2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しております。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載が無い限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。当該リスクについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のリスク管理体制のもと、適切に対応しております。

 

<トップリスク>

当社グループでは、経営・戦略に影響を与えるリスク事象のうち、蓋然性や影響度、注目度の観点から、特に重要度の高いリスクをトップリスクとして取締役会において選定しており、リスクシナリオに基づく予兆管理やリスクコントロール策を講じています。2025年3月開催の取締役会において選定したトップリスクは次のとおりです。

リスク事象

リスクシナリオ

人材獲得競争の激化・従業員満足度の低下

・採用環境の競争激化や雇用の流動化による外部流出等により、必要な人材が確保できず、戦略が機能不全に陥る

・人的資本への投資に対して想定通りの効果(従業員の自律的な成長、エンゲージメントの向上)が得られず、価値創造を担える人材の確保・育成が停滞することで、競争力が低下する

地域経済・地域社会の衰退

・地域経済の衰退により預金・貸出金の残高が減少し、当社グループの収益力が低下する

・地域産業の衰退により地元取引先企業の業績が悪化し、与信費用が増加する

・域内GDPの縮小により経営基盤が弱体化し、事業継続が困難となる

デジタル社会の進展・銀行サービスの競争激化

・急速に進むデジタル技術の革新や異業種による銀協業への参入増加・業容拡大により競争が激化。DXの取込み対応が遅れることで競争力が低下する

・デジタル投資に見合った効果(業務効率化)が進まず、収益力が低下する

気候変動・環境問題への対応の遅れ

・取引先企業への支援態勢整備の遅れにより、取引先企業の持つ気候変動対応ニーズに応える機会を逸失する

・取引先企業の低炭素社会対応が遅延することで、与信費用が増加する

・気候変動・環境問題への対応の遅れにより、ステークホルダーの評価が悪化し、企業価値を毀損する

各国の政治的混乱・地政学的リスクの顕在化

・各国の政治の不安定さや不透明さが増し、金融市場で動揺が広がる。株価・債券価格が下落し、有価証券の評価損益が悪化する

・政策転換により取引先企業がビジネスモデルの見直しを迫られ、取引先企業の業績が悪化し、与信費用が増加する

・地政学リスクの顕在化により、サプライチェーン寸断や商品市況が高騰する。取引先企業の業績が悪化し、与信費用が増加する

景気の急速な後退や市場金利の大幅な変動

・国内外景気の急速な後退により取引先企業の業績悪化や倒産が増加することで、与信費用が増加する

・金利の大幅な上昇により有価証券の評価損益が悪化する。また、預金金利が大きく上昇し、資金調達コストが増加する

・景気後退懸念から、デフレ・ゼロ金利環境となり、収益力が低下し、計画が未達となる

サイバー攻撃・大規模システム障害の発生

・サイバー攻撃や大規模システム障害により、業務継続が困難となる

・顧客情報の流出やシステム障害への対応費用が発生するほか、当社グループの信用が毀損する

大規模地震・風水害等の発生

・災害等による店舗・ATM・従業員への甚大な被害により業務継続が困難となる

・当社グループの店舗・ATMの被害により復旧費用が発生する

・地震・洪水等により取引先企業の業績が悪化し、与信費用が増加する

お客さま本位の業務運営に反する営業活動の発生

・お客さま本位の業務運営に反した取扱いが発生することで、当社グループの信用が毀損する

金融犯罪対策の遅れ・不祥事件等の発生

・金融犯罪対策の遅れや不備が、お客様への悪影響に繋がり、当社グループの信用が毀損する

・不祥事件等の発生により、損害賠償等のコストが発生するほか、当社グループの信用が毀損する

 

(注)上記は認識しているリスクの一部であり、上記以外のリスクによっても経営上、特に重大な悪影響が生ずる可能性があります。

 

<リスクカテゴリー毎の主要なリスク>

 

(1) 戦略リスク

①ビジネス戦略

当社グループは、2025年4月から2028年3月までを計画期間とする第4次グループ中期経営計画(以下、「中期経営計画」といいます。)のほか、さまざまなビジネス戦略を実施しております。しかしながら、以下のような要因から、中期経営計画において業績目標としている利益等については、想定した結果を得られない可能性があります。

     ・中堅・中小企業を中心とした法人、及び個人向けの貸出が想定通りに拡大しないこと

   ・市場金利の変化や競合激化により、貸出利回りが想定通りに推移しないこと

     ・経済環境の悪化による貸出先の業況悪化等により、与信関係費用が想定通りに推移しないこと

     ・株式市場の低迷や企業業績の悪化等により、株式等関連損益が想定通りに推移しないこと

     ・投資信託や保険等の預り資産商品の販売が想定通りに拡大しないこと

     ・長期金利の変動等により、債券関連損益等が想定通りに推移しないこと

②地域経済の動向に影響を受けるリスク

当社グループは、茨城県、栃木県及びその隣接地域を主な営業地盤としていることから、地域経済が悪化した場合は、業容の拡大が図れないほか、信用リスクが増加するなどして当社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

③競争

金融制度の規制緩和や主要行等の中堅・中小企業向け貸出の強化などにより、一層競争が激化することで、当社グループの競争力が相対的に低下し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

④自己資本比率

・自己資本比率の悪化

当社グループの2025年3月末の自己資本比率は12.20%(連結ベース)です。当社又は子銀行の自己資本比率が国内基準で要求される4%を下回る場合は、金融庁から業務の全部又は一部の停止等の命令を受けることとなります。

・繰延税金資産

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定を含めて繰延税金資産を算出しておりますが、予測・仮定の前提条件が変わることにより、繰延税金資産の全部は一部を回収できない場合には、当社グループの業績及び自己資本比率に悪影響が及ぶ可能性があります。

 ⑤規制変更

将来における法律、規則、会計基準、政策、実務慣行、解釈等の変更により、当社グループの業績遂行等に影響が発生し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(2) 信用リスク

①不良債権の状況

当社グループの金融再生法ベースの不良債権額(破産更生債権及びこれらに準ずる債権、危険債権、要管理債権の合計額)は、2025年3月末現在で1,789億円、総与信額に占める割合は、1.33%です。将来の景気、金融政策、地域経済の動向、不動産価格等の変動、当社グループの貸出先の業況の変動等によっては、予想以上に不良債権が増加し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

②貸倒引当金の状況

当社グループは、貸倒による損失の発生状況や貸出先の状況、不動産・有価証券等担保の価値などに基づいて、貸倒引当金を計上しています。貸倒発生の増加、貸出先の業況の悪化、担保価値の下落等により貸倒引当金が増加し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

③貸出先への対応

   ・中小企業等に対する貸出金について

当社グループは、地元の中小企業及び個人向け貸出金の増強に継続して取り組んでおり、小口化によるリスクの分散を図っておりますが、中小企業の業績や担保不動産の価格、個人の家計等の動向により、当社グループの業績及び財務内容に悪影響が及ぶ可能性があります。

   ・特定の業種等への取引集中に係るリスク

当社グループは、小口分散化された貸出ポートフォリオの構築を進めてきておりますが、不動産及び製造業に対する貸出金の占める割合が他の業種に比べて高くなっております。今後これらの業種の経営環境が悪化した場合は、不良債権額及び与信関係費用が増加し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(3)市場リスク

①保有株式のリスク

当社グループは、市場性のある株式を保有しておりますが、景気・市場の動向、株式発行体の業績悪化等により株式の価格が下落し、減損処理等の損失発生により、当社の業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

②投資活動に伴うリスク

当社グループは投資活動において、債券、投資信託等を保有するとともに、デリバティブ取引等を行っております。これらは、適切なリスク管理態勢を構築しておりますが、金利、為替、株価及び債券価格の変動リスク等を負っておりますので、当社グループに不利に変動した場合には、減損処理等の損失発生により当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

また、市場の混乱等により取引が出来ない、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされる、あるいは減損処理等の損失発生の可能性があります。

③為替リスク

当社グループの資産及び負債の一部は外貨建てとなっております。これらの外貨建資産と負債の額が通貨毎に同額で相殺されない場合、又は適切にヘッジされていない場合には、為替相場の不利な変動によって、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(4) 流動性リスク

内外の経済情勢や市場環境が大きく変化した場合に、当社グループの資金繰りに悪影響を及ぼしたり、通常より高い金利での調達を余儀なくされる可能性があります。

格付機関により当社や子銀行の信用格付が引き下げられた場合には、インターバンク市場における当社グループへの与信限度額圧縮や短期借入金等の調達コストの増加を招き、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(5)オペレーショナルリスク

①システムリスク

プログラムの不備、情報通信機器の故障、外部委託先の役務提供の瑕疵等の内的要因に加えて、災害、コンピューターの不正使用、サイバー攻撃等の外的要因により、当社グループの情報通信システムが停止は誤作動し、業務処理の誤りや遅延、情報の破壊や流出が生じるおそれがあります。この場合、損害賠償やシステムの機能回復等にかかる損失の発生、当社グループの社会的信用の低下等により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

②事務リスク

当社グループはお客さまとの取引等に伴い膨大な事務処理を行っておりますが、適正な処理が行われなかった場合には、損害賠償責任を負うこと等により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

③情報漏洩等

当社グループが管理している顧客情報や経営情報などについて漏洩、紛失、改ざん、不正使用等が発生した場合、損害賠償責任を負うことや社会的信用の低下等により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

④内部管理

コンプライアンスが徹底しないことやリスク管理・内部監査態勢が適切に機能しないこと等により、不祥事件等を防げない場合には、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

⑤業務委託リスク

当社グループ業務の委託先において、当社グループが委託した業務に関し、事務事故、システム障害、情報漏洩などの事故が発生した場合、社会的信用の低下等により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

⑥金融犯罪等に係るリスク

当社グループでは、キャッシュカードの偽造・盗難や振り込め詐欺等の金融犯罪による被害を防止するため、セキュリティ強化に向けた対策を講じております。また、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止を経営の重要な課題と位置付け、管理態勢の強化に取り組んでおります。しかしながら、高度化する金融犯罪等の発生により、不公正・不適切な取引を未然に防止できなかった場合、不測の損失の発生や信用失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑦自然災害等のリスク

地震や風水害等の自然災害、犯罪等により、当社グループの有形資産等が毀損することなどで、事業活動に支障が生じ、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。また、貸出先が被害を受けたり、不動産価格の低下による担保価値の下落の影響を受けることにより、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

⑧感染症の流行

新型インフルエンザ等感染症の流行により、地域の経済活動が停滞し、また、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

⑨風評リスク

当社グループに関する謂れなき風評等により当社グループに対する信頼が低下し業務運営に支障をきたした場合、社会的信用の失墜等によって当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(6) 気候変動リスク

気候変動に伴う異常気象や自然災害等によってもたらされる物理的な被害、気候関連の規制強化や低炭素社会への移行が当社グループ 及び貸出先の事業や財務状況に及ぼす悪影響等を通し、当社グループの業績及び財務状態に悪影響が及ぶ可能性があります。

(7) その他のリスク

①退職給付に係る資産・負債

当社グループの年金資産の時価下落や、退職給付債務を計算する前提条件の変更などにより、退職給付費用が増加し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

②固定資産の減損会計

固定資産の減損に係る会計基準及び適用指針を適用し、所有する固定資産に損失が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

③財務報告に係る内部統制に関するリスク

当社は、金融商品取引法に基づき財務報告に係る内部統制の有効性を評価し、その結果を内部統制報告書において開示しております。

当社グループは、自らの事業活動全体が効率的かつ適正に行われ、財務報告の信頼性が確保できるよう適切な内部統制の構築に努めておりますが、予期しない重要な不備が発生した場合や、監査人より財務報告に係る内部統制が十分に機能していないと評価された場合は、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

④持株会社のリスク

当社は銀行持株会社であるため、当社の収入の大部分を傘下の子銀行から受領する配当金に依存しております。一定の状況下で、様々な規制上又は契約上の制限により、その金額が制限される場合があります。また、子銀行が十分な利益を計上することができず、当社に対して配当を支払えない状況が生じた場合には、当社株主に対する配当の支払が不可能となる可能性があります。

⑤外的要因によるリスク

特定地域が抱える政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりなどの地政学的リスクの顕在化に伴い、世界経済の停滞等を通じてお取引先の経営環境が悪化した場合は、当社グループの不良債権残高や与信関係費用が増加し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、グループとしての成長に向けた資本の確保と、株主の皆さまへの適切な利益還元のバランスを考慮し、「総還元性向40%以上を目安」としております。

剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会決議によらず取締役会の決議とする旨を定款に定めております。

また、定款に「当会社の期末配当の基準日は、毎年3月31日とする。」「当会社は中間配当を行うことができる。この場合の基準日は、毎年9月30日とする。」「前2項のほか、当会社は剰余金の配当を行うことができる。」旨を定めておりますが、配当回数は、中間配当と期末配当の年2回とする予定としております。

当連結会計年度の期末配当につきましては、1株当たり9円の配当を行いました。これにより、中間配当(1株当たり7円)を合わせて、年間配当は前連結会計年度比4円増配の1株当たり16円となりました。

内部留保資金につきましては、将来の事業発展及び財務体質を強化するために活用してまいります。

なお、基準日が当連結会計年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2024年11月11日

取締役会決議

6,997

7.00

2025年5月12日

取締役会決議

8,860

9.00

 

 

(参考 資本政策の見直しに伴う配当方針の変更について)

当社グループは、2025年度(2026年3月期)以降の利益配分に関する基本方針につきまして、2025年3月17日開催の取締役会において株主還元に関する基本方針の変更を決議しました。これまでの方針では「総還元性向40%以上を目安」としておりましたが、株主還元の充実を図るため、「利益成長を通じた1株当り配当金の安定的・持続的な増加を基本とし、配当性向は2027年度までに40%以上への到達を目指す」ことといたしました。また、自己株式取得は、市場動向や業績見通し等に加え、成長機会の捕捉に備えた資本活用も考慮したキャピタル・マネジメントにもとづき機動的に対応してまいります。

これにより、2025年度(2026年3月期)の1株当たりの年間配当額は、2024年度(2025年3月期)に比べて8円増配の24円(うち中間配当金12円)を予定しております。