2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    2,212名(単体) 112,300名(連結)
  • 平均年齢
    42.5歳(単体)
  • 平均勤続年数
    15.8年(単体)
  • 平均年収
    11,183,744円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

G&NS(ゲーム&ネットワークサービス)

12,100

音楽

11,300

映画

11,500

ET&S(エンタテインメント・テクノロジー&サービス)

36,700

I&SS(イメージング&センシング・ソリューション)

19,200

金融

14,300

その他

1,700

全社(共通)

5,500

合計

112,300

 (注) 1 従業員数は百人未満を四捨五入して記載しています。

 2 2024年度末の従業員数は、映画(海外)(M&Aによる事業拡大等によるもの)及び金融分野において人員増加がありましたが、ET&S、G&NS(海外)及びその他分野(国内)における構造改革ならびにI&SS(海外)分野における中国の拠点閉鎖等により人員が減少した結果、前年度末に比べ約700名減少し、約112,300名となりました。
 

(2)提出会社の状況

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

2,212

42.5

15.8

11,183,744

 

セグメントの名称

従業員数(人)

全社(共通)

2,212

 

 (注) 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

 

(3)労働組合の状況

 ソニーの労働組合員数は全従業員数の約7%であり、労使関係は良好です。

 

(4)提出会社及び国内の主要な連結子会社における管理職に占める女性労働者の割合等の状況

2025年3月31日現在

①提出会社

会社名

管理職に占める女性労働者の

割合 *1

男性労働者の

育児休業

取得率 *2

労働者の男女の賃金の差異 *1 *3 *4

全労働者

うち正規雇用

労働者

うちパート・

有期労働者

ソニーグループ㈱

20.2%

79%

84.4%

84.7%

74.5%

 

②国内の主要な連結子会社

会社名

管理職に占める女性労働者の

割合 *1

男性労働者の

育児休業

取得率 *2

労働者の男女の賃金の差異 *1 *3 *4

全労働者

うち正規雇用

労働者

うちパート・

有期労働者

㈱ソニー

・インタラクティブエンタテインメント

15.6%

100%

81.3%

81.9%

88.1%

㈱ソニー

・ミュージックエンタテインメント

27.1%

37%

67.7%

75.6%

78.9%

ソニー㈱

8.5%

93%

81.6%

81.2%

77.2%

ソニー

グローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ㈱

5.6%

90%

76.0%

74.6%

109.3%

ソニー

ネットワークコミュニケーションズ㈱

10.9%

70%

77.7%

77.5%

80.5%

ソニー

マーケティング㈱

11.0%

100%

78.7%

77.2%

92.5%

ソニー

セミコンダクタソリューションズ㈱

4.5%

91%

75.4%

76.8%

58.4%

ソニー

セミコンダクタマニュファクチャリング㈱

2.2%

93%

78.1%

78.3%

84.0%

ソニー生命保険㈱

7.4%

46%

40.8%

53.6%

15.6%

ソニー銀行㈱

24.4%

84%

70.4%

71.1%

51.0%

ソニー損害保険㈱

7.4%

75%

48.6%

56.4%

30.9%

 (注)*1 「管理職に占める女性労働者の割合」及び「労働者の男女の賃金の差異」については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)(以下「女性活躍推進法」)の規定にもとづき、総管理職数に占める女性管理職数の割合及び男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合で示した数値(それぞれ小数第2位を四捨五入し小数第1位まで表記)を記載しています。

*2 「男性労働者の育児休業取得率」については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)(以下「育児・介護休業法」)の規定にもとづき、2025年3月末時点で在籍しており2024年度に配偶者が出産した男性社員(出向受入社員を除く)のうち、同年度中に育児休業等をしたものの数及び育児を目的とした休暇制度を利用したものの数の合計数の割合(小数第1位以下を切り捨て)を、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)(以下「育児・介護休業法施行規則」)第71条の6第2号に掲げる割合として算出しています。

 

*3 「労働者の男女の賃金の差異」の数値については、以下を前提として算出しています。

・対象期間:2024年度(2024年4月1日~2025年3月31日)

・賃金:基本給、超過労働に対する報酬、賞与等を含み、退職手当、通勤手当等を除く

・正規雇用労働者:短時間勤務者を含み、社外からの出向受入社員、海外からの赴任者、対象期間中に満期で国内在籍していない社員(赴任、休職、入社、退社等)等を除く

・パート・有期労働者:有期契約社員(定年再雇用社員を含む)、嘱託社員、パートタイムを含み、派遣社員を除く

*4 雇用管理区分別の男女比率や等級別の男女の賃金の差異等の詳細については各社の女性活躍推進法にもとづく開示をご参照ください。

 5 国内の連結子会社のうち主要な連結子会社以外の会社の状況については、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報」の『(2)主要な連結子会社以外の国内の連結子会社における管理職に占める女性労働者の割合等の状況』をご参照ください。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

ソニーのサステナビリティに関する基本方針

 当社は、取締役会において、サステナビリティに関する基本方針を以下のとおり定めています。

『ソニーは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)と、「人に近づく」という経営の方向性のもと、「人」を軸に多様な事業を展開し、この多様性を強みとした持続的な価値創造と長期視点での企業価値の向上を目指しています。人々が感動で繋がるためには、私たちが安心して暮らせる社会や健全な地球環境があることが前提であり、ソニーは、その事業活動が株主、顧客、社員、調達先、ビジネスパートナー、地域社会、その他機関等のソニーグループのステークホルダーや地球環境に与える影響に十分配慮して行動するとともに、対話を通じてステークホルダーとの信頼を築くよう努めます。そして、イノベーションと健全な事業活動を通じて、企業価値の向上を追求し、持続可能な社会の発展に貢献することを目指します。』

 

(1)サステナビリティ推進体制及びその取り組み

<推進体制>

 当社は、サステナビリティ担当上級役員のもと、サステナビリティ推進部を設置し、同部がビジネスユニット及び事業会社(以下あわせて「各事業部門」)及び当社関連部署(コンプライアンス、人事、経営企画管理、財務、法務等)(以下「関連部門」)と連携しながら、グループ全体のサステナビリティに関する各種取り組みを推進しています。

 当社のサステナビリティ担当上級役員は、サステナビリティに関連するリスクを定期的に検討・評価し、損失のリスクの発見・情報伝達・評価・対応に取り組んでいます。当社の取締役会は、少なくとも四半期に1回、サステナビリティに関する取り組み及びその進捗の報告をサステナビリティ推進部から受けています。取締役会は、さらに、各事業部門からの中期経営計画に関する報告の一部として、それぞれの事業に関わりの大きいサステナビリティの課題と機会及びそれらへの取り組みについての報告を受けています。サステナビリティに関連するリスクの詳細は、「第2 事業の状況」『3事業等のリスク』をご参照ください。

 

<推進のための主な取り組み>

 上記体制のもとで、サステナビリティ推進部は、前述の「ソニーのサステナビリティに関する基本方針」にもとづき、ソニーの事業活動への当該基本方針の浸透を図るとともに、ステークホルダーとの対話やマテリアリティ分析等を通じて、グループ全体で対応が必要なサステナビリティ課題を特定しています。また、それらの特定したサステナビリティ課題について、当社マネジメントや関連部門と連携しながら、長期環境計画「Road to Zero」等のグループとしての対応方針を策定し、グループ全体に周知すること等により、グループ全体での取り組みを推進しています。

 また、各事業部門においては、サステナビリティの観点からの課題と機会を検討するとともに、それぞれの事業特性に応じた、サステナビリティに関する取り組みを行っています。加えて、サステナビリティ推進部と議論の上、重視しているサステナビリティ課題への取り組みについてKPI(以下「サステナビリティKPI」)を設定しています。サステナビリティKPIは各事業部門の業績評価の一部に組み込まれており、その達成状況をサステナビリティ推進部においても評価しています。加えて、当社上級役員の業績連動報酬の評価指標として、グループサステナビリティ評価の達成度を設定し、担当事業・組織の枠にとどまらない、ソニーグループ全体の中長期的な企業価値向上、持続的成長に向けた経営層としての取り組み、例えば、経営のサクセッションや人的資本への投資、社会価値創出及びESG(環境・社会・ガバナンス)の観点での取り組み、事業間連携での価値創造を加速するための取り組み、社員意識調査によるエンゲージメント指標等を評価しています。

 2024年度においては、サステナビリティに関するステークホルダーとの対話を深めることを目的として、投資家向けサステナビリティスモールミーティング及びサステナビリティメディアブリーフィングを開催しました。

 また、サステナビリティ担当上級役員、人事担当上級役員及び各事業部門のサステナビリティ責任者が参加するグループ全体でのサステナビリティ会議を開催し、各事業部門のサステナビリティに関する取り組み及びサステナビリティKPIの進捗状況等を共有し、確認しました。

 なお、各事業部門において設定した2024年度のサステナビリティKPIには、製品の消費電力の削減、製造プロセスの温室効果ガス(以下「GHG」)排出量の削減、ソニーグループのコンテンツIPを活用した環境啓発活動の実施、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下「DE&I」)に関するプログラムや研修の実施、製品・サービスのアクセシビリティ向上等が含まれていました。

 

<上記取り組みの前提となるマテリアリティ分析>

 中長期的な視点で、ソニーのサステナビリティ活動を社会環境の変化やステークホルダーからの要請等に応じたものとするため、サステナビリティ担当上級役員のもと、サステナビリティ推進部が主導し、ソニーグループにとってのマテリアリティ項目を分析・特定し、定期的にその重要性について見直しています。直近では2022年度に見直しを実施しており、マテリアリティ項目を「中長期的な社会の変化及び多様なステークホルダーのニーズを踏まえた、ソニーの価値創造に影響を与えるサステナビリティに関する重要項目」と定義した上で、ソニーに関連性の高いサステナビリティ課題(ソニーの価値創造にネガティブなインパクトを与える項目を含む)について、自社視点・ステークホルダー視点の両面からその重要性を評価しました。

 自社視点での重要性については、中長期的にソニーの価値創造に与えるポジティブ又はネガティブなインパクトの観点から、また、ステークホルダー視点での重要性については、非政府組織(NGO)、投資家、評価機関、メディア等が公表している情報等にもとづき、各項目を評価しました。

 かかる評価にもとづき、当社マネジメント及び取締役会のレビューを経て、ソニーグループとして優先的に取り組むべき最も重要なマテリアリティ項目を特定しました。

 

(2)サステナビリティに係る戦略等

 2022年度に実施したマテリアリティ分析の結果、ソニーグループとして優先的に取り組むべき最も重要なマテリアリティ項目として、「気候変動」、「DE&I」、「人権の尊重」及び「サステナビリティに貢献する技術」(以下あわせて「最重要マテリアリティ項目」)を特定しました。なお、2024年度においても当該最重要マテリアリティ項目に変更はありません。

 

<最重要マテリアリティ項目特定の背景>

・気候変動:ソニーは、気候変動による影響の顕在化と、脱炭素社会への移行は全ての企業にとっての重要課題であること、また、自社の環境負荷等を低減していく「責任」と、多様な事業や技術を生かして行う「貢献」の両面から、幅広いステークホルダーからの環境への取り組みに対する期待が高まっていることを認識しています。ソニーの企業活動は、あらゆる生命の生存基盤である地球環境が健全であって初めて成り立つものであり、気候変動対策をはじめとする環境への対応が重要と考えています。

 

・DE&I:ソニーは、企業活動において、多様性に富む組織は、そうでない組織に比べて、よりイノベーティブであると認識しています。そして、社員一人ひとりの多様な価値観を尊重するとともに、エクイティ(公平性)の観点を大切にし、インクルーシブな組織風土を醸成することが重要であると考えています。また、社会正義や不平等等の社会課題に対する企業の取り組みにも期待が高まっており、グループ全体で社内外の課題解決に向けた取り組みのより一層の推進が重要と考えています。

 

・人権の尊重:ソニーは、そのグローバルな事業活動において、人権への潜在的な影響があることを認識しています。すなわち、ソニーのバリューチェーン全体において人権を尊重し、ソニーの事業活動との関係が直接的か間接的かに関わらず、潜在的なものも含めて人権への負の影響に対処することは、ソニーが果たすべき責任として幅広いステークホルダーから求められていることであると認識しています。近年の人権の尊重に関連する外部環境の変化も踏まえ、ソニーとしてもより一層取り組みを強化することが重要であると考えています。

 

・サステナビリティに貢献する技術:ソニーは、テクノロジーを通じて、事業の成長と社会・環境課題の解決を両立させることについて、ステークホルダーからソニーに対する期待があるものと認識しています。ソニーの開発する技術や製品・サービスにより、事業収益の増加のみならず、社会及び環境にポジティブな影響をもたらすことでサステナビリティ課題の解決をリードし貢献することは、ソニーにとって重要な使命であると考えています。

 

<最重要マテリアリティ項目に係る戦略と目標、主な取り組み>

・気候変動

 ソニーは、2010年にグループ全体で地球環境に及ぼす負荷を2050年までにゼロとすることをめざす長期環境計画「Road to Zero」を掲げ、以来、気候変動、資源、化学物質、生物多様性の4つの視点から環境負荷低減のための取り組みを行ってきました。2022年5月には、気候変動領域において、環境負荷低減活動をさらに加速するため、スコープ1から3までを含むバリューチェーン全体でのネットゼロ(以下「ネットゼロ目標」)の達成目標年を2040年に前倒しすることを発表しました。なお、この2040年のネットゼロ目標は、2022年8月に「Science Based Targets initiative (SBTi)*1」によるネットゼロ目標*2の認定を取得しました。さらに、2025年4月には、2026年度~2030年度を対象期間とする、グループ環境中期目標*3「Green Management(グリーンマネジメント) 2030」を新たに制定しました。

 

*1 気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ1.5度に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を企業が設定することを推進する国際イニシアティブ。

*2 ソニーのネットゼロ目標は、以下のSBTiの「企業ネットゼロ基準」にしたがっています。

・スコープ1、2及び3のGHG排出量をゼロにするか、又は、適格な1.5℃軌道においてグローバルもしくはセクターレベルでのGHGネットゼロ排出達成と整合する残余排出量水準にまでGHG排出量を削減すること。

・ネットゼロ目標の時点におけるGHGの残余排出量及びそれ以降に大気中に放出される全てのGHG排出量を中和すること。

*3 長期環境計画「Road to Zero」の達成に向けて、5年ごとに設定している中期目標。本書提出日現在、2021年度~2025年度までの環境中期目標「Green Management 2025」の達成に向けて、環境負荷低減の取り組みを進めています。

 

上記の2040年のネットゼロ目標達成に向けた中間目標については、以下のとおりです。

 

1.2030年までに、ソニーグループの事業所オペレーションにおけるGHGの直接・間接排出(スコープ1、2)をネットゼロとすることをめざします。さらに、製品、サプライチェーン、物流等その他の排出(スコープ3)については、2035年までに、製品使用時のGHG排出量を2018年度比で45%削減することをめざします。2040年には、全スコープにおいてGHG排出量をネットゼロとすることをめざします。

2.2030年までに、当社グループの事業所で使用する電力を100%再エネ化することをめざします。2025年度末時点での再エネ由来の電力使用率目標を35%としています。

 

上記1及び2の目標を達成するために、ソニーでは主に次のような施策を実施していきます。

・ソニーグループの事業所における継続的な環境負荷低減:グループ全体で、省エネルギー(以下「省エネ」)化、太陽光発電設備の設置及び再エネ導入を加速。日本におけるFIP(フィードインプレミアム)制度を活用したバーチャルPPA(電力購入契約)。

・ソニー製品の省エネ化:ソニー製品1台当たりの年間消費電力量の低減に向けた動きを加速。

・パートナーへの働きかけ強化:部品、材料及び完成品の製造委託先等にも、それぞれのGHG排出量の管理、省エネ及び再エネ転換等を促す。

・炭素除去・固定*4への貢献:炭素除去等の関連スタートアップ企業への投資検討や、株式会社SynecO(シネコ)のSynecoculture™(シネコカルチャー)*5をはじめとする拡張生態系の普及事業にともなう生物多様性と炭素固定の指標化の検討等。

 

*4 大気中から炭素を吸収し、固定させる技術。

*5 Synecocultureはソニーグループ株式会社の商標です。

 

・DE&I

 DE&Iに関する戦略等については、「(3)人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標」をご参照ください。

 

・人権の尊重

 ソニーは、「ソニーグループ人権方針」において、バリューチェーン全体を通じて、ソニーの事業活動の影響を受ける可能性のある人の、国際的に認められている人権を尊重することとしています。また、ソニーの事業活動、商品やサービス、ビジネス上の取引関係によって、人権への負の影響を引き起こしたり、助長したりすることがないように努めるとともに、万一そのような影響が生じた場合には、その是正に向けて誠実に行動することとしています。特定の領域においては、エレクトロニクス製品の責任あるサプライチェーンの実現に向けたソニーグループ製造事業所及びサプライヤーの行動規範を定めた「ソニーサプライチェーン行動規範」や、ソニーの全ての役員及び従業員がソニーグループの価値観や新たな社会規範に沿ってAIの活用や研究開発を行うための指針である「ソニーグループAI倫理ガイドライン」等を策定し、運用しています。また、ソニーは、国連人権理事会によって発行された「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)及び「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」に定められた人権デュー・ディリジェンスの枠組みに沿って、人権リスクのインパクト評価を実施しています。当該評価において、ソニーの事業活動の特性や各事業において重要なバリューチェーンを踏まえて、潜在的な人権リスクを特定した上で、これらの人権リスクのうち、責任あるサプライチェーン、多様性の尊重、責任あるテクノロジーの開発及び使用の3つの領域を、ソニーグループとして、優先的に取り組みを進める重点領域として定めています。これらの重点領域において、人権への重大な負の影響が特定あるいは懸念される課題には、その影響を防止又は軽減するための取り組みを推進しています。2024年度においては、各事業セグメントに特有の人権リスク及びこれらに対する取り組み状況を確認した上で、その改善や新たな施策の必要性について検討を行うため、各事業部門において人権リスクのインパクト評価を実施し、それぞれが優先的に取り組むべき人権課題を見直しました。当該評価は、サステナビリティ推進部が策定した評価基準を踏まえて、各事業部門が外部専門家又は社内関係部署の知見を活用して実施されました。サステナビリティ推進部は、2024年12月に開催した社内グローバル会議において、各事業の重点領域、取り組みの状況や今後の計画等について、各事業部門から報告を受けました。

 

・サステナビリティに貢献する技術

 ソニーは、事業成長に貢献する技術開発とともに、未来に向けて新たな社会・産業の在り方をもたらすイノベーションの創出に取り組んでいます。

 例えば、ソニーでは、環境に配慮した材料の開発及び低消費電力化技術によるソニー製品の環境負荷の低減等を行っています。さらに、ソニー株式会社では、生成AIモデルの急速な進化にともなうフェイク画像や虚偽情報の拡散のまん延等の課題に対処し、画像コンテンツの信頼性を高めるため、C2PA*6規格準拠とソニー独自のデジタル署名技術により、撮影画像の真正性を検証する真正性カメラソリューションを、報道機関をはじめ、報道に関わるフォトグラファーに提供しています。

 

*6 デジタルコンテンツの出所と信ぴょう性に対し、オープンスタンダードと技術仕様を策定する標準化団体。

 

(3)人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標

<ソニーにおける多様性(ダイバーシティ)と人材理念>

 ソニーは、1946年にエレクトロニクス事業を起源として設立され、日本初のトランジスタ開発から半導体事業を開始しました。その後、外国企業との合弁による音楽事業と金融事業、外国企業の買収による映画事業、グループ内の共同出資によるゲーム事業等、様々な方法で新しい事業への参入を行いながら、複数の事業体から構成される企業として進化を続けてきました。現在、主要6事業のうち半数が本社を米国に置き、事業運営に最適な組織体制をグローバルに編成しつつビジネスを展開しています。

 これまでの事業の発展や成長は、創業来受け継がれてきた新しいことへの飽くなき挑戦心と多様性を重んじる価値観が、その基盤となっています。異なるバックグラウンドをもつ社員の交錯によって新しい事業が生まれ、事業が多様化することで人材の活躍の場が一層広がり、社員も会社もともに成長してきました。現在ソニーでは、事業と人の「ダイバーシティ」を、「クリエイティビティ」「テクノロジー」と並ぶ「価値創造のドライバー」と位置づけ、全世界で活躍する約11.2万人の社員は、属性や経験の多様性はもとより、事業の広がりによって職種も極めて多岐にわたり、各事業の成長の原動力となっています。これら多様な人材が、Purpose(存在意義)のもと、事業や地域を超えてつながり、交錯し、テクノロジーやクリエイティビティを融合することで、新たな価値創造につなげています。

 人材理念である“Special You, Diverse Sony”には、ソニーの人材に対する考え方が表現されており、異なる個性を持つ一人ひとりと、多様な個を受け入れる場であるソニーとがPurposeを中心にともに成長し続けていく、というメッセージが込められています。そして、この人材理念の下、グループ共通の人事戦略を「個を求む」・「個を伸ばす」・「個を活かす」と定義し、社員の働きがいの希求に応え、一人ひとりの力を最大限引き出す施策や活躍の場の提供に注力することで、グループ全体としての成長をめざします。具体的な取り組みについては、権限を委譲された各事業の人事責任者が、それぞれの事業や地域の特性に応じて最適な人事施策の策定・実行にあたっています。

 

<「異見」と第五次中期経営計画の達成に向けた注力領域>

 人材理念を実現していくためのキーワードとして、多様な一人ひとりの異なる意見を意味する「異見」を掲げています。多様な人材がこれまで多様な事業を創り支えてきたという事実をもとに、「異見を活かす組織」であり続けるために必要な要素を、様々なバックグラウンドの人材が集まっていること(属性の多様性)、異なる業界の経験者同士が一緒に仕事をすることや、一人の社員が一か所に留まらず、海外や複数のビジネス領域等で新たな経験を得ること(経験の多様性)、そして第三に、個性豊かな社員を活かして組織を牽引するリーダーがおり、多様な考え方や価値観を受け入れる企業文化があること(異見を活かすリーダーシップ、企業文化)と整理し、グループ内の人事施策に反映しています。

 2024年度から始まった第五次中期経営計画は「境界を超える~グループ全体のシナジー最大化~」をテーマとしています。企業価値向上に向けてシナジー実現の取り組みを進化させるための土台として、異見を活かす組織を推進していくとともに、下記を注力領域と定め進捗や実績をモニタリングしていきます。

 

① グループの成長を支える属性の多様性と経験の多様性の進化

 ソニーのマネジメントは多様な属性・経験や専門性を有するメンバーで構成されていますが、さらなる多様性の確保へのコミットメントとして、当社の役員*7に占める女性比率及び日本以外の国・地域の出身者*8比率を2030年までにそれぞれ30%以上にすることをめざしています。2025年3月31日時点での比率は、それぞれ18.8%、28.1%でした。

 

*7 取締役、執行役を含む上級役員及びその他の役員。

*8 日本以外の国籍をもつ者又は日本以外で出生した者。

 

 そして、2024年度には、当時SPE米国本社のチーフ・コミュニケーション・オフィサーであったロバート・ローソンを、事業と国を越えて当社の広報担当執行役員コーポレートエグゼクティブに任命しており、当社マネジメントの経験の多様性の進化にもつながっています。

 

 ソニーグループ全社員のうち、約半数が日本国外での事業活動に従事しており、そのうちの9割以上が現地採用社員です。主要事業にとどまらず、グローバルに展開するR&Dや㈱ソニーリサーチ(旧㈱ソニーAI)でのAI等の先端技術開発を推進できる人材についても、国籍を問わず採用する活動を強化しており、世界中から優秀な学生や経験者を採用する取り組みを積極的に続けています。

 また、多様な人材が活躍する職場環境の醸成の一環として女性の活躍推進をグローバルで進めており、2024年度末時点でのソニーグループ全社員のうちの女性社員比率は34.2%、管理職に占める女性労働者の割合(以下「女性管理職比率」)は31.6%です。一方で、日本国内企業の女性管理職比率は海外企業と比べて低いことから、国内主要会社各社で数値目標を定めて比率の向上に取り組んでいます。

 女性社員の継続的育成の観点では、女性リーダーの育成やキャリアアップを後押しする研修や、女性社員を対象とした座談会や交流会等を開催しています。また、当社及び国内主要子会社において、女性管理職比率及び男性労働者の育児休業取得率(以下「男性育休取得率」)を向上させるため、二つの目標を以下のとおり設定しています。

 

提出会社及び国内の主要な連結子会社における女性管理職比率に係る目標及び実績

会社名

2025年度末目標 *1

2025年3月末実績

ソニーグループ㈱

20.0%

20.2%

ソニー㈱

10.0%

8.5%

ソニーセミコンダクタ

ソリューションズ㈱

4.5% *2

4.5%

㈱ソニー・インタラクティブ

エンタテインメント

15.0%

15.6%

㈱ソニー・ミュージック

エンタテインメント

28.0%

27.1%

ソニーフィナンシャルグループ *3

18.0%

18.2%

(注)*1「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令」(平成27年厚生労働省令第162号)の規定にもとづく「管理職に占める女性労働者の割合」の2025年度末時点の目標について記載しています。

*2 女性活躍推進法にもとづく行動計画において定めた2025年度末時点での女性管理職目標人数が2025年3月末時点管理職総数に占める割合です。

*3 ソニーフィナンシャルグループ傘下の対象各社(SFGI、ソニー生命(同社本社の内勤社員のみ)、ソニー損保、ソニー銀行、ソニー・ライフケア㈱、ライフケアデザイン㈱及びプラウドライフ㈱を指す。下表の注においても同じ。)の2025年度末時点の女性管理職の目標人数及び2025年3月末時点の女性管理職の人数実績をそれぞれ合算し、それぞれの合計の数値を、目標については2025年度末時点の想定管理職総数の合計で、実績については2025年3月末時点の管理職総数の合計で、それぞれ除した数値を記載しています。

 

提出会社及び国内の主要な連結子会社における男性育休取得率に係る目標及び実績

会社名

2025年度目標 *1

2024年度実績 *1

ソニーグループ㈱

100%

79%

ソニー㈱

100%

93%

ソニーセミコンダクタ

ソリューションズ㈱

100%

91%

㈱ソニー・インタラクティブ

エンタテインメント

100%

100%

㈱ソニー・ミュージック

エンタテインメント

100%

37%

ソニーフィナンシャルグループ

100%

90% *2

(注)*1 育児・介護休業法の規定にもとづき、2025年度目標については、2026年3月末時点で在籍しており2025年度に配偶者が出産する男性社員(出向受入社員を除く)のうち、同年度中に育児休業等をするものの数及び育児を目的とした休暇制度を利用するものの数の合計数の割合についての目標を、2024年度実績については、2025年3月末時点で在籍しており2024年度に配偶者が出産した男性社員(出向受入社員を除く)のうち、同年度中に育児休業等をしたものの数及び育児を目的とした休暇制度を利用したもの(以下まとめて「男性育休取得者」)の数の合計数の割合(小数第1位以下を切り捨て)を、それぞれ記載しています。

*2 ソニーフィナンシャルグループ傘下の対象各社の2025年3月末時点で在籍している2024年度の男性育休取得者の人数の合計数を、2025年3月末時点で在籍しており2024年度に配偶者が出産した男性社員(出向受入社員除く)数の合計値で除した数値を記載しています。

 

 ソニーの障がい者雇用においては、創業者の一人である井深大の「障がい者だからという特権なしの厳しさで、健丈者よりも優れたものを、という信念を持って」活躍してほしいという思いを理念とし、「障がいを感じない、働き甲斐のあるソニーらしい障がい者雇用環境」づくりに注力してきました。それぞれの国や地域の法令や規範を遵守し、障がいの有無にかかわらずキャリア構築ができる職場環境づくりに、グループ一体となって取り組んでいます。

 LGBTQ+の社員に対しては、国・地域の実情に合わせて、自分らしく、安心して働くことができる職場環境の醸成を推進し、多様な社員を包摂するインフラの整備を行っています。2022年度から、ソニーがLGBTQ+の社員及びコミュニティを尊重し支援する姿勢を社内外に視覚的に表明することを目的として、レインボーカラーで表示したソニーロゴタイプの「Prideロゴ」をグループ内に導入しています。

 

 社員の経験の多様性の進化という観点では、他社又は様々な職種での経験を通して培われた新たな知見や視点が加わることで組織の成長につながると考え、長年、他社や他職種の経験者(以下「他社・他職種経験者」)の採用を積極的に推進しています。当社及び国内の連結子会社における入社者全体に占める他社・他職種経験者の割合は、2023年度50.7%、2024年度48.3%となっており、海外では大半が他社・他職種経験者となっています。入社後の人事評価においても、他社・他職種経験者と新卒入社者とを区別していません。そして、ゲームタイトル開発等の成長領域におけるM&Aや戦略的提携により、2012年度から2024年度までに9,000人以上が新たにソニーグループに加わっており、社員のバックグラウンドの多様化による事業の成長に寄与しています。

今後は、このような多様な属性や経験を持つ社員の協業や、事業等の越境によるキャリア形成を支援する施策をより強化していきます。

 

② 個の経験の多様化を促す挑戦機会の提供

 自主性のある個性豊かな社員一人ひとりの成長が会社の成長につながると考えているソニーにおいて、挑戦心と成長意欲に満ちた人材を獲得し、その挑戦を支援し続けることが重要です。社員が能力や自主性を最大限発揮できる職務へチャレンジする機会を提供する仕組みとして、多様な制度(社内募集制度、キャリアプラス制度、社内フリーエージェント(FA)制度等)により、事業の枠を超えた社員のキャリア構築をサポートしています。国内では、社内人材を公募する「社内募集」制度を他社に先駆け1966年に開始し、約60年にわたって運用しています。これは社員の新たな職務へのチャレンジをベースに、適材適所の人材配置と重要ビジネス強化についても同時に実現することを狙いとした制度で、これまでに延べ8,000名以上の異動実績があり、社員個人の挑戦意欲を人事制度の面から推進する欠かすことのできない仕組みとして定着しています。さらに、2015年度には、現業を継続しながら、週1~2日間を、組織を越えた他部門の業務やプロジェクトに充てることができる「キャリアプラス」制度を導入しました。加えて、優秀な社員に「FA権」を付与し、権利行使者の情報をグループ内で共有することにより新たなフィールドに活躍の場を広げていくことのできる「社内FA」制度、社員自らがプロフィールを登録し、スキルや経験が合致すれば求人中の職場や人事から声がかかる「Sony CAREER LINK」等、従来の公募制度に新たな仕組みを加え大幅に拡充しています。

こうした取り組みは日本国内にとどまらずグローバルでも展開されており、例えば中国国内で事業を展開している会社では社内募集制度を導入しています。また、中国の事業横断の新規プロジェクトのチーム組成にあたってキャリアプラス制度を活用することで、応募者が現業を継続しながら勤務時間の20%以上を当該プロジェクトに充てることを可能にし、社員が事業の垣根を越えて新しい業務に触れ、他領域の同僚と協業する機会を創出しています。

その他、講演会やワークショップ、キャリア相談窓口も主体的なキャリア意識の啓発の場として活用されていますが、個の挑戦心を理解し後押しをするには職場での対話も重要です。一人ひとりが自分のキャリアについて上司と話し合い、あわせて自身のスキルを見直す中で、個々人のステージに応じた自律的なキャリア形成を支援していきます。

 

③ 異見を活かす組織文化とリーダーシップの醸成

 多様な人材が集まるソニーでは、組織を牽引するリーダーのマネジメントスタイルもまた様々ですが、リーダーに共通して必要な要素は「異見を活かすリーダーシップ」だと考えています。自身と異なる考えが歓迎され、活発な意見交換がなされるカルチャーが醸成されているだけでなく、異見を取り入れ、組織の力とつなげるマインドセットやスキルを高めることが重要です。

各事業部門・関連部門において中核的役割を担う経営人材の育成を目的とした次世代リーダー育成プログラム「ソニーユニバーシティ」では、毎年、全世界のグループ各社から異なるバックグラウンドを持つ多様な人材が集まります。選抜されたメンバーが、講義やグループディスカッション、多様な事業の経営メンバーとの対話を通して、リーダーシップや戦略立案、ビジョンメイキング等のスキル・マインドの強化に取り組みます。受講生がともに切磋琢磨することで事業や組織の枠を越えた人脈が形成され、事業における連携や協業につながっています。

「ソニークロスメンタリングプログラム」は、2024年度で三期目となったソニーグループ横断の施策です。異なる事業の経営層と次期経営人材とをメンター・メンティーとして戦略的につなげ、自事業・自組織にとどまらない新たな分野への理解の深化、個人の育成計画に資する新たな気づきや学びの場、また、ネットワーキングの機会としています。約半年間の実施期間の中で、マネジメントスキルやリーダーシップスキル、ビジネス、そしてキャリア等様々なテーマをもとに定期的にコミュニケーションを行い、メンターが持つ豊富な知見や経験を共有することで、メンティーの視座の向上、そして視野の拡大につなげています。

上記に加えて、2024年度には、当社の役員と各事業・専門領域において活躍する社員とのラウンドテーブルを実施しました。「多様な経験×異見を活かす組織の実現」をテーマに、事業・職種・環境を変える経験がキャリアに与える影響や、今後ソニーグループに必要な異見についてディスカッションを行いました。参加者からは、「事業を越えた役員及び社員との直接的な対話自体が貴重」との声が多く集まり、ソニーのカルチャー、事業、人への理解の深化とシナジーの創出に貢献する機会となっています。

 

注力領域を定義し推進していく上で、実際に多様な社員が働きがいを感じ、それぞれの感動創出に挑戦できているかは、Purposeへの共感度と社員エンゲージメントに集約されると考え、社員意識調査を定期的に実施しています。特に社員エンゲージメントは重要な指標ととらえ、当社上級役員の業績連動報酬の評価指標の一部に組み入れています。

 

 Purposeの下、ソニーの持続的な成長や社会への価値創造をめざし、人材の多様性の確保と「異見を活かす組織」づくりにより一層注力していきます。