2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループでは、リスク管理規程を制定し、同規程に基づき、リスク管理の一元化・高度化を図ることを目的にリスク管理委員会を組成しております。

同委員会はグループ内において発生したリスクに関するマネジメントの窓口になるとともに、具体的対応策等実施すべき事項等を判断することに加えて、リスクアセスメント・事業継続計画の策定等、グループにおける平時のリスクマネジメントも継続して実施する役割を担っています。代表取締役社長を委員長、総務部門が事務局となり、グループ各社においてはリスク管理責任者等を任命し、同委員会を構成しています。委員会では発生リスク事案の対応や、定期的な会議を開催しております。

同委員会は、各社事業を遂行する上でのリスクについて、事業年度ごとにグループ各社においてリスクの抽出・評価を行い、リスクマップの作成・更新を行っております。当該リスクマップをもとに、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。なお、以下の事項は、リスクマップにより認識したリスクをすべて網羅的に記載したものではなく、以下の記載以外のリスクも存在いたします。

当社グループは、抽出したリスクの中から、事業年度ごとにリスクに対する統制活動を強化する優先順位を決定し、各リスクに対する統制活動を実施しているものの、リスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 

第1.セグメント共通のリスク

1.事業環境に関するリスク

(1) 映像関連事業における成長性に関するリスク

当社グループは、映像関連事業領域において多様な事業を営んでおります。

映像関連メディアの多様化により、多種多様な媒体における映像の利用頻度が増加していることから、ユーザーの映像に対するニーズ・嗜好が変化しています。そのような多様なニーズに対応するべく、きめ細やかなサービスを提供する体制を整えるとともに、ライブエンタテインメント事業やゲーム関連事業の強化を行うなど、新たな映像体験機会の創出の実現等を図ることにより対処してきております。

しかし、このような映像に対するニーズの多様化が、映像の有する市場価値の低下を招き、過度な競争、景気動向等により、映像関連事業の成長が鈍化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 映像関連事業における技術変化のリスク

当社グループが事業展開を行う映像関連事業領域においては、映像制作及び流通にかかる映像システム等の技術分野における進歩及び変化が著しく、クラウドストレージを利用した編集システムの導入やリモート制作の促進への継続対応とその実現に最適な新たな拠点の開設、バーチャルプロダクションサービスの開始などによる新たな技術サービスの提案等を展開しております。今後においても引き続きこのような技術変化に常に対応をしていく必要があることから、グループ事業の再編による最適化をこれまでにも実施してきております。

しかし、映像に関する技術変化にいち早く対応することにより、新たな映像制作手法や映像システムの開発等にかかる費用が増加する可能性があります。また、競合が技術変化に対応する中、当社グループに技術変化の遅れが生じる可能性もあります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3) 新たなビジネスモデルの構築に関するリスク

映像関連事業において、従来のテレビ放送、映画館、DVDなどの映像流通経路からインターネット、特にスマートフォンの普及によって、誰もが映像コンテンツにアクセス可能になるとともに、誰もが簡単に安価で映像コンテンツを制作できるようになっており、映像流通の仕組みが劇的に変化しています。これまでにはなかった競合の出現による競争も激化してきていることもあり、これら映像に対するニーズの変化を見極め、柔軟に映像事業を展開していくことが必要とされます。

このような環境下において、海外も含めたインターネット動画配信事業者との取引拡大、多岐にわたる映像の流通経路に対応するグローバルE2Eサービスの拡充、加えてライブエンタテインメント事業や独自IP創出など、従来型のビジネスモデルにとどまらぬ、新たな展開を図っているところではありますが、当社グループにおいて、急激に変化する消費者の動向を的確にとらえ、消費性向に応じたビジネスモデルの変化に即座に対応できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.企業結合等に関するリスク

当社グループは、映像制作・技術サービス市場のシェアの拡大、新規サービスの展開、既存事業の拡充、映像関連技術の獲得や人員不足への対処を目的として、業務提携、企業結合(M&A)等の展開を行っており、経営の重要な戦略として位置付けています。

企業結合等を行うにあたって、対象となる企業の事業価値、財務面、法務面等についての詳細な調査を行い、企業結合等のリスク回避を行っております

しかし、企業結合等の実施後、対象となる企業の事業価値の低下や当社グループ間のシナジーの効果が十分に発揮されない場合などには、のれん等の減損を行う必要が発生することにより当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、対象となる企業において偶発的な債務や未認識のコンプライアンス違反事象が判明する可能性があります。

ベンチャー企業への投資等を実施することにより、新たな映像事業のビジネスモデルを獲得することも実施しておりますが、経営環境の変化や投資先の運営上の問題により、想定する投資効果があげられない場合もあり、このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.人材確保・育成に関するリスク

当社グループが行う映像関連事業においては、映像制作、映像システムの開発の分野において専門性を有する人材やクリエイティブの素質ある人材が必要であり、当社グループではそのような人材獲得をグループ一体となって推進しております。なお、詳細は「人的資本への取り組み」に記載している通りでありますが、映像制作手法や技術、ユーザーの映像に対する嗜好の劇的な変化により、当社グループの映像関連事業に対するブランド力が低下するような場合には、優秀な人材を十分に確保、育成できずに、競争優位性のある組織力が低下するおそれがあります。

また、昨今の人員不足の環境においては、従業員の勤務過多や業務の属人化、外注・委託費の増大などのリスクがあります。

これらのような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.大規模災害・新型感染症等に関するリスク

当社グループは、多数の映像に係る設備を所有運営しているとともに、映像制作や人材派遣等の事業展開を行っております。

自然災害による人的あるいは物的な直接被害の発生や、災害に起因する社会的要請等により、事業活動に支障をきたす場合、従業員安否確認システムの導入や事業継続計画の整備を行うとともに、火災保険等の加入により被害を最小化する対策も進めておりますが、その被害全てが補償されるものではなく、これら要因によって当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、インフルエンザ、新型コロナウイルスをはじめとする新型感染症の拡大により、営業活動や映像制作活動の制限による事業の停滞、更には各種イベントの自粛要請や延期、景気悪化に伴う広告宣伝活動の中止等の環境変化がもたらされ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5.情報セキュリティに関するリスク

主要な当社グループ会社において、その業態に応じてプライバシーマーク、ISMS/ISO-IEC27001:2013(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得しております。また、従業員の情報管理に対する意識向上に向けて、全従業員を対象に情報セキュリティも含めたコンプライアンス研修を実施しているとともに、情報セキュリティリスクアセスメントを行い、グループ会社間のセキュリティ基準の統一化を図るなどその対策を強化しております。

しかし、情報資産漏えいリスクの危険性や脆弱性認識の不足、対策の想定を超えるシステム停止時の業務継続対策の整備不足、外部委託先からの漏洩など現状の管理基準を逸脱した不測の事態の発生、あるいは悪意のある第三者による不正アクセス等により顧客情報等の機密情報が流出した場合には、サイバーリスク保険の加入等による対策は講じてはいるものの、社会的信用の低下や損害賠償、復旧対応に伴うコストの発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

6.知的財産権に関するリスク

当社グループは、映像コンテンツに関する著作権、映像技術に関する特許や商標権等の知的財産権の取得、又は知的財産権のライセンスを受けることで、当社グループの映像関連事業の国内はもとより国際展開を行う上で各国において権利保護を行っております。また、同時に第三者の知的財産権等を侵害しないように管理を行っております

しかし、当社グループの映像コンテンツや映像技術の盗用、模倣等などが多発し、国際的にすべての知的財産権の侵害を防ぐことができない可能性があります。また、当社グループが利用している映像に関する知的財産権等の侵害に対する主張がなされる可能性もあります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

7.コンプライアンスに関するリスク

当社グループは、映像関連事業の遂行にあたって、各種法的規制の適用を受けています。また、事業展開する各国においては、当該国の法的規制の適用を受けています。

当社グループでは、全従業員を対象としたコンプライアンス研修並びにグループ各社においても独自に必要とされる事項に特化したコンプライアンス研修を並行して実施することにより、コンプライアンスの推進や社会的規範意識の醸成に努めています。

しかし、従業員による法令違反や不祥事等、社会的な期待に反した行動等に起因する、処罰、訴訟の提起やレピュテーションの低下により当社グループに対する取引先や顧客からの信頼を失う可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

8.財務に関するリスク

(1) 収益発生・計上の時期に関するリスク

当社グループにおいて、映像関連事業の遂行にあたって、受注したプロジェクトの規模や内容が予想と大きく乖離する場合や、納入時期が変更され売上・収益の計上が翌月、翌四半期あるいは翌連結会計年度にずれ込む場合があります。特にCMやテレビ関連のコンテンツ制作・映像制作技術サービス事業は広告主の宣伝広告費の予算執行やテレビ局の番組改編に連動するため他の月に比較して9月及び3月の期末付近に売上や収益が集中する傾向があります。そのため、計上時期の年度のずれが発生し、額の大きさによっては各々の期間における当社グループの経営成績及び財政状態に変動が生じる可能性があります

 

 

(2) 投資有価証券に関するリスク

当社グループでは、事業展開をより効果的に進めるために、事業上の提携会社の株式(有価証券)を取得することがあります。株式の取得に際しては、対象企業の経営状況及び将来の事業計画等についての事前調査を行い、当社グループとの事業シナジー・収益性・リスク要因等を総合的に勘案して実施いたしますが、それらの要素を完全に予測することは困難であります。将来、対象企業の事業展開が当初計画を下回る等、企業価値が低下した場合には、当社グループが取得した有価証券に関して減損処理を余儀なくされることもあり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

なお、保有方針及び保有の合理性についての検証方法等については、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」をご参照下さい

 

第2.各セグメントにおけるリスク

1.映像コンテンツ事業

映像コンテンツの制作過程における、制作スケジュールのずれ込みによる制作期間の延長、制作キャパシティオーバーによる外注費の増大等の、映像コンテンツ制作過程で発生する変更に伴い、当初見込んでいた制作予算を超えてしまうことがあります。管理体制を更に強化することで対処しておりますが、このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、映画をはじめとした各種メディア向けコンテンツの製作について共同出資等を行うことにより、収益分配金や二次使用権等による収益を得ることがあります。これらの出資については、収益性やリスク要因を検討した上で決定しておりますが、市場の反応を完全に予見することは極めて難しいものであり、想定していた収益が得られなくなってしまうことがあります。調査を徹底し、作品ごとのリスクを見極める体制づくりを行うことで対処しておりますが、このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.映像制作技術サービス事業

国内のE2Eサービス及びTV番組・TVCM向けのポストプロダクションサービス等は、CM関係業務及び企業の広告支出を源とするテレビ番組業務において、景気変動の影響を受けやすく、景気低迷時には受注件数・金額ともに低減する傾向があり、結果として当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、ロケーション撮影やライブ中継サービスにおいて、特定の取引先への依存度が高い業務があり、それら取引先に突発的又は想定外の事態が発生して取引が困難となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

海外のE2Eサービスは、Pixelogic Media Partners LLCを中心とした複数の海外子会社により構成されており、事業展開する国や地域において異なる各種制度や慣習・文化、政治的・経済的状況等の変化や外国為替相場の変動等が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

人材サービス等は、労働者派遣法をはじめとした各種法的規制下にあります。法令遵守を徹底し、常にその対策を行ってはいるものの、これら法的規制の強化、解釈の変化に伴いコスト増大や新たな事業上の制約等が発生するような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3.映像システム事業

映像システム事業では、各種映像機器の開発・製造を行っておりますが、その新製品の販売において想定通りの収益が得られなかった場合、又は製品に瑕疵・不具合・クレームがあった場合には、減損や対応費用等のコスト増大により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、特定の取引先への依存度が高い業務があり、それら取引先に突発的又は想定外の事態が発生して取引が困難となってしまう可能性があります。グループ一体での人材獲得やシステムソリューションを業務とする会社の株式を取得するなどによる研究開発部門の増員・集約と、教育研修の強化、並びに新規事業開発の専門部署の設置により対処しておりますが、このような場合当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、各種映像機器の製造・販売にあたっては必要な部品・資材の確保が必要になりますが、それら部品・資材の想定を超える価格高騰や入手困難部品等が発生した場合には製造コストの増大、もしくは計画に基づく製造を継続することができなくなるため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

製造した映像機器の海外輸出や医療関連映像機器等の開発製造も行っていることから、外国為替及び外国貿易法や医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の遵守が求められており、必要な許認可を受けた上で業務を実施しております。品質保証部門が最新の情報をもとに監視することでそれら法律の遵守徹底に対応しておりますが、これら規制の予期せぬ変更や厳格化によって、新たなコストが発生するような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社グループは、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要事項のひとつと位置づけております。配当につきましては、連結業績に応じた利益配分を基本とした上で、連結配当性向の目標を30%とし、安定した配当の維持と配当水準の向上を目指してまいります。

なお、特別な損益等の特殊要因が当期純利益に大きく影響を与える場合は、配当の決定にあたり、基本的に特殊要因を考慮した配当性向を踏まえ、株主様への安定的な配当と今後の事業展開や内部留保の状況などを総合的に勘案し決定いたしております。

また、当社グループは、年1回の剰余金の配当を行うこととしており、この決定機関は会社法第459条第1項の規定に基づき取締役会の決議によること、また、中間配当並びに基準日を別途定めて剰余金の配当をすることができる旨を定款にて定めております。

なお、当期の配当につきましては、特殊要因を除外した上での配当性向を踏まえて総合的に勘案した結果、15円とさせていただきます。

今後とも、中長期的な視点に立って、成長が見込まれる事業分野に経営資源を投入することにより持続的な成長と企業価値の向上を図り、株主価値の増大に努めてまいります。

 

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

1株当たり配当額

(千円)

(円)

2024年5月30日

取締役会決議

663,001

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