リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載の「第2 事業の状況」、「第5 経理の状況」等に関する事項のうち、経営者がazbilグループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)リスクマネジメント体制
当社では、スリーラインディフェンスに基づくリスク管理を行っております。azbilグループ全般の活動において、責任を明確にした3つの防衛線を通じて、組織の内部統制・リスク対応機能の向上を図っております。特に第一の防衛線については、確実にリスクを低減するため、リスクごとに担当役員を明確にし、防衛線での自律的管理の強化を図っております。また、リスクマネジメント事務局がリスク管理活動全体の管理と支援を行うなかで、第二の防衛線では、主に各間接管理部門が組織全体で対応すべきリスクに対する対策の展開と管理、支援の責任を果たすことで、リスク管理に対する牽制・支援の役割を担っております。さらに、内部監査部門が第三の防衛線として第一線・第二線によるリスク管理体制の検証・保証を行います。
<リスク担当役員の明確化による防衛線の強化>
当社では、ボトム(現場部門)の情報をトップ(経営層)が十分に把握し、意思決定を行うことが重要だと認識しており、ボトムアップアプローチとトップダウンアプローチを一体としたリスクマネジメントを実施するための体制として、「azbilグループ総合リスク管理部会」、「azbilグループ総合リスク委員会」、「azbilグループCSR推進会議」を設置しております。
「azbilグループ総合リスク管理部会」は部門の責任者等をメンバーとして実施され、主にリスクの抽出と評価に関して現場側の意見集約を行います。なお、リスクの抽出と評価については経営層の意見も別途ヒアリングを行って集約し、経営層と現場部門の意見を統合するプロセスを構築しております。
「azbilグループ総合リスク委員会」はリスク管理担当役員を統括責任者、経営層をメンバーとして半期に一度実施され、一連のリスクマネジメント活動に対する経営層による状況確認と方針決定を行います。具体的には、「azbilグループ総合リスク管理部会」や経営層へのヒアリングから得られた情報に基づくリスクの対応優先度の決定(azbilグループが優先して対処すべき「azbilグループ重要リスク」とそれ以外の「部門管理リスク」の選定)、リスク対応計画の進捗確認を行います。なお、「azbilグループ総合リスク委員会」での審議結果は取締役会に報告しております。
「azbilグループCSR推進会議」は部門の責任者等をメンバーとして四半期に一度実施しており、リスクマネジメントの推進状況について確認・検討を行っております。リスク対応計画の進捗確認をazbilグループ総合リスク委員会よりも高頻度に行うことで、タイムリーな状況変化に対応できるようにしております。
(2)リスクマネジメントプロセスの運用
当社では、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクの網羅的な抽出と影響度及び発生可能性の評価を行っております。具体的には、経営層に対するヒアリングによる経営目線でのリスクの抽出・評価と、azbilグループ総合リスク管理部会での審議に基づく現場目線でのリスクの抽出・評価を行い、結果をリスク一覧表(抽出されたリスクの内容と評価結果を一覧化した資料)とリスクマップ(リスクを影響度と発生可能性に基づき5×5のマトリックスに配置した資料)に取りまとめます。なお、リスクの評価にあたってはリスク発生時の影響金額やリスクの発生頻度等に基づく定量的な評価基準を設定し、評価結果を客観的に比較・統合できるようにしております。上記のアウトプットを参照資料として「azbilグループ総合リスク委員会」にて経営層による審議を行い、「azbilグループ重要リスク」及びそれ以外の「部門管理リスク」を決定し、結果については取締役会に報告します。
抽出された各リスクに対しては、期初に年間のリスク対応計画を策定し、期中と期末に行われる「azbilグループ総合リスク委員会」にて計画の進捗報告を行い、計画の遅延や推進上の課題を都度認識・改善することでPDCAサイクルを回しております。「azbilグループ重要リスク」についてはリスクごとに担当役員が直接状況報告を行いますが、「部門管理リスク」については、計画の進捗状況を集約した台帳ベースで確認を行います。また、四半期に一度実施される「azbilグループCSR推進会議」では、より高頻度にリスク対応計画の進捗確認を行っております。
<リスクマネジメントプロセス>
<リスクマップ>
影響度と発生可能性でリスクをプロットすることにより、
管理すべき優先順位を視覚的に把握する
(3)事業等のリスク
今回選定されたazbilグループ重要リスクに関する詳細は以下の通りです。
①品質に関するリスク |
リスク認識 製品の設計・製造品質の確保不足、あるいは量産工程における教育不徹底や意識不足等によるデータの不備や不適合品等が発生した場合、製品不適合によるリコールが必要となり、多額のコストが事業の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社の事業上の強みが「高い品質」にあることから、上記の事象が顧客からの評価や信用の低下を引き起こし、影響が重大化もしくは長期化する可能性も考えられます。昨今ではSNSの普及により品質トラブルを含む風評が広まりやすく、当該リスクの影響度及び発生可能性が以前よりも高まっているため、常に経営としてできる限りの備えが必要だと認識しております。 |
対策 当社グループでは、製品の設計・製造品質を確保するための対策として、開発プロセスや安全設計に関する標準の運用や、生産現場の各工程で不適合品を「①入れない②つくらない③出さない」ための標準手順の策定・運用、安全な製品提供のための審査制度、適正な検査作業工程維持のための生産ラインの管理・改善、グループワイドでの業務プロセス点検といった取組みを行っております。また、法規制の変化に対応するため、製品に含有する化学物質規制や、製品安全関連の法規制・規格等について製品開発時や量産段階における確認プロセスを標準化し、厳格化しております。 製品品質に関わる重大な問題が発生した場合、市場品質情報として即座に品質担当役員と事業責任者へ伝達され、関連部門で共有、必要な対策・情報開示が迅速に行えるようになっております。また、発生した品質問題に対し、原因の解析、対策の実施及び技術・評価基準への反映や設計知識データベースへの登録を行い、再発防止に努めております。なお、製造物責任や製品欠陥に起因する損害賠償につきましては、保険に加入するなど問題発生に際しての備えも強化しております。 品質管理対応に関連する情報は、グループ品質保証担当役員を委員長とした品質保証委員会をはじめとする会議体にて共有・可視化されるように努めております。 |
②情報セキュリティに関するリスク |
リスク認識 当社グループでは、事業上の重要情報及び事業活動の過程で入手した個人情報や顧客、取引先、提携先等の機密情報を保有しておりますが、昨今、国内外ではGDPR(EU一般データ保護規則)等に代表される個人情報を主体とする各種情報の保護に対する法令の制定が進んでおり、遵守とそのためのルール整備や情報システムの強化が求められております。これらに関連するリスクとして、 ①メールやFAXの誤送信、パソコンや書類の紛失等により、顧客から受領した機密情報や従業員の個人情報が漏えいするリスク ②クラウドサービス間のAPI等による情報連携において不適切な情報を公開(提供)してしまうリスク ③データサービスにおいて顧客(企業)や個人を特定できる状態でデータを利用、提供してしまうリスク などが存在しており、その結果として、損害賠償の支払いなど、社会的な信用の低下により業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 また、情報セキュリティに関しては、サイバーセキュリティ室による商品・サービスから業務システムまでの一貫した管理・対策を中心に対応を図っておりますが、新たなサイバー攻撃の手口が絶えない現在の状況において、想定外の攻撃による以下のリスクを完全に防ぐことは難しいと考えております。 ①ランサムウェアや標的型攻撃等のサイバー攻撃により顧客及び自社の機密情報が漏えいするリスク ②当社グループが顧客に提供しているクラウドサービス商品がサイバー攻撃を受け、サービス提供不能や顧客の機密情報漏洩を起こしてしまうリスク その結果として、損害賠償の支払いや顧客・社会からの信用喪失により、当社グループの業績及び財政状態が大きく影響を受ける可能性があります。当社グループでは2020年度に発生したコンピューターウイルス感染の事態を重く受け止め、日々変化する状況に対応して、情報セキュリティ対応の高度化に一層努めてまいります。 |
対策 事業上の重要情報の機密保持とあわせて、個人情報保護に関しての法令遵守のため、社内規程の整備と運用及び社員への教育を行っております。具体的には、 ①PCストレージの暗号化 ②メール誤送信防止アドインソフトのインストール ③社内から社外へのインターネットアクセス制限による情報漏洩リスク軽減 ④azbilグループ情報セキュリティ教育での啓蒙(誤送信防止の注意ポイント、情報紛失時の対応等) ⑤グループとして緊急事態対応の体制を整備・迅速な対応による影響最小化 の対策をとっております。 また、当社グループでは、激化するコンピューターウイルス等によるサイバー攻撃に対する備えとして、より強固なIT環境の整備や社員の情報リテラシー(情報活用能力)を高めるための定期的な教育等を継続して行うとともに、様々なサイバー攻撃に対して、以下のような対策を行っております。 ●システム上の対策 ①ネットワーク経路上の監視・防御 ②生産設備とオフィス系ネットワークの分離 ③システム及び利用PCのマルウェア対策(新たにEDR※1を導入してセキュリティ強化) ●体制・運用 ①適切なバックアップによるデータ消失対策 ②azbilグループ情報セキュリティ教育での啓蒙・訓練(マルウェア感染が疑われた際の対応等) ③サイバー攻撃対応訓練 ④CSIRT※2の設置による初動対応の迅速化 さらに、商品セキュリティに対しては、セキュリティ専門組織によるリリース前のサイバーセキュリティ審査を実施し、セキュリティ事故を未然に防止するようにしております。リリース後も新たな脆弱性情報を収集し、脆弱性が発見された場合は商品への影響調査・対策を実施する運用をしております。 以上のような情報セキュリティに関するリスクへの対応を、azbilグループ情報セキュリティ基本方針のもと遂行してまいります。
※1EDR(Endpoint Detection and Response):PCやサーバーなどネットワークに接続されている端末を監視し、不審な挙動を検知するとリアルタイムに通知する製品・サービスの総称 ※2CSIRT(Computer Security Incident Response Team):当社のセキュリティ事故対応チーム |
③技術・商品開発に関するリスク |
リスク認識 近年、メタバース※3やWeb3.0※4、生成AI※5等といったDXの先端的な潮流に代表される技術革新の流れをキャッチアップできないことや、国際標準動向への対応ができないことにより、事業に影響が生じるだけでなく、市場拡大もできない可能性があります。具体的には、商品の陳腐化と顧客離れが進み、市場からの撤退を迫られるリスクや、事業領域が広がらず、縮小均衡に陥ってしまい事業成長できないリスクが想定されます。また、研究開発投資について、現時点では適切なテーマ設定に基づく技術・商品開発プロジェクトへの人的、資金的リソースの投入を行っておりますが、開発テーマを継続的に確保するための対応が不十分な場合、中長期的には開発テーマ不足に至る可能性があり、リニューアル商品、新規商品が不足し、中長期目標の達成が不達になることが考えられます。加えて、製品・技術の研究開発を進めていても、研究開発プロセスの管理不備やリソース不足、開発力自体の低下が生じた場合には、新製品の投入遅延や開発自体の失敗によってマーケットシェアが減少し、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
※3メタバース:一つの仮想空間内において、様々な領域のサービスやコンテンツが生産者から消費者へ提供される場 ※4Web3.0(ウェブスリー):ブロックチェーンによる相互認証、データの唯一性・真正性、改ざんに対する堅牢性を基に、個人がデータを所有・管理し、中央集権不在で個人同士が自由に繋がり交流・取引する世界 ※5生成AI:自らの訓練に使用されたデータを基に、テキストや写真、動画、コード、データ、3D画像等の出力を生成又は作成する人工知能アルゴリズム |
対策 技術革新に対しては、関連技術動向、競合動向、国際標準動向を各開発組織やマーケティング組織で継続して注視しております。加えて、全社マーケティング・開発横断で実施される技術開発担当役員を議長とした商品力強化会議にて情報の捕捉や課題認識に努め、全社開発検討会では、より具体的なテーマ(AI、クラウド、通信、カスタムIC等の領域)について、取組み状況を確認しております。 技術・商品開発の具体的なテーマの抽出においては、ニーズ・シーズマッチング活動※6等により、マーケティング・開発一体でのテーマ創出活動を強化・推進しております。外部環境変化への対応の必要性も捉えるために、特に海外開発拠点であるアズビル北米R&D株式会社や東南アジア戦略企画推進室による海外の技術開発パートナーとの連携によるエコシステム構築への対応も進めております。また、“現場で価値を創る”ことを目指した商品提案力強化のため、azbilグループシステム・プロダクト事業ポートフォリオ検討タスクを構成して対応を進めております。具体的な施策としては、保有する技術の競争優位性を高めるためにMEMSを主力としたセンシングデバイス領域、アクチュエータ領域、クラウド領域における技術開発本部の組織改定、アクチュエータ開発本部の設立に加えて、プロダクト事業強化として昨年度に設立したスパイラル型事業開拓※7組織においては、対象とする商品領域を拡大しました。システム事業強化としては、クラウドサービスの統制を担う組織に加えて、アプリケーション開発体制強化として2024年度新たにグループクラウド開発部の設立を行い、商品力強化を図ってまいります。 研究開発プロセスの管理不備による開発遅延に対しては、開発プロセス標準の改良(リスク要因の抽出プロセスの設定、リスク検証における管理技術の導入による後戻り防止や遅延リスクの事前検討、伝承すべき技術要素のドキュメント化等)を実施しております。また、技術開発担当役員を委員長とした技術委員会を活用した、更なる全社での開発の連携強化や人材リソース配置の調整によるリソース確保を実施しております。 中長期的な開発力向上については、開発プロジェクト推進の根幹となる開発人材(マネジメント及びスペシャリスト等)の育成が必要であり、開発人材の最適配置と育成、開発人材の流動化に関する企画立案と施策展開として、技術委員会傘下の開発系人材専門部会によるタレントマネジメントシステムの導入・運用等の実行により、強化を進めております。また、イノベーションを起こす風土づくりを推進するため、国内外における外部連携(大学やスタートアップ企業等)の拡大や全社研究開発の中核拠点である藤沢テクノセンターに新たに建設された新実験棟に協創エリアを設置するなど、協創活動をより一層強化しております。
※6ニーズ・シーズマッチング活動:ニーズ(消費者が求めている必要性)とシーズ(メーカの持っている特別な技術や材料)のマッチングを推進する活動 ※7スパイラル型事業開拓:当社独自の技術を有し、強みを発揮できる領域において、顧客を含む関係者とともに開発を進め、より短いスパンでの市場投入、その後の維持、リニューアルを実現することを目指す事業開拓 |
④国際情勢変化への対応に関するリスク |
リスク認識 グローバル事業の拡大に伴い、進出先における政治経済情勢の変化、現地の法律や規制等の改正、自然災害、テロ、ストライキ、戦争、感染症の蔓延の発生や世界各国における紛争や政治的対立による地政学的リスクの増大等、不測の事態に遭遇する危険性が増しております。そのような中、予期せぬ戦争状態の発生や主要国における経済措置等を原因とした対立の激化、それに対する各国の制裁措置等が発動された場合、当社のグループ企業の従業員の安全性が損なわれる可能性があることに加え、事業、与信管理も含めた業績及び財政状態に一定の影響が出る可能性があります。 また、国際情勢環境の変化に伴い、関連する国内外の輸出管理関連法令等の動向については、当社グループが予期しない突発的な法制、規制や承認手続きなどの変更に直面するリスクがあります。 加えて、急激又は大幅な為替レートの変動は、売上高、原材料・部品の価格、販管費等の経費に影響し、当社グループの業績及び財政状態に一定の影響を及ぼす可能性があります。 |
対策 当社グループでは、進出先の各国・各地域の地政学的リスクの変化に十分な注意を払い、常に情報の収集に努めております。そのうえで、国ごとにリスクを判断し、必要な場合には人命安全マニュアル等に基づく人命第一の対策を講じております。また、事業継続に対するリスクについては、国際情勢の変化等を踏まえたBCP(Business Continuity Plan-事業継続計画)の整備を進めているほか、特定地域における情報収集、人命安全対策等、当社グループにとって致命的な影響を及ぼすイベントについて重点的な検討を行っております。加えて、既獲得案件については案件単位で状況を把握し、適切に対応しております。 輸出管理関連法令等については、国際情勢及び国内外の関連法規制の変化に十分な注意を払い、常に情報の収集に努めております。法規制の変更があった場合には、輸出取引審査をより慎重にするなど社内の運用体制の見直しなどを実施し、適正な輸出管理を行っております。かかる法規制の変化や運用体制の見直しなどの取組みについては、当社グループ内に周知徹底するとともに、グループ内の各種会議体においても報告や議論を行っております。 為替変動に対しては、適切な財務上の為替ヘッジを行いつつ、海外生産の拡大等によるリスク軽減に取り組んでおります。 |
⑤自然災害に関するリスク |
リスク認識 当社グループのBA事業、AA事業の国内生産拠点(製造子会社を含む)や、マザー工場として生産機能の中核となる湘南工場、海外の生産拠点において、地震・津波、噴火といった自然災害や火災・爆発など不測の事態が発生した場合、建屋や生産設備・機械、出荷前の製品等の損傷に対して復旧費用が必要となる可能性があります。また、自社の生産ラインに加えて社会インフラやサプライヤーにも被害が生じ、工場生産や事業活動が停止することによって業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。 |
対策 当社グループでは地震等の自然災害の発生時に生じる損害を最小限に抑えるべく、人員や生産設備等に求められる対応準備を進めております。具体的には、工場等の重要施設や建物における耐震化、非常用電源や非常用通信網の整備、災害備蓄品の配備に加え、社員の安否確認システムの導入や各拠点における安全確保のため初動対応ガイドラインの作成、定期的な防災訓練や初期消火訓練といった対策を行っております。 また、事業の中断、阻害に対処するためのBCP策定にも取り組んでおり、実効性を確保できるよう継続的に改善を進めております。災害による事業停止に対しては対応可能な事業継続期間を検証し、そのために必要な資金及び製品や部品の在庫の確保、最優先業務を継続するための代替拠点の設定とその体制を整備しております。具体的には、本社機能として関西の代替拠点の設定、サービス・エンジニアリング機能の拠点間支援体制の整備や生産と研究開発部門の再編、主要生産品目を国内他地域及び中国とタイの海外工場へ移管するなど、生産拠点の分散化を図ることにより、拠点集中リスクの軽減を図ってまいりました。さらに、首都圏の活動制限等のロックダウン相当の事態を想定した生産対応計画を策定しております。 |
⑥人材の確保・育成に関するリスク |
リスク認識 今後の技術発展や社会情勢の新たな展開等に誘発される事業構造の変化に対しては、既存の人事制度にとらわれない柔軟かつ適切な人材配置の必要性が高まる可能性があります。 また、少子高齢化や多様性の進展、働き方改革をはじめとした新労働法制の施行等を受けて労働者の意識や絶対数に変化が生じており、今まで通りの人材採用戦略を継続することによって、中長期的な人材不足が発生し、事業のパフォーマンスが慢性的に低下する可能性があります。 加えて、当社グループの成長においては海外事業及び新規事業の展開・拡大が不可欠であり、目的に合致した人材の確保やスキル教育等が順調に進捗しない場合には、事業成長目標の達成を阻害する要因となる可能性があります。 |
対策 当社グループは、「社員は重要な財産であり、新たな企業文化と企業価値の創造の源泉である」という普遍の考え方をベースに、「健幸経営」をスローガンに各種人事施策を展開しております。 事業構造の変化に対しては、2012年度以降、人員の再配置及び新しい部署で必要となるスキル・知識のリスキリングを行うことで、環境変化への柔軟な対応力を持つ社員の確保に努めており、2023年度も全社員の10%を超える人員が異動しており、約60%の社員が成長を実感しております。 さらに2018年度からは新たな人事制度として全社員の異動意向調査やオープンチャレンジ制度(希望する部署への異動制度)を導入し、適材適所の人材配置を計画的に進めております。また、特にスキル・知識レベルの高いベテラン社員のスペシャリストに関しては、その技術・ノウハウ継承に向けて、個人ごとに後継者育成計画を立案し遂行しております。 採用環境の変化に対しては、事業側と人事部が一体となった人員計画に基づく採用活動の強化に加えて、DX化による業務改革やアウトソースを活用した適正負荷配分、65歳以上の雇用延長、ベテラン社員のリスキリング、短日数・短時間勤務制度の導入等を通じて生産性を向上しております。 海外事業や新規事業の展開に必要な人材の確保に関しては、従来の新卒採用やキャリア採用に加え、社員紹介や経験者の再雇用といった手法を有効に活用するとともに、新卒採用のうち10%以上は海外出身者を採用するなどの対策を実施しております。また、海外現地法人の採用強化策として、本社における採用方法・ノウハウを各現地法人に順次に展開しており、その一環として、海外大学からのインターンシップ学生の受入れや国内大学から海外現地法人への送出しを積極的に行っております。 |
配当政策
3【配当政策】
azbilグループは、配当について、純資産配当率(DOE)に焦点をあてた、「安定かつその水準の向上を長期に目指す」基本方針を打ち出しております。2015年度以降、毎年着実な増配を実現しており、今後も継続した増配を目指してまいります。
現中期経営計画(2021年~2024年度)におきましては、将来の事業展開に向けた戦略的投資として、事業拡大に向けた他社との協業、出資等も積極的に展開し、先進的なグローバル開発・生産体制等の整備・強化、商品・サービスの拡充、DX推進による生産性向上や人的資本への投資等を計画し、あわせて災害等の不測の事態への対応等の事業継続性の確保に取り組んでおります。
また、ROE目標を中期経営計画で定めたうえで、「資本コストや株価を意識した経営」の実現のため、本計画期間において、投下資本利益率(ROIC)を管理指標として導入する整備を進め、事業運営・成長に必要な現預金や調達力水準を検討したうえで、今後のグループ内でのキャピタルアロケーションも見据えながら、株主資本の更なる効率化を推進してきております(2023年度azbilグループROIC10.2%(試算)、資本コスト(WACC)6.1%)。今後も成長に向けた投資を着実に実行しつつ、健全な財務基盤維持に配慮したうえで、資本の効率化を進め、上記の「基本方針」に基づき、株主の皆様への利益還元の充実に取り組んでまいります。
株主の皆様への具体的な利益配分として、2024年3月期の配当につきましては、従来は前期配当水準から1株当たり7円の増配となる1株当たり年間73円を計画しておりましたが、期末配当金を従来の公表よりさらに3円増配し、年間10円増配の1株当たり76円と決定いたしました。これは、当社グループの生産・調達体制の強化やこれまで取り組んできた価格転嫁を含めた事業収益力強化施策の成果が着実に現れてきたことにより、2024年3月期は2023年11月7日公表の業績計画を上回り、売上、営業利益並びに親会社株主に帰属する当期純利益ともに過去最高業績を計上するなど堅調な業績結果を反映したものであります。この結果、指標として参照しているDOEは4.8%と改善しております。
なお、2025年3月期の配当につきましては、株主の皆様への一層の利益還元を進め、安定した配当水準の更なる向上を図るとの方針に基づき、当社の配当に関する指標であるDOEにつき、「当社の収益力成長にあわせて安定的に向上させる」基盤固めとしての5%台水準を実現すべく、中間配当金44円(株式分割前)、期末配当金11円(株式分割後)とさせていただく予定です。これにより、DOEは5.0%となる見込みです(当社は、2024年10月1日を効力発生日として、普通株式1株を4株とする株式分割の実施を予定しており、株式分割前の株式数を基準に計算した場合の期末配当金は1株当たり44円、中間配当金を加えますと年間88円となり、前年度から12円の増配となります)。
2024年度も当社を取り巻く事業環境は不透明な状況が継続すると思われますが、改善・強化された生産・調達体制のもと、受注残を着実に売上高に転化させ、堅調なビル関連事業の伸長に加えて、下期以降に見込まれるファクトリーオートメーション市場における需要の回復拡大を着実に取り込むことで更なる増収を計画しており、研究開発、設備投資、DXや人的資本等の成長に向けた投資を行いつつも、これまでに取り組んできた価格転嫁を含めた事業収益力強化施策により収益の向上を実現してまいります。また中長期視点でも、商品力強化、技術開発・設備投資並びに人的資本への投資強化を進め、成長のための変革を加速するとともに、市場環境の異なる事業ポートフォリオ(BA、AA、LA)による持続的な成長を展望しております。
成長に向けた投資と事業収益力強化施策等の企業体質強化に取り組みながら、当社グループは引き続き上述のとおり、株主の皆様への利益還元の継続的な充実に取り組んでまいります。
なお、当社は、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月7日 |
4,904 |
36.5 |
取締役会決議 |
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2024年6月25日 |
5,307 |
39.5 |
株主総会決議 |
(注)配当金の総額には、当社社員の株式給付制度に係る株式給付信託(J-ESOP)及び当社役員の株式報酬制度に係る株式給付信託(BBT)において株式会社日本カストディ銀行(信託E口)が保有する当社株式、及びazbilグループ社員持株会専用信託が保有する当社株式に対する配当金が含まれております。