2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。

 

(1) 当社グループの事業環境に関するリスク

① 金利及び住宅市場の動向等の外部環境リスク

 当社グループでは金融サービスを取り扱っており、また主に住宅・不動産関連の業界に属する住宅事業者及び住宅を購入等する消費者を顧客としていることから、金利、住宅の建設・流通、国内の人口等の動向や住宅・不動産に係る税制や消費税の改正等の影響を受けることがあります。住宅ローン金利の上昇、建材・資材価格の上昇、景気悪化等による消費者の住宅取得マインドの低迷、住宅着工・流通戸数の減少等が起きた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合企業との競争リスク

 現在、住宅金融事業におけるフラット35を取り扱う金融機関は複数存在し、また住宅瑕疵保険等事業における住宅瑕疵(かし)保険を取り扱う住宅瑕疵担保責任保険法人は他に4法人存在する等、複数の競合企業が存在いたします。ただし我が国においては、住宅事業者の企業活動に必要なサービスを組み合わせて一体で提供できる会社は他になく、当社グループはこの強みを活かして差別化を推進しており、競合企業に劣らない体制を構築していると認識しております。しかしながら、今後競合企業の競争優位性が高まり、また他企業の新規参入等により競争が激化し、相対的に当社グループの競争優位性が低下した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 大規模な自然災害、感染症の長期的な流行等によるリスク

 当社グループでは、地震、台風、洪水等の自然災害や火災等の事故、テロ行為や戦争、及び感染症の流行の発生を想定し、必要とされる安全対策や安否確認体制の構築等を行い、事業への影響の回避に努めております。しかしながら、想定を超える大規模な自然災害、事故、感染症の長期的な流行等の事態が発生した場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2) 当社グループの事業運営に関するリスク

① 法的規制に関するリスク

 当社グループの業務の遂行においては、関係監督省庁から許認可や指定等を受ける必要があるものが含まれます。その主な内容及び関連する法規制等については次のとおりです。

 

法規制等

許認可

番号及び有効期限

所管

住宅金融事業

貸金業法

貸金業者登録

登録年月日:2005年12月15日(東京都知事登録)、2006年3月16日(都知事登録に代えて関東財務局長登録)

登録番号:関東財務局長(6)第01464号

現行登録期限:2024年3月17日~2027年3月16日(3年毎に更新必要)

金融庁

自主規制規則

日本貸金業協会加入承認

加入承認日:2012年11月13日

会員番号:第005752号

日本貸金業協会

銀行法

銀行代理業許可

所属銀行:ソニー銀行株式会社

許可年月日:2018年10月11日

許可番号:関東財務局長(銀代)第343号

有効期限:なし

金融庁

住宅瑕疵保険等事業

特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)

住宅瑕疵担保責任保険法人指定

指定日:2008年10月16日

指定番号:指定番号5

有効期限:なし

国土交通省

役員の選任及び解任の認可

業務規程に関する認可

事業計画の認可

引渡後保険の引受の認可

 

 

法規制等

許認可

番号及び有効期限

所管

住宅瑕疵保険等事業

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)

登録住宅性能評価機関の登録

登録日:2001年4月2日

登録番号:国土交通大臣18

有効期限:2021年3月31日~2026年3月30日(5年毎に更新必要)

(注)2006年3月1日に指定制から登録制に移行

国土交通省

適合証明業務に関する協定書

適合証明業務の受託機関の協定締結

締結日:2007年1月1日

有効期限:なし

国土交通省及び財務省

建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律

BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)に基づく評価の実施機関の登録

登録日:2016年4月1日

登録番号:029(一般社団法人住宅性能評価・表示協会への登録)

有効期限:2021年4月1日~2026年3月31日(5年毎に更新必要)

国土交通省

登録建築物エネルギー消費性能判定機関の登録

登録日:2017年3月28日

登録番号:国土交通大臣22

有効期限:2022年4月1日~2027年3月31日(5年毎に更新必要)

国土交通省

住宅アカデメイア事業

建築士法

建築士事務所の登録

登録日:2021年10月20日

登録番号:一級東京都知事登録 第64642号

有効期限:2021年10月20日~2026年10月19日(5年毎に更新必要)

東京都

旅館業法

簡易宿所の許可

許可日:2023年4月14日

許可番号:長野県佐久保健所指令05佐保第11-4号5号6号

有効期限:なし

長野県佐久保健所

ホテル営業の許可

許可日:2017年4月24日

許可番号:愛知県豊川保健所指令29豊川保第467-1号

有効期限:なし

愛知県豊川保健所

簡易宿所の許可

許可日:2017年7月20日

許可番号:長野県諏訪保健所指令29諏保第10-9号

有効期限:なし

長野県諏訪保健所

資金決済法

第三者型発行者の登録

登録日:2021年10月19日

登録番号:関東財務局長第00754号

有効期限:なし

金融庁

 当社グループでは、法規制等の遵守のために、社内規程や管理体制の構築及び従業員教育を行い、コンプライアンス体制の整備に努めており、現状上記許認可等について取消事由に該当している状況にはありません。

 しかしながら、当社が貸金業法等に対する重大な違反を犯した等の場合は、貸金業者の登録取消しや更新登録不可による住宅金融事業継続不能の事態に陥る可能性があり、また特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律等への重大な違反を犯した場合は、住宅瑕疵担保責任保険法人の指定取消しによる住宅瑕疵保険等事業の継続不能の事態を招く可能性がある等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また今後、当該法規制等の改正があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② システム障害に関するリスク

 住宅瑕疵保険等事業及び住宅アカデメイア事業におけるサービス申込・提供に関する業務及び業務関連データ保管は、Webサイトを含め、当社グループ管理の業務システムに依存しております。また、住宅金融事業においては独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」)のシステムや当社社内システムを活用して業務を遂行しております。これらのシステムや保管データに関しては、バックアップの二重化や、ファイアウォール、ウィルスチェック等、障害を回避するための対策を講じております。また、構築したアプリケーションソフトの不具合等が発生した場合でも、早急な対応が可能な体制を整えております。

 しかしながら、想定を超えた災害、攻撃、あるいはアクセスの急激な増加、または構築したアプリケーションソフトの不具合等、様々な要因によって、当社グループの業務システム及び保管データに長期間にわたる障害又は問題が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

③ 個人情報管理に関するリスク

 当社グループでは、事業の性格上多数の個人情報を取得しているため、個人情報の取扱いと管理には細心の注意を払っております。メール送信時の添付書類パスワード自動付加等のシステム面での漏えい防止措置に加え、社内ルール・手続きの明確化・徹底化並びに役職員に対する教育を行い、個人情報の管理に努めております。

 しかしながら個人情報流出の事態が発生した場合は、損害賠償請求や信用低下により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 知的財産権に関するリスク

 当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しない体制として、社内教育の実施や顧問弁護士による調査・チェックを実施しておりますが、当社グループが事業を推進する中で第三者の知的財産権を侵害した場合は、当該第三者から損害賠償請求や使用差止請求等の訴訟を提起される可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 紛争・係争に関するリスク

 当社グループでは、コンプライアンスに関する諸規程を制定し、役職員の遵守を徹底し顧問弁護士との密な連携を図り、法令違反等発生リスクの低減に努めております。しかしながら、当社グループ及び役職員の法令違反等の有無に関わらず、ユーザーや顧客、取引先、第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展した場合は、提起された訴訟の内容及び結果又はそれに関連する訴訟費用が発生し、当社グループの企業及びサービスに対するブランドイメージ毀損等の可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3) 各セグメントの事業運営に関するリスク

① 住宅金融事業に関するリスク

A.フラット35制度変更等のリスク

 当社の主力商品である「MSJフラット35」は、機構から住宅債権買取契約締結先と認定されることにより、機構が提供する固定金利型の住宅ローンであるフラット35を「MSJフラット35」として住宅資金需要者に貸付けている住宅ローンです。従って、機構における当該商品に係る制度や方針の変更等があった場合は、住宅金融事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

B.フラット35貸付用資金の調達に関するリスク

 フラット35は、当社のようなフラット35取扱機関が住宅資金需要者に貸付を行った後に、機構が当該貸付債権を買い取るスキームとなっております。当社では、貸付のための一時的な資金を民間金融機関から調達して住宅資金需要者に貸付け、その後当該貸付債権を機構へ売却することにより、民間金融機関からの借入を全額返済しております。民間金融機関からの調達金利は、機構による住宅ローン債権買取時に調達利息相当分が機構から支払われるため、当社のリスクは原則として生じません。

 しかしながら、当社業績の大幅な悪化による与信低下や、民間金融機関側の事情による当社との関係縮小等の事態が生じ、当該貸付用資金が予定通りに調達できなくなった等の場合は、住宅金融事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

C.つなぎローン貸付用資金の調達に関するリスク

 つなぎローンとは、住宅資金需要者が住宅ローン実行前に発生する土地購入資金や着工金・上棟金等の支払いに対応するために借入れ、住宅ローン実行の際に全額返済する一時的なロ―ンのことで、当社では住宅資金需要者に「MSJプロパーつなぎローン」を貸付けております。当社は、貸付用資金を民間金融機関から調達しており、調達金利についてはTIBOR(東京オフショア市場での銀行間における為替取引金利)を基準とした利率が適用されております。「MSJプロパーつなぎローン」の融資金利は、短期プライムレート(民間金融機関が優良企業向けの短期貸出に適用する金利)と連動して設定し、当該融資金利にて当該資金調達に関わるコストを賄っております。

 従って、当該貸付用資金の調達金利が急激に上昇する等の変動が発生し直ちに融資金利に全てを転嫁できない、または転嫁できてもそれにより競合企業より融資条件が劣後した等の場合は、住宅金融事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

D.アライアンスパートナーとの取引に関するリスク

 当社は、全国のローン取扱事業会社やコンサルティング会社、建材事業者、保険代理店、住宅建設事業者、宅建事業者等とアライアンスパートナーとして提携を行っております。主としてアライアンスパートナーが当社に住宅資金需要者の紹介・取次等を行い、当社が住宅資金需要者に住宅ローン等を貸付け、当社がアライアンスパートナーに代理店手数料等を支払う仕組みとしており、当社の全国に配置する住宅ローン店舗の大半は、当社の直営店舗ではなくアライアンスパートナーである運営代理店による店舗となっている等、住宅金融事業においてはアライアンスパートナーが重要な位置付けとなっております。

 従って、アライアンスパートナーとの取引に何らかの支障が生じた等の場合は、住宅金融事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

E.住宅ローン債権の流動化取引に関するリスク

 当社の営業貸付金の一部は、特別目的会社を利用した流動化取引を実施しており、連結貸借対照表上ではオフバランス処理されているものが存在します。特別目的会社を利用した流動化取引は、会計処理に当たって会計・法律・金融に関する高度な専門知識を要する分野であるため、当社で新規スキームを導入する際には法律専門家等と慎重に検討のうえ、取引を開始しております。

 しかしながら本取引は金額的重要性が大きいため、会計判断を誤りオンバランス処理すべき営業貸付金や短期借入金をオフバランス処理した場合は、総資本利益率等の財務指標に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 住宅瑕疵保険等事業に関するリスク

A.住宅瑕疵(かし)保険に関する法令変更等のリスク

 住宅瑕疵保険等事業における住宅瑕疵(かし)保険の販売は、当社子会社である株式会社ハウスジーメンが、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律等に基づき、国土交通大臣から住宅瑕疵担保責任保険法人の指定を受け、行っております。従って、上記法令の変更等により住宅瑕疵担保責任保険制度そのものが法的根拠を失い、住宅瑕疵(かし)保険の販売が困難になる等の事態が生じた場合は、住宅瑕疵保険等事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

B.損害保険会社との再保険等に関するリスク

 住宅瑕疵(かし)保険や地盤保証等は、株式会社ハウスジーメン又は一般社団法人住宅技術協議会が引き受けた責任において、損害保険会社と損害保険契約を締結し、その対価として損害保険会社に保険料の支払いを行う再保険等の仕組みによりリスクを最小化しております。損害保険会社とは良好な関係を構築・維持しておりますが、損害保険会社における方針変更等により保険料の上昇や継続取引が困難となる等の事態が生じた場合は、住宅瑕疵保険等事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

C.想定外の保険事故発生に関するリスク

 住宅瑕疵(かし)保険は、再保険により保険事故が発生した場合のリスクヘッジを行っておりますが、保険金は株式会社ハウスジーメンが一義的に保険契約者に支払うこととなっており、株式会社ハウスジーメンは、法令等に基づき支払備金及び責任準備金等の積立を行っております。しかしながら、保険事故により想定を超える一時的な支出が発生した場合は、住宅瑕疵保険等事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

D.取次店との取引に関するリスク

 株式会社ハウスジーメンは、全国の建材事業者、住宅フランチャイズ本部等、住宅事業者とのネットワークを有する企業等と取次店として提携を行っており、顧客である住宅事業者に対する営業活動の一端を取次店が担っております。従って、取次店との取引に何らかの支障が生じた等の場合は、住宅瑕疵保険等事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

E.外部委託先に関するリスク

 住宅瑕疵保険等事業における「新築住宅かし保険」や「住宅性能評価」等のサービスは、建築士資格を有する検査員による検査・審査を行うこととなっており、この検査業務に関して外部の検査会社又は検査員等に委託しております。また「地盤保証」は登録地盤会社に地盤調査・解析・地盤改良工事等の委託を行っております。従って、これら委託先となる検査会社や地盤会社との取引に何らかの支障が生じ、代替対応が遅れるような事態が発生した場合は、住宅瑕疵保険等事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 住宅アカデメイア事業に関するリスク

A.損害保険会社との保険に関するリスク

 「住宅設備延長修理保証」等の住宅保証サービスは、株式会社住宅アカデメイアが住宅事業者と保証制度管理契約を締結し、アドミニストレーターとして制度運営を行っております。事故発生等の保証金支払いリスクに対しては、損害保険会社と損害保険契約を締結し、その対価として損害保険会社に保険料の支払いを行う仕組みによりリスクを最小化しております。損害保険会社とは良好な関係を構築・維持しておりますが、損害保険会社における方針変更等により保険料の上昇や継続取引が困難となる等の事態が生じた場合は、住宅アカデメイア事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

B.クラウドシステムの優位性持続に関するリスク

 住宅事業クラウドシステム「助っ人クラウド」は、株式会社住宅アカデメイアが独自に開発したサービスであり、ベースとなるシステム等は既に一定の開発を終えておりますが、追加機能の開発を継続しております。当クラウドシステムは当社グループの差別化推進等を目的として住宅事業者に無償で提供しているため、直接的な営業収益・営業利益に寄与しておりませんが、住宅保証サービスの制度運営において当クラウドシステムの仕組みを活用しております。

 従って、急速に技術革新が進み、株式会社住宅アカデメイアによる対応や追加機能の開発が大幅に遅延し、優位性が損なわれるような事態が発生した場合は、住宅アカデメイア事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、「新築住宅かし保険」等他セグメントのサービス販売においても当クラウドシステムの仕組みを一部活用しているため、他セグメントの業績にも影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、企業価値の向上を究極の目標としつつ、当該年度の収益状況に応じた利益配分と内部留保の充実による将来の事業展開に備えた財務体質の強化の両面から、総合的に株主利益の向上を図ることを基本方針としております。これを踏まえ、当社子会社においても業績向上に努め、またグループとしての事業シナジー効果等により収益体質強化に努めます。

 これらにより、企業グループとしての投資資金を確保しつつ、期末に年1回、当社株主に適切に配当できるよう努める所存です。

 上記方針に基づき、当事業年度においては1株当たり20円の期末配当金を実施することを決議いたしました。

 当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨、定款に定めております。

 内部留保資金については、中長期的な視野に立ち、事業の継続的な拡大発展を実現するための成長投資等に充当していく所存です。

 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2024年6月3日

294,039

20

取締役会決議