2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財務状況及び株価に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する記載は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

(1) 一般リスク

①国内外活動及び海外進出に潜在するリスク

当社グループの販売及び生産活動は、日本国内のみならず米国・欧州・アジア諸国等世界全域に幅広く行っております。これら関係諸国での事業活動に伴い、以下に掲げるリスクが内在しております。

a.予期しない法律又は規制の変更

b.不利な政治又は経済要因

c.未整備の技術インフラ

d.潜在的に不利な税制

e.テロ、戦争、デモその他の要因による社会的混乱

f.労働力需給逼迫に伴う賃金・人材確保コストの急増

g.拠点における不正行為

生産活動については、その80%以上を中国・マレーシア・ベトナム・米国・フィリピンの生産子会社が行っておりますが、当該国での法環境の変化、経済政策の変更があった場合は、当社の業績見通しに大幅な変動が生じる可能性があります。

また、当社では、内部統制システムを整備することはもとより、行動規範において信頼の確立や法令遵守などを従業員に求め、ハンドブックを作成し、周知徹底させています。しかしながら、このような施策を講じても、複雑化する法令や規制への抵触、役員、従業員による不正行為は完全には回避できない可能性があります。このような法令違反や不正行為等が発生した場合、社会的信用が低下し、取引停止、罰金・罰則等により、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当社グループは、本社を含む各拠点において、必要性に応じて規程の制定・改廃、ガイドライン(法令情報のタイムリーな収集などを含む)の制定や教育の強化を行い、継続的な教育実施をすることでリスク低減に取り組んでまいります。また、グループ全社をカバーする内部通報窓口を設置し、不法行為等のリスクが生じた際にはいち早く対処・是正する体制を整えております。さらに、業務の適正化及び効率化の観点から業務プロセスの継続的な改善・標準化についても積極的に推進しております。

②市場ニーズの変動

当社グループは、最終消費製品メーカー等に対し部品を製造販売する事業を営んでおり、主要市場である自動車、半導体検査、携帯端末、先端医療機器の各市場の動向、当社顧客業績やニーズの動向により、当社グループの受注が大きな影響を受けることがあります。主要市場の縮小や顧客業績の不振、市場ニーズの取りこぼし、開発要件不一致は、当社グループの受注減少、売上高の減少となる可能性があります。また、顧客が法的整理等に至った場合は、当社グループの当該顧客に対する債権の全部又は一部が回収不能となる可能性があります。

当社グループでは、顧客ニーズにいち早く答えるために常日頃から変化に対して敏感に察知するよう、市場/顧客の変化・拡大等を見据えた市場マーケティングに努めております。

また、2023年4月に新設したインキュベーションセンターでは、新規事業の育成・確立とともに、ハードウェアからソフトウェアへの転換などビジネスモデル変革を目指しております。

③為替レートの変動に伴うリスク

当社グループの販売高の70%以上及び生産高の80%以上は、海外で発生しております。各地域における売上、原価、保有資産等多くは現地通貨建てであり、連結財務諸表上は円換算しております。為替レートの急激な変動によりこれらの財産・業績等の円換算後の金額が変動し、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

なお、当連結会計年度末における通貨別構成の下では、他の通貨に対する円高は当社グループの損益にマイナスの影響を、円安はプラスの影響を及ぼします。

当社グループは、外貨建債権債務の管理の徹底や、グローバル全拠点を網羅したトータルの通貨バランスを取ることなどにより、為替レート変動による業績変動リスクの軽減に努めております。

④保有株式の株価変動に伴うリスク

当社グループが保有する金融資産には、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に則り、期末時点における時価により評価替えを行う有価証券等が含まれております。期末時点における当該有価証券等の時価が著しく下落したときには、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当社グループの定める基準に従い評価損を計上することにより、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

有価証券の適正な保有状況を毎年見直していきます。

 

⑤減損会計適用に伴うリスク

当社グループが保有する事業用固定資産は、減損会計適用対象となっております。当該事業用固定資産を活用する事業の収益性が著しく低下した場合、所定の算定基準に従い当該事業用固定資産の帳簿価額を減額することにより、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

当社グループは、各事業の継続的な収益力向上を推進するとともに、監査法人などの専門家との定期的なコミュニケーションなどにより会計基準のアップデートやその考え方の浸透に努めております。

⑥知的財産権に関するリスク

当社グループが設計・製造・販売する製品やサービスに関する知的財産権について、当社グループまたはその顧客等が第三者から特許侵害訴訟等を提起された結果として、当社グループが損害賠償責任を負う可能性、当該製品が一定の国・地域で製造・販売を差し止められる可能性、又は当社グループの顧客等に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

当社グループでは、特許等の知的財産権の管理を行う知的財産権部門を強化し、ポートフォリオ戦略による当社グループの開発技術を積極的に権利化するとともに、i)当社の事業に関係する新規特許の定期的な内容確認の実施、ii)製品の開発・販売に際し、第三者の知的財産権との抵触・類似が発生しないように事前調査を行い、抵触等可能性がある場合は事前に回避策をとることを規程化するなど、第三者の知的財産権の侵害を未然に防止する体制の構築に努めております。

⑦自然災害や疾病、突発的事象発生のリスク

地震等の自然災害、インフルエンザなどの感染症や突発的事象に起因する設備の破損、電力・水道の供給困難等による生産の停止は、当社グループの経営成績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、定期的な防災訓練の実施及び社員の安否確認システムの構築実施、必要とされる安全対策や事業継続・早期復旧のための対策として、事業継続計画(BCP)の拡充を進めております。地震対策として新棟の建設や老朽建屋の更新、水害対策として本社ビル移転など、様々な施策を講じております。

(2) マテリアリティ・リスク

①コーポレート・ガバナンスに関するリスク

コーポレート・ガバナンスは、取り巻く経営環境が激変する状況下で企業が柔軟かつスピーディにリスクテイクしたり、不祥事を防止したりするために継続的な強化が必要不可欠であり、当社グループにおいてこれらの機能が不十分である場合、業績悪化・低迷、株価下落、評判の低下などを招く可能性があります。
当社は、取締役会における独立社外取締役の比率を40%以上(7名中3名、43%)としているほか、指名・報酬諮問委員会(委員3名中2名が独立社外取締役、そのうちの1名が委員長)において取締役・執行役員の指名及び報酬等の決定プロセスの透明性をより高めることなどにより、当社のコーポレート・ガバナンスの継続的な強化に取り組んでおります。また、グループ統括推進部を中心として国内外のグループ会社のガバナンス強化にも取り組むとともに、内部監査室とも連携し3線ディフェンス体制を構築しております。

②人員不足に伴うリスク

当社グループは最終消費製品メーカー等に対し部品を製造販売する事業を営んでおり、その製品やサービスを提供するために必要な人材の採用の拡大及び継続的な育成に取り組んでおります。しかし、昨今の人材獲得競争の激化から、当社が必要とする技術やノウハウを有する人材を確保することが困難な場合が増えております。この状況が継続した場合、中長期的な事業推進、生産供給能力や製品品質の確保に影響を及ぼす可能性があります。

本リスクを低減する対策として、現在在籍している従業員による固定的な業務遂行環境から、機動的に複数の業務を自主・自立的に遂行できる人材の能力開発、指導、多様性を考慮した働き方を柔軟にすることにより、人材がより幅広く活躍できる職場への変革に取り組んでおります。また、従業員の業務効率・生産性向上を目的として、マイクロソフト社の生成 AI サービス「Microsoft Copilot for Microsoft 365」を導入し、順次利用を拡大しております。

③脱炭素社会に向けた取組みに関するリスク

気候変動問題に対する最大の方策である脱炭素社会の実現は極めて重要な課題です。当社の脱炭素の取組みが著しく不十分で改善がみられないと評価された場合、顧客からの取引縮小ないし停止、当社への出資を引き揚げるダイベストメント、地域社会からの評判低下などにより、業績悪化・株価下落などの可能性があります。

当社グループは、グローバル社会の一員としての責任を果たすべく、2050年のカーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向けて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同及び2030年度でのGHG削減目標を掲げた環境方針を制定しております。再生可能エネルギー調達の拡大や、GHG排出量のより少ない原材料への切り替えの検討等を通じ、GHG排出量の削減に貢献するとともに、適宜計画の見直し等の改善努力とその進捗状況を積極的に開示してまいります。

④SDGsの取組みに関するリスク

SDGs(持続可能な開発目標)への取組みは、世界的に広がり、深く浸透しつつあります。当社グループのSDGsへの取組みが著しく不十分である、あるいは取組み内容の開示が不十分であると評価された場合、脱炭素の取組みの場合と同様に、顧客からの取引縮小、当社への出資を引き揚げるダイベストメント、地域社会からの評判低下などにより、業績悪化・株価下落などの可能性があります。

当社グループは、脱炭素やSDGs(水資源保護、生物多様性、人的資本)への取組みなどについて、改善・向上を常に行うとともに、それらの内容を、毎年発行する統合レポートや当社コーポレートサイトにおいて積極的かつ継続的に開示してまいります。

⑤製品不良に関するリスク

当社グループが製造・販売する製品は、顧客の製造工程で使用される部品、半完成品、又は検査工程で使用される検査機器です。顧客との仕様・要件確認不一致や当社製品の欠陥による顧客財物等の破損等や顧客製品の市場回収等に伴い発生した費用等について当社が賠償責任を負った場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、仕様・要件の確認強化及び関係部門間の連携をさらに強化しつつ、不良ゼロ化活動などの品質向上活動や工程の重要性に対する社員の認識向上を推進するとともに、万が一の場合に備えてPL(製造物責任)保険に加入しております。

⑥原材料等の調達・デリバリーに関するリスク

当社グループは、生産活動・事業活動に必要な原材料・部品・物品等を国内外から調達しております。戦争・紛争の勃発、世界各国のインフレーション進行、大規模な感染症の拡大、その他不測の事態の発生により、それら原材料等の仕入れコスト及び調達に係る配送コストが著しく上昇し、さらには、各国の政策・法改正により仕入れや配送そのものが不可能となって当社製品出荷が停滞・停止することにより、当社の経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

⑦情報セキュリティに関するリスク

当社が取得し、あるいは顧客等から預かる情報は、経営上重要な資産であり、厳格かつ適正に取り扱う必要があります。当社の情報資産が、内部からの情報漏洩行為や外部からのサイバー攻撃などにより漏洩・破壊・抹消・改ざんされた場合、経営上重大な損害・損失を被る可能性があります。

当社グループは、情報セキュリティの国際標準規格であるISO27001の枠組みに沿って強固な情報セキュリティ体制を構築し、役員・社員への情報セキュリティ教育を継続的かつ定期的に実施するとともに、内部・外部による定期的な監査により、情報資産の保護及び適切な運用の確保・向上を図っております。なお、2020年3月より導入したテレワーク(在宅勤務)制度下においても、通信暗号化ソフトウェアの利用などにより、十分な情報セキュリティを確保しております。

⑧M&Aに関するリスク

当社グループは、事業上のニーズに応じて事業買収などのM&Aを行っておりますが、買収した事業あるいは会社とのシナジーを十分に発揮できるような状況・体制を創出できないことで、M&Aで想定した企業価値の向上を実現できない可能性があります。

当社グループは、事業リスクを全社横断的に把握・検討する「事業リスク管理委員会」がさらに積極的・機動的に意思決定プロセスに関与することで、想定した以上のシナジー発揮・企業価値向上に努めてまいります。

⑨敵対的買収に関するリスク

当社グループが属する自動車/半導体検査/携帯情報端末/先端医療機器の各業界は、技術革新や競合会社間の合従連衡など業界構造が激しく変動し続けており、その中で、当社も敵対的買収を仕掛けられる可能性があります。

当社グループは、既存ビジネスの深耕拡大や新規ビジネスの獲得、M&Aなどにより継続的に企業価値の向上を図ってまいります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主様に対する利益還元の充実を経営上の重要課題の一つと位置付け、各事業年度の配当につきましては、成長事業分野に対する生産設備、新規事業に対する技術開発投資及び市場開拓投資のための内部留保を勘案しつつ、安定的な配当を継続的に実施することを基本方針としております

当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

当期(2024年3月期)の業績につきましては、VCCS(旧 車載通信機器)セグメントが前期比で増収・大幅増益となった一方、CTC(旧 回路検査用コネクタ)セグメントが大幅な受注減から売上高半減となり営業赤字に転じ、FC・MD(旧 無線通信機器)セグメントも減収減益となりました。その結果、連結売上高は前期比で小幅な減収、各利益は前期比で大幅な減益となりましたが、2024年2月に公表した業績予想値に対しては上回る形で着地いたしました。

次期(2025年3月期)につきましては、世界各地域における政治的対立・緊張と紛争の拡大もあって世界経済がますます不透明さを増し、当社主要市場において軸となるテーマも変遷する難しい展開になるとみられます。このような状況の中、当社グループにおきましては、2024年初以降、CTC/FC両事業の再成長への足掛かりを得つつあり、2024年5月公表の「新中期経営計画2024-2028」に沿って、資本コスト経営の下「選択と集中」を強く意識した投資管理により、増収増益とキャッシュフロー創出力強化を推進してまいります。

当期の期末配当につきましては、以上の状況を踏まえ、株主様への利益還元、次期以降の業績見通し、資金需要及び財務安定性の確保を総合的に勘案して、1株当たり22円として当社第86期定時株主総会に付議し、ご承認をいただきました。当期は既に1株当たり22円の中間配当を実施しておりますので、通期の配当金は1株当たり44円(連結配当性向 67.8%)となります。

また、次期の配当金につきましては、現時点において、1株当たり年間48円(中間配当24円及び期末配当24円、予想連結配当性向 44.8%)を予想しております。

なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月10日

 取締役会決議

512

22

2024年6月27日

 定時株主総会決議

512

22