リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(方針及び体制)
当社グループは、リスクを適切に管理することは、企業価値を継続的に高め、社会的責任を果たすために、極めて重要な経営課題であると認識しており、リスク管理体制を整備しています。また、企業価値を維持、増大し、企業の社会的責任を果たし、当社グループの持続的発展を図るため、経営者はもとより、全社員がリスク感性を向上させ、全員参加により、リスクマネジメントを推進する取り組みに注力しています。
当社グループは、グループCEOのリスクマネジメント統括のもと、主要リスクを①経営の意思決定と業務の執行に係るビジネスリスク、②法令違反リスク、③環境リスク、④製品・サービスの品質リスク、⑤輸出入管理リスク、⑥情報セキュリティリスク、⑦感染症・災害リスクであると認識し、リスクごとにリスク管理責任者を明確にしています。各リスク管理責任者は、当該リスクに関する関係部門の責任者及びグループ会社管理責任者で構成する委員会を主管し、当該リスクマネジメントに関わるグループ会社全体を統括します。リスクマネジメントの対策、計画、実施状況及び年間を通したマネジメントサイクルの結果は、必要に応じ、経営戦略会議において審議され、取締役会に報告されております。また、リスクマネジメント推進部門は、規則、ガイドラインの制定、教育研修などを主管し、事業の継続発展を確保するための、リスク管理レベルの向上に必要な体制を整備しています。なお、各リスク管理責任者は、当該分野に関し、海外グループ会社の活動を支援しています。また、コンプライアンスリスクに関しては、各地域の統括会社の責任者が年度計画を策定し、リスクアセスメントを実施しています。
(主要リスクの概要)
(1) 当社グループの技術・マーケティング戦略に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは高い技術力により開発された最先端の製品とサービスをいち早く提供することで顧客価値の向上に努めております。しかしながら、当社グループの主要市場である情報通信市場は技術革新のスピードが速いため、当社グループが顧客価値を向上させるソリューションをタイムリーに提供できない事態や、顧客のニーズやウォンツを十分にサポートできない事態が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(2) 市場の変動に関するリスク(①ビジネスリスク)
経済や市場状況の変化、技術革新などの外的な要因は、当社グループが展開する製品群の収益に影響を及ぼし、グループの財政状態及び経営成績に大きな変動をもたらす可能性があります。
通信計測事業は、情報通信市場向けの売上比率が高いため、サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、スマートフォン・携帯電話メーカー、半導体・デバイスメーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。サービス・プロバイダは、急増するデータ・トラフィックに対応しながら、IoTサービスやクラウドサービスなど様々なニーズを実現するネットワークの構築が求められており、コスト効率を意識した設備投資を進めています。また、当社グループの収益の柱であるモバイル市場の業績は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数及びスマートフォン等の買い替え率の変化に影響されます。
PQA事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食品メーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。
環境計測事業は、EV・電池向け試験装置の売上比率が高いため、自動車メーカー、自動車部品メーカー、バッテリメーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。
(3) 戦略投資に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは、コンピテンシーである「はかる」を極めていくと共に、内外の異なる発想や技術をさらに掛け合わせ、従来の「はかる」を超えた価値や新領域を開拓していくことで次の事業の柱を成長させるため、外部との連携やM&Aを含めた戦略的成長投資を強化しています。投資の実行にあたっては、事前に事業計画の検証やデューデリジェンスを実施したうえで、投資判断を行っています。また、投資後もPMI(Post Merger Integration)計画を策定、実行し、投資後のビジネス立ち上げに万全の体制で取り組んでいます。
しかしながら、予期せぬ外部環境の変化や、市場環境や競合状況の変化等によっては当初期待した成果が得られないリスクがあります。このような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(4) 海外事業展開に関するリスク(①ビジネスリスク、②法令違反リスク、⑤輸出入管理リスク)
当社グループはグローバルに事業を展開しており、海外売上比率は当期実績で約70%を占めています。顧客の多くもグローバル規模で事業を展開しているため、海外諸国の経済動向、国際情勢の変化、遵守すべき法令対応によって、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(5) 製品の供給に関するリスク(①ビジネスリスク、⑦感染症・災害リスク)
当社グループは、電子部品等の安定調達を目指して、取引先との強固な関係構築に努めるとともに、部品調達リスクを速やかに把握する仕組み作りや、戦略的な部品在庫の確保などの対策を講じています。あわせて、リスクの高い部品については代替品への変更などによりリスクの最小化を図っています。
しかしながら、災害等に起因するサプライチェーンの混乱や需要の急激な高まりによる部品供給の逼迫等が生じた場合は、電子部品等の調達や主要製品の製造が困難な状況になり、製品の供給に遅延や停止が発生するリスクがあります。このような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(6) 感染症の蔓延に関するリスク(⑦感染症・災害リスク)
当社グループは、大規模な感染症の流行が発生した場合、従業員の安全確保と社内外の感染抑止を最優先に取り組んでいきます。また、事業への影響を最小限に抑えるべく、必要に応じて対策本部を設置し、情報収集と必要な対応を行います。しかしながら、感染拡大の状況によっては、サプライチェーンの寸断や当社グループ、顧客及び取引先の工場の操業停止や事業拠点の休業などの事業活動の制限等による影響により、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(7) 災害等に関するリスク(⑦感染症・災害リスク)
当社グループはグローバルに生産・販売活動を展開しているため、地震、台風、気候変動に伴う異常気象等の自然災害、火災、戦争、テロ及び暴動等が発生した場合には、当社グループや仕入先、顧客の主要設備への被害等により事業活動に支障が生じ、また、これらの災害等が政治不安又は経済不安を引き起こすことにより、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
当社では、災害・緊急時の被害最小化と事業活動の早期回復を図り、円滑な事業活動を継続することを目的として、各部門がBCP(Business Continuity Plan)を作成しています。当社グループの製造拠点である東北アンリツ(株)では、地震や大雨による河川の氾濫などの自然災害を重要なリスクとして位置づけ、災害発生後になすべきことを具体的にプロセスごとに明確化しています。実際の大規模災害での教訓を受け、BCP緊急発動基準を見直し、より幅広いリスクに備えるとともに各リスク発生時の対応手順の精緻化を行っています。
(8) 外国為替変動に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社では売掛金の回収などで発生する外貨取引への為替先物予約等によりリスク・ヘッジに努めておりますが、急激な為替変動は当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(9) 在庫陳腐化のリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは顧客のニーズやウォンツをきめ細かく捉え、製品やサービスを市場に提供するよう努めております。しかし、特に通信計測事業における製品群は技術革新が極めて速いため、製品及び部品の陳腐化が起こりやすく、在庫の長期化・不良化を招くことで当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(10) 人材確保に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループの持続的成長のためには、人材の獲得、確保、育成は非常に重要な要素となっています。当社グループは、国籍や性別などにこだわらない多様な人材の採用活動を積極的に行うことにより、優秀な人材の獲得に努めるとともに、社員の自発的成長を支援する教育研修体系の整備を継続的に進めています。また、ライフワークバランスを重視し、働き方や価値観の多様化に対応した労務環境の整備に取り組んでいます。しかしながら、人材の確保及び育成が想定どおりに進まない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(11) コンプライアンスに関するリスク(②法令違反リスク)
当社グループは、事業を展開する各国において当該国の法的規制の適用を受けています。これらの法令等に違反した場合、あるいは社会的要請に反した行動等があった場合には、法令による処罰、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループが社会的責任を遂行するにあたり、あるべき行動の指針とする「アンリツグループ行動規範」を定めるとともに、教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めています。国内アンリツグループのコンプライアンスの推進は、経営戦略会議の議長であるグループCEOが率先垂範しています。そして、経営戦略会議の下に、コンプライアンス担当執行役員を委員長とし、国内アンリツグループ各社の社員がメンバーとして参加する企業倫理推進委員会が、コンプライアンス推進活動を統括しています。また、企業倫理推進委員会およびその事務局である法務部は、法令対応の関連委員会とともに、海外アンリツグループ各社に対し、各国・各地域の法令・文化・慣習などを踏まえた倫理法令遵守を促し、必要な支援を行っています。さらに、海外アンリツグループ各社のコンプライアンス責任者と連携して、グローバルな推進体制を構築しています。なお、コンプライアンス推進体制が適正に機能しているかを内部監査部門が監査し、必要に応じて、提言・改善要請を行っています。
(12) 環境問題に関するリスク(③環境リスク)
当社グループは、気候変動、エネルギー、大気、水、有害物質、廃棄物、商品リサイクルなどさまざまな環境に関する法令及び規制等の適用を受けています。当社グループでは、事業活動や製品に関わる環境コンプライアンスの徹底はもとより、気候変動対策、循環型社会の形成、環境汚染予防に取り組んでいます。
しかしながら、環境規制の更なる強化や過去の行為に起因する環境責任の発生、自然災害などに起因した環境汚染の発生等が考えられます。これらの事象によって、法令遵守や環境対策のために必要なコストの増加等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、ステークホルダーからの要請に応えるため、製品のライフサイクル全体にわたり環境とのかかわりを意識した製品を開発し、提供しています。また、地球温暖化防止、生物多様性保全などの観点から、オフィス・ファクトリーの省エネルギー化によるCO2排出量の削減、3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進による廃棄物の削減、環境汚染防止に関して法、条例の規制より厳しい自主管理基準の設定による環境汚染リスクの低減に努めています。
(13) 製品の品質に関するリスク(④製品・サービスの品質リスク)
当社グループでは、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001の認証を1993年から取得し、製品の設計・開発から製造・サービス・保守に至るまでの一貫した品質管理をグローバルに展開しています。しかしながら、予測し得ない品質上の重大な欠陥といった事象の発生や製造物責任につながる事態が発生した場合には、社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等に加え、補償や対策に伴うコストが発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、製品品質の維持・向上と保証を図り、品質マネジメントシステムを適切に運用するために、品質マネジメントシステム委員会や内部品質監査委員会等を設けています。また、万一製品事故が発生した場合の体制の整備や製品事故予防のシステム及び再発防止に向けた取組について、検討を行っています。
(14) 訴訟に関するリスク(②法令違反リスク)
当社グループは、事業に関わる各種法令を遵守するとともに、知的財産権の適正な使用、契約条件の明確化、相手方との協議の実施等により紛争の発生を未然に防ぐよう努めています。
当連結会計年度において、当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟等は提起されていません。しかしながら、重大な訴訟等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響をもたらす可能性があります。
(15) 情報セキュリティに関するリスク(⑥情報セキュリティリスク)
当社グループは事業活動を行ううえで、顧客及び取引先、株主、従業員などすべての関係者の情報を適切に保護することが社会的責務であり、また、情報資産が当社グループ及びすべての関係者にとって重要な財産であると認識しています。これらの情報資産について、サイバー攻撃による情報セキュリティ事故が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティ管理体制を構築し、徹底した管理とセキュリティの維持・向上への取組や情報セキュリティ教育の実施などを継続的に行っています。グローバルに事業を展開する当社では、世界中のオフィスをネットワークで接続し、情報の共有化を進めてきました。情報セキュリティにおいては一カ所でも脆弱な部分があると、全体のセキュリティレベルに影響を及ぼすことから、グローバルで強固かつ均一なセキュリティシステムを構築することに取り組んでいます。
(16) 繰延税金資産に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは、税効果会計を適用し、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する見積りを含めた予測等に基づいており、実際の結果が予測と異なる可能性があります。将来の課税所得の見積りに基づく税金負担の軽減効果が得られないと判断された場合、当該繰延税金資産は取り崩され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(17) 確定給付制度債務に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社及び一部の子会社の従業員を対象とした確定給付年金制度から生じる退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されておりますが、確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元について、連結業績に応じるとともに、総還元性向を勘案した利益処分を行うことを基本方針としております。
剰余金の配当については、連結当期利益の上昇に応じて、親会社所有者帰属持分配当率 (DOE:Dividend On Equity)を上げることを基本にしつつ、連結配当性向50%以上を目標としており、株主総会決議もしくは取締役会決議により、期末配当及び中間配当の年2回の配当を行う方針です。
自己株式の取得は、企業環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するために、財務状況、株価の動向等を勘案しながら、必要に応じ適切に実施していく方針です。
内部留保資金は、急速に進展する技術革新や市場構造の変化に対応するための研究開発や設備投資、サポートサービスの拡充を図るための投資、更なる事業拡大を目指すための投資などに活用していく方針です。
当社は、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定めのある事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる。」旨を定款に定めております。また、当社定款において、期末配当の基準日は毎年3月31日とし、中間配当の基準日は毎年9月30日とする旨の規定があります。
当事業年度の剰余金の配当については、基本方針に基づき、当事業年度の業績並びに5G市場における競争力強化、IoT (Internet of Things)を活用した産業分野への事業拡大、データセンター関連市場の深耕、6Gでの先行と新領域ビジネスでの成長加速等の戦略的投資のための資金需要等、諸般の事情を総合的に考慮し、株主の皆様の日頃のご支援にお応えするため、1株につき40円(うち中間配当金20円)といたしました。
なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
|
2023年10月30日 |
取締役会決議 |
2,637 |
20.0 |
2024年6月25日 |
定時株主総会決議 |
2,639 |
20.0 |