監督し、サステナビリティ推進担当役員が推進活動とリスク管理の責任者を務めています。2022年4月からは、気候変動をはじめとするさまざまな課題への対応の重要性を踏まえて、グループCEOが担当役員となっています。主要な部門・グループ会社の代表者からなるサステナビリティ委員会が推進活動の主体となり、重点項目を明確にして情報を共有し、改善に向けた議論を行い、その内容を各代表者から各部門に展開・浸透させています。また、サステナビリティ推進担当役員が経営戦略会議および取締役会において進捗状況を報告し、議論しています。2023年度の取締役会では、19件のサステナビリティ課題に関する議論を行いました。

※上図は2024年4月1日現在のものです。

 

②戦略

当社のコンピテンシーである「はかる」技術を事業における取組の核とし、4つのカンパニー(通信計測、インフィビス(PQA事業)、環境計測、センシング&デバイス)と先端技術研究所のコラボレーション、強固な財務体質を生かした積極的な成長投資により、既存事業の拡大と6Gおよび3つの新領域(産業計測、EV/電池、医薬品/医療)開拓を通じて持続可能な社会づくりにおける貢献領域を広げ、2030年度に連結売上高2,000億円を目指します。ESG課題への対応は、環境や社会への悪影響を最小限に抑え、全ての人が生き生きと働き、暮らせる社会につながるものと捉え、中期経営計画(GLP)で目標を掲げて取り組みます。

また、製造会社である当社は、「強い“ものづくり”の会社」として調達能力向上・災害対策強化・生産の自動化を進め、労働生産性を高める働き方改革により社員の生活の充実を図ります。

これらにより『「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。』の経営ビジョンを実現し、グローバル社会の持続可能な未来づくりに貢献いたします。

 

6Gと3つの新領域を重点的に開拓

 

 

③リスク管理

当社は各事業部門、コーポレート部門、グループ会社がGLPを策定し、その計画はリスクと機会を構成要素の一つとしています。 経営戦略会議において、計画策定時および毎年のレビュー時にリスクの低減と機会の実現・成長について審議し、取締役会に報告しています。

④ 指標と目標

当社は社会課題の解決に向けて、GLPでサステナビリティ目標を掲げて取組を進めています。GLP2023の結果とGLP2026の目標は以下の通りです。

 

・GLP2023(2021年度から2023年度まで)のサステナビリティ目標

 

KPI

GLP2023サステナビリティ目標※1

結果

環境

(E)

温室効果ガス(Scope1+2)※2

2015年度比 23%削減※3

36.6%削減(参考値)※4

温室効果ガス(Scope3)※2

2018年度比 13%削減※3

38.8%削減(参考値)※4

自家発電比率(PGRE 30)※5

13%以上(2018年度電力消費量を基準)

10.4%(参考値)※4

社会

(S)

女性の活躍推進

女性管理職比率15%以上

11.2%(2024年3月末)

高齢者活躍推進

70歳までの雇用および新処遇制度確立

70歳までの雇用および新処遇制度運用継続

障がい者雇用促進

職域開発による法定雇用率2.3%達成

障がい者雇用率2.66%(2024年3月末)

サプライチェーンデューデリジェンスの強化

3年累積10社以上

8社実施(3年累積で20社)

CSR調達に係るサプライヤへの情報発信2回/年以上、教育1回/年以上

情報発信3回、教育2回実施

ガバナンス

(G)

取締役会の多様性の推進

社外取締役比率50%以上

社外取締役比率50%継続(10名中5名)

海外子会社の内部統制構築

全海外子会社が統制自己評価(CSA)の基準を満たす

全ての項目で基準を満たす会社:90%

※1 環境分野における温室効果ガス、自家発電比率に関する目標のバウンダリーは、当社および国内子会社、海外の製造子会社(米国、英国、ルーマニア、中国、タイ)。社会分野における女性管理職比率は連結の目標値。高齢者活躍推進は当社および国内子会社の取組。障がい者雇用促進は当社および特例子会社である㈱ハピスマを合算した目標値。サプライチェーンは当社の目標。ガバナンスは当社の目標。

※2 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)/ Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出/ Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)/ 当社ではScope3のKPIにカテゴリ1および11を採用。

※3 本目標は、カーボンニュートラル宣言前に策定し、Scope1+2は2℃目標、Scope3はWell-below2℃目標でSBTイニシアチブの認証を取得したものであり、後記(4)気候変動 <TCFD提言に沿った情報開示>で掲載している④指標と目標の値とは異なる。2℃目標は産業革命前と比較して気温上昇を2℃以内に抑える水準、 Well-below2℃目標は産業革命前と比較して気温上昇が2℃を十分に下回る水準。SBTイニシアチブは、企業に対し「科学的根拠」に基づく「二酸化炭素排出量削減目標」を立てることを求めている国際的なイニシアチブ。

※4 第三者検証前のため、参考値として記載。検証後の数値については、サステナビリティレポートや統合報告書に記載。

※5 PGRE 30:(4)気候変動 に説明を記載。

 

・GLP2026のサステビリティ目標

GLP2026(2024年度から2026年度まで)では、GLP2023の結果と課題、社会の動向を踏まえて、以下の目標を設定しました。

 

目標※1

KPI

環境

(E)

温室効果ガスの削減

・Scope1+2:2021年度比 23%以上削減

・Scope3(Category1+11):2019年度比17.5%以上削減

(2030年度で、Scope1+2は42%以上、Scope3は27.5%以上削減)

自家発電比率の向上(PGRE 30)(連結)

・14%以上(2018年度電力消費量を基準)

(2030年ごろまでに30%程度まで高める)

資源循環(サーキュラーエコノミー)の実現

・資源循環に対応した製品をリリースする

・プラスチックごみを100%マテリアルリサイクル※2

社会

(S)

ダイバーシティ経営の推進

・女性の活躍推進:女性管理職比率 15%以上(連結)

・障がい者雇用促進:職域開発による法定雇用率 2.7%達成

働きがいのある労働環境の実現

・社員満足度調査の働きがいポジティブ回答率:80%以上

グローバルなCSR調達の推進
(環境、労働環境、人権などにおける社会的責任)

・サプライチェーンデューデリジェンスの強化:10社以上/年

・CSR調達に係るサプライヤへの情報発信:3回/年、教育2回以上/年

ガバナンス

(G)

グローバルなガバナンス向上

・取締役の多様性の推進:女性取締役比率 20%以上

・取締役会における経営課題の集中討議:6回/年

※1 環境分野における温室効果ガス、自家発電比率に関する目標のバウンダリーは、当社および国内子会社、海外の製造子会社 (米国、英 国、ルーマニア、中国、タイ)。資源循環に対応した製品は、各事業セグメントにおける取組。プラスチックごみについては、国内事業所から排出されるプラスチックごみが対象。社会分野における女性管理職比率は連結の目標値。障がい者雇用促進は当社および特例子会社である㈱ハピスマを合算した目標値。社員満足度調査は、当社および国内子会社における調査の目標値。サプライチェーンは当社の目標。ガバナンスは当社の目標。

※2 マテリアルリサイクルは、廃棄物を同じ製品の原材料として再利用する方法。

 

なお、GLP2023における事業を通じて解決する社会課題のサステナビリティ目標は、通信計測セグメントでDX技術革新や強靭なITインフラ整備に貢献する「5G、Beyond 5G、5G利活用、400G/800G向け当社製品の提供増」、PQAセグメントで食品ロス低減や品質保証に貢献する「検査精度・感度・機能を向上した新製品の売上に占める割合増」として取り組みました。GLP2026においても、同様の目標で推進します。

 

(4) 気候変動

当社は、温室効果ガスの排出量削減計画(Scope1+2:2℃目標、Scope3:Well-below 2℃目標)をSBTイニシアチブ(SBTi)に提出し、2019年12月に承認されました。検討段階では再エネ電力証書の購入も選択肢としていましたが、当社グループの事業遂行に必要な電力を自社でも発電していくことがSDGsの目指す姿に適うものと判断し、再エネ自家発電(PGRE:Private Generation of Renewable Energy)に取り組むことにしました。2020年3月に「Anritsu Climate Change Action PGRE 30 *(以下、「PGRE 30」といいます。)」を策定し、温室効果ガスの排出量削減を進めています。 主要拠点である神奈川県厚木市、福島県郡山市、米国カリフォルニア州Morgan Hillの3地区に自社消費用の太陽光発電設備を導入・増設することで、SDGsの目標7のターゲット7.2に掲げられた「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再エネの割合を大幅に拡大させる」という目標達成に貢献してまいります。

* PGRE30は、一部の子会社を除いた2018年度の当社グループの電力使用量を基準に、再エネの一つである太陽光自家発電比率を、2018年度の0.8%から2030年頃を目途に30%程度にまで高めていく野心的な目標です。

2022年12月には、2050年までにScope1+2における温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す宣言を行い、国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)のRace To Zeroに参加しました。この実現に向けて、2030年をターゲットとする中期目標を再検討し、Scope1+2の温室効果ガス削減目標を1.5℃目標[※]に引き上げました。Scope3(Category1、Category11)においても削減目標を再設定しました。2023年5月にこれらの目標をSBTiに再申請し、2024年2月に承認されました。

※ 産業革命前と比較して気温上昇を1.5℃以内に抑える水準

 

<TCFD提言に沿った情報開示>

① ガバナンス

当社は、取締役会が気候変動全般に関する課題や取組を監督しています。気候変動に関する取組の推進は、グループCEOおよびCFOが責任を負っています。リスクと機会の管理は、グループ全体のリスクマネジメントシステムに組み込まれ、環境総括役員がリスク管理責任者としての責務を負っています。環境総括役員は、グループ全体の環境戦略を担う環境・品質推進部を所管するとともに、国内グループの環境管理委員会の委員長、海外グループのグローバル環境管理会議の主宰者を務め、リスクと機会をグローバルに評価・管理しています。現在は、気候変動対応の重要性を踏まえて、グループCEOが自ら環境総括役員に就いています。

取締役会は、経営戦略会議において審議されたSBTiへの申請計画や、PGRE 30に基づいて実施する再エネ発電設備導入や省エネルギー設備導入などの投資案件を決議するとともに、温室効果ガス排出量削減目標やPGRE 30の進捗などを確認しています。また、気候変動に関する情報開示内容は、GLPの策定もしくはレビューとして毎年度経営戦略会議で審議・承認し、取締役会に報告しています。

役員報酬における短期インセンティブの報酬の算定には、各人の貢献度をはかる指標として、売上高、営業利益およびサステナビリティ目標の達成度を用いており、目標には気候変動関連の目標(温室効果ガス排出量の削減、自家発電比率の向上)が含まれています。

 

② 戦略

気温が1.5℃あるいは4℃上昇する場合のシナリオをベースに、短期(1年)・中期(3年)・長期(~30年)のリスクと機会を抽出し、気候変動に関する分析を実施しています。シナリオ分析において、規制強化の影響や生産拠点の一部での物理的な影響を想定し、対応策を検討しました。また、気候変動への対応を最も重要なマテリアリティと位置づけ、バリューチェーン全体に与える影響を含めて、事業戦略および財務計画への影響を考慮した対応策を策定しています。

タイプ

要因

シナリオ

想定シナリオの詳細

時間的視点

想定される影響

影響度※

対応策

移行

リスク

炭素税の課税

1.5℃

温室効果ガス排出量への課税

長期

・事業活動に伴うコストの増加

やや大

・1.5℃目標でSBT認証を取得したScope1+2の削減

・インターナルカーボンプライシングの導入

1.5℃

物価上昇で景気が停滞

中期

・顧客の投資が縮小・遅延して売上が減少

・調達難や部材コスト増により利益が減少

・ソフトウエアベースの仮想化試験環境とソフトウエア無線を組み合わせたソリューション開発を推進し、部材価格の変動影響が少ないビジネスモデルを構築

物理

リスク

自然災害の頻発化・激甚化

4℃

各地で異常気象が頻発化・激甚化

長期

・生産工場の操業や部材の調達に影響

・東北アンリツ㈱第二工場に新棟を建設して災害リスクを低減

・部材生産地をマップ化し、調達への影響を最小化

・複数社購買可能な体制を構築

・海外製造拠点の浸水対策を実施

長期

・気温上昇により、製造工程における品質保証が難しくなる

・2023年度に外気温の変動に左右されない空調管理システムを導入し、運用を開始

機会

エネルギーミックスの変化

1.5℃

再エネ発電比率が高まる

長期

・太陽光発電設備の導入コスト低下

やや大

・PGRE 30の推進で自家発電比率を高め、電力料金を低減

 2023年度は東北アンリツ㈱第二工場でメガソーラー級発電設備と蓄電池を組み合わせたシステムを運用するとともに、厚木地区で616kWの太陽光発電設備を増設

省エネ技術の進展

1.5℃

投資により新技術が普及

中期

・新たな省エネ技術の採用で製品の環境付加価値向上

やや大

・環境配慮型製品の開発推進で製品を省エネ化

・省エネ部品を積極採用

市場の変化

1.5℃

高機能と環境性能を備えた製品の需要拡大

中期

・試作機不要の開発を望む顧客が増加し、仮想化等、シミュレーション試験環境の需要増

・ソフトウエアベースの仮想化試験環境ソリューションを提供

中期

・次世代グリーンデータセンターの省エネ化に向け光電融合デバイスの開発・製造用測定器の需要増加

やや大

・光電融合デバイスの開発・製造向けソリューションを提供

長期

・EV普及により高効率パワートレインや電池の開発用評価機器の需要増加

・社会インフラにおける再エネや燃料電池を効率的に活用するエネルギーマネジメントシステムの需要拡大

・高品質なパワートレインや電池の開発を効率化するテストソリューションを強化

・パートナー企業との協働によりエネルギーマネジメントシステムの事業機会を獲得

自然災害の頻発化・激甚化

4℃

気象の激甚化による食糧生産、需給環境の悪化

長期

・食品廃棄ロスのさらなる削減のため、原材料段階での異物検出や不良品のピンポイント選別の需要が拡大

やや大

・原材料段階で色、成分、虫、細菌、成分などの品質不良を識別できるソリューションの実用化

・DX、AI、ロボットを活用した異物検出精度向上や生産ラインのモニタリング、不良品選別ソリューションを提供

各地で異常気象が頻発化・激甚化

長期

・防災投資が増加して河川や道路の監視ソリューションの需要増加

・パートナー企業と映像情報システム等、防災・減災ソリューションの対応力を強化

※「影響度」は、売上・利益等の財務上の影響額とそのリスクと機会が顕在化する可能性を考慮して、「大、やや大、中、やや小、小」の5段階で当社独自の基準に基づいて判断したものです。なお、影響度の低い「やや小」と「小」の掲載は省略しています。

 

③ リスク管理

リスクと機会については、各事業部門、コーポレート部門、グループ会社がGLPで抽出しています。環境管理委員会は、それらの発生の可能性と影響度から重要な項目を抽出し、対応策や取組を特定しています。その結果は、定期的に経営戦略会議で審議・承認され、取締役会へ報告されています。また、気候変動のリスクと機会は「3 事業等のリスク」に記載の環境リスクに含まれ、グループ全社で総合的に管理するリスクマネジメントシステムに組み込まれています。

 

④ 指標と目標

SBT認証を取得した温室効果ガス(CO2換算)排出量(Scope1+2およびScope3)削減目標、再エネ自家発電比率を指標としています。

KPI

目標

2023年度進捗

Scope1+2:温室効果ガス排出量の削減

2030年度までに2021年度比で42%削減する

25.6%削減(参考値)

Scope3:温室効果ガス排出量の削減

2030年度までに2019年度比で27.5%削減する

29.0%削減(参考値)

太陽光自家発電比率の向上

2018年度のアンリツグループの電力消費量を基準に、2030年ごろまでに0.8%から30%程度まで高める(PGRE 30)

10.4%(参考値)

※ 策定時に当社の100%子会社ではなかったATテクマック(株)(現アンリツテクマック(株))の電力消費量は除く。

 

Scope1+2のCO2排出量の削減については、その大部分がエネルギー消費によるものであるため、工場やオフィスでの省エネ活動およびPGRE 30の推進が主な取組となります。2023年度は、東北アンリツ㈱第二工場で発電容量1,100kWの太陽光発電設備と定格容量2,400kWhの蓄電池を組み合わせた大規模太陽光発電システムを導入し、運用を開始しました。夜間に必要な電力の一部を蓄電した再エネで賄っています。また、厚木本社では616kwの太陽光発電設備を増設しましたが、この稼働開始が当初の計画から10ヶ月遅れの2024年1月末となったことと、東北アンリツ第二工場の蓄電池も電力会社からの許可取得に時間を要し、2023年4月から6月まで稼働できなかったことにより、2023年度の太陽光自家発電比率は10.4%(目標は13%以上)にとどまりました。

省エネ活動では、2023年3月に省エネ対策チームを立ち上げました。適切な空調管理と実験室での節電を徹底するとともに社内イントラネットで電力使用量を確認できるコンテンツを設け、従業員の省エネ意識を高めました。上記のPGRE 30の進捗、電力会社のCO2排出係数切り下げもあり、Scope1+2のCO2排出量は2021年度比25.6%削減(参考値)となりました。

Scope3では、Scope3総排出量の約86.5%(2023年度実績)を占める「購入した製品・サービス(Category1)」と「販売した製品の使用(Category11)」の削減に取り組んでいます。取引先さまとの協働や環境配慮型製品の開発、顧客への紹介などに継続して取り組んでいます。2023年度は2019年度比29.0%削減(参考値)となり、取組の成果が上がっています。

 

(5) 人権の尊重

当社は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」が企業に求める人権尊重に対する責任を果たすために、2022年12月にアンリツグループ人権方針を制定しました。これに続き、当社の事業活動が人権に与え得る負の影響を特定・評価し、防止・軽減、対処していくために、人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、継続運用しています。

人権デューデリジェンスにおいては、NPO法人経済人コー円卓会議(CRT)日本委員会の協力の下、最初のステップとなる人権リスクアセスメントを実施し、「職場における多様性の受容」「労働環境や働き方の変化への対応」「部品・機器調達先の労働環境調査の推進」の3点を今後優先的に取り組む人権課題として特定しました。

今後も国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権尊重の取組を充実させていきます。

 

(6) 人的資本

経営環境がめまぐるしく変化している今日、既存事業の拡大と新規ビジネスの創出に資する源泉は“人”であり、多様性であると考えています。下記の人材ビジョンのもと、会社と従業員がサステナブルな未来を共有し、社会課題の解決を目指す、“人”と“組織”づくりを推進しています。

人材ビジョン

会社と多様な従業員がベクトルを合わせ、事業(社会)貢献意識を持ち、仕事と私生活のバランスを取りながら生き生きと働いている

 

① ガバナンス

人的資本については、人事総務担当役員の報告をもとに、経営戦略会議および取締役会において、GLP人材戦略・施策およびその進捗状況、従業員や組織の状況、エンゲージメント調査結果等を議論しています。また、サステナビリティ委員会、企業倫理推進委員会、採用委員会、管理職登用委員会、研修・表彰委員会を設置し、各委員会の担当役員が報告する経営戦略会議および取締役会において、人的資本に関する活動内容を議論しています。

・サステナビリティ委員会:サステナビリティに関する課題、人的資本に関しては主に人権およびダイバーシティに関する課題に取り組む

・企業倫理推進委員会  :倫理法令遵守(コンプライアンス)、人的資本に関しては、各種ハラスメントや36協定違反等のモニタリングと改善に取り組む

・採用委員会      :従業員の採用に関する活動(計画策定・実行・採用当否判定・レビュー)を実施し、求められる人材の継続的な量的・質的確保をはかる

・管理職登用委員会   :管理職の登用審査を実施し、その当否を判定するとともに会社事業の発展に資する管理職の継続的輩出をはかる

・研修・表彰委員会   :従業員のエンゲージメント向上および研修を推進して人材の育成をはかる

役員の指名および報酬については、社外取締役を委員長とする指名委員会および報酬委員会を設置し、役員の選任、解任と報酬の妥当性および透明性の確保をはかっています。

 

 

※ 上図は2024年4月1日現在のものです。

 

② 戦略

2030年度連結売上高2,000億円企業を目指し、既存事業の拡大とともに、これまでの概念にとらわれず、“「はかる」を超える” 新規事業領域の開拓に取り組むという経営戦略のもと、GLP2026で人材戦略を策定し、人的資本を最大化するための取組を進めています。

 

GLP2026 人材戦略

(2024年4月公表 中期経営計画 GLP2026資料より抜粋)

 

<成長事業・重点領域の人材確保と育成>

当社は、GLP2026において「新領域ビジネス(産業計測、EV/電池、医薬品/医療)の重点的な拡大」を掲げており、そのための人材確保と育成を人材戦略の最重要課題としています。これまで人員計画は各カンパニーが主体となって策定し、経営層および人事部門が調整・承認する形式でしたが、今後は経営層、経営戦略部門、人事部門が一体となり、トップダウンで経営戦略からカンパニー横断の人員計画を策定する「人財戦略レビュー」を実施し、より戦略的な人材確保、配置、育成を実行します。

また、新領域でのビジネス拡大に向けた人材育成強化を目的として、2024年4月に「Anritsu SKILLs training center(A-SKILLs)」を立ち上げました。A-SKILLsは、EV/電池や汎用計測器に関する技術知識および販売スキルを向上するための教育の企画・実行を担い、3年間で新領域ビジネス人材を2倍に増強することを目指しています(図1)。

このほか、開発力強化を目的としてエンジニア育成を専門とする組織を2024年4月に立ち上げました。AI活用等の新技術獲得に向けた育成施策の企画と全社展開やリスキリング施策導入などを担い、より戦略的にエンジニアを育成していきます。

 

(図1)Anritsu SKILLs training center(A-SKILLs)について

(2024年4月公表 中期経営計画 GLP2026資料より抜粋)

 

<若年/リーダー層の積極採用と育成、シニア層活用強化>

当社は新卒採用数の変動が大きかったことにより、現在の人員構成は30代後半~40代前半が最も少なく、50代が最も多い状況となっています。そのため2030年に向けて事業推進のコアとなるリーダー/管理職層の不足、60代以上のシニア層の増大が予測されており、「若年/リーダー層の積極採用と育成」によるコア人材の確保と「シニア層活用強化」による事業推進力の維持・向上を重要課題としています。

「若年/リーダー層の積極採用と育成」においては、これまでリーダー層から管理職層をターゲットとしていた経験者採用を若年~中堅層にも広げ、積極的な採用活動を推進していきます。育成では、階層別研修により段階的育成を行う仕組みづくりを行っていることに加え、「若手ソフトウエアエンジニア育成プログラム」によりソフトウエアエンジニアを目指す新入社員に対し3年間の集中的な育成を行っています。

「シニア層活用強化」においては、50代の従業員を対象としたキャリア研修を導入し、60代以降のありたい姿や貢献領域を考えるプログラムを実施しています。今後もリスキリング施策の導入や配置転換を進め、従業員が長く生き生きと活躍するための取組を推進します。

 

○階層別研修

リーダー研修とサブリーダー研修は、ステップアップの動機づけと成長支援を目的としています。当社グループ合同で実施しており、組織を超えた横のつながりを作り、お互いに触発しあう機会としています(図2)。

2024年度は次世代リーダーと部下育成にフォーカスした新たな管理職研修を導入し、管理職昇進後も段階的な成長を支援する育成プログラムを構築します。

 

(図2)キャリアパスと教育プログラム全体像

 

 

○若手ソフトウエアエンジニア育成プログラム

変化する事業環境の中で、さまざまな製品開発に対応できる経験を積んだエンジニアが必要であり、「若手ソフトウエアエンジニア育成プログラム」を導入しています。

ソフトウエアエンジニアを目指す新入社員は、エンジニアリング本部(各カンパニーのソフトウエア開発、AI/クラウド/データ分析等の先端技術開発を担当するカンパニー横断のシェアード開発部門)に配属され、3年間さまざまな製品開発プロジェクトで経験を積み、ソフトウエアエンジニアとしての基礎知識とスキルを身に付けます。カンパニー横断の開発業務に携わることで、各カンパニー内技術のサイロ化防止とイノベーション創出、将来的な人脈づくりにつなげていきます。育成プログラムはOJTと集合教育で構成され、当社独自のスキル標準で成長目標を明確化し、一人ひとりの育成計画をデザインしています。OJTは、原則1年ごとに担当をローテーションし、技術指導担当のトレーナーと会社生活全般の相談役となるメンターがサポートします。集合教育は、実践に役立つ技術教育、先輩社員を交えたコミュニケーションやリーダーシップ等の研修のほか、有志の勉強会も開催されており、同世代エンジニアと学び・教えあう交流の場にもなっています。育成プログラム修了後、各人の適性やキャリア志向に応じてカンパニー等への配属先を決定するため、働きやすさや働きがいの向上にもつながると考えています(図3)。

 

(図3)若手ソフトウエアエンジニア育成プログラム構成

 

 

<経営/人材ビジョン実現に向けた職場風土醸成>

ⅰ 成長・挑戦の促進

“自らの壁を取り払い、新たな領域に好奇心を持って取り組む人材、ステークホルダーや他社と共に社会課題の解決を目指す人材を育成する。”を掲げる人材育成方針のもと、経営ビジョンおよび経営戦略の実現に向けて目標・期待役割共有の徹底による挑戦・成長意欲の向上をはかっています。

そのための取組として、2022年度に「役割共有面談」制度を導入し、部門方針・課題と各人の役割・期待を共有する面談を年2回実施しています。

また、階層別研修のリーダー研修およびサブリーダー研修に「経営方針・キャリアパス教育」を組み込み、各階層で会社方針と期待役割の理解促進を行っています。

従業員一人ひとりが自発的に自らの強みを一層磨き、壁を取り払い、レベルアップし、会社とともに成長していく風土・環境づくりを推進していきます。

 

ⅱ 多様性の受容促進

“価値観や考え方も含め多様性を持つバラエティに富んだ人材が混ざり合い、多様な視点と強みを活かし新たな価値を創造する。”を掲げる人材多様性推進方針のもと、女性活躍推進、経験者採用強化、障がい者雇用推進などを重点的に進めています。これらの活動は一定の成果を上げていますが、引き続き「多様性の受容度の向上」を重要課題とし、経験者採用時のオンボーディングをはじめとした、多様な人材の受入体制強化を行います。LGBTQに関する対応や取組も強化し、同性パートナーシップ制度を始めとした各種制度整備、社内研修等による理解促進、社内コミュニティ活用推進などを実施していきます。

 

○女性活躍推進・経験者採用に関する取組

女性活躍推進においては、新卒採用、経験者採用の強化に取り組むとともに、生活と仕事を両立しながら働き、事業の成長と企業価値向上に貢献できるキャリア形成支援に継続して注力しています。自分のライフステージ、ライフスタイルに合わせて働くことができる管理職コースや、妊娠、出産、育児期間中の在宅勤務制度の導入により、ライフワークバランスをより重視したキャリア形成が可能となっています。管理職に占める女性の割合は、2023年度末で国内3.8%、連結11.2%であり、GLP2023の目標値である「連結15.0%以上」は未達となりました(表1)。しかしながら、前述の取組により2024年4月1日付で新たに10名の女性が管理職に昇進し、女性管理職比率は国内5.7%、連結12.1%となりました。「女性管理職比率連結15.0%以上」の目標はGLP2026で継続し、採用活動の更なる推進やリーダー育成により目標達成を目指します。

これまでの取組の成果として、女性活躍に関する取組状況が優良な企業であることを示す「えるぼし(3段階目)」の認定を2023年3月に取得しています。

 

経験者採用は、多様なバックグラウンドを持つ外部人材、新規事業領域に取り組む人材の獲得、ならびに、女性管理職および管理職候補の採用を目的として2020年度より活動を強化しています。2023年度は、2022年度より新規採用者に占める経験者採用比率は減少しましたが、女性経験者比率は70.6%と大幅に増加しました(表2)。

 

(表1)管理職に占める女性の割合 (女性管理職数÷全管理職数)(単位:%)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

日本

1.8

2.3

2.8

3.1

3.8

米州

18.3

17.9

21.6

17.4

22.7

EMEA *

21.6

24.2

20.3

20.3

17.3

アジア他

23.4

24.0

23.7

22.3

21.6

連結

10.4

10.8

10.9

10.5

11.2

*EMEA(Europe, Middle East and Africa):欧州・中近東・アフリカ地域

 

(表2)新規採用者に占める経験者の割合および女性の割合 (単位:%)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

経験者採用比率 ※1

6.9

20.9

44.2

36.5

28.8

女性経験者比率 ※2

0.0

11.1

32.4

30.4

70.6

※1 経験者採用比率:経験者採用数÷新規採用数

※2 女性経験者比率:経験者採用のうちの女性採用数÷経験者採用数

 

ⅲ ライフワークバランス、就業環境整備

「働き方改革」を経営戦略の一つとしており、“「生活と仕事のバランスを考えて、働きやすく人生を楽しめる会社」と「労働生産性が高く働きがいがある会社」の両立に向けた制度・環境を整備する”という環境整備方針のもと、多様な従業員が生活と仕事を両立しながら、生産性を高めることができる環境づくりを推進しています。労使による「両立支援推進委員会」を適時開催し、在宅勤務制度の導入、育児・介護などによる在宅勤務の日数拡大、男性の育児休業利用推進、ライフイベントに応じて柔軟な勤務が可能な管理職コースの新設など、働き方やキャリアの多様化に向けた施策を行っています。

 

○育児に対する支援

妊娠中・育児中の従業員に対し、法定を上回る休暇・休業・短時間勤務制度の提供や在宅勤務日数の拡大等を行っており、育児と仕事を両立できる環境を整備しています。

近年は男性の育児休業利用促進に注力しており、「産後パパ育休」の施行に合わせ、2022年度に4週間の育児休業取得者に対し給与を実質100%補償する制度を導入しました。制度導入にあたり、全管理職に対して研修を実施し、男性育児休業取得推進の意識づけを行っています。これらの取組の結果、2022年度に45.2%だった男性の育児休業取得率は2023年度に90.3%となりました。今後も男性も当たり前に育児休業を取得できる環境づくりに努めていきます。

当社は2015年、2018年、2020年に厚生労働大臣から「子育てサポート企業」と認定され、通算3回「くるみんマーク」を取得しています。

 

○エンゲージメント調査による状況把握

当社および国内子会社では、全従業員に対するエンゲージメント調査を毎年実施し、「働きやすさ」と「働きがい」の現状把握、組織課題の抽出を行っています。調査結果は社内イントラネットで全従業員に公開するとともに、各部門にフィードバックし改善に活用しています(表3)。

 

(表3) エンゲージメント調査の結果 (単位:%)

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

回答率

92

98

98

97

98

97

働きやすさ満足度

88

87

90

90

90

89

働きがい満足度

70

70

75

75

72

71

 

○健康経営の推進

「働き方改革」の基盤を従業員の健康と考え、「アンリツグループ健康経営方針」のもと健康経営を推進しています。

 

アンリツグループ健康経営方針

アンリツグループは、社員一人ひとりが健康で活き活きと働いていることが、企業価値の源泉であると考えています。全ての社員が健康について関心を持ち、自身の健康上の課題を認識し、健康保持・増進に向けて自律的な取組を進めている状態を目指し、アンリツグループ各社とアンリツ健康保険組合が一体となり、健康経営の実現に向けた活動を進めます。

 

具体的な取組として、年1回の定期健康診断における法定項目を超える検査の実施、集団歯科検診や女性特有疾患検診の実施など、各種検査の拡充を行っています。また、定期健康診断結果のフォローアップを重視し、精密検査対象者の受診促進、高リスク者への個別面談等を実施しています。これらの取組により疾患の早期発見に繋げ、予防に向けた施策を拡充することにより、従業員の健康リスク低減をはかっています。

当社は、2022年度に続いて2023年度も経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度の大規模法人部門における「健康経営優良法人2024(ホワイト500)」に認定されました。本制度が開始された2016年度から通算6回目の認定となります。

 

③ リスク管理

当社グループの力を最大限に発揮して既存事業の拡大と新領域開拓を目指す上で、人材不足や生産性の悪化による事業遂行力の低下が最大のリスクと考えています。カンパニー制を採用している当社ではカンパニーごとに人事責任者を置き、密に連携することで人材状況の把握と問題への対策を行っています。また、執行役員ごとに採用計画や後継者育成状況のヒアリング等を行う「人財レビュー」を毎年実施することにより人材計画を擦り合わせ、リスク低減に努めています。「人財レビュー」は今後見直しを行い、2024年度より「人財戦略レビュー」として実施を予定しています。「人財戦略レビュー」では経営層、経営戦略部門、人事部門が一体となり、経営戦略実現に向けた人材戦略を推進していきます。

 

④ 指標と目標

 

項目

GLP2023目標

2023年度実績 ※1

人材多様性推進

 

女性活躍推進

女性管理職比率15%以上

・女性管理職比率:11.2%(連結、2024年3月末)

・男性の育児休業取得率:90.3%

・男女の賃金差:全労働者76.9%、正規雇用労働者77.2%、パート・有期労働者71.5%

シニア層活用強化

70歳までの雇用および新処遇制度導入

・65歳定年70歳雇用延長および新処遇制度運用継続

障がい者雇用推進

法定雇用率2.3%達成

・障がい者雇用率2.66%(2024年3月末)

(当社および特例子会社である㈱ハピスマの合算)

経験者採用

新規採用者数に占める割合30.0%以上

・新規採用者数に占める割合:28.8%

人材育成

教育費用・教育時間

・従業員一人当たり教育費:36,510円

・従業員一人当たり教育時間:15.8時間

環境整備

エンゲージメント指数

働きやすさ満足度90%

働きがい満足度80%

※2

・働きやすさ満足度:89%(当社および国内子会社計)

・働きがい満足度:71%(当社および国内子会社計)

健康経営

「健康経営優良法人(ホワイト500)」認定

・「健康経営優良法人2024(ホワイト500)」認定

※1 算出基準について特に記載がないものは当社実績。

※2 「働きやすさ満足度」および「働きがい満足度」とは、当社および国内子会社を対象とした「エンゲージメント調査」において、働きやすさ・働きがいに関する設問で肯定的な回答をした従業員の割合。

 

GLP2026では下記の目標を掲げています。

 

項目

KPI※1

サステナビリティ目標

 

ダイバーシティ経営の推進

・女性管理職比率15%以上(連結)

・障がい者雇用率 2.7%達成(当社および特例子会社である㈱ハピスマの合算)

働きがいのある労働環境の実現

・エンゲージメント調査の働きがいポジティブ回答率 80%以上(当社および国内子会社計)※2

グローバルなガバナンス向上

・女性取締役比率 20%以上

人材戦略に関する目標

成長事業・重点領域の人材確保と育成

・新領域ビジネス人材数 2倍(連結)

若年/リーダー層の積極採用と育成、およびシニア層活用強化

・新規採用者数に占める経験者採用者割合30%以上

・新卒採用者確保率80%以上

経営/人材ビジョン実現に向けた職場風土醸成

・エンゲージメント調査の成長・挑戦ポジティブ回答率:80%以上(当社および国内子会社計)※2

・エンゲージメント調査の多様性受容ポジティブ回答率:90%以上(当社および国内子会社計)※2

・エンゲージメント調査のライフワークバランスポジティブ回答率:90%以上(当社および国内子会社計)※2

・PRIDE指標「ゴールド」認定の取得

・「健康経営優良法人(ホワイト500)」認定の継続

・プラチナくるみん認定の取得

※1 算出基準について特に記載がないものは提出会社のKPIとなります。連結会社ベースの算出としていない項目については、各社・各地域の独自性あるいは法令に合わせた運用としているものです。

※2 エンゲージメント調査における「ポジティブ回答率」とは、該当設問で肯定的な回答をした従業員の割合です。

 

多様性に関する指標は、「第1 企業の概況 従業員の状況」にも記載しています。その他、人的資本に関する目標は「(3)④指標と目標」にも記載しています。